【三十六】何考えてるんだか

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 ボールから出たラグラージは、バスから降りて112番道路を歩いていた。
 一つも満足そうな顔をしない隣のヒノテに、このままフエンを出て良いのかと幾度か声を掛けるものの、「いいんだ」の一点張りで頑なに譲らない。
 何を強情になっているのだとラグラージは呆れていた。反対側を歩くグラエナもまた、ラグラージと同じ意見らしい。二匹で顔を見合わせ、何やってるんだか、と首を横に振る。
 ヤミラミだけは、とことことその辺を走り回っては戻って来て、ヒノテに飛びついたり、グラエナの背中に飛び乗ったり、ラグラージにちょっかいをかけたりと忙しない。
「どうしたヤミラミ、落ち着けって」
 ヒノテが動き回る悪戯っ子を抱き留める。ヤミラミが何を伝えたがっているのか、ラグラージはすぐに分かった。
 メグリはいないの?
 ヒノテにもヤミラミの動きでそれが伝わってきたのか、「あいつはいないよ」と伝えて、グラエナにそのお転婆娘を預けた。
 例のマグマ団というグループに所属していた事が、どうもまだひっかかるらしい。ラグラージやグラエナ、もちろんヤミラミも、そんな事は微塵も気にしていない。一番一緒にいたグラエナがそうなのだから、今更何を気に病む事があるのか。
 その辺の悩みについて、ラグラージはとんと理解出来なかった。
「お前等なあ、そんな色々言うなよ。これで良いんだって。俺だって元マグマ団員なんだ。フエンの人達の心を逆撫でする必要はない。仕方ないだろ」
 ガウガウと文句を垂れるグラエナに、ヒノテはうるさいうるさいと聞く耳を持たない。何をそんなに気にしているのか。相変わらず人間の考える事は小難しい。ラグラージは水でもぶっかけてやりたい気分だったが、どうも意思は固いらしい。どうしたものかと思いつつ、またちょこちょこ駆けだしたヤミラミを視線で追っていると、今度はどこへ行くのか。来た道へ急いで戻って行く。待て待て、とラグラージも振り返ると、遠くから、何かが走って来るのが見えた。
 目を凝らさなくても、少し近づいて来れば分かる。
 炎を背中に背負い、地を駆ける姿は圧巻だ。無事で良かった。その素晴らしい姿をぶち壊す、不格好な姿で背中に乗る少女が一人。
 ヤミラミは、追わなくても良い。
 もう、何も心配する事はなさそうだ。

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