【TALE14】フリームスの惨劇

しおりを挟みました
しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
読了時間目安:12分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

<SIDE ピカチュウ>

ピカチュウ/廉太郎
「・・・グランド軍か。 ・・・奴らなら、南の方に逃げたんだと思います」
ドリュウズ
「南の方・・・。 ・・・一応は一旦撤退といった所か」
ピカチュウ/廉太郎
「そうですね」
ドリュウズ
「ああ。 ・・・だが、またすぐに、体制を整え直して攻めて来るだろうな」

メビウスが怪我人の搬送をしている間、俺たちはここで待機し、追撃して来る敵を待ち伏せする。

ポリゴン/アンディ
「・・・お兄ちゃん。 何だか、寒いね」
ピカチュウ/廉太郎
「・・・ああ」

それから、数分後の事。黒い煙を上げながら、飛空艇らしき何かが近づいて来る。

ドリュウズ
「・・・どういうつもりだ、俺たちに迂闊に近づきやがって」
???
「・・・大丈夫なのです、わたしは誰一人傷つけないのです・・・!」
ドリュウズ
「・・・戦う気がない、ってのか。 じゃあ尚更ここをどきやがれ」
???
「だから違うのです、どなたかお助けを、 ・・・なのです・・・!!」

目の前に着陸しようとする飛空艇から、身体を乗り出して助けを乞うポケモンの姿を確認した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その後、件のポケモンは、飛空艇もろども無事地上へと降り立つ。

ドリュウズ
「・・・しかしお前、名前は?」
???
「・・・わたしはデリバード。 この飛空艇で、商売に出すジャンクを運んでいたのですが・・・」
ポリゴン/アンディ
「ジャンク・・・?」
デリバード
「ええ。 エネルギー機関の、ばらばらの部品なのです」
ドリュウズ
「・・・エネルギー機関のメンテナンスか。 それなら早く、そうと教えてくれ」

その後、デリバードさんは、俺たちを飛空艇の中へ案内する。

ピカチュウ/廉太郎
「・・・ところで、俺たちもこの中へお邪魔して・・・?」
デリバード
「・・・お気になさらず、是非お入りください、なのです」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ポリゴン/アンディ
「・・・ところで、蒸気機関って・・・?」
ドリュウズ
「・・・炎エネルギー機関で起こした熱で、お湯を沸かして水蒸気を作る。
 そいつの圧力を使って、上手く動力を動かしてやるのさ」
デリバード
「・・・燃料になるエネルギーは、普段なら炎ポケモンの力を借りなくても安値で買える筈なのです。
 ・・・でも、3年前の戦争の頃から、急に出回る数が減っていて・・・」

戦争をする武装ギルドや、貴族のポケモンたちに搾取でもされているのだろうか。
・・・それは兎も角として、ドリュウズさんは飛空艇の動力の方へと駆け寄り、動力装置をいじる。

ドリュウズ
「・・・ピストンもクランクもしっかり動きそうだな。
 ・・・悪いが、試しにもう一回動力を立ち上げてくれんか?」

それから数十秒後。デリバードさんは動力を立ち上げる。

ドリュウズ
「・・・うむ、やはりそう来たか」
ピカチュウ/廉太郎
「・・・どうしたんですか?」
ドリュウズ
「そうだな。 ・・・やはり、給炭機の調子が悪いみたいだ。 少し待っていてくれ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ドリュウズさんはその後、慣れた手つきで給炭機の調子を整えてみせた。

デリバード
「・・・ありがとう、なのです。 これでまた、商売に飛び立てるのです」

しかし、そのすぐ後の事。

ユキメノコ
「・・・待ってくれ。 遠くにまた黒い煙が!」
ピカチュウ/廉太郎
「・・・グランド軍か、それなら俺が!」
ポリゴン/アンディ
「・・・僕も行く・・・!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

俺とアンディはフリームスの中心街へ向かう。
何か所か、既に火の手が上がっている場所もある。いつ燃え広がってもおかしくはないだろう。

グランド軍の兵士
「・・・街に何か所か火を放っておきましたので、移動の際には充分足元にお気をつけ下さい」
アギルダー
「ああ」

先ほどとはまた違う敵が近づいて来た。俺たち2匹は、改めて気を引き締める。

アギルダー
「・・・また2匹、邪魔者が増えたのですか。 ・・・ヘドロ爆弾!」
ポリゴン/アンディ
「レンお兄ちゃん避けて! ・・・冷凍ビーム!」

すると、敵は唐突に、逃げ惑う一般住民の方へと視線を向ける。
それに釣られて俺も、敵と同じ方向を向くと・・・。

アギルダー
「・・・毒びし・・・!」

逃げ惑うばかりか、身が竦んで逃げる事もままならぬ住民の姿が見える。

ピカチュウ/廉太郎
「毒びしのせいで、奴から逃げる事も出来ない・・・。 ・・・あいつ、良くも小癪な手を・・・!」

アギルダー
「・・・ベノムショック!!」

毒びしとベノムショックに成す術もなく汚染されながら、身動きの取れない住民たちはばたばたと倒れていく。

住民ポケモン
「ぐっ・・・!」「あなた・・・!」「もう無理、だ・・・」「あなた・・・!!」
「・・・あんた、大丈夫?」「うあぁっ・・・! ばあちゃん・・・!!」

アギルダー
「・・・あなたたちも苦しみ、もがきながら逝きなさい。
 ・・・毒びし・・・!」

俺とアンディは軽い身のこなしで、毒びしをかわす。
・・・それなのに、同じ毒びしで苦しむポケモンも救えないというもどかしさに耐えながら。

ピカチュウ/廉太郎
「・・・10万ボルト!」
アギルダー
「・・・甘いですね。 ・・・虫のさざめき!」
ポリゴン/アンディ
「・・・スピードスター!」

俺とあの敵なら、後者の方がやや動きが素早いだろうか。

アギルダー
「・・・毒びし!」

住民ポケモン
「・・・糞っ、身動きがっ・・・!」

アギルダー
「・・・このままベノムショック・・・!!」

住民ポケモン
「うがぁっ・・・!!」

ピカチュウ/廉太郎
「・・・しかしこいつ、身軽にも程がある。 
 ・・・やけくそでもこうするしかないか・・・! ・・・電磁波!!」

俺の技が、ここに来て初めてまともに命中した気がする。敵は途端に動きを止めたのだった。

アギルダー
「・・・くっ、動きが急に・・・!」

その後、俺がとどめを刺そうとした時。
未だ多くの罪なきポケモンが、俺たちの目の前で苦しみもがき続ける中での事。

ポリゴン/アンディ
「・・・・・・・・!」

敵もまともに技を使えなくなる中、アンディは血相を変える。

ポリゴン/アンディ
「・・・破壊、 ・・・光線・・・!!」

アギルダー
「・・・こんな技なんざ簡単に・・・、 ・・・む、身動きが・・・!」

ポリゴン/アンディ
「・・・楽に死なせてたまるかっ・・・!!!」

アンディの破壊光線は、容易く敵を包み込む。
・・・かと思えば、より容易く、敵の身体を木っ端微塵に砕くのだ。

アギルダー
「・・・くっ、身体が、 ・・・焼けて・・・!」

砕けた敵の身体は、苦しみもがきながら更に溶けていく。
・・・俺たちの怒りと憎悪、そして正義に、歪んだ心ごと蝕まれながら。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ピカチュウ/廉太郎
「・・・アンディ。 アンディ・・・!」

破壊光線で敵を打ち砕いた後、アンディは一瞬にして意識を奪われた。
俺は敵が残していった毒びしを避けながら、彼を抱えて飛空艇の方へと戻る。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
@メビウスの艦内

一方その頃、メビウスは1回目の搬送を終え、一度フリームスへと戻るのだが・・・。

ラッキー
「・・・応援なら、一応他の医者ギルドにも頼み込んであります。
 ・・・ですが、・・・」
フライゴン
「ああ、解っているわ。 出来るだけ急いで戻るから、もう少しだけ待っていて」

しかし、フリームスの街へ近づくと・・・。

エルレイド
「・・・くっ、これは一体・・・?」
フライゴン
「エルレイド、何か異状でも?」
エルレイド
「・・・先ほどよりも、明らかに住民の遺体の数が増えているのです」

フライゴンは神妙な顔つきで、目の前を見つめる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<SIDE ピカチュウ>

ポリゴン/アンディ
「・・・・・・・・!」

飛空艇へ戻ってからの事。それからアンディは暫く眠っていたが、たった今目を覚ました。

ポリゴン/アンディ
「・・・レンお兄ちゃん。 ・・・僕、もしかしてまた・・・」

ふとこいつと出会った日の事を思い出す。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ポリゴン/アンディ
「・・・破壊光線・・・!」

テッカニンの兵士
「糞、ここまでか・・・」「あのガキさえ見縊らなきゃ・・・!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ポリゴン/アンディ
「僕が・・・ ・・・自分と同じポケモンを殺した・・・?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


確かにアンディは、凶悪な敵を殺した。だが本当に、俺たちと同じ、心を持つポケモンを殺したといえるのだろうか。

ピカチュウ/廉太郎
「・・・しかし奴、同じポケモンを殺すのがよっぽど嫌だったんだな」
ユキメノコ
「・・・そうだな。 他の誰かを慈しむ事ならば、確かに戦士にとって大切なものだ。
 ・・・だが、目の前に立ち塞がるのが、悪ともなれば・・・」
ピカチュウ/廉太郎
「そうだよな・・・」

涙を流し続けるアンディを前に、俺たちは神妙な顔のまま考え込む。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


そして、雪が止んでからの事。

デリバード
「・・・ひとまず、そのままこの街に留まり続けるのは危険なのです」
ドリュウズ
「ああ」
デリバード
「・・・助けて下さった恩返しになるかは解らないのですが、皆様ご一緒に、この飛空艇で逃げるのです・・・!」
ピカチュウ/廉太郎
「・・・本当に、良いのですか・・・?」
デリバード
「・・・ええ」
ドリュウズ
「それは有難い。 ・・・それと、給炭機の方はもう大丈夫だから、どうか安心してくれ」
デリバード
「ええ」

その後、飛空艇は5匹をしっかりと乗せて、フリームスの空へと飛び立つ。
・・・その時、俺は静かに誓う。
・・・今を生きる皆の為にも、絶対に、俺の手で平和を掴んで、勝ち取ってみせると。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【TO BE COUNTINUED】

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想