24.水タイプの攻撃だけ怖くない人

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 ピカチュウとイーブイはダンジョンに入ったが、入り口付近で30分程度うろうろしていた。このイーブイは元々人間だったが、先週ポケモンになってしまい、ピカチュウと出会い救助隊を組んだ。
 イーブイは今日はじめて、ダンジョンに潜った。


「ポケモンの攻撃喰らうのどれぐらい痛い?」
 ピカチュウにイーブイが執拗に聞いていた。
「技によるよ」
「じゃあ体当たりってどれぐらい痛い?」
「どれぐらいって言われても」
 元人間のイーブイは、ポケモンの攻撃を怖がっていた。それで質問責めをしていた。
「捻挫するのと体当たりってどっちが痛い?」
「捻挫?」
「自分先週捻挫したから。捻挫より痛いか痛くないか分かれば、痛みの基準が判明する」
「体当たりの方が痛いんじゃない? たぶん」
「そっか……痛いのか」
「分かんないよ。捻挫っていっても色々あるし」
「骨折と体当たりならどっちが上?」
「骨折したことないから分かんない」
「ねえ教えて。どっちが上? 骨折とたいあたり」
「骨折が上じゃない? イメージだけど」
「じゃあ体当たりは、骨折と捻挫の間ぐらいで良い?」
「まあそれぐらいか」
「骨折と捻挫の間だね。うん分かった。うんうんうんうん」
 今までイーブイは、怖がって入り口付近から動けずにいたが、ようやく歩き出す。
 だが、すぐ立ち止まって振り返った。
「本当に骨折と捻挫の間なの?」
「まだ聞くの?」
 あまりのしつこさに、ピカチュウはうんざりする。
「だいたい間だと思うよ」
「間で良いんだね?」
「分からないけど」
「分からないんじゃだめだよ!」
 イーブイは入り口付近に戻ってしまう。
「早く行こう。いつまでここにいるの」
「分かってるけど、痛みの基準が明確じゃないと心構えが難しい」
 なぜ痛みの基準を知りたいのか、ピカチュウには理解不能だった。
「試しに、軽くでいいからぶつかってきて」
「は?」
「1/3ぐらいのパワーでぶつかって。『体当たりは今の3倍ぐらい』って分かるから」
「嫌だよ。無駄に体力削りたくない」
「じゃあもう無理じゃん! 分からないじゃん基準が!」
 イーブイは蹲って頭を抱えた。
「あーもう! なんでポケモンになっちゃったんだよ!」
 自分で自分を指差しながら叫ぶ。
「君だよ君、君のせいでこうなったの。分かる? 君に言ってるんだよ。ねえ分かってるの!」
「(どういうビビり方だよ)」
 バトルが苦手な子は確かにいる。しかしこういうタイプのビビり方は見たことない。
「(これが人間のビビり方なんだろうか?)」
 埒が明かないのでピカチュウはこう提案する。
「一旦引き返して明日にする?」
「今日の方が良い」
「え」
「この恐怖心は今日中になくしたい。明日まで持ち込みたくない」
「じゃあどうするの?」


 そうしている間にアメタマというポケモンが現れた。
「敵きた! 戦わないと」
 アメタマは『泡』を繰り出そうとしている。
「イーブイ離れてて」
 ピカチュウはそのように言った。しかし、イーブイは離れるどころか前線に出る。
「え? 戦えるの」
「うん。水タイプの攻撃はあんま怖くない」
「は?」
「泡とかなら全然いける」
「……」
 アメタマはイーブイを攻撃するが、イーブイは平然と避ける。怖がっている様子はない。
「いや水タイプの技も等倍だよ。体当たりと一緒」
「それは分かるよ。でも水は別に怖くない。雷とか炎は怖いけど」
「……」
 価値観がピカチュウには理解できなかった。水は怖くないの意味が分からない。


「痛っ、いっいっいっ、おっおっおっおっ」
 アメタマの泡がイーブイの腕に当たる。イーブイは腕を擦り後ずさりした。その後、ピカチュウはアメタマを電気ショックで戦闘不能にした。
「大丈夫? ほら、水タイプも痛いじゃん」
「水なのになんで痛いの?」
「等倍だから水も」
「あ、でも今ので分かったかも」
「え?」
「体当たりも、泡と同程度の痛さで良いんだよね?」
「まあだいたい同じくらいかな」
「よし、これぐらいなら、大丈夫。いける」
 痛みの基準を得た元人間は先へ進む。人間は分からないなあとピカチュウは首を傾げた。

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