第3章 第3話

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

阿須那
「聖~あ~ん♪」


「バカッ、いきなり何をしようとしてるんだ!?」

華澄
「ふふ、阿須那殿…それでは逆効果ですな? 聖殿の好感度-1」

阿須那
「ぶっ、何やねんそれ!? 好感度て何や好感度て!」


朝っぱらからもうこの調子だ。
今日は日曜日で皆休み。
だからといって朝食からこれじゃ身が持たない…


守連
「ハムハムッ! サンドイッチ美味し~♪」

女胤
「全く、阿須那さんは何をやっているのか…」

阿須那
「何や女胤~? 羨ましいんか?」
「ほれほれ~聖にボディタッチ~♪」


阿須那は調子に乗って食事中の俺に抱き着く。
腕に素晴らしい感触があるが、俺はそれに心を委ねるわけにはいかない。
俺は腕を振るって阿須那を振り落とした。



「ええい、俺で遊ぶな!」

阿須那
「あん、いけず~!」

華澄
「好感度-2」

守連
「ふ~ごちそうさまです♪」

女胤
「……!」


しかし…ことのほか女胤は我慢してるな。
今までだったら、すぐにでも阿須那に噛みついたろうに。
コイツもコイツで成長しているのだろうか?
だが、俺は昨日のアレを思い出して一瞬で冷める。
無いわ…絶対。



(となると、な~んか企んでやがるか?)

女胤
「…ごちそうさまでした」


女胤は食事を食べ終わり、自分の食器を流し台に持って行った。
守連もそれに付いて自分のを持って行く。
俺もさっさと食事を終わらせ、食器を持って行く事にした。



「華澄、お前のも食器持って行くぞ?」

華澄
「あ、聖殿…いえ、自分で出来ます」


「良いよ、いつもやってもらってるんだから、たまには頼ってくれ」


俺がそう言うと、華澄は嬉しそうな顔で頬笑む。
やっぱ、コレだよコレ! こういう素直な反応が俺には嬉しいのだ!!


阿須那
「…むぅ、ウチのは持ってってくれへんの?」


「はいはい、持って行ってやるから大人しくしててくれよ?」
「大人なんだから、もうちょっと落ち着く様に!」
「ね・え・さ・ん♪」


俺が冗談混じりにそう言ってやると、阿須那は顔を真っ赤にして驚き、言葉に詰まる。
流石にコメントし辛いか…とはいえ、仕事先じゃそうなってるはずなんだがな。
まっ、阿須那の可愛い顔が見れたのは僥倖だ。
俺は3人分の食器を炊事場に持って行った。



………………………




「女胤、洗い物手伝おうか?」

女胤
「あら、聖様…お気になさらず、ひとりでも大丈夫ですわ」
「すぐ終わらせて、お飲み物をご用意いたしますので、リビングで少々お待ちいただけますか?」


「分かった、じゃあ行くぞ守連?」

守連
「うん、それじゃ女胤ちゃんお願いね~♪」

女胤
「はい、お任せを♪」


こうやって普通にしてる分には良い女だよな女胤って。
それで、な~んであんなに変態なのか?
俺の事を好きなのは伝わるが、いかんせん過激すぎる。
このままではこの作品が有害図書認定されかねん。
華澄並みに自重しろとは言えんが、阿須那程激しくても疲れるしな…
守連は天然過ぎて比較にならん。



………………………



女胤
「皆様、お飲み物です」

阿須那
「おっ、ホットコーヒーとは解ってるやん♪」

女胤
「それは当然ですわ…阿須那さんは、あれからずっとあのコーヒーメーカーで作って飲んでますもの」
「そうでなくとも、阿須那さんはコーヒーの頻度が高いですし、ずっと見ていれば、自然と解ります」


そうか、ちゃんと使っててくれてるんだな。
コーヒーメーカーはキッチンに置いてあるから、皆で使う事は出来るし。
阿須那が使ってる所は俺は見てないが、使っててくれてて良かった。


女胤
「華澄さんは常温の緑茶でよろしかったですよね?」

華澄
「はい、御気遣い感謝いたします」


華澄は湯飲みで緑茶を飲んだ。
茶葉の香りがここまで来る、何気に良い物使ってそうだな…


女胤
「華澄さんはその湯飲みがお気に入りですよね?」

華澄
「はい、初めて貰った給金で思い切って購入してみました」
「手触りも良く、お茶の温度もしっかりと留めてくれます」


成る程、そうだったのか…って、女胤意外と良く見てるんだな。
いつも家でゲームしてる様にも見えたが、何だで気は使ってくれていたのか。
俺は感心して女胤への信頼度を+1しておいた。


女胤
「はい、守連さんはオレンジジュースですよ?」
「守連さんお気に入りの、果汁100%ストレートジュースです」

守連
「わぁ~女胤ちゃんありがと~♪」
「ごくごく…ん~♪ やっぱり果汁100%が一番美味し~♪」


守連はご満悦だな。
ってか、ストレートジュースとか良くあったな…結構高いだろうに。
とはいえ、本当に美味しそうに飲む守連を見てると、多少高くても価値があるのだなと思う。
俺も今度貰おうかな?


女胤
「ふふ、愛媛県産の直送品ですから、味は文句無いですね♪」


「成る程ね…取り寄せたのか?」

女胤
「はい、この際テレビショッピングで購入してみました♪」
「定期購買で契約していますので、毎月配送される様手配してもらってます」
「その分お値段も少し安くなってますので、案外そこまでお金はかかってないのですよ?」


またまた意外な気遣い。
女胤の奴、見えない所でやっぱり役に立ってるんだな…
俺はまた女胤への信頼度を+1しておいた。


女胤
「聖様はコーラでよろしかったでしょうか?」


「あぁ、冷蔵庫にペットボトルの買い置きあっただろ?」

女胤
「はい、氷も入れておきましたので、手を滑らさない様にお気を付けください」


俺は女胤からキンキンに冷えたコーラを受け取り、グイッと飲んだ。
うん、ゲップが出る位確実の美味さだ。
とはいえ、流石に自重しておく。
女の子たちの前で堂々とゲップする勇気は無い。


女胤
「ふふ、私は聖様のゲップなら気になりませんよ?」


「それは変態的挙動と解釈しておこう、信頼度-2」

女胤
「し、信頼度!? い、今はいくつ位ですの!?」


「+-0」

女胤
「ガッデム! 全く信頼されてない!!」


女胤は両手で頭を抱えて唸る。
逆にこういう所は面白くて好きなんだけどな♪
実の所、思いっきりネタを振れるのもコイツだけだから、意外な程、貴重なポジションなんだよな~



「まぁ、信頼は置いておいて、お前には十分感謝してるから」
「あんまり気負わずに、自重してれば良い女だよお前は」

女胤
「えっ!? い、良い女…?」

阿須那
「………」ピクッ

華澄
「…ズズッ」


女胤の反応を見てか、阿須那が一瞬眉を釣り上げるのが見えた。
な~んか嫌な予感。


阿須那
「…ふん、どうせ世辞やろ? コーヒーありがとさん、部屋に戻るわ」


おっと、意外にも阿須那が自重したな。
それなりには気にしてたみたいだけど、ちゃんと自制出来てるなら何よりだ。


女胤
「自重…ですか」


「お前は何もかもが過激すぎる」
「極端じゃなく、少し自重して普段からさりげなくアピールしろ」
「そうすりゃ、お前は間違いなく良い女だ」
「まぁ、それでも華澄程にはなれんと思うが」

女胤
「サノバビッチ! 結局努力しても華澄さん以下!?」


女胤は面白い様に唸る。
こういう弄り甲斐がある所は評価点なんだがな~?
もったいない物だ…変態担当かネタ担当にしかなれんとは。



「まっ、色々考えてみるんだな」
「阿須那や華澄たちが普段何してるのかとか、ちゃんと見てるなら解るはずだぞ?」


俺はそれだけ言って部屋に戻る事にした。
女胤は思いのほか真面目に考えている様で、終始唸っていた。



………………………




「………」


俺は自室で宿題に手を付けている。
まぁ、まだこの時期だからそんなに大した量は出てないけどな。
後10分もすれば終わるだろ…とその時。

コンコン…とノック音がする。
誰か来た様だが…俺は机に向かったまま大きめの声でこう答えた。



「どうぞ~空いてるよ!」


するとドアは開き、誰かが入って来る。
何やらコップを持って来ているのか、中でカランと氷がぶつかる音がしていた。


女胤
「聖様、クッキーとお飲み物をお持ちしました」
「よろしければどうぞ」


「お、サンキュ♪ そこに置いておいてくれ、もうしばらくしたら終わるから」


俺がそう言うと、女胤はトレーを床に置き、座布団に正座して俺を待っている様だった。
俺は待たせるのは悪いと思い、早めに宿題を終わらせる事にする。



………………………




「うっし、終わり!」

女胤
「お疲れ様です、いつも聖様は真面目に取り組んでいますね」


「習慣だからな…こういうのはサボると癖になる」
「出来る事は出来る時にやるのが、俺流だからな♪」


俺がそう言って座布団に座ると、女胤はクスクス笑う。
別に馬鹿にしている訳じゃない。
女胤は俺があまりにフツーにそういう事を言うから笑ったのだろう。


女胤
「そういう普通の事を普通にこなせるのは、ある意味才能だと思いますわ」
「聖様は、守連さんが現れるまで、ずっとひとりで、ずっとそんな普通はやらない事を普通にやり遂げている」
「私は、そんな聖様は立派だと思います」


非常に真面目なコメントだ、あまりの事に俺は少々恥ずかしくなって頬をポリポリ掻いた。
それを見て女胤は更にクスリと笑う。


女胤
「ふふ…聖様のその癖、自分で気付いておられます?」


「えっ…癖?」

女胤
「気恥ずかしくなると、すぐに頬を掻く癖です」
「結構目立ちますよ? 普段しない仕草ですから」


それは気付かなかった…本当に良く見てるな女胤は。
ホント、フツーにしてれば良い女なんだけどな~



「ところで、何か用があったんじゃないのか?」
「間食持って来るだけなら、別に待つ事無いだろうに…」

女胤
「あ…あの、その……」


女胤は何やら話すかどうか迷っている様だった。
珍しいな、女胤が口ごもるなんて。
どんな卑猥な台詞でも迷わず言うコイツらしくない。



「何だ? たまにはマトモなお願いでもする気になったか?」

女胤
「ま、まともって…そんなに、私変な事言ってますか?」


「むしろマトモじゃない事の方が多いわ!」
「自主規制と書いてあるステッカーでも顔に張り付けてやろうか?」


俺がはっきりそう言うと、女胤は予想外に沈んだ顔をする。
な、何か覇気が無いな…らしくない。
何か、思い詰めていたりするんだろうか?
もし、女胤に何か負担がかかっているなら、それは何とかしてやらないといけないが。



「…悩みがあるなら聞いてやるぞ?」

女胤
「ほ、本当ですか?」


「うむ、何でも言ってみなさい!」

女胤
「あの、私今日排卵日なんですが、1発膣出ししてもらえません?」


「はい、確かに聞いてあげましたよ~? じゃあまた来週~」

女胤
「聞いてくれるだけですか!? 叶えてはくれないのですね!!」


俺の華麗なベタネタに女胤は頭を抱えて仰け反る。
うむ、やはりコイツはこうでなければな。
つーか、悩んだ結果がそれかい! ええ加減にせい!



「とりあえず、冗談じゃないならそんな顔しないだろ?」
「本当の事を言え! ちなみに同じ事やらかしたら、2度と聞かんからな?」


俺が強めにそう言うと、女胤はまた顔を俯けて悩んでいる。
むぅ…それなりに難しい事なのか?
だが、女胤は意を決して真剣にこう言う。


女胤
「聖様…もし許されるなら、外出許可をお許しください」


「え…外出?」


思ったよりフツーの願いだった。
とはいえ、そういえば守連と女胤を外に出したのは旅行の時だけだったな。
俺は少し考える…女胤は服さえ何とかすれば問題は無いか。
頭の花は帽子被せれば誤魔化せるだろう。



「まぁ、ちゃんと偽装して行くなら良いぞ?」
「その代わり、他人に迷惑をかけないようにしろよ?」

女胤
「い、いえ…もしよろしければ、聖様もご一緒してほしいのです!」


「え…俺もか?」


俺が聞き返すと、女胤ははい…とだけ答える。
別に他意は無さそうだ。
俺も宿題終わったし、フリーだけど…



(そういえば、まだ女胤とふたりきりで出かけた事は無いもんな)


正確には守連もだが、まぁそれはそれで。
俺は特に断る理由も思い付かず、とりあえずは承諾する事にした。



「まぁ、良いか…それじゃ着替えて来いよ、俺も準備して出るから」

女胤
「は、はいっ! すぐに準備して参ります!!」


女胤は心底嬉しそうに部屋を出て行った。
そんなに嬉しかったのか…って、そりゃそうか。
アイツ、いつも俺の事を1番に考えてるからな…
とはいえ、近頃のアイツはちゃんと他の皆も良く見ている。
前に比べたら立派な成長だ。
そういう意味では、ちゃんとアイツの事も見てやらないとな…
俺はそう思い、とりあえず財布と鞄を確認して玄関に向かう事にした。



………………………



華澄
「…? 聖殿、お出掛けですか?」


「あぁ、ちょっと女胤に、デートに誘われてな」

華澄
「…デート?」ピクッ


おっと、冗談のつもりだったのが、華澄さんは反応してしまった様だ。
っていうか、華澄にしては珍しいな。
いつもなら菩薩の様に何でも笑って許してくれるのに…


華澄
「…聖殿、くれぐれも気を許しませんよう」
「信頼はしておりますが、万が一の時は拙者が命に代えても聖殿の貞操をお守りするでござる…」


かなり本気の眼で静かにそう言い放つ。
華澄さんはかなり過剰に気にしておられる様だ。
意外にも珍しい華澄さんの姿を俺は脳裏に焼き付けつつ、外に出て女胤を待った。



………………………



女胤
「お待たせしました、聖様!」


「む…」


玄関から出て来た女胤の姿は、非常にフォーマルな格好だった。
いわゆるアフタヌーンドレスという奴で、色は白。
上に同じ色のジャケットも羽織っており、想像以上に清楚に見えた。
まぁ、とはいえ中身がいかんせん女胤だからな。
下手にボロが出なければ良いが…


女胤
「いかがなされました?」


「あ、いや何でもない」
「どこ行くんだ? その服、どっちかって言うと正装とか礼服って奴だろ?」

女胤
「はい、服に関しては単に聖様への礼節を考えての事ですので」


成る程、それは女胤らしいか。
ちなみに旅行の時は普通にカジュアルな夏服だったので、新鮮に感じるな。


女胤
「とりあえず、駅前に行きませんか?」


「駅前か…日曜だから人多そうだけど、もしかして電車に乗るつもりか?」

女胤
「いえ、デパートに行こうかと」


「デパートか…そこじゃなきゃダメなのか?」

女胤
「はい、どうしても欲しい物がありまして」
「そして、自分で選びたいのです」


女胤は真面目な顔でそう言う。
割と真剣だな、俺は納得し歩き始める。
この街にデパートなんてひとつしかないし、迷う事は無いな。
女胤は俺の隣に並ぶ事はなく、数歩退がった後方から歩いていた。
意外に謙虚だな…と思ったが、女胤の性格を考えれば俺を前に歩かせるのが礼儀とでも思ってるんだろう。
全く変に気を使いやがって…調子狂うぜ。



「女胤、隣で歩け! 眼の届かない位置だと不安で仕方ない」

女胤
「は、はい!」


女胤は驚いた顔で俺の隣に駆け寄る。
そして、意外にも恥ずかしいのか俯き気味に歩き始めた。



「駅前は人が多いから、ぶつからない様にしろよ?」

女胤
「大丈夫ですわ、その時は華麗に当て身投げをして見せますので♪」


「そして発生遅くてカウンター貰う、と」

女胤
「96仕様は黒歴史ですわ!」


息を吸う様にネタを交わす俺たち。
まぁ、この作品で出るネタは時空を越えてるから設定は無視の方向で。
って、今更か…



………………………




「うわ、やっぱ人多いな」


俺たちは駅前に辿り着くも、相当混雑している。
時間はまだ昼には早い時間だが、休日と言う事もあってかなりの賑わいを見せていた。
と言っても、都会じゃないし東京とかと比べられはしないけど。



「女胤、はぐれるなよ?」

女胤
「…あ」


俺は無意識に女胤の手を握る。
女胤は驚いた様だが、頬を赤らめ俯いてしまった。
…思わずやっちまったが、後悔しても遅いな。
俺はそのまま人ゴミを上手く避けてデパートに向かった。



………………………




「とりあえず着いたな」

女胤
「は、はい…あの」


俺はハッ…となって女胤から手を離す。
もう握る必要はないだろ…まぁ、デパートも人は多いが。
今日は別にイベントとかもやってないみたいだし、比較的歩きやすいはずだ。



「で、何を買うんだ? 自分で選びたいって言ってたけど」

女胤
「はい、紅茶の茶葉が欲しくて」
「このデパートでなら、試飲も出来ますし好都合なんです」


成る程、試飲目当てか。
確かに商店街には紅茶専門店は無いもんな。
俺たちはとりあえずその紅茶専門店に、向かう事にした。



………………………



女店員
「いらっしゃいませ~」

女胤
「すみません、試飲をお願いしたいのですが」

女店員
「あ、良いですよ~♪ どれにします?」

女胤
「それでは、ダージリン、キャンディー、べにほまれをお願いしてもよろしいですか?」

女店員
「畏まりました、少々お待ちくださいね~」


そう言ってややのんびりとした店員さんは店の奥に入って行く。
女胤は初めから種類決めてたのか、すぐに言ったな。
こうやって見てみると、一口に紅茶と言っても結構種類がある。
それぞれ味や効能が違うらしく、ストレートかミルクかの相性もあるらしい。
流石にその辺は俺にはさっぱりだ。
強いて言うなら俺はミルクティーが好きだけど。
やがて、数分して店員が試飲用の小さなコップを持って来た。
女胤は3つの味を順に吟味し、どれにするか考えている。


女胤
「悩みますわね…どれも素晴らしい味ですが」
「…決めましたわ、べにほまれを25gお願いします」

女店員
「ありがとうございま~す♪」

女胤
「聖様も、おひとつどうです? よろしければ私がお勧めを選びますが…」


「そうだな、折角だしミルクの合う奴を頼むよ」

女胤
「それでしたら、アッサムがお勧めですね」
「味わいも濃厚で、ミルクに相性がとても良いんですよ♪」


「じゃあ、それで」

女店員
「畏まりました~量はどうします?」

女胤
「では、10gで」


女胤はすらすらと答える。
凄いな流石に…量とか種類によって違うんだな。
俺は、さっぱり解らん。
とりあえず、これで女胤は紅茶を購入した。
一応、女胤や守連にはお小遣いは渡しており、ちゃんと自分で買える様にはしている。
普段は通販位しか利用しないから、こうやって外で使うのは何気に初めてか。


女胤
「それでは、行きましょうか聖様」


「あぁ…」

女店員
「毎度ありがとうございま~す♪」



………………………




「さて、これからどうする?」

女胤
「そうですね、もうすぐお昼ですし食事にしませんか?」


俺は良いね、と思い承諾する。
とはいえ、この辺りはゴチャゴチャ過ぎて落ち着かんからな。
フツーのファーストフードもたまには良いか?



「ハンバーガーとかでも良いか? あれなら外でも食べれるし」

女胤
「聖様のお好きに、私は反対致しません」


…やっぱ、コイツもそう言うよな。
何故か、予想出来た答えに俺は少し頭を捻った。
まぁ、華澄の従順と女胤の従順はベクトルが違いすぎるが。
その辺はもう手遅れだろコイツは…
とりあえず、俺は女胤を連れて某有名ハンバーガーチェーン店に向かった。



………………………




「ふぅ、流石に人多いな…とりあえずほれ、海老◯ィレオ」

女胤
「はい、ありがとうございます♪ さぁ、聖様もお座りください」


俺は女胤に促され、隣に座った。
今いるのはパール小公園、例によってベンチでバーガーにかぶりついている。
俺はダブルなチーズを口にし、コーラを一口含んだ。
まぁ、改めてフツーだわな。
最近、阿須那や華澄の料理が美味すぎて、外食なんてしてなかったからな…
改めて違和感を逆に感じる味だ。



「女胤は味大丈夫か?」

女胤
「はい、問題ありません」
「聖様のは、お口に合わなかったのですか?」


「いや、美味いんだけどな…違和感があるって言うか」
「ここんとこ、昼は阿須那や華澄の作ってくれる物ばかりだったから、舌がそれに慣れちまってるのかも」

女胤
「成る程、確かに普段あまり口にしない物ですと違和感はあるのかもしれませんね」


とはいえ特に食えないわけでもなく、俺はちゃんとセットで完食した。
昔から俺は自炊してたから、ホント外食って珍しかったな…
考えてみても利用した記憶がほとんど無い。
腹減ったら冷蔵庫調べて料理作るのが基本化してたからな。
改めて、何でも自分でこなしてたもんだ。


女胤
「……」


女胤はゆっくりと食べていく。
味に不満が無いのは確かの様で、味わう様にポテトと交代でバーガーを口にしていた。
まぁ、女胤にとってはハンバーガーは初体験か。
初見で海老◯ィレオ選んだ時点で中々だと思うが。
とりあえず、俺はコーラを口にしながら女胤が食い終わるのを待った。



………………………



女胤
「ごちそうさまでした、ありがとうございます聖様♪」


「良いよ、これ位…今月は俺も余裕あるし」


ちなみに代金は俺持ちだ。
女胤は予算ある方じゃないし、自分の金は自分の為に使わせたかった。
俺はベンチの背もたれに倒れかかり、空を見る。
本日も晴天なり…その分暑いがな。
これから天候も安定しなくなってくるだろうし、台風が何発か来たら一気に涼しくなるだろうな。


女胤
「これから、どうなされます?」


「女胤が決めろよ、今日の主役はお前なんだから」


俺が笑ってそう言うと、女胤はキョトンとしてしまった。
そして、とりあえず恒例の一言。


女胤
「ではとりあえず青姦でも…」


「ハイダメーーー!!」


予想通りの提案を俺は1秒で却下する。
この俺に油断と言う文字は無い!


女胤
「うう…今回は私が主役ですのに」


「お前はひとりエロゲー状態だからな…それも抜きゲーの」
「全年齢には難易度が別ベクトルに高い!」


阿須那や華澄とは住んでる世界が違うんじゃないかと思うレベルだからな。
守連はよう解らん…ソッチ系には一切縁が無さそうだからな。


女胤
「ですが…聖様を愛しているのは、本当ですよ?」


「お、おう…」


突然、真面目にそう言う。
俺は突然の事にチトどもってしまった。
正面から愛しています…と言われるのはここまで心に来る物なのか…?
でも、俺は答える事は出来ないな…
これは阿須那や華澄にだってそうだ。
俺だって皆大好きだけど、誰かだけを選ぶなんて、多分俺には出来ない。
いつかはそんな日が来るのかもしれないけど、それはその時考えれば良いだろ…


女胤
「…聖様、もしここで私がキスをしてくださいと言ったら、してくださいますか?」


「え!? い、いや…流石にそれは……」


阿須那の時は突然飛びかかられたからな。
流石に自分の意志でアレをやれと言われたら絶対出来ない。


女胤
「聖様、もし私の事をお嫌いでないのなら、どうかお願いします」


そう言って、女胤は祈る様なポーズで目を瞑り、俺の答えを待った。
女胤は期待しているのだろうか?
俺の事を解ってるなら、そんな事出来ないのも解ってるだろうに。



(はっ!? これはまさかアレか?)
(新しいネタで何かボケろと言うアピールかっ!?)


成る程、それならば全身全霊を持って答えねばなるまい…!
俺は何故か鞄に入っていた魚肉ソーセージ(太い奴)を開封し、それの先端を女胤の口にねじ込んでやる事に。
すると、女胤は一瞬苦しそうな顔をするものの、すぐに顔を紅潮させた。


女胤
(こ、この感触はまさか!?)
(ああ…聖様ったら、こんな所でその気になっていただけるなんて♪)
(この女胤、全身全霊を賭けてご奉仕させていただきますわ!!)


女胤は完全に色々勘違いして魚肉ソーセージをしゃぶり始めた。
冷静に考えれば、立ったまま出来る行為ではないのだが、今の女胤はそれを判断出来る精神状態ではない。
俺は流石に笑いをこらえながら、微妙に震えてしまう。
コイツ、全力で顔を前後ぉ!させてやがる…!


女胤
(あぁ…聖様ったらこんなに震えて…もうイッてしまいそうなのですね!?)
(でしたら、このまま…私の口の中で…!)


女胤のペースが上がって来る。
俺は流石にこれ以上笑いをこらえるのは無理だと判断し、魚肉ソーセージを思いっきり女胤の口から引き抜いた。


女胤
「あぁん♪ ぶっかけがお好みですかぁ!?」


「ド阿呆! いい加減気付け!!」
「お前がいつまでも気付かないから腹筋崩壊しそうになったわ!!」
「あ~あ、完全にソーセージが唾液まみれになっとる…」

女胤
「……ソーセージ?」


女胤は放心しながら俺の手に握られているソーセージを見ていた。
俺はそれをぶるんぶるん振ってやる。
唾液が飛び散ったので後悔した…チクショウ。



「やっぱお前、変態&ネタ担当だわ♪」

女胤
「あ、あんまりですわぁぁぁぁぁっ!?」










『とりあえず、彼女いない歴16年の俺がポケモン女と日常を過ごす夢を見た。だが、後悔はするはずがない!』



第3話 『HENTAIポケモン参上! その名は女胤!!』


To be continued…

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