11.幻のポケモンならメタ発言許されると思っている子たち

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 物が何もない真っ白な空間に、幻のポケモンであるミュウとジラーチがいた。ジラーチは何やらトランプで遊んでいた。ミュウは冷ややかな視線を向けていた。


「千年に一度しかない貴重な七日間の内の一日を、ソリティアに使っていいの?」
「大丈夫、後六日間もあるし」
「こんなことやってたら呆れられるよ。どこかからボクタチを見ているかもしれない人たちに」
「別に構わないさ。この小説読んでいる読者に呆れられたって」
「……。漫画とかに出てくるジラーチは、もっと七日間を大切にするのに。もったいない」
「じゃあ最近のカントー地方の様子とか教えてよ。千年たってどんだけ変わった?」
「うん。めっちゃ発展したよ。千年前とは比べものにならない」
「へえ」
「都会はビルやタワーがそびえ立っているし。後ついに人間がインターネットを使うようになった」
「じゃあこの小説も、今インターネットで読まれているのかな」
「……」
「でも反面、自然が少なくなって、色んな環境問題が発生しているんでしょ?」
「そう。今頃になって自然を増やそうと焦ってる。自分らで率先して減らしたくせに。人間って愚かだよね」
「歯に衣着せぬ発言だね」
「なんか、小説みたいな表現するね」
「ねえ、人間社会の変化についてもっと詳しく教えて」
「詳しくは無理だよ。ある事情があって、今日は喋る時間が限られているからね」
「そっか。この小説の文字数少ないもんね」
「……」
「後、文字数があったとしても、作者の文章力じゃ上手く説明できないもんね」


「ちょっと待ってちょっと待って」
「なに?」
「さっきからメタ発言連発するの止めてくれない?」
「メタ発言?」
「『この小説の文字数少ない』とか『作者の文章力』とかそういうの」
「いいじゃん。幻のポケモンなんだからメタ発言したって」
「幻のポケモンでもまずいよ」
「っていうか、ミュウだってさっきメタ発言してたじゃん」
「え?」
「『どこかからボクタチを見ているかもしれない人たち』とか『小説みたいな表現するね』とか」
「ボクのメタ発言はセーフだよ」
「はい?」
「ボクのはルールの中でのメタ発言。君のは完全にアウト」
「何が違うのか全然わかんない」
「ボクのは言い逃れできる余地があるけど、ジラーチのは全くない」
「どっちも一緒だよ」
「違うよ! ボクのは『内側』のメタ発言で、ジラーチのは『外側』のメタ発言なの!」
「……でも仮にミュウのが『内側』だとしても、内側だ、って言っちゃったらその時点で『外側』じゃない?」
「え?」
「何も言わなかったら『内側』のままだったけど、内側だって主張したら『外側』になるよ」
「だめだ、頭痛くなってきた」
 ミュウとジラーチはその後も言い争ったが、結局お互いが納得することはなかった。


「ボクタチの様子をどこかで覗いているかもしれないみなさん」
「今この小説を読んでいる読者さん」
「ボクの言ったこととジラーチの言ったことって、全然種類が違いましたよね。ジラーチのは、アウトでしたよね」
「ボクの会話文もミュウの会話文も、似たようなものでしたよね」
「ねえ、みなさん」
「ねえ、読者さん」
「「どっちが正しいと思いますか?」」

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