例によって例のごとく、前回から今回まで、尋常じゃないほどの間が開いてしまいました…ごめんなさい。
あの、でも、今までのみたく途中退場((?)はしないつもりですので、生暖かい目で見てやって下さい!!
「じゃあ、行くよ!」
「ちょ…タンマタマンタタマタマ待った!!」
いつでも出発OK状態のリルとサトシキラー。そしてカゴの中であわてふためくサトシ達一行。
「行くよって…道がないのにどうやって行くんだよ!」
シューティー、らしくもなく大声を出す。
それもそのはず。だって、目の前には、あの真っ青な海が。足下だって、あと二、三歩進めば海へダイブできる。
「泳いでいけるほど近いのか?レイッツ地方って」
「そんなことしないわよ。何のために自転車の練習をしたと?」
「え?でも…」
「では、助走のために下がりまーす」
「ストォォォォォォォォォォォォォォッップ!!!!!」
四匹の必死の叫びも空しく、リルはサトシキラーを後ろに下げる。
そして、動きが止まったかと思うと、リルは力強くペダルをこいだのだ!
あまりの恐怖に、皆声が出せないでいた。
そしてそのまま、自転車はついに、真っ青な海の上に来たのだった。
アイリスはずっと目をつむっていた。リルは「秘策がある」と言っていたものの、あんなド天然少女の言葉を100%信じることが、果たして彼女には出来ただろうか。
他の三人も、おそらく完全に信じてはいないだろう。
あぁ…これが全て夢だったら…。
自分がポケモンになったということも…今この状況も…。
目を開けたくなかった。そのまま意識が、遠くにぶっ飛んでいった。
「……リ…。アイ……。アイリス…。おーい!寝坊助アイリスやーい!」
サトシの声と静かな風が、アイリスの目を覚まさせる。
「…うぅ…。…サトシ。どこココ…天国?」
「みたいだよな!俺たち虹の道を走ってるんだぜ!でも、向かってるところは天国じゃないぞ!」
まさかと外に目をやる。
快晴の空。やっぱり青い海。そして、サトシキラーが走っている。その道が…確かに、虹だ。
「…嘘、でしょ?やっぱり、これも何もかも夢よね?」
「何言ってるんだよ。サトシキラーに轢かれたとき、俺すっごい痛かったぜ。だから現実だよ!」
呆然と景色を眺めているアイリス。
「リル、一体どうやったんだい?」
デントが、颯爽をペダルをこぎ続けるリルに聞いた。
「いや、私が何かした訳じゃないんだけどね。えっとね、手紙に書いてあったのよ。あそこに行けば、こうなるんですって」
「手紙?」
「そう。誰からかは知らないけど、もらったの。で、それに従って、あなた達の事を知って、探してたって訳」
誰からもらったかわからないあたり、とてつもなく怪しいが、もうどうでもよくなってきました。
「どういう手紙だったんだ?」
サトシが何気なく聞いた質問。だが、これがなければ恐ろしいことには…
「えっとねぇ、ちょっと待って。ポケットに入ってるから今出すね…」
ハンドルから手を放して、ポケットに手を突っ込むリル。
その瞬間、サトシキラーは一気にバランスを崩し、ぐらぐらと揺れ動いた。
「ちょっと…リル、ちゃんとハンドル持たないと!君はまだ完全に乗りこなせてないのに!!」
カゴの穴を手とツルでしっかり掴みながら、必死に言うが、もう遅い。
ついに、サトシキラーは虹の道から外れ、そして、万有引力の法則に従った。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
「シンジー!大変!!」
「何だ」
ここはシンオウ地方のリッシ湖。
元人間(現在はミミロル)のヒカリが、同じく元人間(現在はニューラ)のシンジのもとに駆け寄ってきた。
「空から人が降ってきたの!」
「そうか。息はあるか?」
「…あるけど…。何でそんなに冷静なの?!こんなに信じられないことが起きてるのよ!」
「いや、もうすでに自分の身に信じられないことがおきてるし、もはや何が起きても俺は驚けない」
「あぁそう。…良いから来て!」
グイと腕を引っ張られ、その人が落ちてきたという場所まで、半ば強制的に連れてこられた。
「………」
本当だったんだな、とシンジ。
「疑ってたんだ?」
「そんな話をまともに信じる奴があるか」
ムスッとするヒカリ。
二匹の目の前には、一人の少女と、黄緑ボディの自転車と、四匹のポケモンが。
しかし、このピカチュウ、見覚えがある。この赤い帽子…。そして、エモンガのリボン、ヤナップの蝶ネクタイにも…。
いや、考えすぎだろう。
「…うぐぅ…」
「あ。起きた」
始めに目を覚ましたのは、ピカチュウだった。
「…あれ、どちら様?」
「それはこっちのセリフです…」
ぼうっとしていたピカチュウだったが、ヒカリの首のスカーフを見たとたん、丸い目をさらに丸くさせた。
「あ…それ…ヒカリの…?」
「え…?」
ガバッと起き上がると、再度ヒカリの方に向き直った。
「ヒカリ!ヒカリだよな?!シンオウ地方フタバタウン出身の、トップコーディネーターを目指して旅を続ける10歳のヒカリだよなぁ?!」
「そう言うあなたは…サトシ?!カントー地方マサラタウン出身の、ポケモンマスターを目指して旅を続ける10歳のサトシよね?!」
久々の再会を喜ぶ二人。
一方シンジはどうしたかというと、ただただ口を開けてこの光景を眺めていた。驚けないって言ったの、誰だっけね。
そうこうしているうちに、他の三匹と一人も目を覚ましたようだ。
「…いっけない。私ってば手紙の為だけに命を落とすところだったわ…」
「本当にな…」
シューティーは、仰向けになって空を眺めた。
さっきまで自分たちが走っていた虹の道は、シューティーが眺める空に、あるにはあった。
しかし、あんなに高いところまで、自力で行くのは、もはや不可能…
「…あれ?」
シューティーは自分の目を疑った。
虹の道が、こちらに向かって、降りてくるではないか!
「嘘ぉ…」
「よかった、これでまたレイッツ地方に行けるね」
「反応薄いなぁ…」
デントが苦笑する。
「ねぇ、ちょっと待って!今、『レイッツ地方』って言った?」
ヒカリが、リルに駆け寄ってきた。
「うん。私たちレイッツ地方に向かってるの。もしかして、あなたもご用?」
「そう、そうなの!わたし、手紙をもらったの!レイッツ地方に行けば人間に戻れるって…わたし、ヒカリって言うの!元々人間だったわ!」
申し訳程度のちょっと長文。
シューティー名前打ちにくいよぅ。