No.61 † 群れの長 †

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その日、人類は全てを思い出した……わけではないが、フィリア地方の空に、幾つか次元の切れ目?とでもいうのか
数ヶ所で空に穴が空くという怪奇現象が起こった。

***

フィリア地方中央大都市・エルセア。

この日、私は件の怪現象とは違う要件で、ポケモン協会本部へ赴いていた。

アーシェ:「……で?私は今回、何で呼び出されたんですかね?不祥事をした覚えが無いんですけど?」
協会役員:「解っていますよ。今回、アーシェさんを御呼びしたのは、尋問するためではありません。アーシェさんは確か……コマタナをゲットされていましたよね?」
アーシェ:「あぁ。つい先日、キリキザンに進化しましたよ。」

私はそう言いながらボールを軽く投げ、キリキザンを呼び出す。

協会役員:「おぉ!おめでとうございます。ちなみに、アーシェさん。そのキリキザン……元、コマタナをゲットした場所を覚えていらっしゃいますか?」
アーシェ:「え?あぁ、うん。確か、このエルセアから少し南下した処にある岩山だったはずだ。」
協会役員:「やはり……」
アーシェ:「その岩山で、何か遭ったのか?」
協会役員:「はい。実は……その岩山で、キリキザン率いるコマタナの群れが大量発生しているのです。」
アーシェ:「? ポケモンの大量発生なんて、よくあることじゃねぇですか。」
協会役員:「事象だけ見ればそうなのですが……何というか、普通より凶暴……攻撃的とでも言いましょうか。ポケモンだけでなく、トレーナーまで負傷する事態にまで発展しているのです。」
アーシェ:「マジで!?ただ、あの岩山の管轄っていうのか?問題が発生した時に対処に出向くのは、このエルセアの代表であるアリアか、最南端代表のグヴェンのおっさんだろ?……まさか。」
協会役員:「お察しの通りです。アーシェさんに御声掛けする前に、御二方にキリキザンの群れの調査・対処を依頼されたのですが……その時、持参されたポケモンとの相性が悪かったのか、返り討ちに遭われて……」
アーシェ:「あっちゃ~……」

代表に選ばれたアリアの所持ポケモンや、グウェンのおっさんの所持ポケモンの、パートナーポケモン以外どんなポケモンが居るのか知らないから何とも言えないけど……

それでも、代表に選ばれるほどの実力者のポケモン相手に後れを取らないとは……
野生のポケモンながら、やるなぁ。

協会役員:「アーシェさん。申し訳ありませんが、キリキザンの群れの調査をお願いしても宜しいですか?」
アーシェ:「そこまでの事態になってるんなら、放置もできねぇだろ……わかった。どこまでできるか分からねぇけど、やれるだけやってくるよ。」
協会役員:「ありがとうございます。」

✝✝✝

というわけで、私は今、コマタナをゲットした岩山を訪れていた。

アーシェ:「キリキザンの群れか……案外、お前がコマタナだった時に、お前を置いて逃げた奴等が進化したのかもしれねぇな。」

隣に居るキリキザンに話しかけながら登山していると、何やらガチガチと金属を打ち鳴らす音が聞こえてきた。

アーシェ:「……近いな。気を引き締めていくぞ、キリキザン。」
キリキザン:「(。`・ ω ・) ” 」

金属音がする方へ行ってみると、案の定、キリキザン率いるコマタナの群れが1匹のポケモンを襲っていた。

アーシェ:「おいおいおいおい!これがお前等の習性だってことは理解してるけど、寄ってたかって1匹のポケモンを集中的に攻撃するような行為は、やっぱり見過ごせねぇ!キリキザン、瓦割り!」
キリキザン:「( `・ ∀ ・)ゞ 」

私の指示を受けたキリキザンが腕を大きく振り上げ、群れのボスであるキリキザンの頭部へ勢いよく手刀を振り下ろした。

キリキザンの攻撃を受けた群れのボスのキリキザンが、白目を剝いた状態で仰向けに倒れ……配下のコマタナ達が慌てた様子で逃げて行った。

アーシェ:「まったく……とりあえず、このポケモンの手当てをしねぇとな。」

私は荷物の中から回復の薬を取り出し、このフィリア地方ではあまり見かけないポケモンを抱き上げ、薬を使用する。
回復したポケモンは私の腕の内から跳び下りると、元気に動き出した。

アーシェ:「ふふっ、あんまり危険な場所に近づくんじゃねぇぞ。さてと……私達はもう少し、岩山を見て……ん?どうした?キリキザン。」

ふっとキリキザンの方を見ると、キリキザンは何やら鋭利な刃物を手にしていた。

アーシェ:「何だそれ?そのキリキザンのパーツの一部か?ん~……まぁいいや。討伐した証として、そのまま持ってると良いよ。」
キリキザン:「(。`・ ω ・) ” 」
アーシェ:「よしっ!それじゃあ、この調子でもう少し頑張ろっか!」

それから……

アーシェ:「キリキザン、瓦割り!」
キリキザン:「( `・ ∀ ・)ゞ 」

キリキザン率いる群れを見つけては

アーシェ:「キリキザン、瓦割り!」

的確に4倍弱点を突いては

アーシェ:「瓦割り!」

群れを率いるキリキザンを打ち負かしていった。

キリキザン:「(; - ∀ -)ゞ」
アーシェ:「お疲れ、キリキザン。さすがに、ボスをこれだけ倒しておけば、しばらくの間はコマタナだけになるだろうな。」

まぁ、そのコマタナ達もいずれはキリキザンに進化して、同じことの繰り返しになるんだろうけど……
その時はその時で、また対処すれば良いか。

アーシェ:「協会に行って役員さんに報告しねぇと。キリキザン、ボールに戻ってゆっくり休んで……」

私がキリキザンをモンスターボールに戻そうとした瞬間、キリキザンの身体が青白い光に包まれだした。

アーシェ:「えぇっ!?これって、進化の……コマタナ系列って、キリキザンが最終進化じゃなかったのか!?」

光の中で頭の刃物が縦に大きく伸び、顔の前の方にも横長に刃物が出現し
頭部の刃物が重いのだろうか、中腰のような姿勢になると同時に、兜の下から伸びた長い毛に腰を下ろし……

光が掻き消え、キリキザンはドドゲザンに進化した。


【 ドドゲザン 】
だいとうポケモン / 高さ:2.0m / 重さ:120.0kg / 悪・鋼タイプ
大軍勢を率いて戦うが、難しい作戦は苦手なので、力で押して押しまくるだけ。
ドドゲザンに進化できるのは、大軍勢の頂点に 立った1匹のキリキザンだけなのだ。


アーシェ:「おぉぉぉ……まさか、こんな進化があったなんて……おめでとう!ドドゲザン!」
ドドゲザン:「(。`・ ω ・) ” b」
アーシェ:「それじゃ、このドドゲザンへの進化も兼ねて役員さんに……ん?」

ふっと足元を見ると、先程回復の薬を使ってあげたポケモンが、私達を見上げるように立っていた。

アーシェ:「お前、着いて来ちゃったのか!?……此処で会ったのも何かの縁だし、お前さえ良ければ、私達と一緒に来るか?」

私の問いに対し、そのポケモンは力強く頷いてくれた。

アーシェ:「よしっ!」

私が投げたモンスターボールが開き、そのポケモンを吸い込んで再び閉じると、空中でブルッと一瞬震えた後
岩の足場の上で1回だけ揺れ動いた直後にカチッ!と音を立てて、完全に停止した。

アーシェ:「ゲットしたものの、この子は初めて見るんだよなぁ……ちゃんと、情報は確認しておかないと。」

私はゲットしたポケモンの情報を、持参しているポケモン図鑑に載っていないか探してみる。

アーシェ:「………あった!この子だ。」


【 カルボウ 】
ひのこポケモン / 高さ:0.6m / 重さ:10.5kg / 炎タイプ
焼けた木炭に命が宿り、ポケモンになった。
戦いになると火力が上がり、摂氏1000度に達する。
燃える闘志で強敵にも戦いを挑む。
油分の多い木の実を好む。


アーシェ:「よしっ!名前は覚えた。出て来い、カルボウ!」

私は手の内にあったモンスターボールを投げ、たった今ゲットしたカルボウを呼び出す。

アーシェ:「すぐに名前を呼んであげられなくて、ごめんな。もう、覚えたから!こんな駄目駄目なトレーナーだけど、他の仲間達と一緒に支えて欲しい。これから宜しくな、カルボウ!」
カルボウ:「(。`・ ω ・) ” 」

既存のポケモンの新たなる進化、初見の新たな仲間を迎えた私は、キリキザンが率いる群れを一通り対処したことを報告するため
エルセアに向かって下山を開始した。

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