くのさんのいち 偽りの名に隠した誠

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 テレポートで“エアリシア”に着いた私達は、他の班と別れて行動を開始する。
 分かれた後で、アーシアちゃんに頼んでB班の方に一報を入れてもらう事にする。
 その後“壱白の裂洞”で会った二人とも合流し、私達はお互いが持っている情報を交換する。
 けれど情報交換が終わってすぐ、私達は何者かの奇襲を受けてしまった。
 [Side Archia]




 「…暴風! 」
 「いっ、いきなり? 」
 「熱風! …油断したわね」
 な、何です? “壱白の裂洞”でお会いしたお二人との情報交換が終わったのですけど、私達はいきなり別の方の攻撃を受けてしまいます。もうちょっと警戒していたら良かったのですけど、そのせいで対応が遅れてしまう。私は慌てて重心を落として踏ん張り、多分ランベルさんも同じように強い風を凌ごうとしています。…ですけどキュリアさんだけは、咄嗟に焼け付く風を発生させて対抗してくれました。
 「これはやられたわね…」
 「けどもしかしてあんた達、“ルノウィリア”の一派だよね? 」
 「ご名答。侵入者の貴様等に満点をやろうか」
 そう思うと…、戦闘は避けられなさそうですね…。風が止んでからその方を見てみると、静かに闘志を燃やしている五人組…。そのうちのヨルノズクさん…、多分暴風で攻撃してきた方が、得意げに言い放ってきました。
 「それはどうも。けどそのようすじゃあやり合う気のようね? 」
 「そりゃあ当然じゃない? あなた達はアタシ達の拠点に入り込んだ侵入者。衛兵のアタシ達が見逃すとお思いで? 」
 「見逃してくれたらありがたいのですけど…、だめ…、ですよね」
 ルカリオさんが続けて問いかけていたのですけど、バルジーナさんが悪い意味で大きく頷く。できれば避けたかったのですけど、この様子だと…、無理そうですよね?
 「あぁん? そんな甘ったれた事が通用するとでも思ってんのかぁっ? 」
 「これだから“太陽”の連中は…」
 「…交渉決裂、みたいだね」
 「そのようね」
 バルジーナさん達の後ろに隠れて見えないですが、男の方が荒々しく言い放つ。いかにも荒れてそうな言い方なのでビックリしちゃったけど、私は何とか気を持ち直して前を見る。私は何となくそうなるような気がしていましたけど、ランベルさんがぽつりと呟いた事で、余計にそう感じてしまいました。
 「…あんた達戦えるわね? 」
 「ええ。まさかこんなに早くなるなんて思わなかったけれど、最初からそのつもりで来てるわ」
 「なら話が早いね。…ちょうど五対五だから、一人ずつ戦えば良さそうだね」
 「そ、そですね」
 「どこのポニータの骨か知らねぇが、それなら話が早い。野郎共、やっちまえ! 」
 「ま、守る! …っく! 」
 は、早い…! 戦闘になる事を悟ったらしいルカリオさんは、私達の方に振り返って一言、覚悟したように訪ねてくる。私はまだ心の準備が出来てなかったのですけど、キュリアさん達の流れるような感じで、思わずこくりと頷いてしまう。けれど私が頷いた瞬間すぐに、相手の一人が荒々しく声をあげる。…かと思うともう一人のアギルダーさんが、いきなり私の方に突っ込んできた。咄嗟にシールドを張ったから、ギリギリ耐えられましたけど…。
 「目覚めるパワー! ブースターさん、大丈夫? 」
 「な、何とか…」
 「話してる余裕なんてあるのかしら? ブレイブバード! 」
 「エレキボール! 」
 「ちっ…」
 そういえばこの人、前に他の技も沢山使ってたけれど…。さっきの一撃でバラバラになってしまったのですけど、偶然一緒の方に退…圧された彼女が、硬直した私の代わりに牽制してくれる。フードを深く被って見えないけど、多分口元にエネルギーを溜め、丸くしてからアギルダーさんの方に解き放つ。結果は見てないのですけど、代わりに彼女がこう訊いてきたから、私はこんな風にこくりと頷く。けれどそんな時間さえもくれるはずもなく、バルジーナが凄い勢いで滑空してきた。彼女が放った電気の弾で、すぐに引き返したけれど…。
 「よそ見すんじゃねぇよ! 」
 「電光石火…からのアイアンテールっ! 」
 「っ…! 」
 空の方は追いやったけど、すぐにアギルダーさんが攻めてくる。凄い早さで突っ込んできたけれど、その体にオレンジ色のオーラを纏っているから、多分“月の次元”の人なんだと思う。けれどこのままだと攻撃されちゃうから、私は咄嗟に力を溜め、素早い動きで前に跳び出す。勢いがついてから技を解除し、すぐにフサフサの尻尾を硬質化させる。電光石火の勢いが乗ったまま、その尻尾を相手の頭に叩きつけた。
 「その使い方…、まさかね」
 「次、来ますっ! ええと…」
 「クアラ、そう呼んで。アイスポール! 」
 私みたいに技の数に制限がないみたいだから…、もしかしてこの人、“導かれし者”…? 前足から着地した時に何か言ってた気がするけど、私はスルーして相手の方に注意を向ける。すると上の方からバルジーナさんが急降下するのが見えたから、この人…、クアラさんにも注意を促す。すると彼女は多分、空の方に向けて氷塊を何発か撃ち出しはじめてくれた。
 「そんな生ぬるい攻撃、アタシには当たらないわ! 燕返し! 」
 「させません! ニトロチャージっ! 」
 三発目を撃ち出したクアラさんの前に立ち、私は体に炎を纏う。一か八か発動させたのですけど、今の私がブースターだからなのか、纏った炎が全然熱くない。ちょっとした発見もあったけど、私は湧き上がる感情を抑えて、力を溜めながら急降下してくる相手に目を向ける。翼を広げて襲いかかってきたから、高さが六メートルになったところで、足の力を解放して一気に跳び上がる。
 「くっ…! 」
 結果は相打ち…。私は地上の方に弾かれ、バルジーナさんは逆方向に飛ばされる。
 「悪の波動! 」
 「守る! 」
 後ろに飛ばされても黒い波紋を飛ばしてきたから、すぐに私も緑のシールドを展開する。
 「少しはやるようね? ブレイブバード! 」
 「シャドーボールっ! 」
 技の出が…早い! 防がれるのが分かっていたみたいで、相手はすぐに光を纏う。大きく翼を広げて一瞬制止し、すぐに私めがけて急降下してきた。
 だから私もすぐに、それに抗うために技を発動させる。黒いエネルギーを口元に溜め、五センチぐらいになったところで打ち上げる。二発目からは一、二センチぐらいで打ち上げ…、それを五発ぐらい連続で打ち上げる。
 「おおっと、一人だけ相手してるとは思うなよ? 」
 「え…」
 だけどバルジーナさんの方に注意を向けすぎて、アギルダーさんの接近に気づくのが遅れてしまう。
 「そうはさせないよ! ギガインパクト! 」
 「っぐあぁっ…! 」
 だけど私が向けている背中の方で、凄い衝撃と一緒にクアラさんの声が響いてきた。
 「…“穢れ”てるみたいだけど、守りに特化してなくて…」
 「“太陽”だとか何とか言ってるみたいだけど、そうでもなさそうね? 吹き飛ばし! 」
 「っ…! 」
 「きゃぁっ! 」
 す…凄い風…。守りに特化してなくて良かった、クアラさんはそう言おうとしてたんだと思うけど、その前にバルジーナさんに遮られてしまう。大きい翼を力一杯羽ばたかせて、私達を文字通り吹き飛ばそうとしてくる。私…、多分クアラさんも淳部が出来ていなかったから、二人揃って突風に吹き飛ばされてしまう。小さい私の方が少し遠くまで飛ばさ…。
 「え…うそ…」
 飛ばされたけれど、私は目の前の光景に、思わず言葉を失ってしまう…。私の視線の先に見えるのは、深く被っていたフードが外れ、隠れていた部分が見えるようになったクアラさん。けれど私はその姿に見覚え…、じゃなくてよく知った、それも行方不明になっている友達と重なって、ついその彼女の名前を口にしてしまう。その友達の名前は…。
 「…テト…ちゃん? 」
 色違いのニンフィアで、二千年代の友達のテトラちゃん。目の前にいる彼女もピンクのところが水色になってるから…。
 「なっ、何であんたがその呼び方知ってるの! 」
 「てことはほんとにテトちゃんなのです? 」
 私が聞いた事に凄くビックリしてるから、クアラさんはテトちゃんで間違いないと思う。
 「そっ、そうだけど何でブースターのあんたが…」
 「ブレイブバード! 」
 「アイアンテールっ! っくぅっ! 今はブースターだけど、ブラッキーのアー…」
 「あんた達本当に戦…」
 「エレキボール! 今大事なところなんだから、あんたは黙ってて! 」
 で、でも何で…、何でテトちゃんがエレキボール…、それから他にも色んな技を…?
 「…で何であんたが…」
 「種族が違うから信じてくれないと思うけど、ブラッキーのアーシアですっ! 」
 「うっ、嘘でしょ? 隠してた私が言える事じゃないけど、そんな証拠がどこに…」
 「この腕の紋章を見たら…信じてもらえます? 」
 「…っ! ってことは本当に…、本当にシアちゃんなんだね? 」
 「はいで…」
 「陰でコソコソと…目障りなのよ! 悪の波動! 」
 「守る! …テトちゃん」
 「…うん! シアちゃん」

 「いくよ! 」

 「はいですっ!」




  つづく

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