第1話 プロローグ

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ジョウト地方のワカバタウン。ポケモンセンターさえ無い小さな村である。
その村にある家の一軒に彼の家はあった。
そこから新しく二人、ポケモントレーナーが出る。
「あー、面倒くせえ。」
彼の名前はレイ。翌日に正式なポケモントレーナーになる。
彼の部屋の勉強椅子の背もたれに寄りかかり、真上を見る。
そして彼が遊びに誘ったであろう友人の方を見据える。
「なあ、ポケモントレーナーになるのって楽しみか?」
と質問をされると、大抵普通のポケモントレーナーは「当然!」と答える。
しかし、彼は違った。見据えられた幼なじみのケイがこう質問をする。

「ところでお前ってポケモン好き?」
「全然。」

そう。ポケモントレーナーになるのが楽しみかどうか以前に、彼はポケモンが嫌いなのだ。
正直、鳥肌が立つと言っても過言ではないくらいに。
では何故?何故ポケモントレーナーになろうとしたのだろうか?
「お前ってなんでポケモン嫌いなのにトレーナーズスクールにまで行って
 ポケモントレーナー目指してるの?」
「決まってんじゃねえか。人口少ない村でポケモントレーナーが二人も出てくれる。
 って嬉しがってる村人さんたちに途中でやめるとか言えないだろう?」
「ああ、いやそうだけども…そんだけ?」
「ポケモン嫌いなのにそれ以外の理由も糞もあるかよ」
淡々とケイの質問が続き、淡々とレイが回答するのを繰り返す。
「じゃあ途中で辞めたりするのかい?」「お前が辞めたら俺も辞めるよ。」
「本当に?じゃあ僕がもしポケモンリーグまで行ったら、お前もそこまで行くの?」
「さあ…な。正直そこまでで俺があのケダモノ達から俺が逃げ出す可能性が約五十%くらいだと思う。」
「ケダモノ…ねぇ。お前はなんでそこまでポケモンを嫌うの?」
その質問に、レイの目が一瞬見開かれた。
「そりゃ決まってんだろ!あのケダモノなんかすぐ俺に向かって体当たりしてくるし、
 馴れたと思ったら舐めてくるし、六匹も居たら全員と均等に関われるわけねえのになんか落ち込むし」
「分かったけど途中からケダモノじゃなくなってるよね」
ごもっともな突っ込みを受けたレイは一瞬ひるんだが、すぐに言い返した。
「あぁ、俺は『ん?実はポケモン好きなんじゃないか?』という結論には絶対達しない自信があるんだぜ?」
「いや、そういうことを聞いているんじゃなくて。 
—それがポケモンだし、ペットだってそんな感じじゃないか。お前だってペットくらい飼ったことあるだろう?」
「亀なら」「亀か…」 亀という回答に今度はケイが返答に困る。
「と、いうか何が嫌って、稀に『ぇ!?』って感じのポケモンが居るじゃねえか」
「それって擬態みたいなものじゃないよね?」 
他の敵から身を守る為の動作を気持ちが悪いと感じたのではないだろうかと考えたケイは無難な質問をする。
「いや、違う。ほら、例で挙げると、—ほら、『モンジャラ』。あんなのにマキツカレタラ、オレ…」
「むしろ可愛いじゃないか」
想像するだけで気持ち悪いといったような表情のレイにふと本音が漏れたケイに絶叫に近い形で返答する。
「本気かよ!?あんなやつだぜ!?しかもなんかヌメヌメとかなんたらしてそうじゃねえか!?
 あの一本一本の体の糸みたいなものの間に虫とか居たらどうするんだ!?
 後他に挙げるとするならば」
「わかった落ち着け!正気に戻れ!お前はなにか勘違いをしている!ここは一旦そんな偏見を捨ててポケモンと旅立ってみればいいじゃないか!かっこいいポケモンとかに会って印象かわるかもしれないぞ!」
一言一言分かれるタイミングに地味に顔を無意識のうちに近づけていた彼の方に手を置き、ケイは説得に入る。
「カッコいいバケモノってなんだよ?」
「お前の中では完全にポケモン=バケモノっていうフィルターがかかってるんだな…」
「ああ。それで?」
あっさりとスルーしたレイに対して肩をすくめ、続けた。
「…ストライクとか?」「あの緑? …命の危機じゃねえかよ…」
椅子ごと少し下がったレイを見て、怪訝そうに尋ねる。「なんでだよ」
「カマで殺されるかもしれねえじゃねえか」「…あぁ」
その発想はなかったという表情をし、さらにケイは言葉を続ける。
「でも、愛情を持って接すれば問題はないんじゃないか?」
「お前…偶然とか事故とかあるんだぜ?」
そこまで言われたケイはもうなんでもいいやといったような感じで、あーはいはい、と言った。
「なんだよそれ」「分かった。凄くよく分かったよ。で、レイは冒険にでるんだよね?」
一番聞きたかったことらしく、その返答をケイは待っていた。
「…………………ああ。多分、な。」「分かった。楽しみにしてるよ。」
彼はそういい、帰宅した。

「ポケモントレーナー…か…」
ケイが帰宅した後、ベッドに寝っ転がっていたレイは呟いた。
今までなんやかんやいいながら、しっかりトレーナーズスクールに通っていたので
トレーナーとしての知識はあるのだが、気分が乗らない。
「…やるんだったら、やらねえとな。」
ガバリ、と立ち上がりブルンブルンと肩を回してから、机に座り、彼はもう一度鉛筆を握った。
—やるんだったら、やらねえとな—
自分の言葉が頭に響く。そして、もう一度呟いてみる。
「やらねえと、な。ケダモノっつったって生きてるんだもんな。」
ただ、それだけ。失礼、迷惑。嫌いな言葉の一つだった。
その言葉には俺には無縁だ、と言い切れるまで。 
「ケダモノにだって、当てはめてやるよ。だから、無縁になれるまで、やってやるよ」

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第五話まで進み、他の方々の小説を読んでみると、
早蕨様の作品、『ある撥ねられた日の世界』、『嘘吐きは誰』というポケモン小説の主人公の名前
『アキ』と私の小説の主人公の名前が意図しない形で被ってしまいました。

お詫び申し上げます。
よって、全ての名前をアキからレイに置き換えさせていただきました。
混乱を招くことをしてしまい、申し訳ございません。

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