緩やかな流れの川で、今日もヒトモシがプルリルに付き添われながら川下りで遊んでいるよ。でも、ヒトモシはいつもゆったりな流れに飽きてきたようで、速い流れに乗ってみたい様子。
プルリルがちょっと目を離した隙に、細い小さな船を普段は行かせてもらえない急な流れの方へ進めてしまいました。ヒトモシ、大丈夫?
ごうごうと音を立てしぶきを上げる流れに乗れたヒトモシは、スリル満点で楽しいや!と大喜び。もっともっと速くならないかな、なんて楽観的に考えているよう。
船がいなくなっていることにプルリルの♂が気が付くころには、もうかなりの距離をくだっていました。慌ててプルリルの♂は追いかけます。だって、その先には大きな岩があるのですから。
そんなことなどつゆしらず、ヒトモシははしゃぎながらどんどん下っていきます。ふと、川の流れが一瞬遅くなったような気がして顔を上げると、目の前に現れた大岩にぶつかって船は転覆、ヒトモシは川の中へ投げ出されてしまいました。
川は浅く小さなポケモンやニンゲンの子供が遊べるような深さでしたが、ヒトモシにとっては底なし沼のよう。あっぷあっぷ。必死に息をしようとしても、体の蝋が冷たい水に溶けだしてしまって、どんどんふやけてしまいます。
頭の炎まですっかり沈み、吸い取ったエネルギーがなくなってしまうのを感じながら、ヒトモシは後悔しました。プルリルの言うことをちゃんと聞いておけばよかった。付き添ってもらっていたのに、なんてことをしてしまったんだろうと。
とうとう体を保てるギリギリまで溶けてしまって、ヒトモシは消えてしまいそう。 もうゴーストの作ったおやつつまみ食いしません、ランプラーの言うこと聞きます、勝手に魂燃やしません。だから、だから誰か―――
その言葉、本当だな?
という声がどこかから聞こえたような気がしてハッと気がつくと、ヒトモシは洋館の暖炉前にいました。傍にはランプラーとシャンデラ、それから大きめの水槽に入ったプルリルの♂がいました。
まったくもう、あれほどプルリルから離れてはいけないと言ったのに!
と、怒るランプラーをシャンデラがまぁまぁとなだめます。
話を聞くと、どうやら溶けきる前にプルリルの♂が駆けつけてくれたらしく、ヒトモシを掬って船に乗せ、急いで戻ってきたのだとか。
事情を聞いたランプラーとシャンデラが大急ぎでエネルギーと魂を練り込んだ蝋を持ってきて、ぺちぺちこねこね体を作り直してくれたんだとか。 反省しているのかひどくしょんぼりしているヒトモシに、プルリルの♂は また遊ぼう。今度は離れちゃだめだからね。と言葉をかけてあげました。
ヒトモシはぱぁっと明るい笑顔になって、うんうんと頷くのでした よかったね、ヒトモシ。
きょうのおはなしは、これでおしまい