恋は盲目

しおりを挟みました
しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
読了時間目安:3分
毎日ハロウィン企画:11日目のお話
 最近のユキメノコには、ちょっとした日課があります。それは、仲睦まじそうなカップルのポケモンが楽しそうにしているのを、木の上に座って眺めること。はじめは気にも留めていませんでしたが、そのうち昔の自分と好きだった誰かを重ねるようになり、声をかけることもなくただ見守るようになりました。オスの方は野生のポケモンで、この辺りの山を寝ぐらにしている大柄な力持ちでした。メスはトレーナー付きのようで、時間になると帰っていくのでした。

二匹がいつ知り合ったのかまでは知りませんが、とても幸せそうにしているメスのポケモンを気に入って、ユキメノコは進展しない仲に勝手にやきもきしたり、時折ときめいたりしているのでした。ある日のこと。いつもと同じようにメスのポケモンが帰った後、なにやらそわそわしているオスのポケモンが気になって、こっそり後をついていきました。

独り言をつぶやいているようで、やっと苦労が実を結ぶとか、そんなことをいっているのでした。そして、メスのポケモンを好いているのではなくトレーナーに興味があり、パーティメンバーに入って名声を得ることが目的だったのだと、知ってしまったのです。今度トレーナーを連れてくると約束をして、今から待ち遠しいと浮き足立っているオスのポケモンの姿を見て、ユキメノコはそれはもう激怒しました。純情を踏みにじるような奴を、許せるはずがなく。そっと近づき声をかけるような素振りで耳から氷の息を吹き流し、骨までカチカチに凍らせたのでした。

早くこのことを教えてあげなくちゃ。ユキメノコは、メスのポケモンが帰っていく道を辿っていきました。幸いにも寄り道をしていて、願い事を書いたランタンを飛ばしているところでした。焦っていたユキメノコはあれこれ話すのですが、突然現れた見知らぬポケモンに、好きなオスが悪い奴だといわれても信じるわけがありません。それどころか、私たちの恋を邪魔するなんてと、攻撃を浴びせられてしまうのでした。恋は盲目、それはそう。かつて自分もそうだったと我に返ったユキメノコは、いってもわからないのならと反撃し、ランタン祭りの会場ごとふぶきで凍らせてしまいました。

二匹の氷を洞窟に持ち込んだユキメノコは、それをくっつけてひとつの大きな氷塊にしました。一部を削ってハートの形にすると、これでよかったのよと納得するのでした。それから何年か経って、氷塊がニンゲンに見つかり、新聞に載るほどの騒ぎになるのですが、それはまた別のお話……。

きょうのおはなしは、これでおしまい

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想