102話 死活問題Q

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 船井さんのバトル場ではライチュウグレート100/100。ベンチにはジバコイルグレート140/140、雷エネルギー二枚ついたデンリュウグレート110/140、雷エネルギー一枚ついたデンリュウグレート140/140、モココ80/80にメリープ40/40。
 一方俺のバトル場はピィ30/30。それに次ぐベンチはキュウコン90/90、炎エネルギーが一枚ついたバクフーン120/140、ヒノアラシ60/60、ヒメグマ60/60。サイドは俺が六枚、船井さんが五枚。
 船井さんは、ライチュウで俺のバトル場のポケモンを攻撃し、反撃に転じようと手札からエネルギーをつければデンリュウのポケボディー、感電によって10ダメージ。さらにジバコイルのポケパワー電磁ドローで、手札が切れても六枚になるようカードを引けて、すぐに補給できる。そんな、まさに完璧の布陣を築いている。
 一方の俺はピィでなんとか攻撃を凌ぐのが精一杯、誰がなんと言おうと劣勢でしかない。
「ドローだ!」
 引いたカードはポケモン通信。そして手札にはダブル無色エネルギーがある。
 俺のバクフーングレートのポケパワー、アフターバーナーはトラッシュに存在する炎エネルギーを一枚自分のポケモンにつけ、その後そのポケモンにダメカンを一つ置く効果。
 手札からではないので感電の効果は受けない。これを上手く活かさないといけない。
 たとえばポケモン通信でリングマグレートを持ってくる。ヒメグマを進化させ、ダブル無色エネルギーをつける。そうすれば感電で20ダメージを受けるが、リングマグレートにダメカンが一つでも乗っているとリングマのポケボディー、暴走が発動する。この効果でリングマが相手に与えるダメージは+60になる。
 ダブル無色をつけた後、アフターバーナーで炎エネルギーをリングマにつければワザ、アームハンマーが使える。しかしその威力は30で、暴走の効果があってもライチュウグレート100/100を倒すに至らない。これじゃ駄目だ。
 もう一つエネルギーがついていたなら威力60のメガトンラリアットで攻撃し、暴走で計120ダメージを与えれる。
 そのためにはもう一匹バクフーングレートを用意すればいい……のだがそれが出来ない。手札に不思議なアメがあり、ヒノアラシをバクフーングレートに進化させることが出来る。しかしそのバクフーングレートがいないのだ。
 自分の手札のポケモンを戻し、山札の好きなポケモンを手札に加えれるグッズ、ポケモン通信は手札に二枚ある。しかしそれを使うために必要なコストであるポケモンが一枚しか手札にない。
 炎エネルギーも手札に無く、手札の炎エネルギーをトラッシュすることでカードを三枚引くポケパワーを持つキュウコンのポケパワー炙り出しも使えない。
 リングマグレートか、バクフーングレートかの二者択一か。
 リングマを引いてもライチュウにトドメを刺せなかったら返しのターンに一撃でやられてしまう。バクフーンもそうだが、リングマグレートは二枚しかこのデッキには入っていない。既に一匹目のリングマはやられてしまっているから、最後のリングマをそう簡単に倒させるわけにはいかない。
「よし」
「長考だね」
「そりゃあ考えますよこの状況! まずはポケモン通信を発動。手札のロコンを戻し、山札からバクフーングレートを手札に加える。そしてもう一枚グッズカード、不思議なアメ。その効果で俺のベンチのヒノアラシをバクフーングレートに進化させる!」
 バクフーン140/140の雄叫びが小樽運河に木霊する。街行く人たちも俺たちに興味を持ったのか、観戦する子どももいる。ただでさえ劣勢なのにこんなに注目を惹くだなんて。うー、手汗がヤバい。
「ダブル無色エネルギーをベンチのヒメグマにつける」
「ここでデンリュウのポケボディー、感電が二匹分発動!」
 ヒメグマの足元から二つの電撃の槍がヒメグマ40/60を襲う。ダブル無色エネルギーは一枚で二つのエネルギー分として働くが、あくまで「一枚」である。よって10×2=20ダメージで済む。40ダメージは受けない。
「続いてピィをベンチに逃がし、バトル場に傷ついた方のバクフーン(120/140)をバトル場に出す。そしてバクフーンのポケパワー、アフターバーナーを発動! その効果でトラッシュの炎エネルギーをバトル場のバクフーンにつけ、その後ダメカンを一つ乗せる」
 トラッシュの炎エネルギーをバトル場のバクフーンにつけると同時、バトル場のバクフーンの足元から火柱が巻き起こりバクフーン110/140を飲み込む。ダメカンを一つ乗せるにしては派手な演出だな。
「もう一匹のバクフーンのポケパワーも発動。その効果でバトル場のバクフーンに炎エネルギーをつける。アフターバーナー!」
 火柱が止んだと思えば間髪入れずに二発目の火柱がバクフーン100/140を襲う。まさかここまで激しいエフェクトだとは思わなくって、なんだか申し訳ない。
「よし、バクフーンでライチュウグレートに攻撃だ。フレアデストロイ!」
 後ろ足二つで真っすぐに駆けだしたバクフーンは、猛る炎に包まれた右手でライチュウを殴りつける。と同時に爆発が起こり、風が舞う。
「うおっ!」
「ぐう!」
 特に対戦している俺たち二人にかかる風のエフェクトが激しい。カッターシャツがぺらぺら、ネクタイがひらひら鬱陶しい! 特にネクタイ。めんどくさいから外して拓哉の方に、頼むと一言言って投げつける。
「フレアデストロイの効果は、互いのバトルポケモンのエネルギーを一枚トラッシュする効果。しかしライチュウにはエネルギーがついていない。よってバクフーンの炎エネルギーをトラッシュして、俺の番は終わりだ」
 ライチュウ30/100を倒すことは出来なかったが、ここでリングマを失うよりかははるかにマシだ。大丈夫、ちゃんと狙い通り進んでいる。
「私の番と行かせてもらうよ。さて、まずはメリープをモココ(80/80)に進化させ、ライチュウグレートに雷エネルギーをつける。続いてグッズカード、研究の記録を発動」
 研究の記録は自分の山札を上から四枚見て、その中のカードを好きなだけ選び好きな順番で山札の下に戻す。その後、残りのカードを好きな順番で山札の上に戻せる効果だ。
「なあ風見、アレって意味があるの?」
「アレ?」
「研究の記録ってカードさ、手札減らしてるようなもんじゃないの?」
 後ろで恭介の声が聞こえる。確かに、一見自分の手札が一枚減ったように感じるかもしれない。だが。
「それは違うな。今引きたいカードをデッキの上に残し、逆に引きたくないカードをデッキの底に戻すことでカードを疑似的に狙って引くことが出来る。特に船井さんは、ジバコイルのようなカードをドロー出来る効果を持つポケモンがいるから、選んでデッキの上に戻したカードを狙ってすぐに引ける」
「なるほど」
 風見も確か好んで使っていた気がする。運に頼らないところが気にいったのかもしれないな。
「翔、ボーッとしてる余裕はない。ほら、来るぞ」
「私はジバコイルのポケパワー、電磁ドローの効果を発動。手札が六枚になるまでカードを引く。今の手札は四枚、よって二枚を引かせてもらうよ。続いてサポート、チェレンの効果でカードを三枚引く。そしてもう一度研究の記録を発動だ」
 最初のドローを含めてこの番だけでまた六枚もカードを引いた。お陰で船井さんの山札の残りは十六枚。そんな山札で大丈夫かと心配になる。
「ライチュウのポケパワーを発動。ボルテージアップ! その効果でベンチにいるデンリュウ(110/140)についている雷エネルギー二枚をライチュウに付け替え、ライチュウでバクフーンに攻撃だ。100万ボルトォ!」
「くそっ!」
 またもや激しい電撃攻撃が俺の場を抉る。眩しい閃光と派手なエフェクトに思わず目を塞ぐ。ようやく止むと、そこには仰向けに目を回しながら倒れているバクフーン0/140が。120ダメージに耐えれなくてこうなるのは分かっていたさ。すまんなバクフーン。
「100万ボルトの効果で、ライチュウについているエネルギー、雷エネルギー三枚を全てトラッシュする。そしてサイドを一枚引かせてもらうよ」
「俺はピィをバトル場に出す」
 逃げるエネルギーが0というのもあって、とりあえず困ったらピィを出してるな。しかしライチュウのHPはもうだいぶ削ってやった。これなら問題ない。
「俺のターン! まずはダブル無色エネルギーをヒメグマにつける」
「デンリュウグレートのポケボディー、感電が発動!」
 再びヒメグマを電撃の槍が襲う。もう一度感電を受けたらヒメグマ20/60のHPは尽きてしまう。だがもうこれ以上ヒメグマにエネルギーはつけない。が、もうつける必要もない。
「サポートカード、アララギ博士を使うぜ。手札のカードを全てトラッシュすることで、山札からカードを七枚引く」
 俺は手札のキュウコンとポケモン通信をトラッシュして、新たに手札を補給する。よし、好カードが来た。
「手札からグッズカード、ポケモン通信を発動。その効果でロコンを山札に戻し、リングマグレートを手札に加え、ベンチのヒメグマを進化させる。来い、リングマグレートッ!」
 二匹目のリングマ80/120をベンチに呼び出す。これで今度こそライチュウを倒せる。しかしその前にやることはまだ残っている。
「手札からヒノアラシ(60/60)を二匹ベンチに出し、キュウコンのポケパワーを発動。炙り出し! 手札の炎エネルギーをトラッシュしてカードを三枚引く。さらにグッズカード、エネルギー回収も使うぜ」
 エネルギー回収はトラッシュにある基本エネルギーを二枚まで手札に加える。すでに俺のトラッシュには炎エネルギーが八枚もある。念には念、二枚加えておこう。
「ベンチのバクフーンのポケパワーを発動。トラッシュにある炎エネルギーを、バクフーンにつける。アフターバーナー!」
 火柱がバクフーン130/140を覆う。手札からエネルギーをつけてもダメージは受けるが、こっちの方が受けるダメージは少ない。イレギュラーってやつだな。
「ピィを逃がしてリングマをバトル場に出す。そしてリングマで攻撃だ、アームハンマー!」
 リングマがライチュウの元まで迫り、拳を振り上げる。
「リングマのポケボディー、暴走は、このポケモンにダメカンが一つでも乗っているなら相手に与えるダメージをプラス60させる!」
 徐々にリングマの表情が怒りで真っ赤になっていく。振りおろした鉄槌からはさっきのアームハンマーより数段エフェクトが激しい。グオォンとやけに響く音に加え、土煙が向かいのフィールドを一度覆い隠す。煙が晴れると、うつ伏せに伸びてダウンしたライチュウ0/100。よし、決まった!
 大ダメージを与えてやった。とはいえ暴走がなくてもアームハンマーの元の威力は30。残りHPが30だったライチュウにはそれでも十分だったのだ。
「アームハンマーの効果で、船井さんのデッキの一番上のカードをトラッシュ! そしてサイドを一枚引く」
 トラッシュしたカードはポケモンコレクター。そして船井さんは新たに、既に雷エネルギーが一枚ついているデンリュウ140/140をバトル場に出した。
 しかしライチュウの100万ボルトはリスキーすぎた。一度使うだけでエネルギーを三枚もトラッシュ。
 お陰で今の船井さんの場のエネルギーはバトル場のデンリュウ一匹のみ。一方で俺は自分の番にバクフーンのポケパワーのお陰で自分の番に二枚までエネルギーをつけることが出来る。
 ライチュウを倒したことは、サイドを一枚引く以上に価値があるはずだ。まだまだ押し返せる。
「私の番だね。まずはデンリュウにダブル無色エネルギーをつける。続いてベンチのモココ二匹をそれぞれデンリュウグレートに進化だ」
「え、まだいたの!?」
 デンリュウグレート140/140が新たに二匹追加されたことで、感電の威力は倍増。一枚手札からエネルギーをつけてみれば40ダメージが襲ってくる。ふざけんな! もうまともにエネルギーがつけられない。
 そして船井さんの場にはこれで合計五枚のグレートポケモン。ちょっとした壮観だ。と喜ぶ余裕は微塵もない。
「さあ、デンリュウで攻撃だ。稲妻クラッシュ!」
 デンリュウは空に向かって放電する。それと同時に船井さんはバトルテーブルのデッキポケット横にあるコイントスボタンを押す。
「このワザはコイントスの結果によって効果が変わるワザでね、オモテの場合40ダメージを追加。ウラの場合は相手のエネルギーを一つトラッシュする効果だ。……ウラ、リングマのダブル無色エネルギーをトラッシュ!」
「うっ!」
 と叫んだが同時に先ほど放った電撃が、上空からリングマを襲う。稲妻クラッシュ自体の威力は40、そこまで大したことはない。だがリングマ40/120のダブル無色エネルギーをトラッシュされたのはそれ以上に痛手だ。
「まだまだ、俺の番だ! まずはキュウコンのポケパワー、炙り出しを発動」
 炎エネルギーを一枚捨てて新たにカードを三枚引く。手札には炎エネルギーはまだまだある。しかしそれをリングマにつければ最後、感電が四つ同時に襲ってきて40ダメージ。エネルギーをつけるだけで気絶してしまう。
 船井さんの狙いはこっちか。もちろん、先程オモテを出されていればその時点でリングマはお釈迦だったが、ウラが出ても結果は大して変わるまいと念密に計算された結果だろう。だがまだノーチャンスではない!
「ヒノアラシをマグマラシ(80/80)に進化し、更に不思議なアメを使ってベンチのヒノアラシをバクフーングレート(140/140)に進化させる。サポートカード、チェレンの効果で山札からカードを三枚引いて、もう一枚グッズカード、ポケモンキャッチャー!」
 突如どこからか飛び出した捕縛網が船井さんのベンチにいるデンリュウ110/140を捕える。
「このカードは相手のベンチポケモン一匹を選び、そのポケモンをバトルポケモンと強制的に入れ替えさせる。今網にかかったデンリュウをバトル場に引きずり出す!」
「なんと!」
「バクフーングレートのポケパワー、アフターバーナーでリングマグレートにトラッシュの炎エネルギーをつける。そしてもう一匹のバクフーンでもリングマにアフターバーナーだ!」
 火柱二つがリングマ20/120を包み込む。10ダメージが二回分、20ダメージを受けたのだが、これでも手札からつけるときの半分以下のダメージ! 感電改めて恐ろしいな。しかし感電の威力もこれで下げてもらおう!
「リングマでデンリュウに攻撃! メガトンラリアット!」
 走り出したリングマは、デンリュウの首元に激しいラリアットをかます。このワザの元の威力は60だが、リングマにダメカンが乗っているのでポケボディー暴走の効果が働き威力は+60。よって60+60=120ダメージを残りHPが110だったデンリュウに浴びせられ、気絶させることになる。
「よし! これでサイドを一枚引いて俺の番は終わりだぜ」
 これでサイドは互いに四枚。追いついた。
「強いね君、そんなに半額が欲しいかい」
「もちろん! あ、いえ……、欲しいです」
「ははは、原動力はもしかしてそれかな? それはともかく、腕に自信があるつもりだったんだがもう追いつかれてしまった」
 船井さんは右手で首の裏をさすりながらまたもや笑い声を上げる。
「だけどまだ勝負を譲るつもりはないよ。私は再びさっきのデンリュウグレートをバトル場に出す。そして私の番だ。ベンチのジバコイルに雷エネルギーをつけ、グッズカード、研究の記録を使う。……よし、そしてジバコイルのポケパワー、電磁ドローでカードを引く」
 今の船井さんの手札は五枚。よって引けるカードはたったの一枚だけだが……。
「さらにサポートカード、チェレンによって山札からカードを三枚引く。続いてロストリムーバー!」
「ロストリムーバー!?」
「このグッズカードの効果で、相手の特殊エネルギー一枚をロストゾーンに置く。私はリングマグレートのダブル無色エネルギーをロスト!」
 くっ、これでリングマ20/120についているエネルギーは二つ。アフターバーナーであと一つつけれても、もう一つつけて再びワザエネルギーが無無無無のメガトンラリアットを使うことが出来ない。感電が無ければっ!
「そして私もポケモンキャッチャーだ。君のベンチに居座っているキュウコンをバトル場に引きずり出す!」
 リングマにトドメを刺さないのか? そう考えているうちにキュウコン90/90がバトル場においやられる。デンリュウのワザではキュウコンを一撃で倒すことは不可能なはず。
「もう一枚グッズカード、プラスパワー! これによって私のポケモンが君のバトルポケモンに与えるダメージをこの番だけプラス10する」
「っ、そう来るか!」
「デンリュウで攻撃、稲妻クラッシュ。……オモテが出たので40ダメージ追加だ!」
「キュウコン! うわっ!」
 激しい稲妻がキュウコンを襲う。40+40+10=90ダメージがキュウコン0/90のHPを奪う。うっそだー、まさかキュウコンが一撃でやられるなんて。って茶化してる場合じゃない。
「ははっ、悪いね。サイドを一枚引いて私の番はこれでおしまいだ」
 仕方なくまたもやピィをバトル場に出す。炙り出すで俺のドローを支えていたキュウコンがやられてしまっては、うまく場を持ち直すのが難しい。
 まだ船井さんにはグレートポケモンが四匹。しかもおれは身動きを取れば取るほどダメージを受けてしまう。どうやってこの状況を抜け切るんだ……。




翔「今回のキーカードはデンリュウグレート。
  感電はかなりいやらしいポケボディー。
  四匹並べばエネルギーつけるだけで40ダメージだ!」

デンリュウ HP140 グレート 雷 (L1)
ポケボディー かんでん
 相手が、手札のエネルギーをポケモンに1枚つけるたび、そのポケモンにダメカンを1個のせる。
雷無無 いなずまクラッシュ  40+
 コインを1回投げオモテなら、40ダメージを追加。ウラなら、相手のバトルポケモンについているエネルギーを1個トラッシュ。
弱点 闘×2 抵抗力 鋼-20 にげる 2

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