No.62 † 天空の大穴 †

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キリキザンの群れをある程度討伐したことを、エルセアのポケモン協会で報告。
報酬として『 特性パッチ 』をいただき……御厚意で、いつもの黒塗りの車でハイルドベルグの入り口付近まで送ってもらった。

アーシェ:「さてと……留守にした分、役目を果たさねぇとな。」

自然のアーチを通り、担当拠点併設の庭が見える処まで戻ってくると

ノーマ:「あっ!アーシェさん、お帰りなさい。」

庭でポケモン達の面倒を見ていたノーマが私に気付き、駆け寄って来た。

アーシェ:「ただいま、ノーマ。メゼスはお店の方?」
ノーマ:「はい。アーシェさんが不在の間も、常に満席でしたよ。」
アーシェ:「おぉ!そうだよなぁ、メゼスのお菓子、美味しいもんなぁ。ちなみに、挑戦者の方は?」
ノーマ:「何とか私のポケモン達で対応できましたが、バトル専門のアーシェさんやシャロンさんが不在だと、やっぱり厳しいですね。」
アーシェ:「あぁ……まぁ、その辺は申し訳ないと思ってる。シャロンは……まぁ、そのうち帰って来るだろうけど、また役員さんからの依頼で此処を留守にするときは、引き続きよろしく頼む。」
ノーマ:「はい。よろしく頼まれました。」
アーシェ:「…………で、その留守を任せている間に、ハヤシガメが見事に進化したと。」

私は庭の一角でのんびりと過ごしている、ドダイトスへと視線を向けた。


【 ドダイトス 】
たいりくポケモン / 高さ:2.2m / 重さ:310.0kg / 草・地面タイプ
森の奥で群れを作って暮らしている。清水を求めて山野を巡る。
小さなポケモンたちが集まり、動かないドダイトスの背中で巣作りを始めることがある。
ドダイトスの背中で生まれて、ドダイトスの背中で一生を全うするポケモンもいる。
大昔の人々は、大地の下には巨大なドダイトスがいると空想していた。


ノーマ:「そうなんです!頼りがいが増しましたよ!それに、あの大きさですので、遊びに来る子ども達からも人気なんですよ。」
アーシェ:「確かに……いろんな意味で頼りになりそうだな。」
ノーマ:「アーシェさんの方は?仕事とは違うところで、何か成果はありましたか?」
アーシェ:「あっ、そうだ。ノーマ、私のポケモン達を集めてくれないか?」
ノーマ:「わかりました。……でも、その必要は無いかと。」
バシャーモ:「( `・ ∀ ・) !」

私に気付いたバシャーモが、他の私のポケモン達に何かを伝える様な合図をし……それがポケモンからポケモンに伝わり
柵の所まで、私のポケモン計11匹が集まって来た。

アーシェ:「ははっ、ただいま、皆。ちゃんとノーマの言うことを聞いて、良い子にしてたか?」
ノーマ:「はい。私の監督が行き届いていない間は、バシャーモとハガネールがアーシェさんの代わりに、他の子達の様子を見てくれていましたよ。」
アーシェ:「そっか。お前達は特に古参だもんな。ありがとう、2匹共。」

私の呼びかけに、バシャーモとハガネールが満足そうに頷いた。

アーシェ:「それと、皆に紹介したい子達が……出て来い!」

私が投げたボールが開き、ドドゲザンとカルボウが姿を現した。

ノーマ:「えっ?あれ?その全身刃物みたいなポケモンは……もしかして、キリキザンの……」
アーシェ:「あぁ。ドドゲザンっていうんだ。私もキリキザンが最終形態だと思ってたんだけどな……まだ進化先があったみたいなんだ。それと、カルボウ!この子は、コマタナの群れに襲われていたところを助けたら、懐かれた。」
ノーマ:「そうでしたか。うふふ、また賑やかになりますね。」
アーシェ:「皆も、引き続きドドゲザンと……新しく仲間になったカルボウとも、仲良くしてやってくれ。」

私の呼びかけに、私達のポケモン達が元気良く頷いてくれた。
ドドゲザンとカルボウは庭の内側に入り、すぐに他のポケモン達と楽しく過ごし始めた。

アーシェ:「とりあえず、報告はこんなところかな。」
ノーマ:「そうですね。他には……あっ!」
アーシェ:「どうした?ノーマ。」
ノーマ:「実は、アーシェさんの留守中に、アーシェさんを訪ねて来られた方が……」
アーシェ:「私に?挑戦者ではなく?」
ノーマ:「はい。アーシェさんの不在を伝えたら、ハイルドベルグのポケモンセンターで待機していると……」
アーシェ:「そっか。誰かは判らねぇけど、ずっと待たせてるのも悪いし、今からちょっとポケモンセンターに行ってくるよ。」
ノーマ:「あっ、それなら大丈夫です。」
アーシェ:「え?何で?」
ノーマ:「その方、アーシェさんが戻って来られる少し前に、メゼスさんのお店へ行かれましたから。」
アーシェ:「そっか。メゼスにも帰宅したこと伝えたかったし、そっちに顔を出すよ。ありがとな、ノーマ。」
ノーマ:「はい!」

私は担当施設の前を素通りし、その先にあるメゼスのお菓子屋さんの方へ向かった。
そして、オープンテラス席で1人くつろぐ、とてもよく見知った人物の姿を確認する。

アーシェ:「来客ってのは、あんただったのか。ティア。」
ティア:「あら!アーシェちゃん。戻って来たのね。うふふ、お仕事お疲れ様。」ニコッ
アーシェ:「あぁ、まぁな。」ニコッ
メゼス:「ティアさん。御注文の品をお持ち……あら!アーシェさん。お帰りなさい。」
アーシェ:「ただいま、メゼス。いきなりで悪いんだけど、私にもティアと同じ物を頼むよ。」
メゼス:「はぁい。」

メゼスに注文した後、ティアと向かい合う形でテラス席に着く。

アーシェ:「ライブキャスターで頻繁にやり取りしてたから、あんまり久しぶりって感じはしねぇな。」
ティア:「うふふ。そうね。」
アーシェ:「で?このフィリアに来れたってことは、仕事の方は一段落ついたのか?」
ティア:「えぇ。それで、遅くなったけど、このフィリア地方のポケモン協会の方々と、各地方の代表に選ばれた方々に挨拶回りをして……最後にアーシェちゃんの所に来たのよ。1番最後なら、どれだけゆっくりしても問題無いから。」
アーシェ:「そっか。わざわざ悪いな。」
ティア:「いいのよ。それにしても……アーシェちゃんの担当する施設は、とっても素晴らしいわね。メゼスさんのお菓子は美味しいし、あのお庭に遊びに来る男の子達は可愛いし!」
アーシェ:「…………男の子が可愛いのは、重要事項なのか?」
ティア:「そのお庭を管理してくださってるノーマさんに訊いたのだけど、アーシェちゃんがゲットしたポケモン、随分増えたのね。」
アーシェ:「あぁ。ティアと旅してた時は5匹だけだったもんな。その時の……バシャーモとハガネール以外の子も、無事に進化してくれたし。」
メゼス:「アーシェさん、お待たせしました。」
アーシェ:「おっ!ありがとう、メゼス。」

とりあえず、会話を中断し、メゼスが持って来てくれたケーキとお茶を堪能する。

ティア:「実はね、アーシェちゃん。今回、私がフィリアに来たのはアーシェちゃん達に挨拶回りをするためだけじゃないの。」
アーシェ:「ん?というと?」
ティア:「少し前の夜にね、このフィリア地方の上空に、大きな亀裂が複数目撃されているの。」
アーシェ:「夜空に……亀裂?」
ティア:「知らなかったの?」
アーシェ:「その時間帯にもよるけど……ノーマもメゼスも夜は早く寝て、朝早くから起きて作業するし、私は夜空を見上げて星々に思いを馳せたりするようなロマンチストじゃねぇからな。読書してて気付かなかったか、単純に寝てたんだと思う。」
ティア:「そう。あのね、その亀裂というのが、アローラ地方でも確認されている現象でね。その亀裂から、別世界の生き物が襲来しているのよ。」
アーシェ:「別世界の生き物って……ポケモンじゃねぇのか?」
ティア:「一応、モンスターボールや、彼等を捕獲するために作られたボールがあるから、ポケモン……という認識で問題無いとは思うのだけれど、専門の期間や、その生き物を認知した人達からは、ウルトラビーストと呼ばれているわ。」
アーシェ:「ウルトラビースト……で、フィリア地方でも同じ現象が確認されたから、そのウルトラビーストって奴等が降りたっていないか、確認しに来たわけなんだな。」
ティア:「えぇ。もし、ウルトラビーストの姿を1匹でも確認したら、グラードン同様に報告しないといけないのよ。『 やっぱり、ウルトラビーストが来てました 』ってね。」
アーシェ:「なるほど……ちなみに、その話をポケモン協会の役員さんには?まぁ、既に状況を把握してはいるだろうけど……」
ティア:「そうね。役員さん達の方で状況を把握している状態で……今はまだ姿が確認されていないのか……アーシェちゃんが担当している此処以外で確認されて、他のエリアマスターさんが対処に駆り出されているのかは判らないけど、そのうちアーシェちゃんにも役員さんから連絡が来るかもしれないわ。」
アーシェ:「わかった。それがいつになるのかはともかく、緊急時に動けるようにはしておくよ。」
ティア:「えぇ。私もしばらくこのハイルドベルグを拠点に、色々調べるつもりよ。」
アーシェ:「そっか!何か遭ったら、いつでも頼ってくれ。友達なんだし、時間を見つけて手伝うからさ。」
ティア:「うふふ。えぇ、その時はお願いね、アーシェちゃん。」

ケーキを食べ終えて会計を済ませたティアと別れ、私もメゼスにお金を支払い、担当施設へと戻る。

アーシェ:「ウルトラビーストか……」

当然手元にあるポケモン図鑑には、その情報は記載されていない……
まぁ、このままずっと遭遇しない可能性もあるわけだし、あんまり強く意識する必要も無いか。

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