§4 Cot いる種族、いない種族

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Diary of Shirabe



『んーとスーナさん? もしかしてこのふたり、て……スーナさんのお子さんです? 』
『あっそっか。私は会うのは一年ぶりなんだけど、シアちゃんは知らないんだよね? ツタージャとコアルヒーだから気づいてるかもしれないけど、私がこっちの時代に戻ってすぐ後ぐらいにスーナさんとリーフさんが結婚してね。そのときにスーナさんが産んだのがこの子達。……で、ブルーがママ友って言うのかな? 向こうの世界での任務の時に、私も一緒にお世話したんだよ』
Written by Cot




 あの後も僕達は、しばらくソニアさんの家で話し込んでた。途中でガラルのリーグチャンピオンのダンデさんとその弟さんも、入ってきたから、凄く賑やかになったね。……で、何であんな流れになったのかさっぱり分からないけど、ヒノカちゃん達のチームと弟さん達のバトル。弟さんのチームも初めて会う種族ばかりだったけど、ヒノカちゃんとボーラちゃんの勝利。……ただ流石にテンションが上がったダンデさんが乱入しようとした時は焦ったね。
「ふぅ、やっと着いた! 」
「うわぁ、凄い……」
 それでみんなの回復が終わるのを待ってから、僕達は揃ってブラッシータウンの駅へ……。本当はジムチャレンジの受付と開会式があるエンジンシティまで行けたら良かったんだけど、線路をまたぐようにウールーの大移動が起きちゃってるってことで、臨時便で迂回する事に……。ワイルドエリア、っていう終点の駅で降りて、そこから徒歩。……まぁ普段から旅で歩いてきてるから、どうって事無いね。つい一昨日まで、アローラで歩き回ってたぐらいだし。

  話では聞いていたけど、中々の広さね。

「でしょ? オレも初めて来るんだけど、色んなポケモンがここに住んでるんだ」
「そうなんだね? アローラも結構だったけど、こっちも凄いよ」
 それで駅舎を出た僕達は、目の前に広がる景色に圧倒されてしまう。僕もフィフもつい心の底からの声が漏れ出ちゃったけど、まず目に入ったのが広大な自然。パッと見ただけでもどこまでも広がっていて、凄く開放的ですぐにでも走りたくなってくる。遠くの方に街らしき建物がいくつも見えるから、多分あそこが目的地のエンジンシティだと思う。そことの間には大きな湖があって、その真ん中を小道が縦断してる……。
「アローラも凄いんだな。で、何でソニアも一緒に来たんだ? 」
 弟さんとマサキ君はそれほど驚いてはなさそうだけど、それなりに広大な自然に圧倒されているような気はする。けどそれよりも弟さん――ポップ君は、どこか懐かしそうに空気を感じているソニアさんに問いかけてる。
「あたし? おばあさまに、あんた達が旅に出るのにあなたはどうするのかしら、って諭されてね。マサキ君とポップが森で出逢ったポケモンの事、気になるし」

  ええっと、“霧の中の種族”……だったかしら?

「そうそう! それであたしも久しぶりに旅に出よう、って感じかな」
 するとソニアさんは待ってました、って言いたそうに、僕達が喋っていた時に話していた事を教えてくれる。フィフもその……“霧”の事を訊いてそうな感じだけど、生憎僕はマサキ君とポップ君から質問攻めに遭ってたから、全然聞けなかったけど……。多分ガラルにしかいない種族なような気がするけど、ソニアさんが凄くテンション上がってるから、珍しい種族なのかもね、きっと。
「へぇ」
「私も最初は知らなかったんだけど、学者って研究室に籠もってばかりじゃなくて、フィールドワークも結構するんだって」

  そういうこと。で、私もちょっと興味があるから、開会式が終わってからソニアちゃんに同行する、って感じかしら? 仲間と合流するついでにね。開会式前に役員と話さないといけないから、私達は先にエンジンシティに行くけど……。

「それじゃあフィフ? フィフ達とはここで分かれる、って事だよね? 」
 多分フィフは僕達以外には話してないと思うけど、フィフがそういう事に興味持つのも納得な気がする。立場上フィフは明かす事は無いと思うけど、昔から初めての地方に行く時は、そういう事を調べてるみたいだからね。アローラの旅では、あまり収穫はなかったみたいだけど……。
 それでこの流れでフィフがこれからの予定を話してくれたから、僕はこんな風に返事してみる。フィフは多分組織の支部長代理としての仕事をしにいくような気がするから、多分間違いは無いと思う。それに本当は昨日にはエンジンシティ入りする予定だったから、予定は大分遅れてしまってる。半日以上遅れてるのに話し込んでて良かったの、って思ったのはここだけの話だけど。

  そうなるわね。……じゃあコット、カナちゃん、マサキ君達も、エンジンシティで待ってるわね。

それでフィフは真上に昇りつつある太陽の位置を気にしながら、フィフとソニアさんはエンジンシティの方に駆けていく。一度僕達の方に振り返って、にっこり笑いかけてくれてからね。
「シルクも色々と大変なんだね」
「そうだな」
「うん。じゃあマサキ君、ポップ君、私達も行こっか」
それで僕達も一歩遅れて、ガラルの都心へと歩き始めた。……とは言っても僕達は参加者側だから、確か締め切りまであと何日かある、って言ってたような気がする。だから役員? 代表? 仕事として行くフィフよりは余裕があるから、少しはゆっくり出来そうだね。
「……そういえばカナさん? 」
「ぅん? 」
 駅からの坂を下って湖の前まで来たところで、急にポップ君がカナに話しかけてくる。マサキ君も一緒に歩いてきてるけど、唐突な質問に流石のマサキ君も驚いたみたい。僕は僕で風とか草花の香りに気が逸れてたから反応が遅れたけど、訊かれたカナ本人は思わず変な声を出しちゃってた。
「カナさんってコット以外にどんなポケモン持ってるんだ? 」
「あっ、それ僕も気になってた」
「そういえばマサキ君達、僕の仲間には会ってなかったね」
 僕はポップ君に言われるまですっかり忘れちゃってたから、思わずあっ、って声をあげてしまう。一応ヘクト達もガラルに来てからボールの外に出してもらってるけど、昨日の深夜だから二人には会ってない。忘れっぽいカナなら余計に忘れてそうだったから、ある意味助かったと言えば助かったけど……。僕は絶対に入りたくないから外にいるけど、中は安全だけどものすごーく暇だからね……。
「うん! じゃあさ、みんなのポケモンも一緒に、ここでキャンプにしない? 」
「キャンプ……? 」
「何なの、キャンプって……」
 それでカナはすぐに腰の四つのボールに手を掛けていたけど、持つより先にマサキ君がこんな風に提案してくる。そんな事は僕、それからカナも初めて聞いたから、テンションが上がってはしゃいでるポップ君に向けても首を傾げる。ガラル出身の二人が知っててジョウトの僕達はそうじゃないから、多分ガラルにしかない何かだと思うけど……。
「そっか、コットとカナ達は知らないんだよね。何ていったら良いか分からないけど、トレーナーとポケモンが皆で遊んだり、料理を作って一緒に食べたりする事だね」
「何それ、凄く楽しそう! 」
「……だけどマサキ君? 僕達ポケモンが人と同じもの食べても大丈夫なの? 」
 するとマサキ君は目をキラキラと輝かせながら、自分なりの言葉で説明してくれる。実は僕もした事無いんだけどね、って笑いながら付け加えてたけど、多分これは、雑誌とかテレビ……、それかダンデさんから聞いて知ったのかもしれない。
 少し効いただけでも凄く楽しそうだし興味はあるけど、同じものを食べるって事に、僕は少し心配になってしまう。“向こうの世界”では特に気にしてはなかったけど、人の食べ物の中には僕達ポケモンにとって塩分が多すぎたり、中には有毒は食材が使われてるものがある。だからそういう専門家がいたら話は別だけど、未成年の僕達だけだから余計に不安になってくる。
「それなら大丈夫だ。ガラルの食材は全部、ポケモンも食べれるようになってるからな。じゃなゃここまで流行らないな」
「違いとかは分からないけど、大丈夫そうだね」
 ポップ君はこう言ってはいるけど、逆に不安になってくる。まだ会ったばかりって言うのもあるけど、正直に言ってもう少し論理的に説明して欲しかった。旅の途中にフィフの研究もよく見てたからその時の癖が出ちゃったけど、万が一何か起きた時に、その材料が作られた場所とか時期、入ってる成分とか製造番号とかがあればどこで異常が起きたのか辿る事が出来る。……まぁこういう事は、色違いのひとに会うぐらい滅多に起きない事だけどね。
「それなら……、うん、わ――」
「じゃあ早速、出てこい! ウールー、サルノリ! 」
「ヒノカ、ボーラ、出てきて」
「イグリー、ネージュ、ヘクト、オークス、お待たせ! 」
「あっ……」
 不安な事は結構あるけど、僕が頷いたって事でポップ君が先走ってしまう。腰にセットしてる二つのボールを左手だけで持って、その二つをふわりと投げる。殆ど変わらないぐらいのタイミングで、マサキ君も同じようにメンバーを外に出してあげている。対してカナには僕以外に四にんの仲間がいるから、左右に二つずつ持って投擲……。ポンって軽い音と同時に白い光が放たれて
『ん、もう? 』
 僕の仲間達が一斉にボールから飛び出す。まず初めに首を傾げながら舞い降りたのが、僕にとって初めて出来た仲間でピジョットのイグリー。彼が唯一バトルを通して仲間になったけど、何やかんやで色々と助けてもらってる。
『さっ、流石にまだ早すぎると思うけど……』
 次に若干オドオドと不安そうにしてるのが、仲間の中では唯一の異性でラプラスのネージュ。元々ははぐれた仲間と合流するまでの一時的な加入だったけど、色んな事件に巻き込まれたり旅するうちに、僕達もネージュも離れたくなくなった、って感じかな。
『まぁ気にする事は無いんじゃねぇの? 』
  その次に無駄のない動きでスッと着地したのが、チーム内で僕と一番仲が良いヘルガーのヘクト。ウバメの森でカナ達とはぐれた時に出逢って、その時に意気投合してメンバー入りしてくれた。
『そうだよなぁ! 』
 最後に豪快に笑う彼は、同族の中では割大きいバンギラスのオークス。彼は野性時代いわゆるチンピラだったみたいだけど、チームの中では一番情が厚くて力強い、って思ってる。
『……っ! コット、あんたこんな凄い種族のリーダーだったんだねぇ』
「リーダーって言うより、仲間のひとりて言った方が正しいかな」
 似たようなタイミングでヒノカ達もボールから出ていたけど、そのうちのクスネ……、ボーラが僕達に気づいて駆け寄ってきてくれる。ヒノカも出てはいるけど……、知り合いなのかな? ポップ君のメンバーで黄緑色の子の方に走っていって、その事一緒に話し始めてる。
『確かにそうかもしれねぇな。俺等の中じゃあリーダーとかそういう区切りなんてねぇ……、全員親友みたいなものだからなぁ! 』
『そっ、そうだよね。最近やっとイグリーとオークスも仲良くなったから……』
 そのイグリーとオークスはヒノカ達の方に行っちゃったけど、ヘクトとネージュがこっちに残ってくれる。フッって小さく笑みを浮かべたヘクトは、一度僕と視線を合わせてから豪快な笑みを浮かべる。僕も彼に合わせて小さく頷いてから、ネージュの方を見上げる。偶々ボールから出たのが湖の岸だったからプカプカ浮いてるけど、ネージュは鼻先でオークス達の背中を指してる。……ネージュの言うとおり、出逢ったばかりのオークスとイグリー、僕も心配になるぐらい仲悪かったからね……。
『親友ねぇ。アタイにはまだヒノカ……、そこのヒバニーしかいないけど、出来るのかな……』
「絶対に出来るよ! 」
『そういゃコット? 見慣れねぇ種族のコイツは? 』
『見た事無い種族だけど……』
「あぁボーラの事? 」
『ラプラスのあんたはガラルにもいるから分かるけど、黒いあんたは初めてだねぇ』
『俺もお前の種族は知らねぇな』
「って事はヘクトの種族はガラルにはいないのかな」
『そっ、そうかもしれないね。ええっと、私はラプラスのネージュで――』
『俺がヘルガーのヘクト。属性は悪と炎タイプだ。お前は? 』
『悪タイプ? じゃあアタイと一緒だねぇ! アタイはそこのヒバニー……、白い種族の仲間だけど、クスネのボーラ。属性はあんたと同じ悪タイプ。まぁあんた達とは争う事になるだろうけど、よろしくねぇ』




  To be continued……

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