第二話「青年〜少し前、その1〜」

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3/25、指摘された誤字を訂正致しました。ご指摘ありがとうございます。
地面に降りると、しばらくフェリーに乗っていたからなのか地面がユラユラと揺れているような感覚になる。それもそのはず、格安のフェリーに十二時間も乗っていたのである。自分は酔いの性質はなかったためマシな方なのかも知れないが、滅多に船などには乗らないこの身体は異様なほど疲れていた。

「ようやく着いたな、ドクサ島・・・・・だっけか」

辺りを見渡すと、前方に大きな看板で「ようこそ!伝説と牧場の島、ドクサへ!」と書かれている。住居地域をしばらく歩いていくと、所々に「モーモーソフト」と書かれている看板が上がっている。どうやらこの島の特産品は「モーモーソフト」と言うらしい。

暇があれば食べてみたいのだが、その前にやることがある。俺は多少の倦怠感を抑えながらも近場のポケモンセンターへと足を運んだ。

いらっしゃいませ、と言う職員のお姉さんに軽く会釈をして俺はパソコンの方へと向かう。パソコンの前で自分の認証をし終えて、通信のボタンを押そう・・・・・として少しためらった。

はぁ、と自然と口から出るため息。

俺はためらいながらも通信のボタンを押して、モニターで連絡先を選択する。とは言っても連絡先はそこまで多いわけでもなく、ホウエン地方>ミナモシティ>ミナモボタニックガーデンと連絡先を設定して、通信を繋げた。

そして、数回のコールの末にピコン、と言う通信の繋がる音がして、その声は聞こえた。

『はい、こちらミナモボタニックガーデン事務局でございます。ご要件はいかが致しましょうか』

おしとやかそうな若い女性の声が聞こえて、その声からでも相手が美人であると察することが出来るだろう。実際にこの電話に出ている女性は俺の友人、いや、知り合いであり、非常に美人で賢い人物だ。

「着いたぞ」

『はい?・・・・・えっと、アルト?』

賢い人物なのだが・・・・・

『やっほぅ、アルト!随分とサート地方に着くのに時間がかかったんだね!もしかしてカイオーガにでも沈められたんじゃないかと思って少し心配してた所だよ!どう、サート地方は?満喫してる?モーモーソフトは食べた?お土産買ってきて欲しいなぁ!』

「うん、とりあえず落ち着けミスミ、あと一度に全部話すのはやめような」

彼女の名前はミスミ。容姿端麗、才色兼備 な彼女はその賢さから、最近ミナモシティに出来たばかりの大型の植物園、『ミナモボタニックガーデン』の副所長を若くして任されている女性だ。

しかし、ここで聡明な人物を想像してしまうのは間違いだろう。彼女は美人で、賢く、そして誰よりも絶好調だ。と言うかどこかネジが外れているんじゃないかという程・・・・・なんか、アレ、バカである。俺も最初にあった時はおしとやかな女性と勘違いしたが、打ち解けていくと段々とその本性が現れてきたから全く・・・・・

『アルト、今失礼なこと考えたでしょ?』

そして、どこか勘に鋭い所も苦手だ。

「違うよバカ、それよりだミスミ」

今バカって言ったでしょ!?というセリフは軽くスルーしておく。

「今ドクサ島ってとこにいるんだが、お前の言っていた『サート地方にしか咲かない花』ってのはどこに咲いているんだ?」

『あーそれはねー・・・・・』

そう。俺、アルトがこのサート地方にやって来た理由はたった一つである。



”サート地方は花の楽園、そこにしか咲かない花がたくさんあってね、この時期になると一斉に開花し始めるんだって。その中でも今年は、『生きているうちに一度しか見られないー』なんて言われる花も見られるみたい!どう、素敵でしょ?”



そう言って、彼女は俺に一枚の写真を見せた。もはや古く色あせてしまったのか写真はセピア色になっているが、その『生きているうちに一度しか見られない』という一輪の花に俺は心を奪われてしまったのである。

植物学者として、これは行くしかない。いや、植物学者じゃなくても絶対行きたい。絶対に。

そうして、俺はまんまと彼女の誘いに乗って、研究所の長期休暇を取ってでもこのサート地方へと足を運んで来たのである。普段から積極的に作業していた分あまり反対はされなかったが・・・・・。

『・・・・・と、まぁこんな感じかな。もうすぐ一斉開花の季節がやって来るだろうし、それまでは自由に観光してみれば?って、まぁアルトのことじゃ花にしか興味なさそうだけどね!』

ズバリ、的を得ている。

「まぁな、とりあえず情報ご苦労」

『えっらそーに。まぁ長期休暇を楽しみなよ植物オタクさん』

「はいはい、わかりましたよバカ副所長」

そう言って通信を切ろうとすると、何やら声が聞こえた。

『あ、あと開花時期になったら私もそっちに行くから!』

「は?いや」

プツン。

おい待てやめろ、と言おうとして目の前のモニターに通信終了の文字が出る。どうやら、彼女には一方的に言われて通信を切られたらしい。

自然と出てしまうため息。彼女が関わるといつも俺の疲労は倍になるのである。

「俺は一人でゆっくり見たいんだけどなぁ」

そう呟いて、俺はポケモンセンターを後にした。




ポケモンセンターを後にした俺は早速森の方へ向かった。森に向かうまでの道のりはそう遠くは無かったが、たどり着くまでにたくさんのミルタンクとすれ違った。どうやら、モーモーソフトとやらはミルタンクのミルクから出来ているらしい。

少し食べてみるかい?と牧場のおじさんに声をかけられるが、遠慮しておく。こういうのは一度食べたら結局買ってしまうものである。今はそんな事に気を取られている暇はない。早くこの島の植物を見たい。

「・・・・・ん?」

森の入口に立ったところで、時間が経っているであろう古い看板を見つける。看板は何やら子供の字で書かれているようで読みにくかったが、何とか最後まで読むことが出来た。


”ここから さき セレビィ の すむ森 ゴミは 持ちかえりましょう”


「セレビィって確か・・・・・時渡りポケモンだっけ?古い文書で見たな」

セレビィの住む森は古くから植物たちが生い茂ると言われている。伝説のポケモンと言われるだけあって本当にいるかどうかは分からないが、この森が大きく成長しているあたり本当にいるのかもしれない。

森を目の前にして、自然と胸が高鳴る。

これだけ森が大きくて、セレビィまで存在すると言われているのだ。それはそれはたくさんの植物が生えているに違いない。

「いやぁ、実に楽しみだな」

そんな言葉を呟いてみながら、俺は軽い足取りで森の中へ進んだ。
今のところ【世界観共通企画】で誰からもキャラクターを借りていないのは私だけじゃないでしょうか・・・・・?
次回こそキャラクターをお借りして出したいところです。

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