リーリエの手持ちに新しいポケモンが加わって、俺たちは再びニビシティのポケモンセンターに帰る。とりあえずハハコモリをもう一度ジョーイさんに預けて、皆でご飯を食べに行くことになった。
「とうとう僕がこの旅で一番に役立つ時がきたよ!オーキド研究所で働いている僕の証明書を店員さんに見せれば、色んなお店でお得になるからね!ハッハッハ!」
これでもかと言わんばかりに、ハンスは高笑いしながら自分の身分証明書を俺たちに見せてくる。外食でもしようと俺が提案してから、ずっとこの調子なのでさすがに鬱陶しい。どこぞの黄門様みたいに構えるハンスは無視して、俺はリーリエの隣を歩く。
「グランさん、今日は何を食べましょうか?」
「うーん、できれば麺類以外の食べ物が良いな。今までうどん屋を経営してたし、食感を確かめる為に毎日試食もしてたから、さすがに麺は食い飽きた」
ラランテスが切った麺の具合を確かめる為に、毎日うどんを食べていたから、旅路くらいは別のもんが食いたい。そういえば仕事が忙しかったから、手持ちのポケモン達もあんまり外食に連れて行けなかったしな…。
「私、シャインちゃんと一緒に食事できるお店に行きたいです!」
「ポケモンと同伴できるお店か…。それなら俺の商売仲間が、カレーの店をニビシティに開いてて、ポケモンも一緒に食べれるから、今日はそこにするか!」
俺がポケモン同伴可のうどん屋を開いてから数ヶ月後に、ニビシティでも同じくポケモン同伴可のお店が出来た記憶は、今でも良く覚えている。
ガラル地方からわざわざ引っ越してきた元キャンパーのおっさんで、キャンプをしながら多くのカレーを自作したという経験を活用して、カレー屋さんをニビシティに建てた。そして偶然にも、隣町でうどん屋をやっていた俺の店に来店して、ポケモン同伴のアイデアを教える見返りとして、カレーうどんのルーを提供してくれるという取引を交わした。おかげでお互いに売り上げが伸びて、両方とも人気店になったという繋がりがある。
お店の外観は普通の家より一回り大きくて、入り口隣にある巨大な看板がとても目立つ。リザードンが炎を吐きながら、カレーを注ぐ魔法のランプみたいなやつを持っている。ちなみにこの看板をデザインしたのは俺だ。
「クンクン…カレーの良い香りがしますね。お腹が減ってきました」
「実は僕もロードワーク中の昼間に、よくここに来たりしてたんだ。リーリエちゃんもきっと好きになるよ」
「ここに来るのも久しぶりだな…。結構繁盛してるみたいだし、早く中に入ろうぜ」
外からでも客の声がザワザワ聞こえる。混雑してしまう前にさっさと店に入ってしまおう。