武器職人
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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください
続けてガイラルサイド。どうぞ!
しばらくガブリアスが暴れた後、辺りはすっかり荒れていた。
潜んでいた神の支配者の兵士は、一人残らずガブリアスに襲われ、全員逃げていった。ガブリアスは溜め息をする。
「ふう…。結構いたな」
「暴れるねぇ。なんか久々に見たな」
肩を回しながら座ったガブリアスに、オーダイルが腕を組みながら言った。 ガブリアスはオーダイルに少し頭を下げた。
「…すまないが戦いはまた今度だ。マニューラにある大事な頼みをしてるからな」
「マニューラに…?そんなに危険な事なのか?」
ガブリアスは唸る。
「そうと決まった訳ではないが…。生半可な事じゃない。お前も来てくれ」
こくりとオーダイルは頷き、早歩きでマニューラがいる裏路地めざして歩いていった。残念ながら既にマニューラは集合場所に向かっていたのだが。
ー数分前。
「オーラブレードか…。久々に聞いたね。今は誰が使ってるんだい?」
コジョンドと名乗ったその武器屋の店主らしき人は、懐かしそうに頷いた。マニューラは近くの椅子に座り、答える。
「今はルカリオっつう青年だよ。オーラブレードを作ったのはアンタなんだよな?」
コジョンドは腕を組み、苦笑いをする。
「…うん。僕もだよ。年代によっては僕のじゃないかも。先代かもね」
マニューラの質問に答えたコジョンドは、店のカウンターにある錆びた剣を手に取り、マニューラの前に置いた。
「僕が作ったオーラブレードは、この剣がモチーフなんだ。元は先代の作った物で、もう大分錆びちゃったケド」
その錆びた剣をマニューラは手に取り、じっくり見る。
「…確かに形は似てるね。んで、この剣もオーラブレードなのかい?」
マニューラが剣をまた床に置き、質問する。コジョンドは頷く。
「そうみたいだね。かなり古い物だよ」
そう答え、剣を元の位置に戻した。
「ふーん。じゃあ、最後の質問」
マニューラは一言貯めて、
「オーラブレードをどうやって作ったの?あんな変異武器、生半可な作り方じゃないはず」
その言葉を聞き、コジョンドはヒラヒラとした腕を組み、考える素振りを見せた。
「どう作ったか…ね。これを聞いてどうするの?」
コジョンドが腕を組んだままマニューラに聞いた。マニューラは頭を掻いた。
「別に、たいした意味じゃないよ。ただ、作り方が分かればルカリオの助けになるかもしれない。だから、言ってしまえばオーラブレードの力の出し方が分かれば良いのさ」
微笑を浮かべながらマニューラが言った。 コジョンドは苦い顔をする。
「ふむ…。教えると悪用されかねない程、強力な力が出せる。君かそのルカリオって人が信用出来るのなら教えてもいいけど…」
そしてコジョンドはマニューラに視線を向けた。重要な事なので、コジョンドの目は鋭い。
「う~ん…、証明しろと言われてもね…。どうしようか」
マニューラは自分達が悪用しないのは分かっているのだが、それを証明出来ず、唸る。
それを見てコジョンドは腕を組み、目を瞑って考えだした。
「そうだね…。じゃあ、ある武器の試しをさせてよ」
不意にコジョンドが言った。マニューラは唖然とした顔で
「武器?武器と私の悪用しないって根拠になんの関係が?」
と言った。
確かに武器で何かを証明する事など聞いた事が無い。マニューラもそうだった。
だがコジョンドは直ぐに武器屋の奥に入って行き、沢山の剣や槍等の武器がある倉庫らしき場所を探し始めた。マニューラは溜め息をついた。
「どこだどこだ~…、あった!」
コジョンドが喜びながら持ってきた武器は、片手で持てそうな小さい斧だった。
不思議な模様の入った木材が斧の持ち手に使われており、ただの斧ではないことは容易に分かった。
「これは…?」
「これは『真の斧』(まことのおの)。嘘か真実かで使いやすさが変わる変異武器さ」
コジョンドがマニューラにそれを握らせ、マニューラはその斧をまじまじと見る。
「へぇ…。それで?私はどうしたらいい?」
とマニューラはその斧をあちこち触りながら言った。 コジョンドは笑う。
「まず、僕が質問した事に自分が思っている事と真逆。もしくは嘘の答えか行動をして。いくよ!」
コジョンドがどんどん話を続けていき、マニューラは少し焦りながら頷いた。
「じゃあ言うよ!『右手を上げて』」
マニューラは言われた通りに右ではなく左手を上げた。
すると、斧が急に重くなり、マニューラはバランスを崩して倒れた。
「うっ!?」
直ぐにマニューラは立ち上がったが、斧を持ち上げる事が出来ない。とても重くなっていた。マニューラは唖然とする。
「これは…?」
「成功だね!その武器、試作段階だったけど、いい出来栄えだ!」
笑いながら喜ぶコジョンドを見て、
「なるほど。嘘や真逆の言葉や行動をすると、斧が重くなり、使い物にならなくなるんだ…」
とマニューラが納得しながら言った。
「そうだよ!だからそれを持ってきたのさ。嘘発見器としてね」
コジョンドは嬉しそうに笑いながら言った。自分が作った物が成功したのだから当たり前かもしれないが。
「た、確かに今の状況なら使える物だけど、戦闘ではどう使うの?敵に質問してもらうのもどうかと思うし」
マニューラが戸惑いながら言った。
「ああ。自分で言えば良いんだよ。自分で言い、自分で答える。自問自答だね。使い勝手が良い時間は約15分間だし。重くなるのは一分間だけだけど」
「へ、へぇ…」
マニューラは嬉しそうに言うコジョンドを見ながら苦笑いをした。
「うん。斧がとても使いやすくなったね…。じゃあ君が悪用する危険は無いって事だね!」
悪意が無い事を無事証明出来たマニューラを、コジョンドは納得してくれた。
「本当かい?良かった…。じゃあ『オーラブレード』の事、話してくれる?」
マニューラが真面目な顔でコジョンドに問う。コジョンドも笑わずに「分かった」と返事した。
「さて、じゃああの武器の基本説明をするね」
コジョンドは顔をマニューラに無言で向け、マニューラは頷いた。
「ん。じゃあ五つ説明するよ。実際の所、作り方は分からないんだ。ただ真似ただけだからね。だから、ちょっとしたマニュアルを説明するね。『第一』《オーラブレードは感情が高ぶる事でその剣が持つ性能を格段に上げる変異武器である》」
「『第二』《感情で上がる性能は感情の種類によって変わる。基本的に怒りや覚悟が一番性能が上がる。そういう場合のみ剣が青白く光輝き、魔力を帯びる。この時に帯びる魔力には種類が無い。つまり全ての種類の魔力が込められている》」
「ここからが重要だよ。『第三』《怒りや覚悟で発動した魔力は剣から自分へ吸収でき、剣は普通の状態に戻るが、吸収した肉体は一時的に誰にもついていけないほどのパワーを出せる》」
「『第四』《当然オーラブレードから引き出せる限度がある。だがオーラブレードの力を出しきらずに殆どの肉体には限界が来る。つまりオーラブレードは少し力が残ったままになるのだ》」
「ラスト!『第五』《オーラブレードの力は限りなく多い。肉体に力を注ぎすぎると肉体は壊れ、何が起きるか分からない。必ず注意して使う事。それが絶対条件だ》」
コジョンドが何も見ずにスラスラとオーラブレードの説明をした。
言い方からして、オーラブレードを買った人にその事を言っているようだ。
「ふーん…。ただ力を発するだけじゃないんだね…。でも悪用されることは無いんじゃない?肉体に宿せる力は限りがあるみたいだし」
「僕も最初はそうだと思ってた。だけど、ある人が馬鹿な考えで悪用をしようとしてね…。僕が事前に止めれたから良かったけど」
「馬鹿な考え?一体どうやって…」
コジョンドは少し黙った。少し苦そうな表情を浮かべ、話し出した。
「単純だけど、自分の限界を超えた力をオーラブレードから自分の肉体に注ぐために、紅き目の所有者になろうとしたんだ」
マニューラはそれを聞き、サーナイトの話を思い出した。コジョンドはそのまま話を続けた。
「紅き目というのは、言わば力の器なんだ。そして、紅き目は宿主が死ぬと近くの人に乗り移る。それをしようとした。…言ってしまえば、それだけで強くなれるし、受け止める器が増えるのさ」
「だからその人は紅き目の宿主を殺して、それを実行しようとしたんだ。自らを強くするだけのためにね」
コジョンドはまだ苦い表情を続けている。マニューラは質問をする。
「で、どうやってそいつを止めたんだい?」
「ああ。戦って止めた。勿論オーラブレードも取り戻したよ」
コジョンドは腕を組む。
「そしてあいつ…。『ゴウカザル』はこう言った」
「『俺は誰にも負ける訳にはいかねぇんだよ!!どんな手を使っても、俺は強くなってやる!』ってどこかへ行ったよ。どうして彼はあんなに力に対して貪欲だったのかは、分からなかったケド…」
コジョンドは少し遠い目で話した。マニューラは眉をひそめる。
「ゴウカザルか…。何だか、どこかで会いそうだね…」