第86話 最後の1匹
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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください
氷の抜け道を入ると、水がガラス板をひいたように透き通った洞窟に変わる。
吐く息は相変わらず白く、肌を突き刺すような寒さがマイ達を襲う。
「ドラゴンタイプは氷タイプに弱いからな。当たって砕けろ作戦なわけだろ、マイ? ちったー氷耐性をつけておかねぇとな」
「うん、わかった! リューくん出てきて!」
「それから、最近たるんでるキューくんも出しとけ。炎は水には弱ぇが氷を溶かすにはもってこいだ。万が一リューくんが危ねぇときはお前に任せる」
氷の抜け道にて氷タイプポケモンと戦わせることにする二人。流石に旅の終盤だけあり大型ポケモンがわんさかと現れる。
カイリューが気合いで氷タイプの攻撃を凌ぎ、キュウコンがトドメを刺しに襲いかかる。連携プレーをしていて見ているマイは目がキラキラと輝くくらい面白い光景だった。
「おっと頭上のポケモンも忘れずにな。ゴルバット達のお出ましだぜ」
「ピーくん、君に決めた! 10万ボルト!」
地上の騒ぎを聞きつけたゴルバットの大群が攻めてきたので、素早さのあるピカチュウで一網打尽。
ゴルバットの出した超音波でイシツブテやゴローンが混乱して無数の岩を投げてきた。
「まだだ! マイ次はどうする!」
「フィーちゃん! 念力で岩を打ち返して!」
「それだけじゃ足りねえ! もっとだ!」
「アルファ! 水の波動で追い返して!」
岩を打ち返しても効果は今ひとつ。エーフィの念力効果も勿論効いてはいるが大ダメージとまではいかず。岩タイプに有利な水タイプを繰り出して最後の攻撃に入る。
ラプラスの出した水は波を描いてイシツブテとゴローンにぶつかり相手ポケモン達は戦闘不能。
「よーし、中々いい戦いだったな!」
「ほんとに!? やったー!」
野生のポケモンが出てこなくなりゴールドがマイに声を掛けると嬉しそうに両腕を上げて喜ぶマイ。
「まあ、俺のアドバイス無しでも出来るようになってりゃ完璧なんだけどよ」
「うー、そっか! 次はもっと頑張るよ!」
「その意気だ! お前は気合いならなんとかなるタチだからな」
褒められているのかビミョーなのだがマイは笑顔見せているので褒められたということにしよう。
「そういやマイ。気になってることがあんだけどよォ」
「んー? なに?」
ポケモンセンターへ帰る途中でゴールドが振り返ってマイを見る。辺りは赤い夕日に照らされていて山々が神々しく輝いているようだ。
「手持ちポケモンに空きがあるけどよ、ルギアでも手持ちに加えんのか?」
「んーん、ルギアは入れないよ。多分、わたしのいう事はは聞いてくれないと思うし……その内ゲットするよ! こんな感じで、えいっ!」
未だマイの手持ちに空きがあることに疑問を抱いていた。別に必ず六体揃わなくてはいけないわけでもないが、いればそれだけ心強いもの。
ゴールドに言われて焦る気はなくモンスターボールを草むらの中に投げ込んでみると……。
――カチッ
「オイオイオイオイ!? 今、カチッて言わなかったかボール!?」
「あれ!? 何かゲットしちゃった!?」
ポケモンがいたらしく野生のポケモンには運悪くなんとゲットしてしまった。
慌てて投げ込んだ方向の草むらに入って捜索すると何かが確かに入っていた。
「こ、こいつはガルーラだな。珍しいなーまぁ良かったんじゃねーの? ボールから出してみろよ。こいつもビックリしてんじゃないか?」
「そーだね。ガルーラ、出てきて!」
煙と一緒に出てきたポケモンは古代の怪獣を思わせる体格のポケモン、ガルーラ。ボールから出ても暴れることはなくトレーナーであるマイを見て瞬きをしている。
「うわっ!? なになにっどうしたの!?」
「おー、懐いてるな。よかったじゃねーか、可愛いポケモンで」
「そっそうだけど! 苦しいよー!」
ガルーラに抱きしめられてマイは手足をジタバタさせ抵抗するがガルーラは効果無し。我が子のように抱きしめている。
「親子ポケモンなー。ん? でもこいつ、子供いないぞ?」
「ぷはーっゴールド、ありがとう。苦しかったー」
ゴールドがガルーラからマイを取り上げてくれて一息ついているとおかしな点に気がついた。
親子ポケモンというのに子供の姿がない。ゴールドは何かピンときたのか顔をニヤつかせてマイに言う。
「ははーん、なるほどな。こいつ子供が巣立ったのか元からいないのかさておき、マイのことを子供だと思ってんだな!」
「ええっー! なにそれー! 別にイヤじゃないけど複雑だよー!?」
「ハッハッハッ! よかったなー! ま、これでパーティ完成ってこった!」
ボールに戻したガルーラをマイは眺めながら複雑そうに笑っていたのだった。