第3話 裏路地の少女

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「よかった…気が付いたのね。」

倒れていた少女は、ゆっくりと、上体を起こした。
痛みが走ったのか、腕を抑える。

「あ、あれ?ここは・・・! パチリス!しっかりして!」

抱いていたポケモン、パチリスに声をかける。すると、パチリスも目を覚ました。

『チ…チパ?』

どうやら、パチリスも無事のようだ。
安心している少女に、サトシが声をかける。

「君、大丈夫か?」
「あ、はい。助けてくれてありがとう。」

少女は立ち上がった。
紺色の長そでワンピースと、肩からかけている淡いピンクのメッセンジャーバッグは、変わったデザインをしている。
また、少女の髪は白く、ポニーテールにしていても腰にとどくほど長い。

「元気そうで何よりだよ。でも、念のため病院へ行ったほうがいいんじゃないのかい?」

デントが話しかける。

「え!と・・・(病院て…いけるもんなら行きたいんだけど…)
 あ、大丈夫よ!かすり傷だし、なめておけば、治るわよ。」
「「「え・・・」」」

少女の傷は、かすり傷とは言い難かった。ところどころ血が出ているし、火傷もしている。
なめるだけではとても治りそうもない。

「じ、じゃあ!助けてくれてありがとう。私はこれで!」

パチリスを抱えたまま、そそくさと裏路地の奥に進む少女。
そんな少女を、デントが呼び止めた。

「君!そっちは行き止まりだよ!」

一時停止ボタンを押したように動かなくなる少女。どうやら、恥ずかしさのあまり止まってしまったようだ。

「・・・そ、うだったわ・・・ね!」

引き返そうとした少女は、地面に転がっていたブロムヘキシンの空き瓶をふんで、転んでしまった。
新たに、傷が増える少女。

「と、とりあえず、ここから出ましょ。」

アイリスの扇動によって、四人と三匹は、裏路地から出ることにした。

道に設置されているベンチに、彼らは座った。
病院に行くことを少女が断固拒否したため、ここで傷の応急処置をするためだ。
カバンから出した救急箱で、手際よくパチリスの処置をする少女に、サトシたちは圧倒された。

(こんなに手際よく、speedyに治療をできるなんて…)
(以外にできる人なのかしら?)

少女はパチリスの処置が終わり、今度は自分に取り掛かる。

「ところで、君、名前は?」

少女に、名前を聞くサトシ。

「…人に名前を聞くときは、まず自分から名乗ったら?」
「…わかったよ。オレは、マサラタウンのサトシ。こっちは、相棒のピカチュウ。」
『ピカ、ピカチュウ!』

サトシが自己紹介したので、アイリス、デントと続く。

「あたしはアイリス。この子は、パートナーのキバゴ。」
『キバキバ。』
「僕はデント。ポケモンソムリエをしているよ。」

少女は、聞いたことがある名前を、目の前の人物から聞いて驚いた。

(マサラタウンのサトシ君?この子が?)

無意識に、サトシの顔を覗き込む。

「あの、君は?」

急に自分の顔を覗き込まれ、戸惑いつつも、サトシは名前を聞いた。

「あ、ごめんね。(そうよね。この子が、あのサトシ君だと決まったわけじゃないし…。)
 私の名前は、ヒトミ。この子はわたしのパートナー、パチリスよ。」
『チパチパ!』

ヒトミ…デントは、この名前をどこかで聞いたことがある気がした。

「ねぇ、あなた達は、これから、どこに行くの?」
「バトルクラブに行くところだ。ヒトミも、一緒に行かないか?」

ヒトミは、少し考えた。

(ポケモンやトレーナーが多く集まるところに行けば、何か情報が得られるかもしれないわね。敵の動きもつかめるかも…。)

「ええ。いいわよ。」

こうして、彼らはともにバトルクラブへ向かった。



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