誇大表現

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「そんなに警戒心剥き出しで見なくても良いんじゃないの???」

バクフーンになったマグマラシと共に自宅に戻ったのはいいのだが、マグマラシが進化したとか何も知らないリザード達が僕の隣に居たバクフーンの事を敵と認識してしまい、最初にその場が少し修羅場になったのはここだけの話。しかしまぁもう戻って来てから1,2時間程度経つというのに未だに全員がバクフーンとの距離を取って接しているし、これは慣れるまでまだまだ掛かりそうな感じがすると思っている僕なのです。

「そ・・・そんなに警戒しなくても・・・ちゃんと今朝まであのマグマラシだったバクフーンだから・・・ね?僕の目の前で進化したんだから全く持って別の誰か知らないポケモンって訳じゃないからそんな敵対視しなくても良いんじゃないのかな~・・・って?。」

リザ『特に敵対視はしてないけど・・・やっぱりちょっとな・・・まだ素性が分からない以上どう接していいか分からないし。バクフーンの方もなんかこう・・・アレな気がしてしゃーない。』

バク『そんな事言わなくても・・・僕は僕なのに・・・ね?シンゴ・・・リザードだけじゃなくてルクシオとかブイゼルからまでも距離を取られると僕凄く寂しい・・・です・・・シンゴ??おーい。』

これは僕も早いところバクフーンの事も調べないといけなくなった。そもそも僕が知っているのはクリーム色と紺色の2色からなるバクフーンの事であって、目の前に居るのは紫色と薄いクリーム色で耳が垂れさがっているバクフーン・・・なの?全く持って知らないのだ。何冊か歴史の本は読んだ事はあるのだが、全く持ってこの地方の事やこのポケモンの事も載ってなかった・・・いや僕が見過ごしただけかもしれないけど全く知らない。高校入試とか大学入試とかに出てきたかな・・・この地方とかこの地方特有のポケモンの事・・・リザード達が不安を抱いているように僕もバクフーンの素性が分からないからちょっと不安でもあるのだ・・・さっきの幽霊に対して攻撃していたりするのを見ている身からするとますます。

バク『・・・・そんなに寄ってたかって僕の事を敵対視するのでしたら僕にも考えがありますから!もうみんな事なんて知りませんよ!!』

「あっ、バクフーンどこ行くん???」

バク『私がどこに行こうなんてシンゴには関係ない話でしょ!折角進化したってのに・・・寄ってたかってこんな仕打ち・・これなら進化しない方が良かった・・・・!もう貴方達の事なんて知りません!!』ドアピシャ

「ちょ・・待って・・・行っちゃった・・・。」

そう言い残すとバクフーンは扉をピシャと強く閉めてどこかに行ってしまった。バクフーンの気持ちも考えてあげないといけなかったよな・・・僕の配慮も足りなかった・・・一番進化して喜んでくれるだろうって思ってたのはバクフーンの方だったのに、それを素性が分からないからとか不思議だからとか怖いからという理由で距離を取ったのは間違いだったな・・・






バク『なんだいなんだい!!寄ってたかって僕をまるで余所者みたいな目で見て来て!!こんなんだったら本当に進化なんてしなければよかった・・・あの幽霊みたいなののせいでしょ!!こんな目に遭ったのは!!次に現れたらとっ捕まえてぐるんぐるん回して吹っ飛ばしてやる!!幽霊って掴めるのかどうか分からないけど!!』

家を飛び出したバクフーンは町から少し離れた所にある海岸に来ていた。この海岸はヒノアラシの時代からシンゴと息抜きで何度も来ているバクフーンにとっては通い慣れた場所で、村人からすると他の地方から流れ着いた人達が上陸する為の港もある謂わばこの地方の玄関口のようなものだ。だからと言って何もないが、バクフーンは海岸に程近い所に座りこむと海面に写る自分の姿を見て更に苛つきを増した。

バク『なんでこんな姿に・・・はぁ・・・手が自由に使えるようになったのは有難いけどやっぱり・・・でもシンゴも言ってたけど他の地方では違う姿の僕が居るのかな?それはそれでちょっと見てみたいかも・・・でもどの地方か分からないし・・・。』

???「ジョウト地方って所のバクフーンは君みたいな姿形色じゃないよ。」

バク『!?!?だ‥誰!?!』

バクフーンは後ろから急に話しかけられて驚いた表情で声がした方へと視線を移した。そこに居たのは数か月前のあのトドゼルガに襲われた時に助けてもらった一人の女性が立っていた。そしてその横には彼女の手持ちポケモンと思われるチラーミィとゴウカザルがまるで護衛のように左右に同じように立ちバクフーンを少し睨みつけていた。

バク『あ・・・あなたはあの時助けてくれた・・・』

「そっ。あの時に貴方と私の弟を助けた謂わばシンゴの姉ちゃんでーす。いつも弟が迷惑かけてない?今日もその事で悩んでなかった?もしそうならばごめんね?あっ!なんで姿形変わってるのに分かったんだって顔してるね~答えは簡単。だって君がしているバンダナってあのマグマラシの頃に付けてたやつと同じやつでしょ?ほらね~図星~。」

まさかのシンゴの姉ちゃんがバクフーンに話しかけてきたのだ。しかもほんの数分しか会ってないのにこの色のバンダナを付けていた事を覚えていたその記憶力にもバクフーンは動揺を隠しきることが出来ない。

バク『えぇえ???しししし知ってたのですか???シンゴが貴方を探しにこの時代に来ていたとか色々な事とか・・・あっ。』

「えっ?私の事探しに来たの?あぁ~・・・そりゃそうか。連絡した後に急に時空乱流に巻き込まれて行方不明になったもんね。なるほどなるほど~。ちなみに厳密に言うと、あのトドゼルガに襲われた時に私が助けていなかったら弟がこの時代に来ていたって君から知る由は無かったと思うよ?そりゃああの時チラッと見た見た事ある見た目とか、あの逃げるような態度で普通は勘づくけど、私ってどっちかって言うと鈍感だし。でしょ~?あっ、ゴウカザルとチラーミィはあっちで見張ってて?ちょっとこのバクフーンとお話したいから・・・だってプライベートな事だからね?すぐ終わるって。大丈夫大丈夫。」

シンゴの姉ちゃんは護衛で付かせていたゴウカザル達を少し離れた所に行かせるとバクフーンの横に座った。その表情は嬉しさの中にも少しの寂しさもあるそのような難しい表情をしていた。

「シンゴがこの時代に来ていたとはな~。じゃあシンゴもあの時空乱流みたいなのに巻き込まれたのかな?そうだとしたら元の時代に戻れるか分からないけど、でもあの子色々言ったり偏屈だったりするけど根は強いから大丈夫かぁ~?」

バク『あ・・あの・・・。』

「?あぁ~ごめんね。急に色々と話しちゃって混乱しちゃったかな?私ってほらこんな風に軽い性格だからさぁ~、団員の中でも結構お調子者だとか軽い人だとか色々と言われてるんよね?クラスは上の方だから直接的には言ってこないけど。」

この人滅茶苦茶しゃべるなというのがこの時のバクフーンの心の声だったりする。その後も色々とマシンガントークをするシンゴの姉ちゃんにバクフーンは口をポカーンと開けたままで聞くだけ聞いていた。

「・・・シンゴまだジャーナリストしてる?・・・あぁそう。やっぱり続けていたのかぁ、もうやめたかなと思ってたけどやっぱり色々と調べ物するのが好きだったからな・・・ボーマンダ達も居るのかな?えっ?そんなポケモン知らないって?・・・じゃあポケモンも持たずに着の身着のままこっちの時代に来たって感じか。いやこっちの話よ。それよりもね・・・バクフーン。」

バク『?』

「シンゴは確かに神経質で完璧主義で真面目で考えすぎで偏屈で面倒くさがりで直前に止めて他の人のせいにしたりとか色々と迷惑をかけてると思う。けどね、絶対に貴方達の事を一番に考えていると思うから傍に居てあげて?もうこの人とはやっていけないとか思う事もあるかもしれないけど、時間が経つと冷静さを取り戻すから・・・ね?あっ、ほら。噂をすれば迎えに来たみたいだよ?」

何処からかバクフーンを呼ぶ声が聞こえてきた。他の聞きなれた声が聞こえないという事はポケモンは連れて来ずに一人で来たみたいだ。ここは村からは程近い所で人が時々通るとは言えども野生ポケモンも普通に出没する場所。生身の人間一人では危険が伴う場所でもあるのに、そこに一人で来たとは全く持って危険な行動なのである。

バ『まったく・・・一人で町の外に出ると危ないって何時も言ってるんですけどね・・・ところであなたは』

「今の話は私と君だけの内緒な大人な話ね?絶対にシンゴには話さないでね?もし話したらゴウカザルに頼んで焼きマシュマロみたいにしてもらうから☆じゃあもう時間も時間だし、私は警護団寮に戻るけど、あの子の事よろしくお願いね?じゃね☆」

バク『あっちょっとま・・・シンゴから聞くだけだったけど本当に軽い人だったな・・・焼きマシュマロってなんだろ・・・それよりもシンゴは。』





「全くバクフーンはどこ行ったのかなぁ・・・あぁ、もうちょっとバクフーン側の気持ちを考えるべきだった・・・そしたらバクフーンも傷つかなくて済んだのにnうぁ!!びびびびびびっくりしたなぁ!!!もうちょっと音立ててから来てよ・・・本気で野生ポケモンか盗賊かかと思ったわ。ってバクフーン・・・どこ行ってたん??・・・そんな事よりもバクフーン」

バク『シンゴ・・・ごめんなさい。急に出て行ったりして・・・もうちょっと僕の方もみんなの気持ちを考えるべきだった・・・そりゃあ知らないポケモンや見た事ないポケモンが居たら敵対心も持つし警戒心も持つよね・・・僕が身勝手な事してごめんなさい・・。』

「バクフーンが謝る事じゃないよ。僕の方も配慮が欠けてた。もっとバクフーンの気持ちを考えるべきだった・・・僕の方もごめん。」

バク『!?シンゴが謝る事じゃないですよ!元はと言えば僕の方が急に家を飛び出してしまったのですから・・・それよりもシンゴ一人ですか?』

「もちろん。他のみんなはまだちょっと不安がってたから連れて帰ってくるって言ってきて僕一人だけで来た。それにこういう時はあまり大人数で来るのもどうかなとも思ったし・・・。」

バク『あれ程こういう場所で生身の人1人での行動は危ないと言ってるのに・・・全く。シンゴにはやっぱり僕が必要ですね。じゃあ帰りましょう、もう一度みんなと面と向かって話をしてみます。また前と同じように付き合ってもらえないかって。』

「大丈夫。僕からも話するから・・・。」

その後バクフーンと一緒に家へと戻る。その道中バクフーンがなんかやたらとぴったりとくっ付いてきたのが気掛かりではあるが何か思う事があったのだろうか?バクフーンと会った時に誰か近くに人がいたみたいだから誰かと話していて怖い話でもされたのかどうかは知る由もない。

「バクフーンどうかしたかい?なんかピッタリとくっ付いてきて。」

バク『なんか・・・急に寂しくなってしまいまして・・・シンゴが元の時代に帰ってしまった後の事を考えるとなんか胸の奥がキューって締め付けられる感覚があって・・・。』

そうか・・・今は戻る術が分からないけど何れは元の時代に帰るのだろう。その後はバクフーンだけじゃなくてリザードとかルクシオ、ブイゼルはどうやって過ごしていくのだろうか。今まで僕は全く考えてこなかった。そうか・・・

「今はまだ僕居るから。先の事は考えなくて目の前の事だけを考えていればいいんじゃないかな?その時が来た時に考えよう?」

バク『はい・・・。』

静かに僕達は家まで歩いて帰った。




「はい、全員整列!!!ほらバクフーンに謝って謝って!」

バク『そ・・・そこまでしなくても・・・しかもそんな何かやらかしたみたいな感じにしなくても僕は全然気にしてないから。でもちょっと傷ついたけど(ボソッ)』

家に帰った僕達はまず他のポケモン達を横一列に並ばせると整列の号令をかける。リザードはなんか謝る事に恥ずかしさがあるのかあまり機敏ではなくゆっくりな感じでやってきたが、ルクシオとブイゼルはやはり何か後ろめたい気持ちがあったのかすぐにサッとピシャっと並んだ。

リザ『その・・・なんだ・・・あー・・・。さっきは悪かった。もうちょっと気持ちを考えるべきだった・・・この辺りじゃ見た事も聞いた事もないポケモンだったから最初にあんな態度を取ってしまってすまなかった。』

ルク『本当ごめんね・・・なんか全く見た事がないポケモンだったからつい条件反射的にあんな態度取っちゃったけど、リザードの言う通りにもっとバクフーンの気持ちを考えるべきだったね・・・そもそもバクフーンになったとしても中身はマグマラシのままだし姿かたちは変わっても中身は変わってないからあんな態度取る方がおかしかったよ・・・。』

ブ『ごめんなさい・・・急だったから・・・。』

バク『そんなみんなして謝らなくても・・・確かにあんな態度取られた時はついカッとなったりしたけど、僕も考えてみると全く見た事も聞いた事もないポケモンが目の前に現れたらそりゃあびっくりして警戒もするよなぁって思って。だからみんなの気持ちも分からなくはないよ?そんな事よりも僕は僕であって他の誰でもないからそこだけ覚えておいてくれたら・・・。それと・・・シンゴもありがとう・・・ここまで僕を見捨てずに育ててくれて・・・これからもよろしくね?』

「こちらこそよろしくね?じゃあバクフーンも戻ってきた事だし遅くなったけどご飯にしようか。明日もまた仕事して張り込み張り込み。今日はちょっとあれだったからあれだったけど明日は今日の分も追加して何か掴まないと。」

リザ『あまり無茶するなよ・・・シンゴが逆に倒れるぞ・・・なんでもほどほどにな?』

ブ『あっ!そうだそうだ!さっきシンゴに頼まれてた書籍借りてきたよー!図書館の人滅茶苦茶困惑してたけど無事に借りれた!でもこれって何が書いてあるの?えっ?ポケモン図鑑??の先祖みたいな物だって?なんだそりゃ。』

さっきバクフーンを探しに家を出る時にブイゼル達に近くの図書館に行ってもらう様に頼んでいたのをすっかり忘れていた。そもそもポケモンだけで借りられるかどうか不安だったけど無事に借りる事が出来たようで一安心・・・それで何を借りてきてもらったかと言うとこの時代のポケモン図鑑。もしかしたらポケモン図鑑にバクフーンの事が書いてないかなと思って借りてきてもらったのだった。

「どれどれ・・・あぁなるほどなるほど・・・へぇ~・・・やっぱりこの地方のバクフーンはその姿が正常な姿みたいだね・・・しかもゴーストタイプが追加になっとる。でも気になる事がいくつも書いてあって、まず一つが死んでこの世を彷徨っている者の魂が見える・・・もう一つがその魂を食べて浄化して極楽浄土へと導く・・・謂わば送り人みたいな役割を担っているとも書いてある。そしてこのバクフーンは死んでいるので鼓動の音はしないし、死者の魂を食べるから普通の食材は飲食せずに死者の魂をエネルギー源としているという説・・・・えっ????ん?考えたらバクフーンって進化する直前に幽霊がどうとかこうとか」

バク『!?!?いやいやいや僕はそんな事しませんよ!?絶対にその本を書いた人おかしいですって!?僕は心臓の鼓動もしてるし息もしてるし普通に飲食もしますよ!?そんな魂なんて恐ろしい物食べませんし、あの世に送るとかしませんって!!導くなんてもっての外!!他のポケモンに頼らずに一人で勝手に逝けって感じですよ・・・彷徨っている魂が見えるという部分以外は明らかに誇大表現です!!』

リザ『やっぱりこいつ怖いな・・・彷徨っている魂が見える時点で一般的には結構恐ろしい事出来てるぞ・・・。やっぱり暫くは様子見した方が良さそうだな、シンゴも気をつけろ・・・何しでかしてくるか分からんぞ。』

「ま・・・まぁ、さっきくっ付かれた時に心臓が動いている音はしてたし鼓動もあった。魂食べて浄化するのはあくまでも他のバクフーンがそうであって全部に当てはまるとは限らないから大丈夫でしょ?詳しくは知らんけど、多分この図鑑の誇大表現だな。もし本当の事ならば怖い怖いくわばらくわばら。」

バク『もー!!!!また家出しますよー!!!』首元に炎出しながら

ルク『落ち着いて落ち着いて!!誰もバクフーンが変とか言ってないから!!落ち着いて!!そんな家の中で炎出してたら火事になるって!ブイゼルだけじゃ消火出来なくなるって!!まず落ち着いてバクフーン!!!』

その後バクフーンを宥めるのに相当な時間が掛かったのは言うまでもないのだった。そしてその様子を外から見ている影が2つ。

「ふふふ・・・仲良くやってるようで良かった良かった☆これなら心配はなさそうね?やっぱりゴウカザルの考えすぎだったんじゃないの?えっ?念には念を入れてって?ふふふ・・・シンゴなら大丈夫よ。仲直り出来るって分かってたし!じゃ帰ろっか。」

その1人と1体の陰に気づくものは家の中に1人として居なかった。
お盆が終わりいよいよ夏が終わりそうな雰囲気になって参りました。

っというよりも西日本は猛暑、北日本や北陸辺りは大雨災害だらけで数年前までの夏がどれだけ普通で良かったのかと思います。次の連休は9月終わり・・・それまで生きてればいいですが(誇大表現かもね)

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