試すは実力

しおりを挟みました
しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
読了時間目安:9分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

今更ながら、サブタイトルはその場で考えてます。
内容とちょっと合わないこともあるかも?
それではどうぞ
「お待ちしておりました。ルトさん、シャルさん」

ナイト姉と共に仮想戦闘室にたどり着くと、そこにはラティアス族の女性…つまり、ミリアンが佇んでいた。
シャルは不機嫌な顔をしながら、ミリアンに尋ねた。

「お待ちしておりましたー、じゃねぇよ。こっちに来るのは良いけどよ、せめて一言くれぇ連絡入れるのが礼儀じゃねぇのかイ?」
「…確かにそうですね、失念していました。申し訳ありません」

とミリアンは頭を下げる。シャルは口ごもる。
礼儀が無いわけではないんだな。…まだそう思うのは早計だが。

「とりあえずはじめまして、だな。俺はヴァンリル・トリアス。こっちはシャルドネリ・ルキウスだ。ナイト姉は…知ってるよな?」
「ええ。アンバル・シア・ナイトさんですね。私はミリー・アンドリューと申します。以後よろしくお願いします。…早速ですが」

唐突にミリアンは戦闘室の装置を弄り始める。ガラスで覆われた戦闘室内が、淡く光った。

「お二人で、アンノウンを狩ってみてくれませんか?タイムアタックとして」

ミリアンは戦闘室の調整をしていたようだ。戦闘室内には一人の影が出現する。黒い煙で覆われた、ポケモンのシルエット。アンノウンの見た目の特徴だな。あの姿は…ニドキング族と同じだ。

「タイムアタック…か。なるほど、実力を知りたいってことだな。構わないよ」
「おい、ルトやるのかよ?なめられてるのに…」

俺は快く引き受けたが、シャルは相変わらず納得していないようだ。

「だからこそだよ。タイムアタックで速攻ぶっ殺せば、認めるだろうしな」
「…ケケっ、確かにそうか。いいぜ、まずルト行ってこい!」

ミリアンはにやっと笑い、ガラスの一部に穴が開く。アンノウンがいる空間に入るための入り口だ。

「アンノウンレベルは3。標準ですね。準備はよろしいですか?」
「ああ、始めてくれ」

ルトはすぐさま中に入り、ミリアンがボタンを押した。たちまち空間が広がり、緑で埋め尽くされた草原に変わった。仮想地形に変化させたのだ。
そして、アンノウンが大きな音をたてながら、こちらに走ってくる。

「さて、と…!」

ルトは刀に手を添え、目を瞑る。するとルトの後頭部の房が淡い青色に光始めた。特性だ。

「…あれがルトさんの特性、波動探知、ですね?」

ルトがいる空間を映し出しているモニターを見ながら、ミリアンがシャルに尋ねる。シャルは頷いた。

「あぁ。武器と波長が合うことにより発動する特性…つまりはルトの能力だ。数キロ先の人物の動きまでも察知し、予測する。その対象が近ければ…あいつは無敵サ」

アンノウンの初撃は、右腕による殴打だ。ルトは目を瞑ったまま、それを簡単に避けた。そして、刀を抜刀する。

「…コアは…頭のが狙いやすい…!スァッ!」

そのままアンノウンの頭部に斬撃を打ち込み、スパッと頭部が真っ二つになる。そしてアンノウンの体がバラバラに消えていく。
終了だ。

ミリアンは、瞼を大きく開ける。
タイムは…わずか1秒だ。

「…凄い…!」

驚くミリアンの後ろで、シャルとナイトは静かにガッツポーズをした。

「…俺より遅いアンノウンなら、こんなもんかな。ミリアン、これで満足か?」

戦闘を終え、ルトはミリアン達の所へ戻ってきた。ミリアンは、ニコッと笑う。

「…えぇ…!流石ですね。他の中級の方に比べ、桁違いです。…次は、シャルさんにもお願いします」
「…あぁ、俺もか。わーったよ」

ルトに賛美の言葉を送った後、すぐさまシャルにもタイムアタックを促す。シャルは少しダルそうにしながら、戦闘室へと入っていく。

「んー、別にシャルがやる必要無いと思うけどなぁ」

とルトは呟く。そして、シャルの目の前に同じアンノウンが出現した。

「…それは何故です?」
「何故って…そりゃあ」

ミリアンが不思議そうな表情をしながら聞き、ルトは答えた。

「だって、俺は中級であいつよりタイムアタック早いやつ知らねーもん」

と同時に、シャルは槍を前方に投げ、その影の中に潜んだ。
槍はアンノウンに避けられたが、背後に槍が過ぎた瞬間、影の中から手が現れる。

「アバヨっ!」

その槍を掴み、アンノウンを背後から切り裂いた。
アンノウンは崩れ去り、影の中からゆっくりとシャルが戻ってくる。
タイムは、0,6秒だ。

ミリアンは、更に驚いた。

「0,6…!?こんなの、神兵でも早々いないんじゃ…」
「まぁ早いのと実力は同じじゃないけどな。それでも、シャルは…天才だよ」

ミリアンはその言葉を聞き、黙る。
そして、シャルが帰ってきた。

「どーよ、満足か?ミリアンよ」
「満足どころか…!最高のパーティーに巡り会えましたよ!私は!」

ミリアンは急に元気になりながら、シャルとルトの手を掴み、ぶんぶん振る。

「だーっ!?落ち着けよ!」
「あっ、ごめんなさい…はしゃいじゃいました」

ルトがミリアンを止め、チラッとナイトを見た。ナイトは頷く。

「そ、悪い子じゃないでしょ?ただ、自分が認めない人には例え先輩でも言うことを聞かないのよ。だからこそ、ルト達にミリアンを託された…のさ」

ミリアンは落ち着き、ルトとシャルの顔を見る。

「下級兵士、ミリーアンドリュー!私はあなた達に従います!よろしくお願いいたします!先輩!」

と、ビシリと敬礼をする。
ルトとシャルは、同時に溜め息を付いた。

………

「ところでよぉ、ミリアンのタイムはいくつなんだ?いくら先輩の実力を知りたいっつっても、自分もそれなりに出来ないとバカみたいだぜ?」

ナイト姉は任務があるそうで、途中で別れた。今は俺、シャル、ミリアンの三人で任務受付に向かう途中だ。そんな中、シャルはミリアンにタイムを聞く。
ミリアンはさっと名刺を取りだし、そこからホログラムデータを映し出した。

「タイムは3秒です。これより遅い人には従わないつもりでした!」

とニコニコと笑う。
3秒…俺らのが勝っているとは言え、下級兵士が持つタイムじゃない。現に俺が下級の時は6秒、シャルは3,6秒だったからだ。しかも、下級の中では優秀と呼ばれていた。
…なるほど、実力もセンスもあるな。確かに。

「…おいおい、酷いな。そんな調子じゃあ、恨みとか買ったんじゃないのか?」
「…サァ?どうでしょう?」

俺がそう聞くと、ミリアンはそっぽを向いてしらばっくれる。…図星か。

すると、歩いている先に、一人の影が差す。確か…中級の兵士の奴か。

「ミリアン!てめー俺に生意気な態度とった挙げ句、こいつらには従うのか!なめやがって!」

その大柄の体をした…カビゴン族の男は、ミリアンに突っ掛かる。
ミリアンは不服そうな顔をする。

「えーと…?誰でした?退いてくださいよ、邪魔です」
「てめっ!このアマ!」

と男はミリアンを掴もうとする。
…やれやれ。

俺とシャルは同時に、それを静止した。シャルはそのついでに警告する。

「…その辺にしとけよデブ。こいつはクソ生意気だが、今は俺らのパーティーなんでな」
「てめーらは…!ルトとシャルか!ケッ、武器でのしあがったような奴等が邪魔すんじゃねぇ!」

と男は俺らの怒りのスイッチを押す。
…だが俺は手を出さない。シャルに任せる。

「…別に俺は殴りあってもいーんだぜ?そのデケェ面、もっとでかくしてもらいてぇならな…ケケッ!」
「っ…!ちっ、クソがっ」

シャルに気圧され、男は何処かへ行った。
ミリアンは不思議そうな顔をしていた。

「…あの人は前のパートナー候補でした。…弱かったので断りましたけどね」
「あいつは…まぁな。中級ではあるものの、目立った強さは無いな」

とルトは答える。
そうこうしている内に、任務受付に着いた。
中級になっての初任務だ。

「…ミリアンはまだ下級だし、とりあえず階級上げないとな。サポーターは功績が上げにくいし、ちょっと時間食いそうではあるが…まぁお前の実力ならすぐだろう」

ルトは最適な任務を探す。
…幸いまだ緊急の任務は来ていない。今受付している任務はアンノウン襲撃があった町の調査。もしくはアンノウンがここ最近で現れたという情報が入った町への出動。ここから近いのだと…『ラクーア』の町か。

「よし、決めた。任務内容はラクーア内にいるらしいアンノウンを調査、見つけ次第駆除しろ…とよ。俺らより先に出た班は…おっ、ラピとバネッサか」

ラピとバネッサは俺らの同期だ。実力も近い。

「では、出動ですね?」

とミリアンは意気込む。ルトはすぐに任務許諾し、武器を腰に装備する。

「さて、行くぞ!シャル!ミリアン!」
「オウ!」
「ええ!」




episode1、ラクーアの町
一言メモ
・特性とは、対アンノウン武器を所持することで引き出される超能力。引き出される能力は、基本的にポケモンごとに違い、選べない。シャルの武器は持ち主が誰であろうと同じ特性を引き出してしまう。何故そんな武器が出来てしまうのかは製作者にも分からない。

・任務とは、ミラウェル内でのお仕事。任務の難易度や任務への貢献度により昇格へのポイントが貯まっていく。階級が上がれば、その分給料も増えていく。任務内容は殆どアンノウンに対する物ばかりだが、町の警備や用心棒などの任務もある。

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想