必殺っぽいはどうだん。
「…うっわぁ。なんか、すげぇ。」
進化、というものを見たことのあるニンゲンは沢山いるだろう。
けれど、進化というものを体験したことのあるニンゲンは極少数だろう。いや、多分居ないだろう。
進化というものは、内側からエネルギーが溢れ出る様になって、とても不思議なんだなぁ…と思った。
っと、そんなことは言ってられない。
セレビィのエネルギーチャージが終わるまで、ここを退かなければならない。
先程はっけいで攻撃したヤミラミ達はよろよろっと立ち上がった。
まだ戦う様子だ。
それと同時に、後ろからぞろぞろと加勢らしきポケモン達がやってくる。
主にゴーストやあくタイプのポケモン。
キリが、無いー!
「リオル。…いや、ルカリオ。」
そう声を掛けたのは、紛れもなくセレビィだった。
瞳を静かに閉じながら、こちらへと語りかけてくる。
「もう少し、なのだ。あと、少しだから、辛抱してくれ。」
セレビィの額には汗が出ていた。
エネルギーはセレビィ自身から出している。周りの木々の生命活動が停止してしまった以上、周りからエネルギーを得ることが出来ないと言っていた。
苦しそうに顔を歪ませる。
しかし、セレビィがずっと溜めていたエネルギーの球も、大きくなっていてた。とても、大きく。
もう少しなのだろう。
セレビィも頑張っているのだから、自分も頑張らなければならない。
そう自分をふるいたたせて、改めて敵を見据える。
進化した自分の力を信じるように、手をギュッと握りしめると、目つきがガラッと変わった。
はっけいと同じ要領で、右手にエネルギーを溜め込む。
しかし、どこかで手順を間違えたのだろうか?
「なんか、別の技になっちゃった…?」
「ルカリオ!それをもっと大きくするんだッ!」
そう声を上げてたのはリーフだった。
リーフブレードで襲いかかってくるポケモン達を手際よく切り裂きながらこちらへ目線を送りながら説明をしてくれる。
「それははどうだんだ。はっけいと同じ要領で手の部分にエネルギーを溜め込む。エネルギーのタンクの様なものが、ルカリオになって大きくなった為、はどうだんのような大きな技も使えるようになってきたのだ。だから、そのエネルギーの球を大きくさせて、相手に打て!それは必中だ!」
叫びながら、切りながら。
器用だな。とか思いながら、右手の上に乗ってるエネルギーの球を見る。
青白く光っているその球は、中心は渦巻くように存在している。
「エネルギーを貯めるって…。こんな感じか?」
少し力んでみる。
大きくなった。
「うおっ。…で、これを打つとーっ」
多分フォームは間違っていると思う。
投げつけるように放ってみた。
青白くエネルギーの球は、1匹のヤミラミに命中した。
辺りに黒煙が舞う。
その黒煙が消えてきたときに、不意に声がした。
「皆さん!飛んでください!」
聞こえた通りにアルトは飛んでみた。
急でびっくりしたのだが、反応は出来た。
飛んで、他に足が付くか…?という時に、メキメキメキィッッ!と音をたてながら、大地に氷が張っていった。
「うっおおっ!?」
着陸しても、氷で足が滑り、バランスを崩してアルトは転んでしまった。
黒煙が綺麗に消えれば、氷の発生源の部分にはルシアが居た。
「私にしては…。意外と出来たでしょう?」
そうか、この氷を発生させたのは、ルシアだったのか。
一人で合点しながら、周囲を見渡す。
ルシアの氷にまんまと引っかかっているヤミラミ達が沢山。
身動きが取れず、どうすれば良いのか分からないまま、その場に立ち尽くして居た。
「ー。エネルギーチャージ完了しました。これより、時空のゲートを開きますね。」
無表情のまま、淡々とゲートを開き始める。
側の崖の部分にゲートを発生させる。
赤、青、白、黒。この4色が、ゲートの中で渦巻いている。
「この中に入れば、ルカリオが居た世界に戻ることが出来ます。…しかし、2匹しか、行くことが出来ません。まさか、ジュプトルやゾロアーク、ラプラスが増えるとは思ってなかったので、規模の小さいゲートにしてしまったのです。」
「あぁ、俺たちはいいよ。…ただ、アルト、これを」
そういって、アルトに大きめの布袋を渡してきた。
持ってみると、意外とズッシリしている。
「これ、は?」
「これは、時の歯車だ。これを持って、まぼろしの大地というところの時空の塔の頂上におさめてくれ。…ざっくり話すとだな、時の歯車が無いと、時空の塔が崩壊して、この世界が闇に包まれてしまうんだ。時空の塔が崩壊した姿がこの世界だ。ディアルガも闇に包まれてしまってな。あの有様だ。」
アルトは辺りを見回す。
これが、時空の塔が壊れ、闇に包まれてしまったディアルガのおさめる世界ー。
アルトは固唾を飲んだ。
「まぁ、お前が頑張ってくれ。俺たちは未来から、この世界がもとに戻る…。お前達が過去を変えてくれることを祈ってる。」
アルトは黙って頷くと、リーフはニッカリと笑った。
「じゃ、アルセウス様。この後は頼みましたよ。」
「分かっておる。では、行くぞアルト。」
アルセウスとアルトは、ゲートをくぐり、元の世界へと帰っていった。
ー頼んだぜ、アルトー
ルカリオ出せて満足✌︎('ω'✌︎ )