信じなくても奇跡は起きる。

しおりを挟みました
しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
読了時間目安:7分
例によって例のごとく、前回から今回まで、尋常じゃないほどの間が開いてしまいました…ごめんなさい。
あの、でも、今までのみたく途中退場((?)はしないつもりですので、生暖かい目で見てやって下さい!!
「じゃあ、行くよ!」
「ちょ…タンマタマンタタマタマ待った!!」
 いつでも出発OK状態のリルとサトシキラー。そしてカゴの中であわてふためくサトシ達一行。
「行くよって…道がないのにどうやって行くんだよ!」
 シューティー、らしくもなく大声を出す。
 それもそのはず。だって、目の前には、あの真っ青な海が。足下だって、あと二、三歩進めば海へダイブできる。
「泳いでいけるほど近いのか?レイッツ地方って」
「そんなことしないわよ。何のために自転車の練習をしたと?」
「え?でも…」
「では、助走のために下がりまーす」
「ストォォォォォォォォォォォォォォッップ!!!!!」
 四匹の必死の叫びも空しく、リルはサトシキラーを後ろに下げる。
 そして、動きが止まったかと思うと、リルは力強くペダルをこいだのだ!
 あまりの恐怖に、皆声が出せないでいた。
 そしてそのまま、自転車はついに、真っ青な海の上に来たのだった。

 アイリスはずっと目をつむっていた。リルは「秘策がある」と言っていたものの、あんなド天然少女の言葉を100%信じることが、果たして彼女には出来ただろうか。
 他の三人も、おそらく完全に信じてはいないだろう。
 あぁ…これが全て夢だったら…。
 自分がポケモンになったということも…今この状況も…。
 目を開けたくなかった。そのまま意識が、遠くにぶっ飛んでいった。

「……リ…。アイ……。アイリス…。おーい!寝坊助アイリスやーい!」
 サトシの声と静かな風が、アイリスの目を覚まさせる。
「…うぅ…。…サトシ。どこココ…天国?」
「みたいだよな!俺たち虹の道を走ってるんだぜ!でも、向かってるところは天国じゃないぞ!」
 まさかと外に目をやる。
 快晴の空。やっぱり青い海。そして、サトシキラーが走っている。その道が…確かに、虹だ。
「…嘘、でしょ?やっぱり、これも何もかも夢よね?」
「何言ってるんだよ。サトシキラーに轢かれたとき、俺すっごい痛かったぜ。だから現実だよ!」
 呆然と景色を眺めているアイリス。
「リル、一体どうやったんだい?」
 デントが、颯爽をペダルをこぎ続けるリルに聞いた。
「いや、私が何かした訳じゃないんだけどね。えっとね、手紙に書いてあったのよ。あそこに行けば、こうなるんですって」
「手紙?」
「そう。誰からかは知らないけど、もらったの。で、それに従って、あなた達の事を知って、探してたって訳」
 誰からもらったかわからないあたり、とてつもなく怪しいが、もうどうでもよくなってきました。
「どういう手紙だったんだ?」
 サトシが何気なく聞いた質問。だが、これがなければ恐ろしいことには…
「えっとねぇ、ちょっと待って。ポケットに入ってるから今出すね…」
 ハンドルから手を放して、ポケットに手を突っ込むリル。
 その瞬間、サトシキラーは一気にバランスを崩し、ぐらぐらと揺れ動いた。
「ちょっと…リル、ちゃんとハンドル持たないと!君はまだ完全に乗りこなせてないのに!!」
 カゴの穴を手とツルでしっかり掴みながら、必死に言うが、もう遅い。
 ついに、サトシキラーは虹の道から外れ、そして、万有引力の法則に従った。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

「シンジー!大変!!」
「何だ」
 ここはシンオウ地方のリッシ湖。
 元人間(現在はミミロル)のヒカリが、同じく元人間(現在はニューラ)のシンジのもとに駆け寄ってきた。
「空から人が降ってきたの!」
「そうか。息はあるか?」
「…あるけど…。何でそんなに冷静なの?!こんなに信じられないことが起きてるのよ!」
「いや、もうすでに自分の身に信じられないことがおきてるし、もはや何が起きても俺は驚けない」
「あぁそう。…良いから来て!」
 グイと腕を引っ張られ、その人が落ちてきたという場所まで、半ば強制的に連れてこられた。

「………」
 本当だったんだな、とシンジ。
「疑ってたんだ?」
「そんな話をまともに信じる奴があるか」
 ムスッとするヒカリ。
 二匹の目の前には、一人の少女と、黄緑ボディの自転車と、四匹のポケモンが。
 しかし、このピカチュウ、見覚えがある。この赤い帽子…。そして、エモンガのリボン、ヤナップの蝶ネクタイにも…。
 いや、考えすぎだろう。
「…うぐぅ…」
「あ。起きた」
 始めに目を覚ましたのは、ピカチュウだった。
「…あれ、どちら様?」
「それはこっちのセリフです…」
 ぼうっとしていたピカチュウだったが、ヒカリの首のスカーフを見たとたん、丸い目をさらに丸くさせた。
「あ…それ…ヒカリの…?」
「え…?」
 ガバッと起き上がると、再度ヒカリの方に向き直った。
「ヒカリ!ヒカリだよな?!シンオウ地方フタバタウン出身の、トップコーディネーターを目指して旅を続ける10歳のヒカリだよなぁ?!」
「そう言うあなたは…サトシ?!カントー地方マサラタウン出身の、ポケモンマスターを目指して旅を続ける10歳のサトシよね?!」
 久々の再会を喜ぶ二人。
 一方シンジはどうしたかというと、ただただ口を開けてこの光景を眺めていた。驚けないって言ったの、誰だっけね。
 そうこうしているうちに、他の三匹と一人も目を覚ましたようだ。
「…いっけない。私ってば手紙の為だけに命を落とすところだったわ…」
「本当にな…」
 シューティーは、仰向けになって空を眺めた。
 さっきまで自分たちが走っていた虹の道は、シューティーが眺める空に、あるにはあった。
 しかし、あんなに高いところまで、自力で行くのは、もはや不可能…
「…あれ?」
 シューティーは自分の目を疑った。
 虹の道が、こちらに向かって、降りてくるではないか!
「嘘ぉ…」
「よかった、これでまたレイッツ地方に行けるね」
「反応薄いなぁ…」
 デントが苦笑する。
「ねぇ、ちょっと待って!今、『レイッツ地方』って言った?」
 ヒカリが、リルに駆け寄ってきた。
「うん。私たちレイッツ地方に向かってるの。もしかして、あなたもご用?」
「そう、そうなの!わたし、手紙をもらったの!レイッツ地方に行けば人間に戻れるって…わたし、ヒカリって言うの!元々人間だったわ!」
申し訳程度のちょっと長文。
シューティー名前打ちにくいよぅ。

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想