23.アルセウス

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 現在家族が誰も家にいないことを彼は確認した。この暑い中、エアコンもないのに部屋の窓は全て閉めた。雑音が入るとまずい気がしたので、扇風機も念の為消した。
 こもる熱気を堪えつつ、汗を拭いながら彼は、任天堂DSの電源を入れたのだった。DSに入っているソフトは『ポケットモンスター ダイヤモンド』だった。
 彼は「つづきからはじめる」を押してゲームを開始した。主人公を、ある特定の場所へと移動させる。
 DSにはマイク機能が備わっている。左下に穴が空いており、ここに向かって声を出すことで、ゲームをしたりチャットをしたりできる。
 彼はマイクを今まで使ったことがなく、DSにマイク機能があることも今日はじめて知った。
「えっと、このマイクを使えば良いんだな」
 彼はゲームをつけっぱなしにした状態で、マイクに口を近づけた。
 そして彼は次のように言った。


「アルアルアルアルアル、セウセウセウセウ。
アルセウスアルセウス、アルスアルスアルスアルス。
アールアールアルアルアルセウス。
アルセッアルセッセッセウス。
アセスアセスアセスアセスアセス。
ルウルウルウルウルウ。
アルアルセウスアルセウス。
ウスウスアルセウス。
アルアルアルアル。
アルセアルセアルセアルセ。
アルセウアルセウアルセウアルセウ。
アルセウスアルセウスアルセウスアルセウス。
アルセウス。
アーーーーールセウス。
アーーーーールセウス。
アーーーーールセッセッセッセウス。
アルセウス、アルセウスアルセウス」


 しかし、画面上には何の変化も起きていなかった。
「おかしいなあ。ネットに書いてあった情報通りにやったのに……」
 画面の中の主人公は、暗闇の中一人寂しく立っている。
 ここは、「なぞのばしょ」と呼ばれていた。
 四天王の部屋からなみのりを使うことで、この場所に行ける。なぞの場所からある行動を取ると、ダークライをゲットできる裏技が世間に知られていた。
 更に、彼が見ているネットの掲示板には、アルセウスもゲットできることが書かれていた。
 なぞのばしょに向かい、先程彼が唱えていた呪文を、DSのマイクに向かって唱えることで、アルセウスが登場すると書かれていた。そのコメントを見た人が、実際にアルセウスをゲットできたことも書かれていた。
 だから、きっとできるだろうと彼は思っていた。


 彼は、ポケモンの裏技が書き込まれた掲示板をもう一回見た。
『この呪文は完全にガセ。本当に正しいのはこっち』
 掲示板には新しい呪文が書き込まれていた。
「そっか。こっちの呪文が正しいんだ。もし、もう一回やってみよう! 最初『アルアルアルアルアル』じゃなくて『アルアルアルセウス』なんだな」
 彼は再びDSのマイクに向かって、怪しげな呪文を唱えはじめたのである。
 彼が正しい情報に辿り着くのは、まだまだ先のようだ。

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