依頼をこなせ!②

しおりを挟みました
しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
読了時間目安:21分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

「──って訳だ!」
「……見つかったんですネ、あの町デ」

伝えた通り、まずはクォーツに連絡するため小屋へ戻ってきたディスト。依頼が見つかって喜ぶべきところのはずだが、クォーツの反応はあまり良くなかった。

「ところで黒いラッタってなんだ?」
「黒いラッタ……確か南国ではそのような姿になると聞いたことがありまス」
「もともと黒くないのか?」
「アァ……そこからですカ」

少しぐちゃぐちゃになってしまったポスターを元に戻すと、ずっと疑問に思っていたことを口にする。ディストはそもそも『ラッタ』という種族のことすら知らなかったのだ。
──やはりこんな活動を始めるにはまだ早かったのでは……?とクォーツは考えたが、その言葉は飲み込んだ。

「とりあえず外に出ましょウ。ここでグダグダ説明してる暇はないですかラ」
「それもそうだな。それじゃ、記念すべき『Metal Puissance』初の仕事に出発だ!おー!」
「……オー」

テンションの高いディストに若干引きながらも、頑張ってノリを合わせるクォーツ。そんなことは露知らず、ディストは張り切った様子で小屋の扉を気持ち強めに開いた。森の木々が揺れる音と、さらさらと流れる風を感じながら、二匹はその第一歩を踏み出したのだった。





この森はそれほど大きくはない。そのラッタがこの場所に住んでいるのなら、巣を見つけるのにそう何日も使う必要はないだろう。
とりあえず怪しいポケモンがいないか辺りを探しながら、ディストはクォーツからラッタの説明を聞いていた。
──その結果、ディストは勝手に『なんか黒いポケモンを見つけたら話を聞いてみよう。それで逃げたら怪しいから追おう』という結論に至っていた。

「黒い奴黒い奴……いないなぁ」

黒い奴どころか普通のポケモンまであまり見かけないのは、この森の居心地の悪さを表していた。仕方ない、あんな町が隣にあるのだから。

「ところでディスト」

ディストと同じように、キョロキョロと周りを見ながらクォーツは問いかけた。

「あなたはいつまでその格好でいるんですカ?不意打ちしてくださいって言ってるようなものでハ?」
「どういうこと?」
「シールドですヨ」

ディストは今日ずっとブレードフォルムの状態でいる。その危機感のなさにクォーツは多少イラついてきていたのだ。本当は初めて会ったときから盾の扱いについて思うところがあったのだが、必要以上に他ポケモンに干渉したくないクォーツは軽く注意しただけでそれ以降は何も言わなかった。だが今日はいつもとは違う。バトルになる確率が限りなく高いというのにここまで警戒心を持たないのはおかしいだろう……まぁ言い換えれば、ただ彼の身の安全を心配してるというだけなのだが。そんなクォーツとは対称的に呑気な様子でディストは答えた。

「こっちのほうが動きやすいし?」
「アイデンティティを捨てないでくださイ」

「ハァ」と呆れた様子のクォーツと、「俺は強いから問題ない」とドヤ顔のディスト。黒いラッタのタイプは悪とノーマルというのは伝えておいたはずなのだが、この自信はどこからくるんだと一周回って羨ましく感じてきた。

「にしても誰もいないな。おーーい!泥棒ーー!」
「ちょっト!そんな大声で言ったら逃げられますヨ!」
「あっ」

誰かを探す際に大きな声で叫ぶのは鉄板だろう。そんな安直な考えで発せられた言葉。だが今見つけたいのは泥棒だ。これはむしろ逆効果で敵に逃げる隙を与えてしまう。なるべく小さな音量でそれを指摘したクォーツ。それに気付いたディストは「やっちまった」という様子でクォーツからそーっと目を逸らす。

──が、その時。どこからかカサカサと葉っぱの擦れる音が聞こえてきた。
クォーツは即座に攻撃体制を取り、音のした方向を探る。対してディストも、いつでも攻撃できるように構えた。……相変わらずシールドフォルムにはならない。

「あ……気付かれちゃった?」
「誰だ?!」

上の方から誰かの声。おそらく木の上だ。クォーツは警戒してU字磁石に電気を纏わせている。ディストが声を上げて片手に霊力を込めると、その声の主はスッと姿を現した。
だがそれは──残念ながら、ラッタでもなければ黒くもなかった。

「ごめんね。うるさかったから起きちゃった」

そのポケモンはいわば鳥の姿で、緑色のフードのような物を被っている。声色と、なんだか眠たそうな目をしていることから本当に直前まで寝てたんだろうとディストは感じて、手に溜めていた霊力をスゥっと消した。クォーツはまだ警戒しているようでじっと相手を睨んでいる。

「そっか。悪かった!ちょっとポケモン探しをしてるところで……」
「ちょっト…ッ」
「泥棒でしょ。物騒だね」

まだ油断するな!と伝えるようにディストの言葉を遮るが、相手のポケモンに更に邪魔されてしまう。そのポケモンはクォーツの様子を気にも留めずに木の上から飛び降りてきた。

「そんな警戒しないでよ。僕はただ睡眠を邪魔された無害な一般ポケモンだから」
「いやだから悪かったって!」

根に持つタイプなのだろうか。ちらりと根源を見やると、羽に付いてしまった葉っぱを払う。ディストは悪意はなかったことを、謝ることで必死に伝えていた。
クォーツはとりあえず戦闘態勢は止めた。だが警戒を解く様子はない。何か怪しい行動をしたらすぐにでも撃つ気迫だ。

「あ、そうだ!さっきの泥棒の話だけどさ、どっかで黒いラッタ見てないか?」
「寝てたから知らない」
「お……おぉ、そうだったな!」

不機嫌そうに腕を組みながら回答される。それを見てディストは、話題を変えるために話した内容がまたも同じ所へ行き着くのを感じて「ハハ!」と笑って誤魔化す。その顔はどこか焦りを思わせる表情をしていた。

「……あなたハ、この森に住んでいるポケモンですカ?」

それまで無言で二匹の会話を聞いていたクォーツが突然相手に質問を投げ掛けた。ディストは「ここで寝てたってことはそうなんじゃないか?」と質問の意図がよくわからない様子でいる。

「……うん。最近ね、やって来たんだ。たまにあの町の騒音が聞こえてくる以外は快適だよ」
「そうですカ。まぁ嘘ではなさそうですネ」
「当たり前でしょ」

一瞬視線を逸らした。即答はしなかった。その間を多少怪しむものの、これ以上聞き出すべきことはないだろうと判断してクォーツはまた黙り込んだ。
なんだかわからないが話が終わったのを見ると、改めてディストが例の件について別の聞き方で尋ねる。

「んじゃあさ、この辺にラッタの巣とか家とか……」
「僕はここに来て日が浅いから、まだあんまり詳しくないんだよね」
「いつでもいいから、その姿を見かけたことも?」
「ない」

駄目だ!と言いたげに無言でクォーツの方を見るディスト。クォーツは面倒くさそうに目を背けるが、ただただ風の音しか聞こえないこの空気に段々耐えられなくなり、渋々相手のポケモンに告げる。

「……一応、泥棒ということですのであなたも気をつけておいてくださイ」
「ご忠告ありがとう。君達も頑張ってね」
「おう!ありがとな!」

ディストが「またな!」と手を振ると向こうもニコッと笑って手を振り返した。クォーツはまだ何か気になることがあるのか、最後の最後まで警戒している。「そこまで怪しい奴だったかなぁ」とディストはそんなクォーツのことを不思議そうに見ていた。
そしてそのまま、二匹は森の奥へと消えていく──。





「──あの二匹、おそらくそう時間もかからないうちにそっちへ向かうだろうね」
『えぇ~!早くない?!まだあいつ帰ってきてないのに!』
「あとついでに。今回は君の十八番の毒は効かないよ。それに君だけで敵う相手とも思えない」
『もう~、何もかも最悪……てかあんたも援護してよ?元々私乗り気じゃなかったしそもそも夜行性だし』
「それは僕も同じなんだけど」
『うるさい』
「……はぁ。わかったよ、少しだけね」





「結構進んできた気がするんだが……」
「私達の家があるのガ、この森の入口付近ですかラ……エェ、かなり奥まで来ているはずですネ」

あれから数十分。なかなかそれらしき影は見つからなかった。この森はさほど広くはない。そろそろ終わりが見えてきてもおかしくはないだろう。
二匹とも身体の疲れは感じにくい体質ではあるが、いい加減その姿を捉えないと焦りを覚えてくるものだ。

「……もう諦めましょうカ」
「いやいやいやいや!せっかくここまで来たんだから最後までやり遂げなきゃ駄目だろ?!てかこれで解決出来なかったら俺らの印象はマイナススタートだぞ……まだ何もしてないのに……」

元から感情の乗らない声が、余計に暗く聞こえる。ディストはまだまだやる気のようで、必死にクォーツを説得しようと早口で捲し立てた。だがその語尾にはなんとなく悔しさも感じられた。
これは『Metal Puissance』として初めての仕事だ。ここで失敗なんてしたら信用を得るのは難しくなるだろう。それだけはなんとしても避けないと、このチームは解散するしかなくなってしまう。ディストはそれを懸念していた。

「あなたは何故この活動にこだわるのですカ?お金が必要なら他にもやりようはあるはずでス」
「え?うーん、そうだなぉ……」

クォーツからの問いかけにすぐには答えられなかった。
クォーツの言う通り、思い付いた発端は金欠からだった。だけど今は何か違う、他の理由がある。でもそれを言語化するのは難しい。なんて伝えればいいのだろう……。
なかなか口を開かないディストに対し、クォーツは痺れを切らしてこう切り出した。

「救助隊にでも入るつもりデ?」
「救助隊かぁ。そういえばさっき聞いたよ。なんかすごい組織だろ?よくわかんないけど」

あのポケモンが言っていたことを思い出す。
確かにディストが『Metal Puissance』に掲げている理念と、その救助隊が行っているらしい活動は似通っていた。困っているポケモン達を助ける……きっとそれは、どんなポケモンでもなれるというものではないのだろう。

「でも外れだ。その救助隊ってやつに入るつもりはない。俺は別に正義のヒーローになりたいわけじゃないからな」
「……そうですカ」

だんだん風が強くなってきていた。秋というのはどうにも天気が変わりやすい季節だ。この森の木も、紅葉する種類だったら観光として悪くなかっただろうに。

「俺はただなんというか……誰かを助けながら暮らせたら幸せそうだなぁーって思うんだよ。ほどほどに」
「ほどほどですカ?」
「そうだ。命は懸けてられない」

鳥ポケモンの鳴き声が聞こえてくる。ラフズタウンからは離れたここには、少ないながらもポケモン達がみなのんびりと暮らしていた。
木の実の成る木もここら辺の方がたくさん生えている。オレンの実やモモンの実……カラフルに実るそれを採りにきたポケモンもいた。

「それに俺には協調性がないからな。現にこうしてお前と意見が合わずに揉めてるし」
「……私が言うのはなんですガ、意見の対立を避けル……というのは無理な話ですヨ」
「そうかな?」
「ハイ。それに──」

そんな会話を交わしながらも怪しい影がないか確認していたクォーツ。
ふと近くの木々を駆け抜けていった黒い物体に気がつくと、辺りを警戒しながらディストにそっと囁いた。

「いましたヨ。向こうの方に走っていきましタ」
「マジか?!早く追いかけよう!」

ディストがそう言うと、クォーツと共に進んできた道を戻っていく。さっきまでの空気は、目的のポケモンを見つけたことにより消えていた。


「待ちやがれ泥棒!」

黒いラッタの姿は見えた。だがなかなか追い付くことができない。それもそうだ。この二匹は元々素早いわけではないのだから。
……こうなったら、多少強引にでも動きを止めなければいけない。ディストはクォーツに目配せをしてから、ある技をラッタに仕向けた。

「うぉっ?!な、なんだ?!」

突然、ディストの影がラッタの目の前まで伸びてくる。驚いたのかラッタは咄嗟に動きを止めたが──

「……っんだよ!かげうちじゃねぇか!驚かしやがって!」

ノーマルタイプである彼にその技は無効であった。少しヒヤッとしたものの、ラッタは馬鹿にしたようにディストを振り返って嘲笑う。
だがそんなディストの表情は余裕そのものだった。

「油断大敵!はったりに決まってんだろ!」

油断して動きが鈍くなったラッタに対して、ディストは思い切り突っ込んでいった。ラッタは直線上に向かってくるディストから逃れるために、急いで横に避ける。
ディストの剣先はギリギリのところでラッタから逸れた。なんとか間に合った……と安心したところで、急にラッタの身体中がビリビリと痺れ始める。
さっき振り返った時にはどこにもいなかったはずのクォーツが、ラッタの上からでんじはを仕掛けてきていたのだ。

「少しおとなしくなってもらうからな!」

全身が麻痺してうまく動けないラッタに、ディストは容赦なく切りつけた。
抜群の技、せいなるつるぎをもろに受けて、痛々しい悲鳴を上げながらラッタはその場に倒れ込む。

「くっ……」
「観念しろ!奪ったネックレスは返してもらう!」

そう宣言して、気絶寸前のラッタに近付くディスト。噛み砕いてやろうとラッタは口を動かすが、麻痺とダメージのせいでディストに噛みつけるほど口を開けられずにもがいていた。

「……あれ?持ってない?」
「フン……残念……だったな……もうここには……ない……」

ざっと見た感じではネックレスはどこにもない。不思議に思ってディストが思わず呟くと、ラッタは途切れ途切れに言い放った。その様子を見てクォーツは呆れたようにため息を吐く。

「馬鹿ですネ。知らない振りでもしていれば少しは誤魔化せたというのニ」
「……ッな……?!」
「あ、確かに。そう答えたってことはお前が盗んだのは確定か」
「もしくは何か知っているカ」
「……クソッ……!」

痛いとこを突かれて返す言葉がなくなったラッタ。八つ当たりに地面を殴り付けようとしたが、それもうまくいかなかった。

「早くあなたのしたことを話してくださイ。でないと気絶させてそこら辺の木にでも縛り付けますヨ。もちろん麻痺と傷はそのままデ」
「クォーツ、それ脅迫……」
「ッ……わかったよ」

聞き出し方が雑だな……と思ったディストだったが、ラッタは案外すんなりと事情を話してくれる気になった。
念のためにと、クォーツはいつでもでんじはを放てるように構えている。そんなクォーツにラッタは若干怯えたような反応を示したが、ディストに促されてそのまま何があったのかを静かに語り始めた。





「悪ぃ……俺が負けちまったせいで……」
「いいんだよ。あんたはよく頑張った。目立ったケガもなくて安心したし」
「うん!お父さんかっこよかったよ!」

昨日の夜……いや、今日か。情けない話だが、俺は同族との縄張り争いに負け、妻と子供を連れてこの森まで逃げてきたんだ。
この森は木の実も美味いし、住んでるポケモンも少なくて……争いが嫌いな俺ら家族にはぴったりの場所だと思った。
そんでとりあえず、今日は疲れたから休もうといい感じのスペースを見つけた俺達はそこで寝ようとしたんだ。
──それが間違いだった。

「うわぁっ?!」
「ギャッ!?」
「……だ、誰だ?!おい、大丈夫か?!」

俺達が寝付こうとした頃、突然妻と子供の身体を糸で捕まえた奴がいたんだ。二匹も、俺も、必死になってその糸を噛み千切ろうとしたんだが、全く歯が立たなかった。
それでも俺達は諦めなかった。だけどそれも長続きしなかったんだ。
今度は二匹に向かって矢が飛んできた。それもよく見ると矢の先が紫色で染まっていて……それが毒であると気付くのに時間はかからなかったよ。

「ねぇねぇ君。そいつらのこと助けたい?助けたいでしょ?」
「は……」
「じゃあさ!今からなんでもいいから金品盗んできてよ!もちろん高値で売れるやつね!そしたらそいつらは解放してあげる」
「ふ……ふざけるな!」

どこからか聞こえてきた声は、俺の返事なんて気にする素振りもなく一方的に要求を投げてきた。
そんな奴に我慢ならなかった俺は、妻と子供を捕まえてる糸の主──アリアドスに向かって攻撃しようと走った。だけどそれは無謀だったんだ。
アリアドスはミサイルばりを撃って俺を攻撃してきた。それにも構わず突撃しようとしたら、今度は俺を狙うように何発か毒の矢が飛んできた。

「そいつの犠牲になりたくなかったらさっさと行ってきて。一応毒の量は少なめにしてあるけど……いつまで持つかわかんないからさ。そこの二匹が」

アリアドスとは別の奴──姿は見えなかったが、敵は二匹いた。
正直二匹も相手にして今の俺が敵うとは思わなかった。それにこんなことしてる間にもあいつらの毒は回ってきてるし……。
俺はとりあえずモモンの実を探して走り回った。あれさえ食えば毒は治まる、そう、思ってたんだ。

結果は駄目だった。あいつらが素直にそんなことさせてくれるわけがなかった。俺はただ時間を無駄にして二匹の苦しみを長引かせてしまったんだ。
──もうどうにもできなかった俺は、あいつらの言う通り金品を盗むためにあの町へ行った。それでそのネックレスをあいつらにやったんだ。
それで解放してくれると思ったら、今度は変なチームを名乗ってる二匹を倒してこいって?俺はもうやけになって、それで──。





「なるほド。事情はわかりましタ」
「え。そんなあっさり信じていいのか?」

納得しているクォーツとは裏腹に、まだ信じきれていないディストはびっくりした顔でクォーツのことを見ていた。

「ハイ。それなら辻褄が合いますからネ。ディスト、あの辺にあったオレンの実を採ってきてくださイ」
「つ、つじつま……?なんのだ?」
「こっちの話でス。それよりオレンの実」
「お、おう」

まぁクォーツが考えなしでこんなこと言い出すってことはないだろうと、ディストは言われた通りオレンの実を採りに行った。
かくいうラッタ本人も、まさか信じてくれるとは思ってなかったらしく驚いている。

「……なんで信じられる?」
「少々、心当たりのあるポケモンに出会ったばかりでしてネ」

磁石への電気は止めて、クォーツは何か考え込むように遠くを見つめていた。
ラッタはさっきまでの麻痺が落ち着いてきたのか、ゆっくりと体を起こす。だがディストから受けたダメージはまだ残っており、痛む部分を手で軽く押さえている。

「その矢を扱うポケモンはおそらくジュナイパーという種族でス。私達はさきほど彼と出会いましタ」
「そ、そうなのか……?!そんで、そいつは……」
「ごく普通に会話して終わりましタ。あなたのことも尋ねましたが、寝てたから知らないト」
「……そ、そうか」

そこまで二匹が話すと、ディストが大きな声を出して帰ってきた。

「おーい!持ってきたぞー」
「ありがとうございまス。どうゾ」
「……ありがとう」

ディストがクォーツに手渡したオレンの実を、ラッタに差し出した。ラッタはそれをゆっくりと口に含む。

「ではその場所までの案内をお願いしまス」
「……助けてくれるのか?」
「ネックレスの安否を確かめないといけませんからネ」
「あとお前の話が本当なら、今でもお前の家族は捕まってるってことだろ?それも立派な犯罪だからな!」

その二匹の答えにラッタは少し涙ぐんだが、すぐ拭う。そして真剣な顔で二匹を見て言った。

「ありがとう。そういえば、チームって話だったけど名前は……」
「忘れてた!俺は『Metal Puissance』のリーダー、ディスト!」
「副リーダーらしいクォーツでス」
「ディスト、クォーツ……よろしく頼む」
「ああ!それじゃあネックレスと黒いラッタの家族を救いに──」

「しゅっぱーーーつ!」

「──ってノリ悪いなお前達!」

二匹とも乗ってくれるとばかり思っていたディストは、びっくりして二匹を振り返った。
そんなディストのことをクォーツは無視して、ラッタに道を聞いている。

(大丈夫なのか。この二匹は……)

少しだけ不安に思ったラッタだったが、さきほどのバトルのことを思い出すと頭をブンブンと横に振り、二匹に道案内を始めた。

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想