101話 はらぺこバトル!F

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『対戦可能なバトルテーブルをサーチ。パーミッション。スタンダードデッキ、フリーマッチ』
 小樽運河にて突如始まった俺と、ソフトクリーム移動販売の船井和昌(ふない かずまさ)さんとの対戦。
 俺が勝てばソフトクリームが半額! 負けても特に何の損失もなし! こんなおいしい条件で、対戦を挑まれたらそれは飲むしかないだろう。
 最初の七枚の手札のたねポケモンはピィ30/30とロコン50/50だけか。ピィをバトル場に出そう。ロコンはベンチだ。
 互いにたねポケモンをセットし終えると、オープンする。どうやら船井さんの最初のバトルポケモンはメリープ40/40のみ。なるほど、雷タイプね。
「先攻は俺から! まずはサポートカードを発動、エンジニアの調整!」
「ねえ、エンジニアの調整ってどんなカード?」
 後ろで拓哉の声が聞こえる。振り返って解説しようとしたが、先に風見の声が聞こえた。
「手札のエネルギーを一枚トラッシュすることで山札からカードを四枚引く効果を持つサポートだ」
 その通り。俺は手札の炎エネルギーを一枚トラッシュしてカードを四枚引く。引いたカードは……、よし。上手い具合にたねポケモンが引けた。
「俺は手札からたねポケモン二匹をベンチに出す」
 ロコンの両隣りに開いた空穴からヒノアラシ60/60、ヒメグマ60/60が元気よく現れる。
「そして手札のダブル無色エネルギーをヒメグマにつける。この特殊エネルギーは、無色エネルギー二つ分として扱う効果を持つ」
 ヒメグマ及びその進化系のリングマが要するワザエネルギーは全て無色エネルギー。このエネルギーを使うことに躊躇する必要はどこにもないぜ。
「ピィのワザを使わせてもらう。ピピピ!」
 ピィが指を可愛らしく三回程軽く回す。
「ピピピ、か。確か効果は手札の全てのカードを山札に戻し、その後新たに山札から六枚引いて手札に加える効果を持つものだったな。序盤から積極的にカードドローを狙うな、翔」
「当たり前だろ! カードを引けば引くほどチャンスは広がるんだから。そしてピピピのもう一つの効果! このワザを使った後、ピィを眠り状態にする」
 ワザを使い終わったバトル場のピィは、急に横になって安らかな寝息を立てはじめる。
「あれ、なんで翔はわざわざ自分のポケモンを寝かせたんだ?」
「ピィのポケボディー天使の寝顔は、このポケモンが眠り状態のときワザによるダメージを受けなくする効果がある。翔はそれを利用するつもりなんだ」
 俺の番が終わったことでポケモンチェックに入る。ここでコイントスをしてオモテを出せばピィは起きてしまうが……。そんな願いも通じず、結果はオモテ。ピィはあっさり起きてしまう。
「残念! 私の番を始めるよ。手札からサポートのポケモンコレクターを発動する。この効果で私は自分の山札のたねポケモンを三匹まで手札に加える。私はメリープを三枚手札に加え、それらを全てベンチに出す」
「す、全て!?」
 船井さんのベンチにメリープ40/40が三匹現れ、これでメリープ計四匹! 牧場かよ! 昨晩のジンギスカンを思い出して、やや申し訳なくなる。
「続いてグッズカードを発動。ポケモン通信。手札のポケモンを一枚戻すことで、好きなポケモンを山札から手札に加える。私はレアコイルを戻してピカチュウを加え、そのピカチュウもベンチに出す」
 船井牧場にようやくそれ以外のピカチュウ50/50が登場する。うん、絶対雷単色デッキだ。
「私はバトル場に存在するメリープに雷エネルギーをつけて、ワザを発動。静電気! 互いの場に存在するメリープの数だけ、このメリープに山札から雷エネルギーをつける」
「今場に存在するのは船井さんの場にいるメリープの四匹だけか」
「そう、私はバトル場のメリープに山札から雷エネルギーを四枚つける」
 いきなり自分の番に五枚もエネルギーをつけるだなんて、驚いた。だが俺だってまだまだ!
「今度はこっちから! まずはロコンをキュウコンに進化させる」
 ロコンの体が光り輝き、金色の毛並みと九つの尾をもつ優雅なポケモン、キュウコン90/90に進化する。直接な戦闘能力はないが、優秀なのはその効果。
「そして早速キュウコンのポケパワーを発動だ。炙り出し。手札の炎エネルギーを一枚トラッシュすることで、山札からカードを三枚引く!」
 さっきのエンジニアの調整と似たような効果を持つが、あれはサポート。こっちはポケパワー。サポートと似た効果を使いながら、さらにサポートを使うことが出来る。
「手札のサポート、チェレンも発動だ! 山札からカードを三枚引く」
 これで手札は十枚。持ってる左手で仰げば扇子だ。しかしここから手札を一気に減らしにかかる。
「俺はベンチのヒノアラシをマグマラシに。そしてヒメグマをリングマグレートに進化させる!」
 今進化したマグマラシ80/80の、キュウコンを一つまたいでその隣ではリングマグレート120/120が金色の粉末状の何かを撒き散らすエフェクトを放ちながら雄叫びを上げる。
「おお、君もグレートポケモンを」
「そして新たにベンチにヒメグマ(60/60)を出し、バトル場のピィを逃がす。そしてリングマグレートをバトル場に出す」
 ピィの逃げるエネルギーは0。何の損失も無くリングマにバトンパスだ。
「リングマに炎エネルギーをつけてメリープに攻撃。アームハンマー!」
 両腕を合わせて持ち上げると、それを槌のように振り下ろす。ズシンという重い音と、風と砂煙のエフェクトが巻き起こり、視界を妨げる。
「このワザの威力は30だが、アームハンマーには他の効果がある。相手の山札の一番上のカードをトラッシュする」
 ぎりぎりメリープ10/40を倒すには至らなかったが、船井さんのデッキトップのカード、モココをトラッシュさせた。これでメリープの進化の確率を下げることが出来た。
「中々やるね! でも私も負けないよ、私のターン。まずはピカチュウをライチュウグレートに進化!」
 船井さんのベンチでピカチュウがライチュウグレート100/100に進化する。頬からはバチバチと電気を放ち、今にも戦意十分と言ったところか。
「メリープの雷エネルギーを一枚トラッシュしてメリープを逃がし、バトル場に新たにライチュウグレートを出す」
 HPが僅かのメリープ10/40を逃がすのは定石だが、だからといってエネルギーが一つも付いていないライチュウグレートを出すのもいかがなものか。壁なのか?
「ライチュウグレートのポケパワー。このポケパワーは自分の番に何度でも使え、自分のポケモンについている雷エネルギーをこのライチュウにつけることが出来る。私はベンチのメリープの雷エネルギーを三つ、ライチュウにつける。ボルテージアップ!」
 ライチュウの長い尻尾がメリープ10/40の目の前まで伸びる。その尻尾に捕まったメリープの体から出た雷のシンボルマーク三つが、ライチュウに吸い込まれていく。
 前の番の静電気で雷エネルギーを大量につけたのは全てこれを見越してのことだったのか。
「そして手札からグッズカード、不思議なアメだ。自分のたねポケモンを手札にある二進化ポケモンに進化させる! 私の傷ついているメリープ(10/40)を、デンリュウグレートに進化!」
「に、二匹目のグレートポケモン!」
 メリープ10/40は目の前に現れたアメをぺろりと舐めると同時に、体から光の柱が発してその姿を大きく変え、デンリュウグレート110/140へと進化を遂げる。リングマグレートで仕留め損ねたのが大きく裏目に出たか。
「サポートカード、オーキド博士の新理論。手札を全て山札に戻し、山札を切り、その後山札からカードを六枚引く。しかし私の手札は今0枚なので山札にカードは戻せない」
 バトルテーブルがオートで山札をシャッフルし、船井さんはカードを六枚引くだけだ。手札がそれだけあれば、まだ何か仕掛けてくることは十分あり得る。
「もう一枚不思議なアメを使わせてもらうよ。それによってメリープをデンリュウグレートに進化だ」
 二体目のデンリュウ140/140が現れる。これで船井さんの場にはライチュウ、そしてデンリュウ二匹の計三匹のグレートポケモン。こんなに大量にグレートポケモンが並んでいる光景は、三カ月程前の蜂谷と佐藤さんが戦っていた時を思い出す。
「まだまだこれからだよ。コイル(50/50)をベンチに出し、ベンチのメリープをモココ(80/80)に進化させる。そしてダメージを受けている方のデンリュウに雷エネルギーをつけて戦闘を行う」
 ライチュウグレートの殺気立った体から、バチバチバチと激しい電気が迸る。大きいのが来るか……!
「ライチュウでリングマに攻撃。100万ボルト!」
 まるで電気の塊をぶっかけるような強く、眩く、そして激しい電撃攻撃をリングマは苦しそうな声を出しながら受ける。ようやく放電が止むと、黒こげになったリングマ0/120が膝をついてそのまま前に倒れ伏す。
「リングマっ!」
「100万ボルトの威力は120! 君のリングマのHP丁度だね。そして100万ボルトの効果で私はライチュウについているエネルギーを三枚トラッシュ。そしてサイドを一枚引く」
 一発120だがやはりその分デメリットは大きいってことか。仕方なし、今はとりあえずピィを壁としてバトル場に出す。とりあえず今はライチュウの攻略の糸口を探さなければ。
「俺のターン。まずはキュウコンのポケパワー、炙り出しを使わせてもらう。手札の炎エネルギーを一枚トラッシュして、山札からカードを三枚引く」
 今の俺の手札ではライチュウグレートをすぐにどうにかすることが出来ない。HPを100削るというのがいかに大変か改めて思い知る。
 しかし八方塞がりという訳ではない、今は倒すチャンスに向けて少しでも動くまでだ。
「ベンチのマグマラシを進化する! 現れろ、バクフーングレート!」
 四足歩行のマグマラシのフォルムがみるみる変わり、ずっしり構えた二足の脚で立つバクフーングレート140/140が登場する。こいつが俺のデッキの核となるポケモン。さあ勝負はここからだ。
「サポートカード、チェレンを発動。その効果で俺はカードを三枚引く。そしてバクフーンに炎エネルギーをつける」
「このタイミングでデンリュウグレートのポケボディー、感電が発動!」
「な、何っ!?」
「相手が手札からエネルギーを一枚つける度に、そのポケモンに10ダメージ。私の場にはデンリュウが二体。よって計20ダメージを受けてもらうよ」
 バクフーンの足元からバチバチとかなり大きな音が鳴る。首を左右に振り、それが何かを探すバクフーンに突如、足元から二本の電撃の槍が襲いかかる。
 エネルギーを一枚つけるだけでバクフーン120/140のHPが20も減るなんて。あのデンリュウ、厄介だ。だからと言ってライチュウの100万ボルトも無視できない。
 この人普通に強い。所詮ただの街中の人だなんて侮っていた俺が間違いだった。
「くっ、ヒノアラシ(60/60)をベンチに出し、ピィのワザを発動する。ピピピ。その効果で手札を全て戻しシャッフル。後にカードを六枚引いてピィを眠り状態にする」
 俺の番が終わったことでポケモンチェックに入る。ピィの眠り判定を決めるコイントス、……ウラが出た。良かった、眠りのままだ。これでライチュウグレートがいかに強かろうが、ピィのポケボディーによってダメージは与えられない。
「私の番だ。まずは手札からポケモン通信を使わせてもらう。手札のモココを山札に戻し、ジバコイルグレートを加える」
「ま、まだグレートポケモンがいるの!?」
「グッズカード、不思議なアメを使い、ベンチのコイルをジバコイルグレート(140/140)に進化!」
 嘘だろ、これで四匹もグレートポケモンが並ぶだなんて。流石に冷や汗をかいてきた。涼しいはずなのに北海道よ。なおさらソフトクリーム欲しい。
「ジバコイルグレートのポケパワー電磁ドローは、自分の手札が六枚になるようにカードを引くことが出来る効果を持つ。私の今の手札は0枚。よって六枚カードを引く」
 さっきのオーキド博士の新理論といい、船井さんはとにかく引けるカードの枚数を最大にしようと狙い、計画的にカードを引こうとしている。もう船井さんの山札は二十四枚。まだ六ターン目だってのに山札の減りが早い早い。
「ベンチにいるダメージを受けていない方のデンリュウグレートに雷エネルギーをつけ、サポートカード、オーキド博士の新理論を発動。その効果で手札を全て戻してカードを六枚引く」
 言った傍から新理論。しかしカードを使った時の手札は四枚もあった。よっぽど引きが悪かったと見える。
「今攻撃しようとしてもポケボディーのお陰でピィにダメージは与えられないね。ライチュウのワザは100万ボルトのみ。これじゃあ手出しできない、私の番はこれで終わりだ」
 船井さんの番が終わって再びポケモンチェック。今度はオモテを出し、ピィの目が覚める。
 さて、果たしてどうこのグレートポケモンラッシュを攻略したものか。



翔「今回のキーカードはライチュウグレート!
  グレートに恥じない圧倒的な攻撃力。
  120ダメージでどんな相手も薙ぎ倒せ!」

ライチュウ HP100 グレート 雷 (PROMO)
ポケパワー ボルテージアップ
 自分の番に何回でも使える。自分のポケモンについている雷エネルギーを一個、このポケモンにつけ替える。このパワーは、このポケモんが特殊状態なら使えない。
雷雷無 100まんボルト  120
 このポケモンについているエネルギーをすべてトラッシュ。
弱点 闘×2 抵抗力 鋼-20 にげる 1

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