※お題箱「ニダンギルがはぐれちゃうお話が読みたい!」より
ステージ作りも順調に進み、ショーの流れを考え始めたロトムは、大技のイリュージョンも取り入れたいと思っていました。けれどもみんな忙しく、頼めそうなポケモンがいません。
そこへお手伝いすることがないかとヒトツキがやってきたので、借りてきたビデオを見せて、斬ってもくっつくイリュージョンがやりたいのだと説明すると、ヒトツキはわかったと元気よく、詳細を聞く前に飛び出して行きました。
ヒトツキはニダンギルとギルガルドにイリュージョンのことを話しました。なるほど、それはもしかしたら剣の秘術の事かもしれない。ギルガルドは大切にしている誰かの日記帳をパラパラめくり、剣の秘術が書かれたページを見つけました。
その技は切れ味鋭く相手は斬られたことすらわからないから、気づく前にくっつけると元に戻る。というものでした。ギルガルドも以前一度だけやってみたことがありますが、上手くいかずただ木を二つにわけるだけになってしまったのだとか。これはちょうどよい機会だ、今度こそ会得してみせると意気込んで、ギルガルドは深く瞑想に入りました。
呼吸さえ止めて、ゆっくりと目を開け、まぶたを開ききったところで振り向きざまに剣を振るいました。斬撃は木偶人形を切り、絨毯を切り、直線上とはいえかなり離れた場所にいたニダンギルを真っ二つに切り、ついでに空間も切ってウルトラホールのような穴を開けてしまいました。
パキンという音と共に切断されてしまったニダンギルのかたっぽは、ウルトラホールのような穴に吸い込まれて、消えてしまいました。思いもよらない事態に、ヒトツキもギルガルドも、斬られたニダンギルの片方も、ただ呆然と立ち尽くすことしかできません。
そのうち事態を理解したニダンギルは、いつもヒトツキの前では見せないような声でわあわあ泣き出しました。ずっとずっと一緒だった相棒が、体の一部がないのですから、それはもう天と地がひっくり返ってしまったのと同じことです
これにはギルガルドも慌てます。しかしもう一度穴を開けても、ニダンギルのかたっぽが吸い込まれたところへ出る保証はありません。どうにかして取り戻さねばと、日記帳を端から端まで読み返します。ヒトツキは、ニダンギルの片方に布を巻いて、よしよしとなだめるのでした。
ところかわって、吸い込まれたニダンギルのかたっぽはどこか暗い場所にいました。下がアスファルトなので、道路にいることは確かなようですが、あたりには何もなく、誰もいません。本当の本当に一匹ぼっちです。
ここにいたって仕方がない。心細くて怖くて堪らないけれど、ニダンギルのかたっぽは歩いて道を進むことにしたのでした。
というところで、マジックショーのおはなしはおしまいです
片方だけのニダンギルは元に戻ることができるのか、ショーの準備は間に合うのか、色々知りたいことはありますでしょうが、まずはここまで。次回からはHalloween dream nightのおはなしが始まります。
ゴーストポケモンたちがあることのために、夢と現実を行ったり来たりする様をおはなしできればと思います
それでは皆様良い夢を、どうぞ安らかに。