洋館でマジックショーをすると聞き、それなら得意だもんねとフーパはなんの準備もせず、ふらふらと遊び呆けていました。自慢のリングからなんでも取り出せるし、どこへだって行ける。これ以上の魔法なんてあるわけないと、ふらふら遊んでばかり。
そんな時、ニンゲンのマジックショーをチラシが風で飛ばされてきました。ニンゲンなんかが魔法を使えるとは思わないけれど、どんなものだか見てみるかと、フーパは見に行くことにしました。
テントの中に設置されたステージには、シルクハットを被り燕尾服を着たニンゲンが、それらしい手つきでステッキをかざし何もない箱からぬいぐるみを出して、突いて飛び跳ねさせていました。フーパはふぅんとつまらなさそうに見ています。あれくらいだったら簡単にできるのに、何をそんなに目を輝かせながら驚くことがあるんだろう。
フーパは自分の方がすごいんだと言わせたくなってきました。突然ステージに上がって、リングからたくさんのぬいぐるみを取り出すと、命を吹き込んで動くようにします。観客もマジシャンも驚いて、歓声にも悲鳴にも聞こえる声をあげます。
フーパはそれが面白くって、満足するとテントを出ていこうとしました。しかし、帰ろうとしたところを走ってきたマジシャンに待ってくれと引き止められました。
「あんなすごいマジック見たことがない、私と一緒にステージに立ってくれよ」と誘われて、フーパはこれを挑戦だと思い、ステージに戻りました。
マジシャンがシルクハットからミミロルを出せば、フーパは進化系のミミロップを出します。マジシャンが水槽の中のキバニアを消してしまえば、フーパは水槽ごときれいさっぱりリングの向こうへ放り込みます。やりとりを繰り返すうちに、フーパは楽しくなってきました。観客からの声援も大きくなり、ショーが終わる頃には笑顔が満ちた空間になっていました。
「ありがとう小さなマジシャン君、おかげでショーは成功だよ。楽しんでやるからこそ素晴らしいマジックショーなんだと、久しぶりに思い出したよ」
そう言われて、フーパも楽しむ気持ちを思い出しました。こちらも楽しくやれば、遊びに来てくれるゴーストポケモンも楽しんでくれるはず。フーパはニヤリと笑って、リングをくぐり帰っていくのでした。
きょうのおはなしは、これでおしまい