§5 Fif 蒸気と石壁の街

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Diary of Shirabe




『あれ以来会えてないが、テトラ、向こうの俺はどうしてる? 』
『例の彼だよね? 私も時々話すんだけど、元気でやってるよ』
『そうか。今回の任務が終わってから、久しぶりに会いに行ってみるか』
「あっ、それいいかもね。私も向こうのみんなに会いたいって思ってたし」
『そうだね』
Written by Fif




  ええっとソニアちゃん、開会式があるのってこの街であってるのよね?

「うん。たまにシュートシティでする時もあるけど、大体はここだね」
 コット達と一旦分かれた私は、一足先にソニアちゃんと次の目的地、エンジンシティにたどり着く。ブラッシータウンとの間には大きな湖とか草原とか――、ホウエンにも負けなそうな自然が広がってたけど、そこを探索するのはジムチャレンジのエキシビションマッチが終わってからになりそうね。ソニアちゃんが言うには、ガラルを縦断するように広がっていて、ジムチャレンジャーは交通機関を使わずに其所を通っていくのが普通だ、って言ってたわね。野良のひと達も沢山住んでるみたいだから、この大自然、ワイルドエリア出身の子が結構いるのかもしれないわね。
 それで今丁度ジムチャレンジの開会式があるエンジンシティに着いたところだけど、パッと見の印象はイッシュのシッポウシティに近いかもしれないわね。まだセンターがある南側しか見てないけど、古風な工業都市って感じがするわね。普段がどんな感じなのかは分からないけど、店の数が多くて人通りも結構ある。コガネ育ちだからって訳じゃあないけど、こういう賑やかな街は結構好きなのよね。
「開会式は今日の夜からの筈だから、それまでなら案内するよ? 」

  先に来てる仲間と合流するつもりだから、捜しながらになるけどお願いしようかしら?

 それで街の様子をキョロキョロと見渡しながら歩いてるところに、隣を歩くソニアちゃんがこう提案してくれる。知らない土地とか街を探索するのも結構好きだけど、話ながらうろうろするのも結構好きだったりする。先に来てるはずのフライの事もあるけど、こう言う時は大体彼が私の事を見つけてくれてるから、多分大丈夫だと思う。だから私は彼女の方を見上げ、にっこりと笑顔を見せながら大きく頷いてみる。
「じゃあそれでいこっか。わたしも親友のこと探せるし」
 すると彼女もついでに、って感じで一言呟く。となると場合によっては、私とソニアちゃん、両方と同時に合流する、なてことも起きるかもしれない。だからといって特に悪い訳ではないけど……。
 それでそのまま街をまっすぐ歩くと

  エンジンシティって結構狭い街かと思ってたけど――

 私達はレンガ造りらしき塀に突き当たる。この壁は街に入った時から見えていたから、ジムチャレンジの開会式がある割りに狭すぎる気がする、って思ってた。だけどそんな私の予想に反して

  こう言う事だったのね。

その塀の麓には、簡易的な造りのリフトが設置されていた。塀に沿ってライモンシティの観覧車みたいに回転する仕組みになっていて、搭乗部分はラナキナマウンテンみたいな形になっている。
「昔から工業で栄えてきた街みたいで、その時からの技術、って言ってたかな。そっちの方は詳しくは知らないけど」
 ソニアちゃんに直接言葉を伝えると、あはは、って小さく笑いながら簡単に教えてくれる。私自身地史は専門外だけど、そういう嘗ての技術の形跡とか……、史跡を見たり探検するのは結構好きだったりする。

  そっか。なら一通り用事が済んだら、その辺りも調べてみたいわ。

だからこう言葉を伝える私の尻尾は、知らない事への好奇心から無意識に揺れてると思う。もちろん、表情とか、そういうのも明るくなってる気がするしね。
「ガラルは色んな施術が残ってたりするから、シルクにはピッタリかもね。わたしも色々調べたい事あるし」
 ソニアちゃんもウキウキとした? 様子で、目を輝かせてる。確かソニアちゃんは研究者の見習いで、マグノリア博士から宿題を出されてる、って言ってたから、沢山あるらしい史実のうちの一つをテーマにするつもりなのかもしれないわね。

  そうなのね! なら開会式が終わってからエキシビションマッチまでジムチャレンジの視察ぐらいしかすること無いから、一緒に行ってもいいかしら?

それにガラルの史実には私も興味があるから、彼女の方を見上げてこう頼み込んでみる。私自身今代の史実に関わってるから、って訳じゃないけど、折角ガラルを巡るから丁度良いと思うのよね。あわよくばこっちの伝説の種族のひとに会って手合わせしてみたり……、個人的にしてみたい事は結構あるのよね!
「ほんとに? 」

  ええ! 仲間のフライゴンと合流してからなら、結構動きやすくもなると思うわ。

 するとソニアちゃんはよっぽど嬉しかったのか、期待の眼差しを私に向けてくれる。だからもちろん、って言う感じで大きく頷き、もう一度笑顔を彼女に見せる。一応アーマーガアって言う種族が各地に送り届ける死後をを請け負ってる、って聞いてはいるけど、ジムチャレンジャー以外は距離に応じて運賃を払わないといけないみたいだから、ね……。
「ありがと! タクシーって結構高いから助かるよ」
 出来れば私は車の類いは使いたくないけど、ソニアちゃんが言うならコスト面ではあまりよくはないのかもしれないわね。ソニアちゃん、結構嬉しそうにしてくれてるし。……とはいっても、その前にフライと合流しないといけないけど。
 それで離している間に、リフトは壁の上の区画についたらしい。今こうしてみてみると壁の上は結構な高さになっていて、慣れてなかったら見下ろすと足がすくみそうになってしまうかもしれないわね。リフトを降りた先は結構大きな通りになっていて、正面には――

  中々立派なスタジアムね……

 視界を覆い尽くすぐらい大きな、建造物。降りた正面を除いて、石造りの塀で覆われている。微かに水の香りと飛沫のような音も聞こえるから、もしかすると塀の反対側には噴水があるのかもしれない。人通りも結構多くて、時期も時期だからなのか、心なしかカナちゃん達の年頃の子達が多いような気がする。きっとこの子達も、ジムチャレンジの挑戦者かもしれないわね。
「でしょ?メインのシュートシティには負けるけど、中々のものでしょ? 」

  ええ! 今まで色んな街を見てきたけど、そのどれにも負けてないかもしれないわね。

 ソニアちゃん、自分の事みたいに話してくれてるから、自慢のスタジアムなのかもしれないわね。まだ中の方とフィールドを見てないから分からないけど、外観だけでこの規模なら、フィールドが複数整備されてる、なんてこともあるかもしれないわね。パッと明るい声で話してくれてるから、こうして話してる私も、つられてワクワクしてくるわ……。今まで見てきた中で一番のスタジアムは、イッシュのライモンシティかしらね。あそこは競技ごとに三棟もあったから、ある意味別格かもしれないけど。
「やっぱり? ガラルはポケモンバトルの本場だから、他の街にもあるんだよ。ガラルのジム戦はスタジアムで観客も入れてする一大イベ――」
 ガラルのジムの形式の事は向こうで調べてきてるから、一応知ってはいるつもり。だけど開会式がある街のスタジアムでこの規模なら、他の街のも期待できそう。今回の任務? 仕事? は各地のスタジアムとジム戦の視さ――
「――フライゴン、鋼の翼だ! 」
『っ、中々やるじゃねぇか。おぅよ! 』

  ん?

 と私達がスタジアムの事で話している側から、威勢の良い声が聞こえてくる。そっちの方に目をやると、ホテルがある方向に人だかりが出来ているのが見える。その中で野良試合が起きているみたいで、そのトレーナーのフライゴンが飛翔し、背中の翼を硬化させているところだった。
『これでもボクも、それなりに戦ってきてるからね』
 そのフライゴンが相手しているのも、全く同じフライゴン――
「ほら、こうして街の中でも野良試合がおきるぐらい盛んだから――」
 手元にドラゴンクローを発動させた彼が――

  フライ、が戦いたくなるのも分かる気がするわ。

 私が捜していた仲間のフライゴンだった。彼はまだ私達には気づいてないらしく、相手の同族に応戦しようと身構えている。ドラゴンクローを発動させてるって事は、そのまま両手で受け止めるつもりかもしれないわね。
 で、目的の彼も見つける事が出来たから
「あっ、シルク」
 私は後のソニアちゃんを気にしながら、群衆の方へと歩いて行く。少し距離があるしバトル中だから、ゆっくりね。戦闘中に邪魔するのはあまり良くないし……。

  さっき話した仲間のフライゴン、いるわよね?

「うっうん」

 ドラゴンクロー発動させてる方が、例のフライゴンなのよ。

だから話しかけるタイミングを計るためにも、ソニアちゃんにフライの事を順に話していく。フライと合流する、ってことは前もって話してあるから、すぐに伝わるわね、きっと。
「あのフライゴンが? 何か身につけてるから野生じゃないとは思ってたけど……あっ、終わったみたいだね」
 ソニアちゃんもフライの身なりで察してくれてたらしく、合点がいったように頷いてる。そうこうしている間に決着がついたみたいで、私についてきてるソニアちゃんが小さく声をあげる。私も観戦しながら伝えてたけど、急降下する相手のフライゴンに対して、浮上するように羽ばたくフライがすれ違い様に切り裂いてる。相手のフライゴンがどうなったかは群衆で隠れて見えなかったけど、フライが旋回して地上に降りてきてるから、群衆の雰囲気でしか結果は判断できてないけど……。

  そうみたいね。……フライ、お疲れ様。

 それでギャラリーが散開するのを待ってから、私はバトルを終えたばかりのフライに話しかける。見た感じフライはあまりダメージを負っている様子は無さそうで、腕の筋肉を軽く解してる。相手のトレーナーさんもメンバーのフライゴンをボールに戻して立ち去ってるから、今がチャンスだと思う。群衆の中にはフライを捕まえようと空のボールを構えてる男の子がいるけど……。
『ふぅ……っと、シルク? うん、ありがとう』
 その男の子がボールを投げていたけど、フライは見る事なく首を軽く傾ける事でそれをやり過ごす。どのみち当たっても弾かれるだけだから、気分的にかわしたんだと思うけど……。で、私が直接彼に語りかけたら、すぐに気づいて私達の方に飛んできてくれる。いつから戦ってたのかは分からないけど、彼の息は全然上がってないから、余裕だったのかもしれないわね、きっと。

  どういたしまして。

『……それでシルク? 後ろの女の人は? 』
「ええっと、シルク? フライゴンは何て言ってるの? 」

 ソニアちゃんが誰なのか、って言ってるわ。フライ、紹介するわね。私も昨日ガラル入りしてから知り合ったばかりだけど、研究者見習いをしてるソニアちゃん。私達が本戦前に戦う事になってるダンデ君の幼なじみみたいで、今はガラルの伝承を調べてるらしいのよ

『なら本戦までの時間潰しに丁度良いかもね。観光も出来るし、ボクも何か協力できそうだしね』




  To Be Continued……

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