episode1 到着、ラクーア

しおりを挟みました
しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
読了時間目安:9分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

情報量多めです。質問などは感想で受け付けておりますので!
ラクーア。海辺が近く、漁港が賑わう町だ。名産はラクーア産の魚で作られたオイルサーディン。土産としても有名だ。

そこにルト達は到着した。
すぐに磯の香りが広がる。ミラウェルには魔術を応用した技術で、テレポート装置が作られている。各地に設置されたテレポートポイントへと瞬時に移動することが可能だ。この装置のおかげでアンノウンを迅速に対処出来る他、住民の避難もスムーズに行えるようになっている。
勿論、悪用対策も施されており、アンノウンや盗賊等は使えない。

「ラクーアですか、ここは休日などに訪れますね。魚が美味しくて、良くレストランに行きますよ」

ミリアンはニコニコとしながら、街をフラフラと進んでいく。シャルは怪訝そうな顔で

「今は休日じゃねーゾ。フラフラすんなっての。…ちなみに俺は魚料理は好きじゃねぇ!」

と叫んだ。ルトは二人を見て溜め息をつく。

「あのな、今はそんなのどうでもいいだろ。二人とも、詰所に行くぞ」

ルトは二人を呼び、詰所と呼ばれるミラウェルの集会所へと向かった。

………

「…お?ルトじゃん!おひさー!」

集会所に入ると、小さな四足のポケモンがいた。その近くに、魔女のようなポケモンが佇んでいる。

「久し振り、ラピ。バネッサもな」
「…ん、久し振り…だね」

その魔女のようなポケモンはニコっと笑い、頷いた。

ラピ。ラピリカ・サンダー。サンダースと呼ばれる種族のポケモンだ。階級は中級。ルトとシャルの同期だ。その隣のバネッサが、バネッサ・エトランジェ。同じく中級でムウマージという種族だ。
二人はパートナーで、ルト達と近い実力の持ち主である。

シャルはニヤニヤとしながらラピに近寄った。

「相変わらず甲高い声だねェ…子供かー?」
「アンタも相変わらずウッザイね!ルト、パートナー変更を奨めるよ!」
「…はぁ、お前ら会うといっつもそれだな。それに、パートナー変更しろって100%ラピの私情だし」

シャルとラピは仲が悪い。真っ直ぐ過ぎる性格のラピと曲がった性格のシャルが合う筈がないのだ。
バネッサはクスクスと笑っていた。

「フフ…仲良いね」
「「どこがだ!?」」

ラピとシャルは同時に言い放った。…息は合ってるな。

そんな中、ミリアンはそのやり取りを見て不思議そうな顔をしていた。

「えと…?中級の方ですか?」
「…ん?この子は?」

ラピ達もミリアンに気付いたようで、ルトに尋ねた。

「ああ、今日からパートナーに入ったミリアンだ。まだ下級ではあるが、優秀な兵士さ」
「…初めまして、ミリー・アンドリューと申します」

ミリアンは笑い顔で、深くお辞儀をしながら挨拶をした。

ラピとバネッサも続いた。

「アタシはラピ。ルト達の同期さ!よろしくね」
「…わ、私は…バネッサ、です…よろしく…」

バネッサはおどおどしていた。バネッサは人見知りが激しく、普通に話せるまでそこそこ時間が掛かるのだ。

………

「…んで、経過は?」

シャルは椅子に座り、ラピに尋ねた。
ラピは難しい顔をする。…何かあったのだろう。

「んー…アンノウンの目撃情報は結構あるっぽいね。この町に潜んでいる…のは間違いないよ。ただ、時間帯関係なしに目撃されてるのが気になるんだよね」

とラピは言う。
それもそのはず。アンノウンは各個体ごとに活動時間が違うからだ。上の連中の仮説だと、アンノウンがどの種類のポケモンと似ているかが関係している…という考え方だ。例えば、夜行性のポケモンと似ているアンノウンなら、夜に発見されている。
ほぼ100%だ。仮説と呼ぶには、十分過ぎる根拠になる。

そして、朝昼晩ずっと活動し続けるアンノウンはまだ発見されていない。そのことからラピは困っていたのだ。

「昼夜問わず活動出来るアンノウン…でしょうか?」
「いいや、違うな」

ミリアンの問いに、ルトはすかさず答えた。

「…2体だ。最低でも2体はいるってことだろう」
「なるほどねぇ、それなら目撃情報が多いのも頷ける。それ…に」

シャルは椅子に背もたれる。

「ラピ。その目撃情報…昼と夜とで姿が違うなんて話が出てないか?」
「…その通りさ。見た目がどうだったか…の質問の答えが昼夜毎にまるっきり異なってる。つまり、別の個体の可能性が高い」

ラピもそれに気付いていたようだ。
アンノウンの目撃情報があったせいか、この町の住民は外に出ることが難しくなっている。アンノウンは見つけたポケモンを拐いに来る。一度見つかれば訓練を受けてないポケモンでは逃げ切る事は不可能に近い。逆に言えば、見つからない限り無害だ。
…とはいえ、昼も夜も出掛けられないなんてのは生きてる以上不可能だ。
なので討伐をミラウェルに依頼したとの事だ。

アンノウンは神出鬼没で、活動時間を過ぎると消える。どう消えているのかは分からないが、ミラウェルではテレポートのように何処かからワープしたという仮説が立てられている。

「…室内だと…やりにくいな。外に行こう。俺が『探る』」

ルトはそう言い、立ち上がった。

「特性、だな?…ミリアン、一応ルトから離れんなよ。ルトの波動探知は…距離が長いほど集中しなきゃならねェ。この町全てを見るとなると…ルトは身動き一つ取れないからな。ルトを護衛するんだ」
「…了解!」

「バネッサ、私達も行くよ」
「うん」

全員が外に出た。

………

「さて…と!」

ルトは外に出た後に、大きく深呼吸をした。
集中する為だ。

「ルト、町の住民はほぼ室内にいる。私達が住民に呼び掛けたから、もし出歩いてる人がいても数人ってとこだろうね」
「ありがとう、助かる」

ルトはそれを聞いて安心した。
…ルトの波動探知は生物や物体の位置を地図のように客観的に見ることが出来る特性。例えるなら町の上空から下を映すカメラの映像のような光景だ。
頭の中に浮かび上がるその光景は、誰がどのポケモンなのかなんて分からない。生物の大きさや形からポケモンの区別は付くが、それがアンノウンかどうかは見ただけじゃ判別は出来ない。だからこそ他のポケモンが一ヶ所に、もしくは室内にいてくれると見やすいのだ。そして、それが不可能な場合は…『動き』で判断する。アンノウンの歩き方や仕草は、普通のポケモンとは違い挙動不審だ。その細かな動きから判断することになる。だが、この特性の強みは動きを見ることにある。大雑把にしか建物や生物は見れないが、動きは寸分の誤差もなく見れる。もし見る範囲が近ければ…ポケモンが動く瞬間の僅かな筋肉の揺らぎまでも分かる。それを見て予測し、攻撃等を避ける。前回のタイムアタックで使用したテクニックだ。

ルトはさも当然のようにそれを行うが…並大抵の集中力ではなかった。

「行くぞ、『波動探知』…!」

ルトの脳内に、耳鳴りのような音が反響する。そして、後頭部の房が青く光る。

…よし、見える。ラピの言う通り、住民は室内にいてくれているな。それを除き外にいるのは…俺達と、町の端にいる2人。
片方は…速いな、走ってる?もう片方は…それを追いかけている…。
っやばい…!

ルトは波動探知をやめ、全員に呼び掛けた。

「っ東の、町の端!アンノウンに誰かが追われている!」
「まじか…!ミリアンッ!テメーは飛べるから、上空から向かえ!他は走るぞ!」
「了解です!…『ライトウイング』!」

ルトの報告を聞き、シャルはミリアンに指示を出した。
ミリアンはすぐさま、特性を発動させた。
翼に光が集まっていき、翼が輝く。

「急ぎます!」

次の瞬間、ミリアンは一瞬にして上空へ飛び上がり、東へ飛んでいった。
…ライトウイング。翼を強化し、凄まじい速さで飛ぶ事が出来るミリアンの特性だ。

「俺達も向かうぞ!」
『了解!』

ルト達はそれを追いかけていった。

………

「ひっ、ひいぃぃぃぃ!!化物ぉ!!」

覚束ない足取りで逃げる若者、それを追いかけているのは、黒い靄。アンノウンだ。
アンノウンは尋常じゃないスピードで若者を追いかけ、若者は今にも倒れそうになりながら走る。

「もっ、もう駄目だぁ!たすけっ…!」
「…目標捕捉!『射撃球 (レールガン)』、設置!高速粉塵弾発射!」

若者の頭上にミリアンが現れ、空中に6個の球体を設置する。
その球体から、粉のように細かな銃弾を発射する。
追いかけていたアンノウンに当たり、アンノウンはその場から少し離れた。

「もう大丈夫ですよ、ミラウェルの者です!」
「たっ、助かった…」

ミリアンの言葉を聞き、若者はへなへなと地面に腰を抜かして座り込んだ。
ルト達も現着し、ラピが若者に近付く。

「さっ、避難を!しばらくは出歩いちゃ駄目だからね」
「はっ、はひ…」

若者は情けない返事をしながら、ラピと共に離れていった。
ルト達は武器を取りだし、アンノウンを見た。

「さぁて…目標は一体!狩るぞ!」

ルトは声を張り上げ、アンノウンへ走っていった。


メモ
・テレポートポイントを使うためには、名刺(ミラウェル関係者は必ず持っている)を使い、ログインすることで使用可能。名刺を持たない一般市民は、ミラウェル関係者と共にテレポートポイントに入れば転送可能。

・名刺には他に、種族 出身 年齢 武器の明細 階級 エトセトラ…などが載っている。ミラウェル内の施設を利用する際に認証確認としても使用される。

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想