side 孤独の少女(後編)

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

その日…私は久しぶりに夢を見た…。

周りに広がるのは緑の草…コロンと寝るととても気持ちよさそうな…そんなお昼寝に絶好の場所…。

だけど…それだけ…それしかない…緑しか色がない…そんな一色の中に…黄色の私は一人ただ立っていた。

…頬を撫でるそよ風につい目を閉じる…何かをしようとするでもなく…何も変化のないこの景色を…ただ…この身体で感じる…。

そして私が目を開けた時…そこには…。


デンリュウ「…!?」


気が付いたら…私は…自分の腹部にナイフを突き刺し、この夢の中に新たな色を加えた…。






〜デンリュウの部屋 3:00〜

デンリュウ「…ハァ…ハァ…!」

急な変化に驚き、私は目を覚ます…それにしても…。

デンリュウ「…変な夢…。」

なんで急にあそこでナイフが出てきた…なんで自分で自身を刺した…夢とはいってもこれはちょっと…嫌がらせか何かにしか思えない…。

デンリュウ「…寝れない…。」

気を取り直してもう一度身体を休めようとするが…中々寝付けない…。

デンリュウ(…暇つぶしに散歩にでも行くか…。)








〜バンギラスギルド前〜

デンリュウ「…暗い…。」

外で出て早々…私は当たり前のことを不意に口に出す…当然それに答えるものはいる筈も…。


アブソル「そうですね…夜ですから。」

デンリュウ「えっ…!?」

返答がきたことに驚き、私は後ろを振り向く…そこにはいつも通り、人間の武器…えっと…ヤリってやつ?を背中に乗せたアブソルがこちらを見ていた…。

アブソル「眠れないのですか…?」

デンリュウ「うん…ちょっとね…暇つぶしにそこら辺を散歩しようかな…って。」

アブソル「よろしければ僕も一緒に良いですか?練習後なので身体を冷ましたくて…。」

デンリュウ「うん…いいよ…話し相手、丁度欲しかったから。」



〜海岸〜

デンリュウ「…。」


特に目的がある訳でもなく…私達は音を求めて海岸までやってきた…ザザー…ザザー…と波が動く音が…深く耳に響き、入ってくる…。

アブソル「…。」

彼は…彼も何も話さない…私と一緒に、波の音を聞いている…今…何を考えてるんだろう…?すごく気になった…。

デンリュウ「ねぇ…。」

アブソル「はい。」

デンリュウ「今…何を考えていたの…?」

私の急な質問に彼はしばらく沈黙し、クスッと笑ってから…。

アブソル「僕自身についてです。」

デンリュウ「…ふぅん…。」

自身についてか…なるほど…まぁ当たり前と言ったら当たり前だ…彼は元人間…この世界にアブソルとしてやって来てから自分のこの先の運命について考えるのは当然のこと…でも…。

デンリュウ「…不安じゃ…ないの?」

アブソル「へ?…何故ですか?」

デンリュウ「アブソル…ちょっと笑ってる…だから。」

アブソル「うーん…最初はどうなるかな〜、どうしたらいいかな〜って考えてましたけど…今はそうでもないんですよね…正直ここまで適応出来る自分に驚きです。」

デンリュウ「そうなんだ…。」

アブソル「デンリュウさんは何を考えてたんですか?」

デンリュウ「え?…うーん…なにも。」

アブソル「ぼーっとしてたんですね…。」

デンリュウ「うん…。」

少しだけ会話をしたあと…また静かになり、波の音しか聞こえなくなる…何を話したら良いんだろう…何か…何かないかな…もう少し…折角だから話がしたい…。


デンリュウ「ねぇ…私は…なんでここにいるのかな…。」

アブソル「…?」

デンリュウ「ん?…あれ…!?」

気が付いたらまた言葉に出していた…不意に口からでた疑問…。

アブソル「…デンリュウさんって…どうしてこのギルドに入ったのですか…?」

デンリュウ「え…?」

アブソル「いえ…なんでここにと話していたので…ギルドに入った理由が答えに繋がってたり〜なんて。」

デンリュウ「…誘われた。」

アブソル「誘われた…というと…バンギラスさんに?」

デンリュウ「…うん…えっとね…確か…。」



アブソルに聞かれて私は思考を走らせる…いつだったかは思い出せないが…流れだけでも…。






〜とある森の中〜

バンギラス「こんにちは!」

デンリュウ「………?」

そう…確か私は…森の中でぼーっとしてた…木にもたれかかって…ちょっと休憩している時に…あの人は現れた…大きな挨拶の不意打ちを持って。

バンギラス「あれ?こーんにーちはっ!」

デンリュウ「…?……?」

バンギラス「あれ?無口なのかな?ねぇねぇ!君ギルドに入らない?」

パコンッ!

キングドラ「阿呆かお前は!出会って無口なのかな?からの勧誘は普通流れとしてはないからな!?」

バンギラス「痛た…でもさーリュウ、メンバーあつめないといつまでたってもギルドとしては成り立たないよー…。」

キングドラ「その呼び方やめろ…す、すまんな…こいつ今ちょっと切羽詰まってて…。」

デンリュウ「…ギルド…って?」

キングドラ「ん?あぁ、ちょっと前からこのバンギラスが親方のギルドを立ち上げてな…少しでも大きくしようと今メンバーを集めに回ってる所なんだ。」

デンリュウ「それで…街じゃなくてこんな森の中に…?」

バンギラス「うん!あ、キングドラ、ちょっと外れてくれない?二人で話したいんだ、彼女も緊張しちゃうからね。」

キングドラ「分かった…では先に戻っておくとしよう…夕食はなにが良い?」

バンギラス「サラ…!」

キングドラ「サラダだな好物だもんな絶対そう来ると思ってた。」(ノンストップ息継ぎ&早口)

バンギラス「入れるものは任せる!」

キングドラ「ハイハイ…。」


キングドラがぴょんぴょん跳ねながら森を離れていきふぅ…、と一息吐いたところでバンギラスは私に向き直る。




バンギラス「改めて…はじめまして…孤独の閃光さん…。」









デンリュウ「…で、色々話すうちに興味が出て…どうせやることもないからいいかな…って。」

アブソル「へぇ…そんなことが…ところでその…孤独の閃光…っていうのは…?」

デンリュウ「ふふっ…秘密…。」

アブソル「えぇ〜…これじゃあ分からないことが増えただけじゃないですか…。」

デンリュウ「そうだね…なんとなく…で入っちゃったからね…でも…今はなんだろう…探すために…ここにいるのかな?」

アブソル「探すって…ギルドにいる理由を…ですか?」

デンリュウ「そう、アブソルが本来の自分を探し求めるためにギルドにいるのと同じように…私にもなにか目的を探してるのかも…。」

アブソル「…見つかるといいですね。」

デンリュウ「えぇ…。」


そうして再度、私達は波の音を聞くために目を閉じる…。



…今日の依頼みたいに…ギルドのみんなと一緒に過ごし、一緒に闘い、一緒に笑う孤独の閃光…か…ふふっ…矛盾してる…。


…ねぇ…孤独の閃光の名付け親さん…今の私は…どこが「孤独」なのかな…?

流れる海を見ながらそう心の中で思い…手を何か握るようなかたちをとる…そのおかしな形を見ているといつの間にか…私は波のように静かに笑っていた…。








フィオーレ「私もデンリュウみたいに二つ名欲しい!」
デンリュウ「…フォックス…。」
フィオーレ「えー単純、もっとなんか無い?」
デンリュウ「九本…。」
フィオーレ「まんま私じゃん!」

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