毒雨の町

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ある日こと。ふらふらとほっつき歩いていたゲンガーは、活気あふれる町にたどり着きました。そこではニンゲンとポケモンが家族のように仲睦まじく暮らしていて、誰一人モンスターボールを持っていない。そんな不思議な町でした。

なにか楽しいものはないかなと、ゲンガーは賑わう市場や子供の遊ぶ家々を通り抜けていきました。すると、町のすみっこに廃屋が一軒。火事にでもあったのか、焼け落ちた家は内装がむき出しのまま放置されています。

ここならなにかありそうだ。ウキウキ家中をひっくり返して物色していると、どこかからかすかに声がします。ゲンガーはびっくりして飛び上がってしまいました。

恐る恐る声のする方へ近づくと、模様の書かれた床の上に色褪せて塗装の剥げたモンスターボールがありました。開ける部分には黄ばんだお札が貼ってあり、どこからどうみても怪しげな一品です。

声はモンスターボールから出ていました。たすけて、たすけて、ここからだして。と呻いてるようです。面倒事に巻き込まれたら嫌なのでゲンガーは無視して出ていこうとしましたが、いたずらしてたらこんなになっちゃったんだよと泣く声がなんだか他人事ではない気がして、ゲンガーはボールを開けました。

中に閉じ込められていたのは……紫色のしぼんだ風船(?)でした。 フワンテかなと空気を吹き込んでみると。風船のようなものはドガースになりました。 いやいやたすかった。ちょっとイタズラしただけなのに、ニンゲンったらながいあいだとじこめるんだもの!

たすけてくれてありがとう!さっそくニンゲンにふくしゅうしにいくよ。 ドガースは意気揚々と飛び出していって……すぐに戻ってきてしまいました。そう、ドガースが封印されてから長い長い時間が経ち、当時のニンゲンはもういないのです。町の様子もすっかり変わってしまい、ショックを受けている様子。

ならもう一度イタズラしようよ。自分はここにいるんだぞって、証明してみせればいいじゃないか。ゲンガーは持ち掛けます。 でも、またとじこめられたこわいよ。ドガースはしょんぼりしています。 大丈夫大丈夫、もうあいつらはボールなんか持っていないから。

よしそれじゃあと、二匹は復讐の計画を立てます。ごにょごにょ、ひそひそ、ウンウン、それで……。

外に出た二匹は早速行動に出ました。 まずドガースが町に煙幕をもくもくと広げ、ゲンガーがドロドロした紫色の玉を空高く打ち上げます。玉の中には二匹が精いっぱい込めたヘドロ爆弾やスモッグ、毒々が詰まっていて、ちょうど町全体を見渡せる高さまで上がると、ぶわっと爆発しました

爆発で出来た雲は町に覆いかぶさり、触れれば溶けてしまうような猛毒をたっぷり降り注がせます。 でも、これじゃあぼくがやったってことにならないよね?ドガースが聞きます。 そんなことないよ。雲をよく見てみなよ。ゲンガーに言われて空を見上げると、雲がドガースの形をしているのでした

わあ!これならぼくがやったことがだれにでもわかるや!きみってすごいよ、イタズラのてんさいだね。ドガースは喜びました。煙幕で逃げ道がわからなくなり、毒の雨にうたれ惑うニンゲンやポケモンたちの悲鳴と断末魔を、二匹はゲラゲラ笑って聞いているのでした。

きょうのおはなしは、これでおしまい

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