(1)裂く出会い

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読了時間目安:7分
※ポケモン主人公
※辛い過去描写多め注意
※人間悪い奴多め注意
※地方はオリジナルのとこ

ポケモンについての法律等が定まっていない頃、苦しむポケモンたちは後を絶たなかった。

「のこされた」ポケモンたちによる物語です。

シリアス多めな気がしますが、ハッピーエンドをなるべく目指しています。
初心者なので読みにくい部分があるかと思います。ご了承ください。
不定期投稿です
ピクシブにも投稿しています。
ここはハヴリル地方。

昔、まだポケモンのための法律がきちんと定められていなかった頃。
トレーナーに捨てられるポケモン、ハンターに捕らわれ売りとばされるポケモン、実験やストレス発散のために傷つくポケモン……

ポケモンたちは、人間の身勝手な行為によって心や体を苦しめられていたのでした。

==========

夕方の森の中。オレは今日も一匹で森の中を歩いていた。生きるためきのみを取りに行ったり、きまぐれに森を探索したり。野生のポケモンに遭遇した時は隠れてやり過ごす。バトルはしない。

なぜって?群れを成すポケモンであるニューラが一匹でいるのを発見したら、最悪襲われることになり、めんどくさいことになるからだ。
仲間は作ってはいけない。……オレは、一匹で生きていかないといけない。それに……いや、これ以上はよそう。

周りを適度に警戒しながらきのみをそれなりに取り、住処に帰ろうとした、その時。

人間の声だ。
オレは咄嗟に木の陰に隠れた。そっとのぞくと、茂みの向こうの少し開けたところに、人間が一匹立っていた。見た目と声の感じからして、多分オスだ。
下の方を向いて、大声でギャーギャー騒いでいる。……とてもうるさい。人間なんか嫌いだ。どいつもこいつも自分勝手で、ポケモンなんて道具だと思っている、そんな生き物なんだから。
さっきまで何も感じていなかったのに、少しイライラしてしまった。

(嫌なヤツに遭ったな……)
オレはいつものようにこんなこと忘れてやり過ごそう、と住処に帰ろうとする、はずなのだが、なかなか体が動かない。離れられない。なんだか人間の喚いている方に夢中になってしまう。

ポケモンの声も聞こえるからだろうか。


『もうついてくるなって言ってるだろ!バトル弱いし邪魔だし、お前は何の役にも立てねーくせに!!』
「いやだ、いやだー!!」

人間が一度下の方に向かって話すごとに、ポケモンが必死に泣いているのが聞こえる。
人間が何を言っているのかオレにはわからない。だが、そのポケモンは人間に答えるかのように泣く。あのポケモンも人間の言葉は完全にはわからないだろう。ずっと一緒に住んでいたらわかるようになる、とかあるのだろうか。いや、そんなの信じられない。

「ごめんなさいっ、ゆるして、おいてかないでっ!!もっと強くなるから、役に立つから!!また森にすむのいやだっ!!うわぁぁぁぁっ」
オレはバレない程度に少し木から顔をのぞかせる。人間が見下ろす先には小さなポケモンがいた。ぼさぼさの白い頭にくちばし、そして翼。とりポケモンだろう。

いつの間にかオレはこの光景から目を離せなくなっていた。あの時と似ているからか。思い出したくもないものなのに。しかし、時が経つにつれオレはこんな状況にも冷静でいられるようになれたみたいだ。

(≪鬱陶しい≫≪面倒≫≪怒り≫……)
人間の方に目を移し、よく観察していると、こんな感じの感情がなんとなく感じ取れた。≪楽しい≫も少しあるような。
仲間と暮らしていた時に、オレはなぜか自分以外のやつらの≪感情≫を読むのが得意になった。

『うっせー雑魚!テメーより弱いワシボンこの世に存在しねえからな』
「ひいいっごめんなさい、ほんとにごめんなさい、ゆるして!!」
小さいポケモンはひたすら声を枯らせながら、人間に謝り続けている。≪恐怖≫≪悲しみ≫≪苦しみ≫……大丈夫では全くなさそうだ。

「……」
いや、だがこんな場所に長くいたら危ない。木に隠れているとはいえ、ここは角度によっては簡単に別のポケモンから見つかる場所だ。夢中になってずっときのみを持っていたし、オレ自身についた匂いも強くなっている。あのポケモンが何をしてあんなに叱られているのかは知らないが、ここは野生の世界だ。そうだ、自分が最優先なんだ。離れないと、


『もうお前なんていらねえ」

え?

「どっかいけよ』






言葉がゆっくりと、はっきりと聞こえた。思わず足が止まる。持っていたきのみも手からバラバラと落ちていく。声の方を向く。小さいポケモンは泣き続けている。
「ああっ……」あれはっ……

『チッ、もうなんなんだよこいつギャーギャー騒ぎやがって。おい、』
そう言うと、しびれを切らした様子の人間は、持っていた玉のようなものを上に投げた。ぱかっと開き、中から黒くて大きなポケモンが出てくる。今なお泣いているポケモンと同じく、翼を持っていた。

『やっちまえバルジーナ、エアスラッシュ』
人間に指示された大きなポケモンは雄たけびをあげ、小さいとりポケモンに向かって次々と空気の刃を発射した。
「やめ」
小さいポケモンは悲鳴をかき消され、攻撃をもろに受け、ヨロヨロとしていた。

「!!」
自分でも分かるぐらいに顔が歪む。
(バトルはしない)
(バトルはしない。バトルはしないんだ、バトルは、でもっ……ああああああ)

『なんでこういう時だけ耐えるんだよ。おい、もう一回やれ』
「い、や……」


いかなきゃ


オレは全速力で走って二匹の間に入り、人間の方に向けて氷の壁を瞬時に生成した。それは空気の刃に触れ、ガシャーンと音を立てて崩れていく。

『はっ?!』
人間と大きなとりポケモンは、突然出現した無数の氷を前に目を丸くしていた。
ふと小さいポケモンの方を向く。どうやら気を失っているようだ。

『なんだこいつは……』
声をした方をキッと睨む。人間は小さく悲鳴を上げた。
『エ、エアスラッシュだ!!』
大きいポケモンが再び空気の刃を作り出す。その瞬間に、オレはジャンプして一気に距離を詰めてそいつを凍らせた。大きなポケモンは氷塊に閉じ込められた。

『うわああ!!俺のバルジーナが!!』
人間が走ってきたのをよそに大量の冷気で氷塊を空中に放り、再びジャンプ。氷塊まで距離を縮め、腕を振りかぶり、思いっきり氷をきりさく。その反動で、中にいた大きなポケモンは氷から飛び出し、地面に叩きつけられた。

オレが着地すると、≪恐怖≫にまみれた人間が目の前で呆然としていた。目を合わせると、思い出したかのように持っていた玉を大きなポケモンに向けた。赤い光に包まれて玉の中に吸い込まれていく。

『なんだ、この、バケモノッ……』
人間は足がすくんでおり、恐怖と冷気で顔色も悪くなっている。もう一度睨むと、人間は情けない声を上げながら、足を絡ませてにげていった。



ふう、と息をつく。周りに散らばっている氷の塊が目に入る。やってしまった。……冷静に考えて、一匹のニューラがあんな大きなポケモンをあんな方法で倒すなんてできるはずがない。


オレは強くなりすぎている。だからバトルしたくないんだ。
後ろには小さいポケモンが横たわっている。まだきぜつしたままのようだ。

「……」

「……また始まるのか……」
少しだけ顔が歪んだ。
読んでくださりありがとうございます。

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