【伊崎式バトル003】アブソルvsガラガラvsオオタチvs?

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※伊崎式バトルとは?
……Twitterでリプをもらったポケモン同士を伊崎の文面で戦わせるという企画。作者がバトルシーンを一杯描きたいからやってる企画。
【Battle File 003 アブソルvsガラガラ(RF)vsオオタチvs???】

人も寄り付かぬ、辺鄙な乾燥地帯の森にて。
そこに駆け抜けるは1つの木枯らし……そして白銀のポケモンの軌跡。
風を切りながらアブソルが向かう先は、森の小さな泉のほとりであった。
今は昼時……多くのポケモンたちが水を求めて集う時間帯である。

しかしいざアブソルがたどり着いてみると、そこに居るのはごく少数のポケモンのみであった。
オタチやオオタチの群れと、それを従えるホネをかぶったポケモン……ガラガラだ。
しかもアローラ地方でしか発見されない、珍しい形態である。
森の中で生活をするに連れて、適応した結果なのだろうか。

アブソルの存在に気づくと、オオタチ達は途端に警戒心を見せ始める。
それもそのはず……彼が来たということはそれ即ち「厄災」の前触れにほかならないからだ。
アブソルは首を軽く捻り、ガラガラたちに警告する。
『この森には間もなく厄災が訪れる。命が惜しくば今すぐ立ち去れ』と。

しかしガラガラは首を横に振り、前へと立ちはだかる。
『ここは俺の故郷だ。行く宛のない俺を育てた母なる森だ。このオオタチ達も同じである。一体我らに何処へ向かへと問うのだ。』と。
アブソルは反論する。
『それは知らぬ。だがこの場に留まるはそれ即ち、厄災を招くことにほかならない。』と。
ここへさらに
『笑わせるな。そも厄災とは、お前のことではないのか。』と、ガラガラは伝えた。
どうにも彼はアブソルのことを疑って止まないようだ。
彼らは仲間意識が強く、それ故に余所者に冷たい。

ガラガラはホネを水平に構えて離さない。
これが話し合いで通じる相手ではないことを、アブソルは悟った。
ならば最早、取るべき手段は実力行使以外にあるまい。
せめてリーダー格のガラガラさえ落とせば、彼らは大人しく言うことを聞くだろう……と。

そこから先の判断は早かった。
アブソルは一瞬にして姿を消すと、近くの樹上に爪を突き立ててガラガラの上を取る。
より高い位置から首を振り上げ、『サイコカッター』の斬撃を3発放つ。
風に乗った斬撃は、目にも留まらぬ速さでガラガラの方へと飛んでいく。

だが、この森の風ならガラガラのほうが熟知している。
彼は『シャドーボーン』の攻撃に移り、目の前の斬撃を縦、縦、そして真横……と、寸分の隙なく斬り捨てて行く。
後ろのオオタチに流れ弾が行かないように配慮しつつ、下半身も無駄なく動かした防御であった。

だがやはり、風と共に駆けるアブソルのスピードは並大抵のものではない。
ガラガラの視界が丁度横方向のホネで遮られた瞬間、アブソルは自身が4撃目の斬撃となって襲ってきたのである。
渾身の『つじぎり』が、ガラガラのホネを目掛けて痛快にヒットする。

そのまま彼らは鍔迫り合いへと発展し、一歩も退かず押し切りを狙い合う。
……が、パワーで優勢なのはガラガラの方だ。
構えた刃の支点が2つある以上、どうしても安定感では勝ってしまう。
悟ったアブソルは、すぐさま後ろに飛んで避ける。

だがタダでは終わらない。
アブソルはバックジャンプと共にしっかりと『サイコカッター』の斬撃を投げつけ、ガラガラの挙動を制限する。
当然、この斬撃をガラガラは受け止めるしか無い。
縦に構えたホネで、『サイコカッター』を受ける……かと思われた。

が、ガラガラの取った選択肢は違った。
なんと彼は、ホネを捨て去ったのである。
そして正面に迫りくる『サイコカッター』を、頭のヘルメットで受け止めてしまったのだ。
当然、無傷で済むわけがない……が、頭部は彼にとって最も安全な部位の1つでもある。
敢えてここに攻撃をくらいに行くことで、本体への致命傷を避けたのだ。

そのまま正面切って駆け抜けたガラガラは、脚に炎を点火させて大きく飛び上がる。
高熱を纏って豪速で突撃する攻撃『フレアドライブ』だ。
空中を安全圏だと勘違いしたアブソルへ、不意の一撃を食らわせたのである。
カラカラの渾身の一撃……故に大ダメージは必至である。

だが、直後……アブソルの姿は霧と消える。
確かにガラガラは強烈なヘッドショットを与えたはずなのに……だ。
ふと違和感を感じたガラガラは、正面真下の地面へと視線を移す。

するとそこにはアブソルの姿が……!
ここでガラガラは気づく。
今しがた自分が攻撃したのが、『みがわり』で生み出された残像であったということに。
本体は飛び上がっていたのではない……斬撃を放つと共に、速やかに着地していたのだ。

だがもう遅い。
空中では行動の始点を置けず、思うような身動きは取れない……即ち、アブソルから放たれる斬撃を回避する手段がない。
先程のように頭を向けようにも、空中では大きく姿勢を変えられない。
残念ながら、ガラガラは『サイコカッター』5発の直撃を許してしまったのである。

仕掛けどころを理解していたアブソルの勝ちだ。
思い切り腹部を斬りつけられたガラガラはその場にて倒れ込む。

……が、何故かガラガラの表情は笑っていた。
アブソルは不可解に思い、周囲に意識を研ぎ澄ます。

しかし残念。
既にアブソルはガラガラの術中に嵌っていたのだ。
アブソルの真上には丁度、大木が倒れてくるところであった。
何故気づかなかったのか……否、どうしてこうも都合よく倒木が起こったのか。

それはガラガラが先に仕掛けていた『ホネブーメラン』が、アブソルの付近の木の幹を焼いたからだ。
あの時のホネは捨てたのではない……投げていたのだ。
アブソルを確実に押しつぶすべく、環境までをも視野に入れて!
しかもそのタイミングは、偶然にもアブソルが攻撃を仕掛けた直後……聴覚が鈍くなる瞬間であった。
恐るべき強運としか言いようがない。

大きな倒壊音とともに、アブソルは巻き込まれる。
そして大木の断面は泉に水没し、うまい具合に火災は発生せずに終わった。
今ここに、真昼の森の戦いは決着した。
両者の相打ち……という形で。





自らのリーダーをやられたオオタチ達は、慌てふためく。
この場に倒れた2匹をどうすればいいか、誰一人として分からなかったのだ。
しかし群れの中の1匹が、心配そうにガラガラへと駆け寄ってくる。
彼の身を案じているのだろう。
なんとも不安げな声を上げつつ、彼の背後へと迫る………


その直後であった。
オオタチの目の前を、『サイコカッター』が通り抜けていく。
瀕死のアブソルが、渾身の一撃を繰り出したのだ。

未だ攻撃を加えようとするアブソルに憤慨したのか、ガラガラは立ち上がり再度の反撃を加えようとする。
が、彼は違和感に気づいた。
アブソルはわずかに口を動かしている……!





『 逃  げ  ろ 』






ガラガラの言葉の意味に気づいたときには、既に遅かった。
何故なら既に、彼の背中はオオタチによって斬りつけられていたのだから。



「!?」
ガラガラはその場に倒れ込む。
訳が分からなかった。
仲間であったはずのオオタチに、背後から襲われた……その事実が彼には受け入れられなかった。
困惑の中、ガラガラは再度倒れ伏す。

そして続けざま、オオタチは『あくのはどう』を発射してアブソルの息の根を止める。
先程まで激闘を繰り広げていた2匹は、倒れたまま意識意識を失ったのだった。

背後のオオタチ達が、更にざわめき始める。
まさか自分たちの中に、ガラガラを傷つける者がいただなんて、夢にも思わなかったのだから。
しばらくして、当のオオタチはガラガラを担ぎ上げる。
そしてそのまま、何処かへ飛び去ろうとしていったのだ。

その瞬間、オオタチの群れの一員が声を上げる。
どうやら違和感に気づいたようだ。
ガラガラを襲ったのはオオタチじゃない……別の何かだ。
声を上げたオオタチは、ガラガラを担ぎ上げたオオタチに『ハイパーボイス』をぶつける。

片手の塞がっていたオオタチは、その攻撃を受けてしまう。
そして次の瞬間にはオオタチ……否、ゾロアークはその正体を白日の下に晒してしまっていた。
そう、彼は姿を化かして大太刀の群れに紛れ込んでいたゾロアーク……完全な部外者であったのだ。


「どうしたゾロアークッ!?」
作業服とヘルメットを着た男が駆け寄ってくる。
首からかけられているのは「○○地方環境保全員」と書かれたネームプレートだ。
男は、何匹かのポケモンが倒れ伏している現状を見て、激しい闘争があったことを知る。

「……なるほど。例のガラガラの捕獲に随分と手間取っていたみたいだな。」
ゾロアークは軽く頷いた。
一体どういうことか。

……この保全員の男は乾燥地帯の森林に居るはずのないガラガラ……つまりほのおタイプのポケモンがいるという情報を得ていた。
ほのおタイプのポケモンがこの森に生息してしまうと、大規模な山火事が発生する可能性がある。
だからこそゾロアークを工作員として送り込み、秘密裏にガラガラをこの生態系から排除しようとしていたのである。

だが、残念ながらガラガラは強すぎた。
ゾロアークが寝首をかく瞬間は、なかなか訪れなかったのである。
しかしアブソルの襲撃が、見事な好機となった。
そして弱ったガラガラを、漁夫の利として連れ去ろうとしているのだ。

なんと皮肉なことだろう。
アブソルの告げた厄災は、アブソル自身の来訪によってその芽を吹き出してしまったのだ。

男とゾロアークはその場を離れようとした……が、残念。
周囲にはオオタチの群れが、彼らを取り囲むようにして陣取っている。
この森についての地の利は彼らにある。
どうやら男とゾロアークに逃げる余地はないようだ。
……決着を付けなくてはならない。

「よし、ゾロアーク……『バークアウト』だッ!」
ゾロアークは自らの喉を鳴らし、大きな怒鳴り声を上げる。
鬱蒼とした木々の映える森に、けたたましい声がこだました。
殆どのオタチやオオタチは戦闘経験が殆どないため、この一撃だけでノックアウトに追いやられてしまう。

……しかし、そんな中でも勇猛果敢な個体が数名。
『すてみタックル』の一撃と共に、ゾロアークの上を取りつつ突っ込んでくる。
木々の合間を縫った立体的な一撃だ。

だがゾロアークの動体視力は凄まじいものだ。
ガラガラを片手で抱えつつ、もう片方の手から出される『はたきおとす』で2匹。
「後ろッ、『あくのはどう』!」
更に口から吐き出す『あくのはどう』でもう2匹を撃墜したのであった。
無駄も隙もあったもんじゃない。
オオタチらは力尽き、遂にその場に倒れてしまった。

「ふぅ……ひとまず無力化したか。悪いなオオタチ……」
男は一息つき、ゾロアークからガラガラを受け取ると踵を返す。


その脚に違和感を覚えた。
「真下に……何かいる……ッ!」
しかし気づいたときにはもう遅い。

『あなをほる』で奇襲を仕掛けたオオタチ数匹が男に飛びかかり、長い胴体で巻き付くことで彼の視界を奪っていった。
そしてその隙に、ガラガラを奪還する。
更に残ったもう1匹が振り向き様、『きあいだま』を発射してゾロアークを牽制する。

ゾロアークもまた『あくのはどう』で相殺を図ろうとする……が、残念。
多数の奇襲のせいで動揺があったせいか、力が僅かに及ばなかったのだ。
ゾロアークは『きあいだま』をモロに喰らい、その場で力尽きてしまう。
「チッ……出直すぞゾロアーク!」
保全員はゾロアークをボールに戻すと、駆け足でその場を去っていった。

ひとまず一件落着……厄災は去ったのだ。



ーーーーーアブソルは怪我の完治を待ち、オオタチ達に謝罪の意を述べた。
そして彼は確信する。
『少なくとも彼ほどのホネ捌きのポケモンがこの森にいれば、森が火災に巻き込まれることもないだろう。』と。

アブソルは夜風とともに森を去った。
二度とこの森に、厄災を告げることがないことを願って。

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