必殺っぽくない、はっけい。
「うわぁっ!?」
後ろから襲いかかってきたポケモンは、着地するなりすぐに攻撃体制になる。
アルトも必死で反応するが、やはり相手が一枚上手のようだった。
「オマエニハ、キエテモラウ…!」
「だから、なんでって!」
相手は影で作った爪で切り裂こうとしてくる。
アルトは全ての攻撃をかわした…と思ったが、いつのまにか行動が読まれており、左手からの攻撃が当たり、飛ばされてしまった。
「うわっ…っ!」
空中に放り出された体を、相手はすかさず狙ってくる。
上から下へ、はたき落とし、アルトの体は大地に打ち付けられる。
「ぐはぁっ…っ!」
「アルトッ!?」
打ち付けられた衝撃で、一瞬思考回路が止まる。
再び物事を考えられたのは、2秒後だった。
その2秒で相手は影で作った爪で切り裂く寸前まできていた。
ー切られるーっ!ー
目をつぶったが、体に痛みは無く、恐る恐る瞳を開くと、そこには3匹のポケモンが、アルトを庇うような状態で立っていた。
「大丈夫ですか、主。あなたがくたばるなんて、笑えないですよ。」
「そーだそーだ。全く、未来に来てみればもう、なんかすげぇことなってしよー。」
「…守られちゃった。」
アルトは体を起こすと、深呼吸をする。
集中して、周りの状況を探ると、今相手しているやつの他にも、同じポケモンが3匹、そして、少し大きめの影が一つ。
これを撃破すれば問題ないだろう。
「よしっ」
アルトは静かに瞳を開くと、静かに話し始めた。
「僕は、君たちのことを、覚えていない。けれど、なぜか、不思議な感覚になるんだ。なんだか嬉しくて、温かくて、とても、楽しいんだ。だからー。」
「それ以上は。」
言葉を遮ったのは、一番前に立っていた、黄緑色のポケモン。
プッと口にくわえていた枝を吹くと、目つきが鋭くなると共に、静かに言葉を言い放った。
「この、戦いに勝ってからだなッ!」
それと同時に、2匹は別々の方向に移動した。
ルシアはアルトの側から離れず、守る、ということなのだろうか。
「主。私の背に乗っていてください。」
「いや、僕も戦うよ。」
「…そうですか。なら、気をつけて下さいね。」
そうとだけ言うと、ルシアは黙って瞳を閉じた。
そういえば、
「セレビィはっ!?」
「妾が守っている。だから、安心して戦え、アルト。」
セレビィはまだパワーを溜め込んでいる。
もう、少し。
もう少し凌げば、過去へ、自分達の居たところへ、戻れる!
不意を突かれて、上から3匹のポケモンが襲いかかって来た。
しかし、対応しきれないほどではない。
アルトはそれぞれかわすと、みやぶる攻撃をする。
今、アルトが覚えている技はどれも、ゴーストタイプには効き目のないかくとうタイプの技とノーマルタイプの技。
しかし、それを当てるためにみやぶるをすることで、当てることができる。
相手はヤミラミというポケモン。ゴースト、あくタイプのポケモン。
みやぶるをした後なら、かくとう技はこうかはばつぐんになる。
「…お前たち、覚悟しろよ…っ!」
全身に血がたぎるような感覚。
そのパワーを、右手に乗せて、1匹にはっけいを命中させる。
「次々ぃっ!」
今なら何でも出来るような気がした。
全身から力があふれ、全ての技がパワーアップしている、ような…!
「ほう、アルト。このタイミングで、か。」
アルトの全身にたぎるものは、光へと姿を変え、それはアルトを包み込む。
これはー。
光がやみ、そこから現れた姿はー。
紛れもなく、リオルの進化系。
ルカリオの姿だった。
原作では、ディアルガ撃破までは進化できないんですけどねぇ。
進化の泉どころが、色々なものぶっとばしてるので、許してください…