9.言い回しが不穏な解説者

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 今日もここポケモンコロシアムでは、白熱した戦いが繰り広げられていた。現在は決勝戦ということで、観客のボルテージも最高潮に達していた。
『さあ、今日もポケモンコロッセオでは、殺伐とした戦いが繰り返されているぞおおお! 次にこの舞台で意識を失うのはどのポケモンだ!』


 トレーナーが次に出したのはリングマだった。現在フィールドにいるサンドパンとのバトルになる。
『次に出したのはリングマだー! これは鋭い爪で相手の体を抉ることが期待できます。もっともサンドパンの爪も負けず劣らず、相手を抉る力が強い。これは面白い対決です』
 審判が旗を上げバトルが開始される。サンドパンはストーンエッジを繰り出した。突然の攻撃にリングマは避けられず、無数の岩のタックルをもろに喰らってしまった。
『無数の岩がリングマを内出血させていきます! これはすごい! リングマの骨、筋肉、心。全てが悲鳴をあげています!』
 リングマはなんとかこの攻撃を耐えた。そして、逆襲とばかりにサンドパンの顔面に二本の太い腕を叩きつけた。
『リングマの反撃です! おっと強力な攻撃だ! サンドパンに死ぬよりも辛い痛みが襲いかかったでしょう』
 サンドパンはこの攻撃に耐えられず、戦闘不能になった。
『決まった! 今の一撃でサンドパンは死に瀕したー!』
 トレーナーはサンドパンをボールに戻し今度はプクリンを出した。プクリンとリングマのバトルが開始される。
 リングマはじしんを繰り出し、フィールドを強く揺らす。だが、プクリンは空中にジャンプしており、その攻撃は効かなかった。
『おっとプクリン。上手く攻撃を避けました! 危ないところでした。今のじしんを喰らっていたら、体中の骨がバラバラに折れていたことでしょう』
 そしてプクリンは空中から破壊光線を繰り出す。破壊光線はリングマに直撃し、リングマは仰向けになって倒れた。
『プクリンの破壊光線で文字通り破壊された! これでリングマは死に瀕したー!』


 数時間後。

「おい、お前なんだ! さっきのバトルの解説は!」
 先程のバトルの解説者は、彼の上司らしき人に速攻で呼び出された
「はい? なんでしょう?」
「なんであんな物騒な言い回しで解説してたんだ!」
「はあ、別にいつも通りでしたかと」
「いつもと全然違ったわ! なんだ『相手の体を抉る』とか『死ぬよりも辛い痛み』とか不穏な言い方ばっかりしやがって。そんな言い方したら、観客がひいてしまうだろ!」
「すいません」
「後お前『死に瀕したー!』言ってただろ! あれが一番だめだ! なんてこと言ってるんだ!」
「『瀕死』なら良いですか」
「『瀕死』でもだめだ『戦闘不能』って言え。お前今日どうしちゃったんだ! 以前はこんなんじゃなかっただろ!」
「まあ、オリジナリティを出したかったと言いますか」
「もういい。お前はクビだ。クビにするって上に連絡する。上も了承するだろう」
 ドアを思いっきりバタンと閉めて、出て言ってしまった。


「ははははははは!!!」
 一人になった解説者は、思いっきり高笑いしていた。
「クビになることは織り込み済みですよ。これで良いんです」
 彼はクビになっても問題なかった。ただ、ポケモンバトルの残酷さが民衆に伝われば良かった。
「ゲーチス様、自分は役目をきっちり果たしてますよ」
 そう言いながら、プラズマ団のマークが入った服装を取り出した。

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