怖いの怖いの食べちゃうぞ

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読了時間目安:3分
ある夕暮れ時、ムウマが飛んでく ふわふわふわり 風に流されて さらさらさらり。

怖がる心を求めて気の向くままに漂っていると、公園に暗そうな雰囲気の男の子がブランコに乗って、うつむいたまま漕ぎもしません。

ふよりと近づくと、男の子は何かを握りしめています。
それはくしゃくしゃになった、0点のテスト。ママに叱られるのが怖くて、家に帰れずにいるみたい。

ムウマは首の紅い珠を光らせて、怖がる心をしゅるしゅる吸い込みました。 するとあれあれ、今まで何をそんなに怖がっていたのだろうと、男の子は勢いよく立ち上がって、夕日の中を走っていきました。この怖がる心は……まぁまぁおいしかったみたい。

これじゃ物足りないと、ムウマはふわふわふわり 夜がやってきた町で、くるくるくるり なんだか不安そうな音が、ぽろぽろぽろり。

不安そうな音を辿っていくと、灯りの付いた部屋で女の子がピアノを弾いては止めを繰り返しています。もう子供は寝る時間だというのに、眠気をこらえながら何度も同じところを練習しています。

窓からするりと入ってみると、机の上には発表会のパンフレット。 うまくできるか心配で、間違えたらどうしようと怖がっているみたい。ムウマは紅い珠を光らせて、怖がる心をしゅるっと吸い込みました。 すると女の子は安心したのか、ベッドに入っていきました。この怖がる心は、そこそこおいしかったみたい。

今夜はもう少し食べたいな。ムウマは町から離れてふわふわふわり。 ところが雨が降ってきて、ぽつぽつぽつり。 濡れないように、大きな木の下で一休み。

木の下には先客が一人。男の子でも女の子でもない子が、家族だろうニンゲンが写った写真を大事そうに抱えています。

これからパパとママのところへ行く準備をしていたのに、急な雨が降ってきてしまって、ちゃんと行けるか怖くなってしまったみたい。
ムウマは紅い珠をとびきり強く輝かせて、怖がる心をしゅるるるるっと吸い込みました。

男の子でも女の子でもない子は、覚悟を決めて台に登り、木の太そうな枝にしっかりと結び付けておいたロープを首にかけると、ムウマにありがとうと笑顔を向け手を振り、乗っていた台を蹴っ飛ばしました。

この怖がる心はとってもおいしかったみたい。お腹いっぱいになったムウマは、ふわぁと眠そうなあくびをしながら洋館に帰っていくのでした。

きょうのおはなしは、これでおしまい。

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