第71話 怒りの湖[前編]

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 チョウジタウンに無事着いたゴールドとマイは真っ先にジムを目指して街を探索、ポケモンセンターの真横に設置されていたので、宿を取った後ジムに行ってみると入り口に張り紙が貼ってあり、中に入れなくなっていた。

「えー! もしかしてお休み? ゴールド、これなんて書いてあるの?」
「なんだァ、何々……腰痛のためヤナギは入院中、だとよ」

 漢字が読めないマイに代わってゴールドが読んでやると、マイが盛大にため息をついた。せっかく急いで来たのに、その気持ちは分かる。
 チョウジタウンのジムを後回しにしてフスベシティに行こうとゴールドは44番道路を親指を指して示した。

「おーっと、俺の前には行かせないよ、坊ちゃん、お嬢ちゃん! チョウジタウン名物いかり饅頭はいかがかな!?」
「先に進みたいんですけど! ジムリーダーさんが帰ってこないといる意味がないし……」
「おー、いかり饅頭いいな! 二つくれ!」
「まさかの裏切り!? ねえ~ゴールド~」

 九月になって少しだけ肌寒くなっているのに半袖半ズボンを履いてサングラスを掛けている商売人に44番ゲートを塞がれてしまいマイは眉をハの字にして困りながらも通らせてもらおうとしているが、ゴールドがいかり饅頭を購入してしまった。

「毎度~! お嬢ちゃん、ジムに挑戦したいのかい? そろそろヤナギさんが戻ってくる頃だから観光でもしてみたらどうだい? 怒りの湖とかおすすめだけど~……最近様子がおかしいような……」
「え? 最後なんて言ったんですか?」
「まあ、マイ行こうぜ! いかり饅頭食いながらよ! ほら」

 饅頭を紙袋に入れてもらってゴールドは受け取り、さっそく口に運んでいる。商売人がおすすめしてくれた観光地「怒りの湖」に向かうことにしたのだが、どうも商売人のごにょごにょ言っていた言葉が突っかかるようだ。
 饅頭を平らげて、ゴールドはゴミ箱に紙袋を捨てる。マイも遅れながらも完食すると怒りの湖はこちら、のゲートを潜り抜ける。

「あれ、またゲートだ! こっちは草むらないし、ゲートの方行こうよゴールド」
「待てよ、なんか怪しいやつがいるぜ……あれは……」
「君達観光客かい!? あっちのゲートに行くと通行料取られるんだよ! 困った不良もいたもんだ!」

 いつもなら草むらの方へ行き野生のポケモンを見て行くマイだがさっさと観光したいらしくゲートを指さすが、ゴールドがゲート付近にいるイカニモな不良を見つける。
 そんな二人を見ていたチョウジタウンの住人が親切にも教えてくれた、面倒だが余計な巻き込みは御免だと渋々草むらへ足を運ぶ。

◆◆◆

「えっ暴れん坊のギャラドス!? 本当ですか、クリスさま!」
『ええ、そうよ。あとクリスさまって……まあいいわ。それで怒りの湖でギャラドスが大量発生しているらしくて何かあったかもしれないから調査してくれないかしら? シルバーっていう図鑑所有者もそっちに向かっているから。じゃあ、また』
「はい! ギャラちゃん、怒りの湖に空を飛ぶ! ついでにコウにも連絡して手助けしてもらいましょう!」

 モーモー牧場でのんびりしていたアヤノにクリスからの電話が。内容はパートナーでもあるギャラドス関係。放っておけるわけがなくすぐに怒りの湖へ。

「もしかしてシルバーさんでしょうか? 私はアヤノです、アヤと呼んでください!」
「……よろしく」

 マイ達よりも一足先に怒りの湖につくと、クリスに聞いていた情報通りのシルバーがいた。

(赤くて長い髪に、鋭い目つきに銀色の瞳、なんだかとっつきにくそうな人だわ。けど、クリスさんと友達なら大丈夫よね、それにこれは仕事! 私情は禁物! レッツゴーよ、私!)
(こいつ、さっきからコロコロ表情が変わってマイみたいなやつだな。あいつの同年代はみんなこうなのか……?)

 お互いのポケモンを見せ合って作戦を練ると、大量発生しているらしいギャラドスの元へ向かう。

「……あら?」
「……どういう事だ?」

 怒りの湖は怒ってはなく、他の言葉で表すなら黙りの湖。観光客や地元民が賑やかにピクニックなんかもしている。

「ゲッ! アヤノ!?」
「あらマイ」
「ゲッ! シルバー!?」
「む、ゴールド(なんだこいつ等言動が似てきているぞ……?)」

 アヤノとシルバーは湖を見つめていておかしな現象が起きないかと見ていると、後ろからマイの大きな声が。いつでも逃げられるようにつま先に力を入れる。ゴールドもゴールドでシルバーを見るなり、足の重心を移し替えて逃げる準備を。そんな光景を見てシルバーは複雑な気持ちになっていた。

「どうしてアヤノがシルバーさんとこんなところに? まさかででででー……と?」
「は? もっと大きな声で言いなさいよ?」
「なんでもないよ! ゴールド、行こう! 早く~!」

 ゴールドの袖を掴んで逃げようとすると、それより早く反応が帰って来たものが。
 「キャ~!?」「なんだこのギャラドスの大軍はー!」「こんなの聞いてないよぉ~ウワーン!」と湖にいた人々の叫び声が四人の耳に届く。

「アヤ」
「はい。クリスさまが言っていたのはこの事……。行きましょう、シルバーさん!」
「ああ。――!?」

 ゴールドはマイを庇うように後ろに下げてギャラドスの大量発生を目にする。マイが呑気に「これが観光の理由かぁ~中々おもしろいイベントだね~」なんて言っているが、間違ってもこんなのはイベントではない。
 シルバーはアヤノを静かに呼びかけ、それに応じる。二人が湖に向かってそれぞれのポケモンを放とうとした時信じられないものを四人は目撃する。

「「「「 赤いギャラドス!? 」」」」

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