第13話 へーんしんッ!トゥ!

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いやぁ時間かかった(笑)
遅くなってすいません( ̄▽ ̄;)
「おい、ゆみ、そろそろ起きろって」
「あと五分~…」
「それ三十分前も言った。ほらもう起きろって」
「うにゃ~…」
バッと布団を剥がされ一気に冷たい空気が流れこんでくる。
うぁ~もう少し寝させてよぉ。
そんな心の声はレンに届くことなく布団はどこかに飛んでいった。しかたがない、起きよう。
「おはよう、今何時?」
「えっ? あっ、午後六時…」
「うぁ~私十六時間近く寝てたの? 通りでなんか体がだるい…あれ、私こんなに太って…しかもなんかお腹が黄色い気が…何この毛皮……」
…………………………(・・;)
な、な、な…
「なんじゃこりゃあァァァァァ‼」
レンがこっちを指さして固まっているのを見て私も自分の顔を指さした。
「お、お前は誰だぁぁぁ!」
「私のセリフじゃあぁぁ! 私は誰じゃあぁぁぁぁ⁉ レン鏡持ってきてえぇぇぇ!」
レンにお願いすると手鏡を手渡された。レンの手から手鏡をひったくると手始めに自分の顔を見る。うん、鏡の中のポケモンはしっかりと自分と同じ動きをする。真っ赤な瞳が何ともチャーミング…。鼻先もずいぶん前にある…。歯もなんかやたらと鋭い…。髪の毛みたいに紺色の毛が………。しかも手が短い!
なんで、なんで、私が…
「バクフーンになってるのぉぉぉお!」
「あっはっはっは、これがゆみ? このずんぐりむっくりがあのゆみ? 人のこと散々バカにしといて自分も短足じゃないカブラァ!」
レンの顔面めがけて私の真赤に光る右ストレートが決まった。
「レン、次はないから覚悟しなぁ…」
「ちょ、ゆみ、分かった、悪かったって。だからそんな背中から炎を出しながら怒んなって」
「えっ?」
レンに言われて背を見ると目の前で燃え盛っていた。背中で火花が弾けとび、寝起きの瞳におはようございます。と言わんばかりに飛んできた。
「アァァァァァ、火事、火事だぁ!」
私は背中が燃えてる事実が信じられなくてひたすら背中を叩こうと手を伸ばす。しかし届かない。所詮、短い手足のバクフーンである。背中に届くわけがないのである。
「イヤァァァァァァ!」
「ゆみ、落ち着け! あ、それ次の企画書ッ! それで消そうとするな! 燃やしたまま走るなァ!」
「ウワァァァァァ! 私の背中が燃えてる、燃えてるよぉぉぉぉ! 水、水ゥゥゥ!」
私は風呂に貯めてあった私しか入らない湯船に駆け寄った。こうなったらもう頭から突っ込むしかない!
「あ、馬鹿……」
レンが腕を握って制止したのも構わずに私は風呂に突っ込んだ。背中からジュブブブブブッと音を立てて火が消える。
「フゥ、やっと消えた」
「ゆみ、早く出ないと……」
「嫌よ、ちゃんと消えてなかったらまた燃えるじゃない」
「いやいや、早く出ないと…炎タイプだし……」
「だから何よ、別にいいじゃない。減るもんじゃないし」
とそこまで言ってふと思った。……そう言えばレンが浴槽に浸かっているところを見たことが無い気がする。あれ、炎タイプって水に弱かった気もする。私、今バクフーンなんだよね? つまり、私も炎タイプなわけで……。
っていうことは……?
「レン~……体が重いよぉ……」
「言わんこっちゃない、ほら肩に掴まりな」
「あぅ~……」
引きずられながら浴槽から脱出する私。私の体毛がユニットバスの床にベシャッと嫌な音を立てた。レンが嫌そうな顔をする。それもそうだ。だってここはレンの部屋。ずぶぬれにされるのは避けたいだろう。レンはどこからかでっかいタオルを持ってきて私を包むとワシワシと毛を拭き始めた。しかし、人と違って全身もさもさの体は大量の水分を含んでいてすぐにタオルはずぶ濡れになってしまう。レンは面倒くさそうな顔をしながら自分の背中にタオルを張り付けるとボシュッと音を立てて湯気が立ちあっという間にタオルが乾いた。
「炎タイプって便利ね」
「そうでもないよ、雨の日とか死に物狂いだし」
「アハハッ、なにそれ、変なの~」
レンは笑いながら言ってやるなよと言う。
「俺なんかはまだいいけど中には家から出られないやつとかもいるぞ、今度紹介してやろうか?」
「お願いしようかな……そう言えばレンって何の仕事してんのさ?」
私はふとした疑問をレンにぶつけてみる。するとレンはきょとんとした表情を浮かべて言ってなかったっけ?と言った。
少なくとも私の記憶の中にはレンの仕事について聞いたことはないし、言われた覚えも無いはずだけどなぁ。
そんなことを考えているとそうだっけ?と返された。いけない、いけない、いつもの悪い癖が出てたようで。
「別に大した仕事じゃないよ? 給料もそんなにいい訳じゃないし……」
「いいじゃない、私は知りたいの」
レンは気恥ずかしそうに終わりッと言ってタオルをバサッと音を立てて煽るとそのまま洗濯機に放り込んだ。
「……警備システムのプログラムを構築するのが俺の仕事」
「エッ、意外、レンはもっと活動的な仕事してるのかと思ってた」
「皆そういうんだよ、お前は機械から遠い存在だと思ってたとか言われたこともある」
そんなことないのになぁ……とレンは呟いた。
いや、レンには悪いけど私は最初の印象は機械とか粉々に砕いていそうなイメージがあったよ……と思ったが意識して口を閉じていたので勝手に口から出ていくことは無かったようでほっとする。
「それにしても……なんでゆみはバクフーンに? あ、もしかしてゆみはメタモンみたいに変身使えたりするのか?」
「まっさか~、私は人だもん。使えないよぉ」
なんて話をしていたら何やら玄関の扉の前でズリズリと腹を引きずる音がする。しかも、玄関の前を行ったり来たり……。
よし、となにかを決心する声が聞こえてから数秒空いてチャイムが鳴った。
「あ、あのシロン、デスケド……ゆみちゃんが具合悪いって聞いて様子を……見に……」
「し~ろ~ん~ちゃ~んッ!」
私は軽く玄関に突っ込んだ筈だった。しかし、私の体は扉にぶつかるだけでは止まらずバキンッと嫌な音とともに扉が外れた。
そうだった、今私の体はバクフーンだった。力の加減ガアアアァァァァァ!
シロンちゃんの柔らかい脂肪に当たって止まるかなぁとか思ってたのだけど素早く避けたらしいシロンちゃんのお陰でガァンッとけたたましい音がこのアパートに響き渡ったのだった。
そしてシロンちゃんが一言。
「だ、誰ですか?」

このあとアパートの住民で会議が開かれたのだがそれはまた次回……。
キャラ崩壊起こしてる……ような気もする。

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