【第050話】釣り餌と凶兆 / チハヤ、迷霧(果たし合い、vsオモト)

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

« vs超変則侍 果たし合い ルール »

・4on4のシングル。学生のみ交換可。
・特殊介入は計3回まで。(※下記により実質0回)
・境界解崩は計3回まで。
・先に4匹全滅したら負け

□対戦相手:オモト
✕ケンタロス(原種)
✕ベロベルト
✕ケッキング
◎イッカネズミ

□学生:チハヤ
✕シキジカ
✕パピモッチ
◎パモット
・ケンタロスRF-炎

※備考……現在、境界解崩「陽炎流柳派・昼想夜夢」が展開中。「大昔のカントー地方に伝わるバトル関連の迷信」が実現してしまう。現状判明した効果は以下の通り。
・『こおり』状態は治癒不可
・『はかいこうせん』は条件付きで連射可能
・特殊介入は使用不可
・『妖』『悪』『鋼』タイプは存在しないものとして扱われる
・『まきつく』に囚われた場合、技の使用が不可
・『特性』は存在しないものとして扱う
・『ドわすれ』は最強
・『まひ』は重複する
 いよいよラストの対面である。
オモトは万全のイッカネズミ、チハヤは腕を負傷中のパモット。
既に雲行きは相当怪しい……上に、イッカネズミは戦歴の前例が殆どない珍しいポケモンだ。
「イッカネズミ……!」
何をしてくるかは分からない……が、迷う暇はない。
ただ目の前にて出される難題を、切り抜けなくては行けないのだ。

「それでは行くでござる……コラッタ、『ネズミざん』ッ!!」
「「「「ちゅーッ!」」」」
真っ先に家族総出で突撃をしてくるイッカネズミ。
前方の視界を覆い隠すかのように、正面から爪の攻撃で切り裂いてこようとする。

 が、しかし……
「避けろパモット!『こうそくいどう』ッ!!」
「がじゃじゃっ!」
瞬時に加速したパモットは、イッカネズミの僅かな隙間をくぐり抜けるようにして間合いを離脱する。
その速度は進化と相まって凄まじいものと化していた。

「い、イッカネズミが追いつけていない……!あのポケモンも脚は速いのに……!」
「パモットの加速がソレを上回っているんだ……!ケッキングの時から何度も加速を重ねている……アレに追いつくのは、イッカネズミとはいえ不可能だ!」

実際その通りで、パモットの速度は既に音速並……境界解崩ボーダーブレイクでも使わない限り、これを止めるのは至難の技であった。
「ちゅっ……!」
「ちゅッ……!」
イッカネズミらは群れで陣形を作って追い詰めようとするが、策や道理など……最早この俊足の前には無力である。
「む、むぅ……流石に速いでござる……!」
「っしゃ……相手がどんなポケモンだろうと、当たらなければどうということはねぇ!」
残念ながらチハヤは、あまり細かいことは考えられない。
しかし彼の一見無茶苦茶な理論は、未知の敵を迎え撃つ際にはある意味合理的でもある。
要するに攻撃を受けず、一方的に殴り続けることができれば……どんな相手だろうが、理論上は確実に勝利できるのだ。

「アイツらもケッキングみたいに痺れさせてやるッ!行くぞパモット、『ほうでん』ッ!!」
「がじゃーーーーーーーーッ!!」
大きく距離を取ったパモットは、V字カーブを描くタイミングで火花を放出。
広範囲に散らばるイッカネズミらを、その光が飲み込んだ。
「ちゅーーーーッ!?」
「ぢゅーーーー!!」
「っしゃ!!多数相手にはやっぱこれだぜ……!パモット、そのまま『ほうでん』を続けろッ!!」
「がじゃじゃーーーッ!!」

 迫りくるイッカネズミらを寄せ付けず、遠くからチクチクと削り続けるチハヤとパモット。
『マッハパンチ』が封じられているが故の代替策だが、結果的にその損失は最適解を生み出していた。
断続的な『ほうでん』は、確率論の関係で『まひ』を誘発しやすい。
この空間ルールに置ける『まひ』……とりわけ多重『まひ』は実質的な行動不能。
即ち、ほぼ即死コンボに等しい。
決まれば勝ちの、絶対王手なのである。

 そして遂に、機敏にパモットを追っていたイッカネズミの動きが鈍りだす。
特に親ネズミの2匹は……膝を付き、その場で歩みを止めてしまったのだ。
「ちゅ……!」
「「ちゅう……!」」
動けなくなってしまった両親を案じてか、子ネズミの方もパモットの追跡を止めてしまう。
しかも軽度ではあるが、子ネズミらにも『まひ』が入っている……戦況は、完全にチハヤ側に傾いていた。

「っし!これで相手は動けねぇッ!」
「がじゃじゃ!」
この盤面を見たチハヤは、パモットと共に勝ちを確信する。
接触技主体の相手であれば、動きを止めた時点でほぼ完封と言って良い。
故に、チハヤらがそう考えるのも無理はない話だった。

 ……『あの技』を知らないのだから。

 完全な劣勢に転じてしまったオモト。
にも関わらず、其の口角は……僅かに上がったのであった。
「……掛かったなチハヤ殿!これは好機ッ!!」
「こ……好機だとーーーッ!?」
驚くチハヤ。
ここから逆転できる手段などあるのか……と、彼が考えるのも束の間だった。

「小さきコラッタ達よ、此処が正念場でござるッ!『おかたづけ』ッ!!」
「ちゅッ!!」
「ちゅちゅっ!」
オモトは子ネズミらに『おかたづけ』を命じる。
すると子ネズミは、両親の尻尾をピンと引っ張ったのである。

「「ぢゅっ……!」」
「「ちゅちゅーーーッ!?」」
すると親ネズミは、火の付いた花火のように飛び上がったのであった。
そして瞬く間に、先程と同じように動きだしたのである。
「ちゅっ、ちゅーーーー!」
更に起き上がった親ネズミは、今度は子ネズミの尻尾を引っ張る。
こうして彼らは交互に互いの尻尾をつかみ合っていたのだ。
尻尾で繋がる円陣を組んだ家族は、ぐるぐると回り始める。

 そのなんとも奇っ怪な動きを目にしていたチハヤとパモット。
彼らは……あることに気づいた。
「あ、あれ……だんだん動き、速くなってねぇか……?」
「がじゃじゃ………!」
チハヤの考えどおり、イッカネズミらの動きは徐々に機敏になっていく。


「……えっと、シラヌイ君。『おかたづけ』ってどんな技でしたっけ?」
そんな疑問を投げかけるシグレ。
しかし隣の席に居たシラヌイとテイルの顔は、妙に青ざめている。
「………ッ。」
「な……何ですか!?何かマズいことでも……!?」
「うん……マズい。これは……めちゃくちゃマズい。」
彼らが震えながらそう言った、まさに其のタイミングだった。


「時は来たッ……かかれコラッタッ、『ネズミざん』ッ!!」
「「「「ぢゅーーーーーーーッ!!」」」」
円陣を解いたイッカネズミが、一斉にパモットに襲いかかってきたのである。
「は……速ッ!?」
先程までとは比べ物にならない、とんでもない速度だ。
人の目で視認することは、不可能な領域にまで到達していた。
「ひ、怯むなパモット!『こうそくいどう』で避けろッ!!」
「がじゃじゃッ!!」
先程と同じく、『こうそくいどう』を使って攻撃を回避するパモット。
しかし……

「「「「ぢゅーーーーーーッ!!」」」」
無情にも『ネズミざん』の攻撃は、パモットの背中を直撃。
何重にもなる斬撃が、彼の背中にクリーンヒットしたのであった。
「がじゃッ……」
「ぱ、パモットーーッ!?」
音速のパモットすらも上回るイッカネズミの速度……その原因は間違いなく、先の『おかたづけ』であった。


「ど、どういうことなんですかシラヌイ君!説明して下さい!」
「『おかたづけ』は、自分に科せられた状態異常を治癒しつつ、それをエネルギー変換して速度と攻撃力を大幅に強化する技なんだ。でも自分に状態異常がなければ、そもそも使用することすら出来ない。」
そう語るシラヌイに続けて、テイルが補足する。
「……でもこの空間ルールでは状態異常は頻発しやすい。特に、さっきのケッキングで味を占めたチハヤが『まひ』でのハメを狙ってくるのは、容易に想像できる。」
「じゃ……じゃあオモト先生がイッカネズミを出したのって……」
「チハヤが、『まひ』を撒いてくることを計算に入れてのことだ……!」
そう……チハヤはまさしく、オモトの罠に囚われていた。
自らを貶める道標に、まんまと従ってしまったのである。

「が……じゃ………」
そしてイッカネズミの攻撃を受けたパモットは、その場にてうつ伏せになる。
「ぱ……パモット!おいパモット!」
チハヤは呼びかけるが、彼が反応を示すことはない。
間もなく、白コーナーのランプが消灯する。
パモットに戦闘不能のジャッジが下されたのだ。

「ッ………。」
チハヤは言葉を詰まらせる。
パモットをボールに戻すと、その場で呆然と立ち尽くしてしまったのであった。
「ど、どうしたのでござるかチハヤ殿!早く次のポケモンを……!」
棒立ち状態のチハヤに、オモトは語りかける。

 確かに、彼の手元にはあと1匹ポケモンが残っている。
実際、ボールに入れて連れてきてもいる。
「ち、チハヤ君が……固まって……」
「うん、無理もないよ。だって……」
そうだ。
最後のボールの中に待機しているのは……病み上がりで、万全の状態ではないケンタロスだ。
「(……駄目だ。アイツを戦わせるわけにはいかねぇ。)」
そんな彼を戦場に赴かせるなど……彼には出来なかった。

「チハヤ殿!早くしないと時間切れになるでござるよ!」
対岸から呼びかけるオモト。
ポケモンの交代の際、使える時間は僅かに30秒のみだ。
それを過ぎれば棄権とみなされ、そのまま敗北になってしまう。
そしてその規定時間は、間もなく訪れようとしていたのだった。

 間もなくチハヤ
「……すんません、この勝負、俺のま……」
と、チハヤが言いかけた、その時。
彼のパーカーに締まってあったボールが、ひとりでに開く。

「ぶるーーーーーーッ!!」
すると中からは、鼻息を荒くしたケンタロスが現れたのであった。
「は……!?」
唐突な出来事に、チハヤは思わず息を呑む。
「お、おいケンタロス!?どうしてだよ!!」
「ぶるッ………!!」
蹄を慣らし、血眼になり……眼の前のイッカネズミを威嚇している。


 客席がざわめく中、事情を知る者たちはこの場面に驚愕する。
「ど……どうしてケンタロスが!?」
「僕も、わからない……!」
シラヌイですら、その理由は不可解だったようだ。
しかし何はともあれ、ケンタロスは場に出て戦うことを選んだのである。

「お……お前、怪我は大丈夫なのかよ!」
「ぶるるーーッ!!」
ケンタロスは前を見据えたまま、唸るように返事をする。
早く戦わせろ……と言わんばかりに、臨戦の構えを取っていたのだった。
「……あぁわかったよ、頼むぜケンタロスッ!!」
そうしてチハヤは最後の番人を、この戦いが初陣となるケンタロスに任せることになったのだ。


 ……そしてこの成り行きを、神妙そうな面持ちで見つめている者が1名。
戴冠者クラウナーズの座席にいた、ニーノであった。
「……あれ?どうしたんだいニーノ?凄くしぶーい顔してるけど……」
その様子に気づいたイサナが彼に語りかけるが、ニーノは表情を崩さない。
彼の頭を、僅かな冷や汗が伝っていく。
「まぁねぇ……僕が今日一番心配していたことが、このあと起こるかもしれない。」
「し……心配していたこと?」
「多分だけどこの戦い、ただ事じゃ済まないねぇ。」
「ど、どゆこと……?」
ニーノ何を考えているか、イサナには理解が出来なかった。
しかしそんな事は説明する間もなく……眼の前の戦場にて、現実になろうとしていた。



 ーーーーー一方その頃。
競技館、天井裏。
チオンジェンとイーユイの四災スーザイコンビと刃を交えるコジョンド&オドリドリ。
その戦いは、直下で行われているオモトらの戦いに負けず劣らず激しさを増していた。
「喰らえッ……『とびひざげり』ッ!!」
「甘イッ……ソノ程度、読メテイルッ!『カタストロフィ』ッ!!」
ジャンプからのドロップキックを食らわせるコジョンド。
しかしその攻撃は、イーユイによって展開された黒い靄のような盾に防がれる。
更にその衝撃はそのままダメージへと変換され、コジョンドへと反射されたのであった。

「ぐっ……!」
反動のダメージを堪えつつ、すぐに腕のムチの方を下方向から当てていくコジョンド。
『はたきおとす』のカウンターが、イーユイにヒットしたのだ。
「フハ……フハハハッ!!鋭イ……良イ……良イゾッ……!!」
モロにダメージを受けているにも関わらず、目玉をひん剥いて笑うイーユイ。
その余裕さには、コジョンドも恐怖すら覚えていた。
「(チッ……さっきからダメージを与えているのに、一向に戦局が良くならんッ!何故だ……!)」

 更にもう一方の方でも、チオンジェンとオドリドリが刃を交えていた。
「フフフ……速イ……速イ……!」
「(一撃は重くないけど……手数が多くて面倒すぎる……!)」
『パワーウィップ』によるチオンジェンの攻撃を、オドリドリが『フェザーダンス』で受け流し続ける。
しかし僅かながらに入ってしまうムチ攻撃のダメージが、着実に体力を削っていた。
その上『フェザーダンス』の精度も、徐々にスタミナ切れからか落ちていっている。
「(く……苦しい……!一体何故……!)」
ふとそう思ったオドリドリは、周囲の環境を見渡した。

 狭苦しい空間にて焦げ臭い煤煙が立ち込め、足場を悪化させる植物が生い茂っていた。
両陣営の戦闘力は互角であった……が、地の利が明らかに四災側に傾いてしまっている。
長時間の戦いの中で、彼らは予想打にしない場所から追い詰められていたのだ。

「フハハハ……!トレーナーノ不在ガ故カ!!視界ガ狭クナッテイタヨウダナ!!」
「(ッ……やはりあの御方フェアがいらっしゃらないと、限界があるッ……!)」
いよいよマズい状況だ、と気づき始めるコジョンド。
最早此処まで、と覚悟が決まり始めていた。



 その時である。



『 Type - Fairy / Category - Move 』




 どこからか響く電子音声。

そして其の直後、どこかの物陰から大きな影が飛び出してくる。
「しゃわわッ!」
「しゃ……シャワーズ?」
急に飛び出てきたシャワーズは、淡い光を放ち始める。
そしてすぐに続けて……聞き覚えのある声が響いた。
「シャズ行くぞ!!間に合えッ……

夢幻ニ消ユ濃霧イレイジング・ミスト》ッ!!」


 すると一瞬のうちに、天井裏は薄桃色の靄に覆われる。
そして瞬くうちに茂っていた植物は枯れ果て、立ち込めていた黒い煤煙も一切が無くなってしまったのだ。
酷く濃いその霧は、あらゆる者の視界を遮る。
「ゲホゲホッ……酷イ霧ダッ……!!」
咳き込んだイーユイとチオンジェンは、その攻撃の手を思わず止めてしまう。

 ……しかし数十秒のうちに、靄は晴れた。
そしてそこに居たはずのコジョンドとオドリドリは……忽然と姿を消したのであった。
「……逃ゲタカ。」
「マァ良イダロウ。正直、アンナ奴ラノ安否ナドドウデモイイ。ソレヨリ……」
あっさりと諦めた様子のイーユイは振り返り、チオンジェンの方を向いて続ける。

「シッカリト『記録』シテオケヨ。大事ナ『記憶』ヲ確実ニ持チ帰ルタメニモ……。」
「……分カッテイル。」
なにやら不穏な会話をしつつも、チオンジェンは再び元の位置へと戻る。
そしてまたしても、怪しい呪文を唱え始めたのであった。

「(……コレハ足ガ付クノモ時間ノ問題ダナ。ドウスル……我ガ主。)」



 ーーーーーさて、会場の方はと言うと。
「突っ込むでござる!コラッタ、『ネズミざん』ッ!!」
「「「「ちゅーーーーッ!!」」」」
先程から引き続き、『ネズミざん』で強化されているイッカネズミはケンタロスを目掛けて追突を仕掛けてくる。
無論そんな超速の攻撃をケンタロスが避けきれるわけもなく、正面から数発の斬撃を食らってしまった。
だがしかし……
「ケンタロスッ、『こわいかお』だッ!!」
「ぶるーーッ……」
「ちゅっ……!」
ケンタロスは『こわいかお』によって、鬼のような形相をイッカネズミに向ける。
すると、先程まで目にも留まらぬほど機敏だったイッカネズミの攻撃が、急速に鈍化していく。
萎縮した1匹のネズミから恐怖が伝播し、攻撃の手が鈍ってしまったのである。

 そしてその隙と言わんばかりに、ケンタロスは次の攻撃の構えに入る。
「よしッ……反撃行くぜッ!!『レイジングブル』ッ!!」
「ぶるーーーーーーーーーーーーッ!!」
ケンタロスは全身を真っ赤に染めるほど熱を上げ、イッカネズミを轢き潰す勢いで駆け出し始める。
その重量の攻撃は、近くに居た親ネズミ一匹を思い切り踏んづけた。
「ぢゅっ……!」
「「「ちゅーーーッ!?」」」
戦局は再び、チハヤ陣営に傾き始めた。
このまま行けば、どちらが勝つかはまだわからない。


 しかしそんな状況でも……テイルの面持ちは芳しくない。
どこか腑に落ちない様子で、試合の運びを眺めていた。
「………。」
「おや?テイル先生、一体どうしたの?」
尋ねてきたシラヌイに、テイルは率直な意見を返す。
「……チハヤの指示とケンタロスの動くタイミング。明らかにおかしい。」
そう指摘するテイル。
それを参照にしつつ、フィールドを見つめるシラヌイ。

「……本当だ。チハヤの指示のほうが……遅い!?」
「え……?ズレるにしても、普通は逆じゃないですか?」
シグレの疑問は最もだ。
トレーナーの指示を聞き届けるまでにタイムラグがある……というのであれば、それは両者の間のコミュニケーション能力の問題だろう。
しかしこのケンタロスは……トレーナーが指示をするよりも先に行動をしているのだ。

「ってことは、まさかあのケンタロス……!」
「あぁ……チハヤの指示で動いていないぞ……!」
その事実にたどり着いたパーカー集団一行。
だんだんと、彼らの間に暗雲が立ち込み始めていた。



 親ネズミ1体を轢き潰し、返しの『レイジングブル』で更に親ネズミと子ネズミを跳ね飛ばしたケンタロス。
その勢いは、止まることを知らぬ……まさに猪突猛進の勢いであった。
「ぢゅっ……!」
「ちゅ……!」
「よし良いぞ良いぞ!行けケンタロスッ!!『レイジングブル』だーーーーッ!!」
「ぶるーーーーーーーーーーーーッ!!」
そして更にUターンを決めたケンタロスは、チハヤの方向へ向かって走り始める。












 ……そしてそのまま、彼の身体はチハヤに激突。










 推定1000℃以上に熱された角が、チハヤの腹部を貫いた。










「……え?……は?」











 赤黒いシミが、パーカーの布地に広がり始める。
[境界解崩ファイル]
☆夢幻ニ消ユ濃霧(イレイジング・ミスト)
☆タイプ:フェアリー
☆カテゴリー:M
☆使用者:絶エヌ迷霧
☆効果:薄桃色の靄を当たり一面に撒き散らす。展開されたフィールド情報やカテゴリーEの境界解崩の影響を打ち消す。

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