この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください
通常のギャラドスは青いギャラドスだが四人が目にしたものは真っ赤な、それこそ怒りに満ちている赤いギャラドスだった。
それに誘われるようにギャラドスは湖から顔を出してあっという間に、ギャラドスパークみたいなことをしている。アヤノにとってはパラダイスかもしれないが、それはキチンと調教されたギャラドスのみ。
赤いギャラドスは一体のみだが、他の青いギャラドスも怒りに狂っている様子だ。
「アヤ、行くぞ! ヤミカラス、空を飛ぶ!」
「ギャラちゃん、波乗り!」
「アヤ! 待たせたな!」
二人は恐怖に負けることなく戦場に向かう。それに続くように別の声も「空」から聞こえてきた。
「コウちゃん!?」
「コウ! 遅かったじゃないの! 何かあったの!?」
「ゲートで千円取られてた……」
「それはドンマイね、そんなことより手伝って! ギャラドス達を大人しくさせたいの!」
地上にいるマイ達に気づいていないコウはグライガ―に掴まって水上を飛び回る。
知り合い三人が必死になって戦っているのに黙っているゴールドではなく、ニョロトノを繰り出す。
「ニョたろう! 往復ビンタで目を覚ましてやれ!」
「ゴールド! お前もこっちに来て赤いギャラドスの捕獲を手伝え!」
「分~ったよ、ニョたろう往復ビンタ! マイ、ここで待ってろ!」
ニョロトノのキツい往復ビンタに顔が腫れるギャラドス達。湖に沈んでいくとホッと一息したいところだが、シルバーが上空からゴールドに声を掛けるとそれに応じる。
「ど、どうしよう。アルファじゃまだギャラドスには敵わないし、それに空も飛べないし……リューくんとピーくんの電気ショックだとアヤノのギャラちゃんも危ない……」
ただ一人、何もしていないマイが立っているとポケギアの様子がおかしいことに気づく。画面が砂嵐のようになっていてキチンと作動していないのだ。まだ新型のポケギアにそんなバグ機能なことは考えられない。
そして湖に視線を向けて、素晴らしい視力を持つマイは瞳に集中すると、一つの法則に気づく。コイキングが湖に跳ね上がると思えば、身体中を電波のようなものに包まれ、突然進化をしている、そんな法則が見えた。
(まさか電波とかで強制進化に苦しくて暴れている?)
「マイ、そんなところに突っ立ってると危ねえから下がってろ! ってオイ!?」
ゴールドが湖の外側からシルバーと共戦していながもマイを気にして声を掛けるが一歩遅かった。
「リューくん、アヤとコウちゃんの元に急いで!」
「マイ!? あんた危ないわよ! 逃げなさいって!」
「そうだぞ! これは遊びじゃない! 今そっちに行くから辛抱しろ!」
リューくんの細い身体から落ちないようにしがみ付いてアヤノのギャラドスに近寄る、他のギャラドスに襲われないように頭にピカチュウを乗せて危険を防いだ。ピカチュウの電撃は出来ないがノーマルタイプの技なら他に迷惑を掛けないので攻撃が可能なことに気づいたのだ。
そんな危ういマイをアヤノとコウが戦いから外そうとするが、マイが叫ぶ。
「このギャラドス達、苦しんでるんだよ! ポケギア見て! 電波がおかしくて使えなくなってる!」
「あっ本当だわ! どこかに電波をおかしくする中継点があるはず、それはどこ!?」
「あとコイキングが水上に跳ねると、何かに反応して強制進化させられるんだ! 無理に攻撃したら駄目だ!」
「コイキングが? そうみたいだな……。ゴールドさん達に言って来る!」
説明を喉から血が出るんじゃないかというくらい大声で済ませるとアヤノは中継点を探す、しかし見当たらない。緊急事態なのかマイの口調がいつもよりはっきりとしている。
コウは他のギャラドスに邪魔をされない空中を飛んでいるため赤いギャラドスを捕獲しようとしているシルバーとゴールドの元へ飛ぶ。
「ゴールドさん! マイがこの大量発生の謎を解きました! 説明はあとでするから、ポケギアを見てください!」
「ポケギア? ってなんだこりゃ!? おかしくなってんぞ!?」
「――! そういう事か」
グライガーが最高速度で二人の元へ着き、コウが年上の二人に指示を出す。ゴールドは意味が分からないようだったがシルバーが全てを察して、マイと似たような説明をゴールドに言う。
コウがポケギアを確認すると先程よりも砂嵐が酷くなっていることに気づく。
「分かった! 中継点はこの赤いギャラドスだ! 二人共捕獲を頼みます!」
「おー! コウ達は残りのギャラドスを頼んだ!」
原因が分かり、ゴールドとシルバーが協力してギャラドスを弱らせるために足りない攻撃力をを連係プレーで補う。
「おーい! 言ってきた! それから中継点が分かったから、もう少しのがんばりだ!」
「聞こえてたわよ、あの赤いギャラドスが中継点! マイ、踏ん張りなさいよ!」
「お、おー! 任せて! わ、わっ!?」
「フラグ回収早すぎるでしょ!? ギャラちゃん、できる!?」
コウが再びマイとアヤノの元へ。グライガ―の体力もそろそろ限界か。
ギャラドスの頭に乗っているアヤノは下にいるマイに励ましのエールを送る、負けず嫌いのマイは片腕をあげて答えるがそれがあだとなる。バランスを崩して湖へ落ちてしまったのだ。
「よし! 捕獲完了! ゴールド、三人の元へ行くぞ」
「言われなくても分かってら! マイ、どこだー!」
中継点であった赤いギャラドスを捕獲したシルバー。モンスターボールに収めると電波はなくなりポケギアの調子は戻った。
しかし苦しみは消えるわけではなく青いギャラドスは暴れている。ゴールドはすぐにマイの元へ走ったが姿が見えない。
「あ? アヤノとコウはどこだ……?」
空中にコウの姿はない。湖にアヤノの姿もない。そしてマイもいない。
「マイー!! 返事しろー!」
『ゴールド!』
「エーフィ!? お前、マイはどこだ!? というか会話してる!?」
ギャラドス達を気絶させて大人しくさせつつマイ達を探すと、聞いたこともないような鈴を転がしたような声を聞く。それは、エーフィだった。
『今はのんびり説明してられないけど、ざっというならあなたを認めた、だからこうして意思疎通ができてるわけ』
「あ、そうか確か……認めたトレーナーにはきわめて忠実ってこういう意味かよ! そんなことよりマイは!?」
ごくりとツバを飲むゴールドとシルバーに、エーフィが事実を述べた――。
ポケモンと会話できたら楽しそうですが、もっと早く回復しろとか言われそうで怖いですね。