第88話 フラグ回収お疲れさまです

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

(なんなのこの山! 霧が濃すぎて前が見えない!)

 アヤノは新たな任務「スイクン捕獲」を遂行していたのだが、肌寒くなった時期に山に入るのは間違いに近かった。

「ハッサム、霧払い! うん、よく見えるようになったわ。ありがとう。戻っていいわよ」

 アヤノの手持ちポケモンであるハッサムの大きなハサミで空間を切り裂くと視界が綺麗に現れる。霧払いを済ませるとすぐにボールに戻す。スイクンは警戒心が強いのだ。

「うーん、まあこんな場所にいるわけないわ――」

 いきなり発見なんてことないわよね~とアヤノは肩をすくめて自虐に笑うと目の前に現れた透き通った湖を目にする。

「きれい……クリスタルみたいね……」

 アヤノは思わず手と手を交わらせて、お祈りをするポーズになる。目をつむり今どこに運命の相手がいるのか妄想を膨らませているとどこからか北風が静かに吹き、木々の葉が鳴いているように思えた。

「え?」

 アヤノは乱れた髪を整えようと目を開けて目の前に驚愕した。
 透明感のある水色の外見をしたポケモンがいた。豹の様なしなやかな体躯をしており、額には特徴的な水晶の飾りがあり、紫のたてがみの様なものをなびかせ、体の所々に白いひし形模様が特徴的な。

「スイクンだとー!?」

 口調が変わってしまう程のイベント発生。

「いやいやどうして目の前にスイクンがいるのよ、ありえないでしょ!? どこでフラグたったの!? えええ!? 待って待って落ち着きなさいアヤノ・アヤ! もう一度目をつぶって開けたらいないわ。ほら、ね? い!る! いるわ~!?」

 スイクンは逃げる様子もなく慌てふためくアヤノを見ている。いつもの冷静なアヤノはどこへ。
 しっぽのような体の左右にある白いヒラヒラしたものを揺らしてこちらの様子を引きつつも見ている。

(水タイプってことで草と電気が有効なんだろうけど私のポケモンだとスイクンを倒しちゃうかもしれないから、効果いまひとつの鋼で地道に……)

 混乱しつつもスイクン捕獲のために頭の中で作戦を立て、先程霧払いをしたハッサムをそのまま戦闘へ出した。

「ハッサム! あまり張り切る必要はないわ! 鋼の翼!」

 ハッサムのハサミ部分を鋼に変えて突進。スイクンはアヤノの判断に驚きつつも鋼の翼を避けた。

「やっぱり当たらないか。影分身でスイクンの目を混乱させるのよ!」

 持ち前のスピードを生かして分身をいくつも作り上げていきスイクンは首をあっちこっちに振り本体を探し出すが数が多すぎるためその場から動けずにいる。

「今よ! 鋼の翼!」

 今回はばっちりと決まった鋼の翼。後ろからの攻撃に応じることの出来なかったスイクンは前足から倒れ込みそうになるが踏ん張り直して立ち上がると反撃を返しする。

「あれはハイドロポンプの構え! ハッサム空中へ高くジャンプ! 真上からダブルバレッドパンチ!」

 ハイドロポンプを外したスイクンは顔を上にあげてまたハイドロポンプをしてきたが、両腕が使えるハッサムは一回目のバレッドパンチでハイドロポンプを切り捨てると二回目のパンチでスイクンに殴り掛かった。

「決まった! 流石ハッサム! まずはモンスターボールよ!」

 攻撃が二回決まったので手始めにボールを投げてみる。パワーポイントでありそうな額のクリスタルにボールを当てると中に吸収させた。しかし。

「もうっ捕まえたかと思ったのにッ! まだまだ元気ってことね!? ってあらー!? 逃げちゃった!」

 中からスイクンが出てきてしまった。やはりスイクンハンターがいるくらいのポケモンは中々捕まらない。そして風のようにどこかに消えてしまった。
 地団太を踏み悔しがるアヤノにハッサムは、ストライク時代とは違う丸くなった手先で頭を撫でてやるのだった。

「ありがとう。ハッサムはやっぱり頼りになるわね! また探しに行きましょう!」

 ハッサムと一緒に右腕を掲げて気合を込める。降ろした腕をそのままバックの中にポケモン図鑑を取り出して”追尾システム”を起動する。

(ウツギ博士から聞いておいてよかった、この新システム)

 追尾システムとは一度出会ったが逃してしまったポケモンの足取りを追尾するシステムである。逃すつもりは微塵もなかったが意外と早い逃げ足にアヤノは心底このシステムに安心するのであった。

「えっと次はここに向かったのね。中々素早いわね……」

◆◆◆

「え、なんだこいつ」

 一方その頃、コウはというと。モココの経験を上げるため特訓に励んでいた。

「モココ、一旦離れろ! なんだこいつ!? スイクン? ポケモン図鑑にも詳しく登録されてないとか聞いてないぞ……!」

 怒りの湖に来ていたコウの元へスイクンはやってきた。ギャラドスに無理やり進化させられて荒れていた湖を元の姿にしようと来たのかもしれない。

「水タイプだよな? モココ、慎重に行くぞ! 電気ショック!」

 水面に立つスイクンにモココは外側からの電撃を食らわす。

「あっやばい! 下手に電気タイプの攻撃は出来ない!」

 電気ショックがスイクンだけではなく湖の中にいるポケモンにも影響すると分かりコウはモココを下手に動かせないことに気づく。

「ギャラちゃん! 破壊光線!」
「え」
「あら?」

 突然空から破壊光線という叫び声。顔を上げるとそこにいるのはもちろん――

「アヤ!」
「コウ!」

 スイクンを追いかけてきたギャラドスに乗ったアヤノだ!

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