※この作品に登場するコリンクは、作者の独自改変により二足歩行となっています。
主要登場キャラ
・リアル(ピカチュウ)
・ヨゾラ(ツタージャ)
・デリート(イーブイ)
・シュン(コリンク)
・アンドリュー(カメックス)
・ボスゴドラ
森の中を進むこと数分。ボスゴドラは振り向き、アンドリューに声を掛けた。
「じゃ、俺の担当はこっちだから」
「おう、頼んだぞアニキ」
アンドリューが応じ、ボスゴドラは持ち場に向かって彼の元を離れようとした。が、ふと何かを思い出したように声を上げ、もう一度アンドリューに向き直る。
「そういや結局何だったんだよ、シュンの配置替えは」
「ああ、それはな……」
言うのを躊躇うように、下を向いて口ごもるアンドリュー。だが、意を決してボスゴドラを見上げた。
「目を付けてる奴がいるらしい。そいつを担当したいっていうワガママだった」
「ふーん……アイツがそんなことを……。って、その担当したい対象がどこに行くかなんて分からなく無いか?」
「俺もそう思ったんだがな。どうやら逸れないように誘導するらしい」
誘導、という言葉にボスゴドラがムッと顔をしかめる。
「手助けするつもりなのか?」
「いや、あくまでも他の担当範囲に出ないように、らしい」
「ふーん……」
不満げな様子ではあったが、一応納得したようでボスゴドラはまた前を向いて歩き出した。そのまま森の中に消えていく。
今度こそ一匹だけになったアンドリュー。
彼もまた役目を果たすために歩き出した。手にするは黄金の鍵。
そして誰ともなしに小さく呟く。
「あの居候がねぇ……」
※
「あなたは……!? どうして!」
目の前に立つ、宣戦布告をしたコリンクにデリートは驚きの声を漏らした。
シュンと名乗った、その首元には黄色いスカーフ。そしてバッジも光っている。それは《プリンのギルド》所属の探検家である証。その探検家が、なぜ──
「これも訓練だよ……デリート」
全力疾走の代償に肩で息をするリアル。
不敵な笑みでこちらを見るシュンを睨みつけながら、デリートの疑問に答えを返す。
そう、ダンジョン内にアイテムを設置するには問題点がある。その迷宮の特殊さ故、地面に置いたアイテムはそのうちどこかに消えてしまうのだ。事前に宝箱を設置し、後で一年生に拾わせる為には工夫が必要となる。
そのひとつはあの壁。ダンジョン内に大きくスペースを取り、一つの建物を建ててしまう。そうすれば、ダンジョンの一部となった部屋はそう簡単にはバラバラにはならないのだろう。
だがそこには鍵が必要だった。
宝箱同様にまた、鍵を隠すにも工夫が必要になる。勿論同じように鍵を大きな部屋の中に置いておくことも出来るだろう。だが恐らくは全チーム分あるあの壁。最低でも六つはあるあの部屋を、もう六つ用意するだろうか。
宝箱を隠すための部屋を隠すための、部屋。そんなものを用意するとは思えない。
ならば、もうひとつの方法。アイテムを紛失しないようにしつつ、一年生に拾わせる方法は。
「置かずに持っていればいいんだもんな……最初から」
リアルの言葉にシュンが頷く。
「まあ鍵を隠すためではなく、どちらかと言うと上位のギルドメンバーと戦ってもらうのが目的だけどな」
「……じゃあやっぱり戦うんですか」
ヨゾラの声が震えている。
それも当然だろう。
リアルたち三匹は既に半ば絶望していた。
日没まではまだ時間はある。だがそこに立ち塞がる壁が大き過ぎた。
目の前に立つ小柄なコリンクは、あまりに強かった。
戦闘に慣れている訳ではない、手練を見分ける技術がある訳でもない。それでもヒシヒシと感じるのだ。
彼の圧倒的な強さ。一つの隙もなく、どんなに不意を討とうとも勝てるビジョンが浮かばない。まだ進化すらしていないその先輩に……。
何故か……何故か分かってしまう。
少なくとも、今の自分たちには彼を倒すことは出来ない──
「リアル……僕、彼を知らないんだ……シュンさんっていう探検家を。有名な強い探検家は知ってるはずなんだ! なのに……なのに……!」
ヨゾラのその言葉で、今日の朝を思い出す。
それは早朝のギルドの庭で、まさにヨゾラが言っていた言葉。
(ああ、このポケモンだったのか)
探検隊マニアのヨゾラが知らない探検家が、あの時アンドリューの後ろに居たという。それが誰なのかは聞きそびれたけれど、恐らくはこのシュン。
そういえばあの時前にいたギルドメンバーは、アンドリューを含めて六匹。
そうか、あのメンバー全員が訓練に参加しているのか……。
「……ああ、俺の探検隊は有名じゃないからな……華々しく格好良い訳でもないし」
そう答えるシュンの顔に、一瞬寂しそうな表情がよぎったような気がした。
「だが俺は強い。俺と共に訓練に臨む他のメンバーも同じだ」
「それでも、やらなきゃいけないんだろ」
「リアル!」
後ろから不安そうな声。
だがリアルは腰を低くして戦闘の構えをとる。
いくら相手が強くとも。たとえ勝てなかったとしても。そう、ここで諦めるという選択肢はないだろう。もっと遥かな目標があるのに、序盤から諦めていたら何になる。それに──
「たかが、訓練だろ? 楽しもうぜ」
リアルは振り向き、そう言って、笑った。
「ッ……!!」
二匹が息を飲む。
長時間の戦闘で疲れ果てた身体は万全とはとても言えない。だが、三匹は意を決した。
「……分かった。やろう! リアル!」
「今日一日の、練習通りに!」
二匹の意志を確認して、リアルは頷く。
「行くぞ!」
リアル達は、一斉に飛びかかった──
※
リアルは地を蹴って一直線にシュンに向かう。その後をヨゾラとデリートが追った。
勢いを弱めぬまま、拳を振り上げて宙に跳ぶ。
「はあぁぁっ!!」
身体ごとぶつかりつつ、その拳を振り下ろして……!
「なっ!?」
次の瞬間、振り上げた腕を抑えられた。疾走の勢いも横に逃がされ、バランスが崩れる。立て直そうにも彼はその手を離さない。
(まずい!)
シュンがニヤリと笑った。
身体が宙に舞う。今度は自分の意思ではない。
反動をつけて放り投げられたリアルは、後ろから飛びかかろうとしていたヨゾラに衝突して諸共吹き飛ばされた。
「うわっ!!」
下敷きになったヨゾラが悲鳴を上げる。
だが攻撃の手は緩めない。
「まだまだっ!」
リアルたちが吹き飛ばされた直後、デリートが猛チャージでシュンに接近する。
高く跳んだ彼女の眼前には幾つもの星々が煌めく。デリートはそれを、全身を回転させることで射出する。
「『スピードスター』っ!」
必中攻撃の近距離射撃。
その美しくも凶暴な攻撃は、敵に向かってそれぞれ弧を描くように飛んでいき炸裂して──
「えっ!?」
敵は微動だにしていなかった。
シュンは一歩も引かず、正面からその攻撃を受けきった。
予想外の出来事に、デリートの計算外の間合いまで接近した二匹。そして着地したデリートに拳が襲いかかる。
「……がっ……はぁっ……!」
一瞬、視界が暗転した。
腹部に強烈な一撃を喰らい、小さな身体が後方に弾き飛ばされる。
「デリートッ!!」
転がるように吹き飛ばされたデリートは、砂埃に塗れながら、木にぶつかって止まる。
「大丈夫!?」
ヨゾラが立ち上がって慌てて近寄ろうとする。
が、弱々しい声がそれを制した。
「だ……大丈夫だから……! 攻撃を続けてっ……!!」
それを受けて二匹は顔を見合せて頷く。
再度リアルは立ち上がって走り出す。
「『はっぱカッター』!!」
リアルの後方から飛来する数多の葉。
それは彼を追い越して先行する。遠距離と近距離の同時攻撃。ヨゾラの攻撃はリアルより僅かに早くシュンに到達し……!
それに対し、彼は何も反応しなかった。
「!」
シュンは向かい来るリアルを見つめたまま、はっぱカッターを喰らい全く動かなかった。
(受けもしないってのか!)
これでは先程と変わらない。
打ち出した拳は受け止められ、そのまま両腕を取られ動きを封じられる。
「……確か君は、技が使えないんだったか」
シュンはリアルを封じたままそう問う。両手を掴まれたリアルは振り払おうにもビクともしない。
「……ああ、そうだ……でも!」
瞬間、体を半回転させて自らの尾をシュンの横腹に強打させた。
僅かにシュンの顔が歪み、手の力が緩まる。
その隙を突いて咄嗟に体を突き飛ばして後ろに飛び退った。
「アイアンテールか……だが中途半端だな」
何とか繰り出せたようだ。突貫で作り上げた、新たな技。何一つ技を覚えていないリアルだったが、試験前にはいくつか新技を試していた。そのひとつがアイアンテール。電気を出せないリアルだが、直接身体で物理攻撃をするのは得意だった。そこから練習していたアイアンテールは、まだ中途半端ながらも強烈な一打を生み出していた。
十分に距離をとって体制を立て直すリアル。
だが逆に不意を打たれることになる。
「じゃあ今度はこっちからっ……!」
そういうが早いかシュンが地面を蹴った。
それを見てリアルは戦闘の構えをとろうとして、
(はやっ──)
数歩分の距離を彼は一歩で詰めた。
そしてリアルが気づいた時にはもう、目の前に攻撃が迫っていて──
「ぐうっ……!」
辛うじて咄嗟に上げた腕で防御する。だが衝撃は腕を通じて全身を叩いた。
「君がそれで戦うというのなら、同じ土俵で戦おう!」
怒涛のラッシュを後ずさりながら腕で防御するリアル。彼にとっては相手が技を出してこないのは僥倖である。だがその一打一打が凄まじい!
衝撃波すら生み出していそうなそのパンチは、決して進化していない小柄なポケモンが出すようなものでは……!
「足元がお留守だ」
「!」
世界が突然傾く。足を払われたと気づいた時には、腹に一撃を食らっていた。
胃がひっくり返るような衝撃を受けたリアルは、声も出ずに後ろによろめいた。息が吸えない。
「リアルー!!」
遠くでヨゾラの叫び声がした。
そしてシュンを貫かんと高速で飛来する蒼いツタ。彼はそれを易々と両手で掴むと、力を込めた。
迸る閃光。凄まじいフラッシュが森を照らす。
「あ、あぁぁぁ!!!」
ツタを伝って電撃がヨゾラを貫く。
逃れることの出来ない痛みに悶えるヨゾラ。悲鳴をあげて体を捩らせている。
「ヨゾラを……離して!!」
シュンの背後から飛びかかるデリート。しかしその攻撃が届く前に、シュンはそのツタを掴んだまま振り回した。
「きゃっ……!!」
為す術もなく振り回されるヨゾラに巻き込まれて彼女は吹き飛んだ。
三匹を一瞬にして蹴散らしたシュンは、一つ息を吐いてリアルを見た。
あまりの苦しさに立っていられずに膝を着くリアル。乱れた息で、敵を見上げて睨みつけることしか出来ない。
圧倒的な力の差。こちらがどんなに全力で攻撃しようとも簡単にあしらわれる。リアルたち三匹は立ち上がることが出来ない。
「……ここまでかな」
「っ……!」
シュンが呟く。
まだやれる、そう反骨心を燃やすリアルだが、その強さを身体が理解している。その足が動かない……。
「リアルっ!」
突如後ろから声をかけられ振り向くと、何かが目の前に飛んできた。慌てて受け止める。
「オレンのみ……」
それを投げたデリートが頷く。ヨゾラにも同じものが渡っていた。
「僕たちの攻撃じゃ無理! 二匹でサポートするから、君が彼を倒して!」
ヨゾラの叫び声。しかし彼らの顔は諦めている訳では無い。その目は死んでいない。
「分かった!」
叫び返してオレンのみにかぶりつく。
ああ、たとえ倒せなくても、一矢報いなければ気が済まない。鍵が手に入らなかったとしても、このままでは引き下がれない!
空を見上げると随分と陽の光が弱くなっていた。あと数時間で日没だろう。
軋む体に顔をしかめながら、リアルはゆっくりと立ち上がった。意外そうな顔で彼を見るシュン。
「まだやるか」
「もちろん……! 負けっぱなしでいられるか!」
後ろから走ってくる足音。横を見るとヨゾラが立っていた。何度も吹き飛ばされた彼は、全身が痛むようで足もふらついている。
「行くよ、リアル」
その言葉に頷く。
そしてもう一度二匹は駆け出した。
雄叫びを上げながらリアルがツタを繰り出す。しかしその速度は先程より遅く力がない。
シュンは無言でそれをもう一度掴もうとして、
「なっ!」
するりとすり抜けた。
空を掴むシュンの片手に、二本のツタが絡みついた。振り払おうと手を振り回すシュン。だがヨゾラは引き摺られながらもそのツタを離さない。
「リアル、頼んだ!」
リアルはもう一度シュンに飛びかかる。拳を振り上げた。敵は片手を使えない。これなら防御を突き抜けて……!
「これくらい問題ない!」
しかしシュンはそう叫んで片手でリアルの拳を受け切った。またも阻まれる攻撃。だがその拳は左手だ。
「『てだすけ』っ!!」
「!?」
森に響くデリートの叫び声。
味方の技の威力を格段に上げるサポート技。
リアルの空いた右手に力が漲り、それを見るシュンの眼が見開かれる。
彼は全力で叫ぶ。
「いくぞ……!!『かみなりパンチ』ッッ!!」
光が弾けた。
相変わらず不完全ながらも、デリートによって強化された、雷を纏った一撃。それは過去最高の威力を以てシュンに食らいつく。
「ぐ……う……!!」
予想外の衝撃に体勢が傾くシュン。だが何とかその猛撃を凌いでいる。両腕を使って二方向の攻撃を受ける彼を打ち倒すには、もう一押し……!
「行けえぇぇ!! デリート!!」
「『スピードスター』っっ!!」
背後から飛びついたデリートの、正真正銘ゼロ距離射撃。
無防備の背中に攻撃を受けてグラつくシュン。
その身体はよろめいて──
「倒れろぉぉお!!!」
「くっ……そ!!」
今まさに打ち倒さんとしたその瞬間。
光、一閃。
目の前を閃光が横切った。視界が光に染まった、そう感じたその時にはもう、三匹は後方に吹き飛ばされていた。
最後の力を振り絞った攻撃を振り払われ、絶望した表情でシュンを見た彼らは驚愕する。
「……何だよ……それ」
震える声でその異様な光景に疑問を漏らすリアル。
劣勢をいとも容易く跳ね返したコリンク。
堂々とそこに立つ彼の手には、
帯電する剣が握られていた。
※
それはあまりにも異様な光景だった。
彼は明らかに武器を手にしていた。
だがそれは木の枝や石といった、単純な自然物ではない。電気を纏った、いや、電気そのものでできた小さな剣。時折閃光が弾けている。
あれは、技……? 半透明なその小剣は、強烈な電撃を以て確かに三匹の攻撃を一振で弾き飛ばした。
「何……あれ……あんなの見た事ないよ……」
尻餅を付いたまま、ヨゾラが呆然とした顔でソレを見つめている。
木の棒で戦うならまだ分かる。練習でそういったものを扱うことはあるらしい。だが、こと実戦において、そのような得物を用いて戦うことはほとんど前例がなかった。
そしてその謎の武器。
何だか分からないながらもその強さに圧倒され動けない三匹。これに、勝てと言うのか──
しかし、結果としてその必要はなかった。
「……マジか」
毅然として立っていたシュンは自らの手を見つめ、そう呟き肩を落とした。その瞬間、手にした小剣は一瞬にして霧散する。
「……え?」
状況が掴めない。
「俺の負けだ。……本来『これ』は使うはずじゃなかった。油断もあったが俺をここまで追い込んだんだ、十分合格点だろう」
そう言って鍵を取り出すシュン。
彼は呆然として動けないリアルの元に近づき、その黄金の鍵を手渡した。
訳の分からぬままそれを受け取るリアル。
そして彼は、じゃ、と軽く挨拶をして森の中に去っていった。取り残される三匹。
「全然分からないんだけど……勝った……のか?」
顔を見合せて、頷く。
何だか納得の行かない終わり。だがしかし、全力を尽くし、勝てぬ戦いをここまで持ち込んだのならこれは勝利だろう。
ああそうか、勝ったのか──
「やったあ!!」
満身創痍の身体で三匹は歓喜の雄叫びを上げたのだった。
※
「じゃあ、開けるよ……」
ヨゾラがそう言って鍵をひねる。カチャリと言う音がして、扉が地響きを立てて動き出す。
「中に入れるみたい! 行こう!」
ふらつく足取りで中に入ると、そこには何の変哲もない地味なテーブルがひとつ。そしてその上には……。
「宝箱だ!」
駆け寄って持ち上げる。軽い。だが確かに輝く宝箱。遂に目的を果たした。喜びに湧く三匹。
外を覗き見ると空が少し赤い。間もなく夕暮れになろうとしているようだ。長い時間をかけて踏破したダンジョン。ふとリアルは疑問をヨゾラにぶつけた。
「あれ、これって帰りはどうするの?」
「えーと、ダンジョンによってはワープして戻れるところもあるらしいんだけど……特に何も言われてないから……歩いて戻るんじゃないかな」
「げ」
また歩くのか……。だが、行きと違って帰りは宝箱を探してさまよう必要はない。ならば、もっと短い時間でギルドまで戻ることが出来るだろう。
「随分、疲れたね……」
デリートが本当に疲れきった顔で呟く。三匹みんな、心身ともに疲れ切った。しかし全力を出し切って目的を果たしたのだ。達成感は大きい。
それに、夕食抜きも免れたし。
三匹は談笑しながら扉を出た。後は、さっさと帰るだけ。時間はまだもう少しある。
……そのはずだった。
「待って」
呑気な顔で笑い合うリアルとヨゾラを、険しい顔でデリートが引っ張って留めた。
壁の前の広い空間。その前方の草むらが揺れる。
「おっ、手に入れたようだなぁ、宝箱」
「ご苦労さま、ってやつだな」
「っ……お前は」
そこから現れたのは、顔に不気味な笑みを浮かべた、ポチエナとヤミカラス。
「何の用だ!」
宝箱を持つリアルが前に出てキッと睨みつける。
「何の用だって言われてもねぇ……」
「もちろん、その宝箱を貰おうって訳だ」
ニヤニヤと笑みを零す二匹。
「宝箱は渡さない! お前たちなんかにも負けないぞ!」
ヨゾラが叫ぶ。
そうとも、全力を尽くし満身創痍、やっとの事で手に入れた宝箱を渡すわけにはいかない。
身体はボロボロだが、同じレベルのポケモンならバトルでも何とか……!
「無駄口を叩くな」
「!?」
敵意を示した二匹の後方、草の奥からもう一匹の声が聞こえた。聞き覚えのない声。しかしそこから出てきた彼は、忘れようにも忘れない、あのポケモンだった。
「お前は……!!」
そこには、メルトと呼ばれたビクティニが立っていた。