episode3 白銀世界

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読了時間目安:8分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

★次週からプライベートの諸事情により、執筆がかなり遅くなります。
感想などは随時確認致しますので、遠慮なくお願いします★
「…これ…は…!」

テレポートポイントでアイスの村へと向かい、視界が晴れた。
その眼前には…収まりきらない程の銀世界が広がっていた。趣のある古い家屋に、適度に均された雪の道。目に映る全てが美しかった。

アーリアがここを見せたがっていた理由がよく分かる。そして…アンノウンに蹂躙されたくないという事もだ。

「すんげぇな…。雪の降る村だってことは知ってたが、想像以上の綺麗さだ…」
「…ええ。正に、白銀世界…。それに、何故だが暖かいですね?寒さという寒さは殆ど無いです。変わってますね」

二人はあちこちを見渡しながら、その景色に見とれていた。
ミリアンの言った通り、ここは寒くない。雪に触れてみると…ほのかに温い。

「この村の、特殊な環境なんだろうな。…さて、詰所に向かおう。アーリアさんの言った通り、ここをアンノウンに汚させてたまるか」
「だな!」
「はい!」

もう少し景色を楽しみたかった願望は一旦捨て置き、詰所に小走りで向かった。

………

詰所に入ると、一人のポケモンが椅子に座り寛いでいた。椅子の前の机には、一つマグカップが置かれていて、ほのかにコーヒーの香りが漂ってきた。

…種族はグレイシアか。

「…遅かったじゃない、田舎者」

グレイシアは開口一番、罵声を浴びせてきた。
田舎者…。まぁ確かに、レプテルアと比べてしまえばエルディム大陸は田舎…なのか?
勿論、その言葉にシャルとミリアンは反応した。…反応してしまった。

「…口開いて一番がそれかよ、よっぽど育ちが悪いんだな?」
「…ふん。貴方よりはいいんじゃない?」
「おやおや、可笑しいですね?答えになってないです。育ちどころか、頭も馬鹿(かわい)らしいみたいです」
「…なっ…!」

シャルとミリアンの猛攻に、反抗していたグレイシア族の女性が不機嫌そうな顔になってしまった。…正直、シャルとミリアンに口喧嘩で勝てるやつはいないだろう。グレイシアに同情するな。

「こら、ストップだ二人とも。…君が、アーリアさんから指名されたミラウェル兵士だな?」
「そうよ。貴方達がエルディムから来たルト隊なのでしょう?田舎者なだけじゃなく、失礼なのね」
「…そこはリーダーの俺が謝る。…けど、田舎者なんて汚い言葉を使うやつに言われたくもないな。名乗るという礼儀も知らないようだ」
「…!わ、忘れていただけよ」

…二人を止めたものの、内心俺もムカついていた。少々怒りをぶつけたことに反省をし、グレイシアの反応を待つ。

「私は【エスメラルダ】。レプテルアに所属する中級兵士で、18才よ。所属隊は…【ツララ隊】」
「…ツララ隊?肝心のツララさんは何処にいるんだ?」
「ツララ先輩は…その、遅刻よ。はー…相変わらずスケジュール管理が出来てない…」

エスメラルダと名乗った女性は、ぶつぶつと文句を言っている。…遅刻…。エスメラルダは、かなり苦労しているみたいだな。

「…そうか。俺達のことは知ってるんだな?それなら、早速任務について話をするとしようか。ツララさんは、とりあえず後で」
「…そうね。…今は許して上げるわ、悪狐」
「あーん?言ってろガキんちょ」

バチバチとシャルの視線とエスメラルダの視線がぶつかり合っていた。
…なんとも不安な始まりだが…俺も関わってしまったし、なんとかしよう。

………

アイスで確認されたアンノウンは、住民の話によれば3体。幸い拉致された者はおらず、怪我人や死人も出ていないとの事だった。
絶えず雪の降る村。慣れた者でないと視界は悪い。アンノウンにとってもそれは同じ事のようだ。

エスメラルダ…、もといラルダはツララを待ちながら情報収集をしていたようだった。先程の発言は、到着が遅れた俺達に苛ついたから出てしまった言葉なのだろう。…まぁツララもまだいないんだが。
ラルダは気こそキツそうだが、普段から不躾な言葉使いでは無いと感じた。

「…ラルダ、ツララ隊で活動するときはどう動いて任務を遂行しているんだ?」
「…支部が違うからって基本は同じでしょ。情報収集を元に問題の場所に向かうのを繰り返し、アンノウンがいれば素早く駆除。後は場合にもよるけど住人が被害に合っていればそれを最優先に救助し、その後に戦闘を開始する。…ツララ隊ならではの行動は無いと思って頂戴」
「なるほど、了解した」

ラルダは淡々とした口調で、まるで模範解答のような答えを発言した。
…実は、先程の質問は初めて組むチーム全員にしている質問だ。動きを知りたいってのもあるが、その他にも人柄を知ることが出来る。人柄が分かれば連携がしやすくなるし、なにより信頼出来るのかどうかを知ることが出来る。
…ラルダの答えは完璧と言ってもおかしくない。18で中級兵士というのは優秀である証。サポーターだからとはいえミリアンですら下級だからな。

「んじゃまぁ…パトロールと行くか。…そこそこ広い村だし、分かれて回るか?ちょうど四人だしヨ」
「…そう、だな。シャル、ミリアンで西から【力の洞窟】っつう洞窟までパトロールしていってくれ。俺とラルダで、東から洞窟に向かう。そこで一旦合流しよう」
「りょーかい」

シャルの提案に乗り、二手に分かれてパトロールをすることになった。

「あら、私と一緒で良かったの?嫌われてるのかと思ったけど」
「…少なくとも、シャルやミリアンはラルダの事嫌ってるかもな。俺は別に構わないよ。任務で私情を挟むつもりは無いし、別段苦手な訳でもない。…まぁでも、そう二人の事を邪険にしないでほしいとは思うけどな」
「…そ。私も、貴方はそこまで嫌じゃないわよ。…話は分かるみたいだしね」

ラルダは意地悪そうな笑みを浮かべた。…こりゃ、シャルやミリアンがラルダと打ち解けるのは難しそうだ。

………

粉のような雪の道をゆっくりと進み、見かけた住人から話を伺う。
村長を含めた数人からこの村にアンノウンが出たという話は聞いているが、はっきりとした場所が分からない。
村の中心で見たとか、洞窟近くで見たとか、隣の【シーフマウンテン】で見たとか。とにかくバラバラだ。特性で探ってみたものの、村からアンノウンの反応は出なかった。
…だが、一つ疑問が残った。
これだけの目撃情報がありながら、唯一とある場所では発見されてない。
…力の洞窟だ。洞窟の外では発見されているみたいだが、内部で見たというポケモンはいない。
元々住人が立ち寄るような場所ではないらしく、内部に至ってはここ数ヵ月一人しか入っていないらしい。
その一人というのも、どうやらアイスの住人ではない。そのポケモンは力の洞窟内で特訓をしているとの事だった。更に、その洞窟内は何故か特性で視る事が出来ない。理由は分からないが…少し嫌な予感がする。

「…洞窟内…ね。確かに、あそこだけ発見されてないのは不思議よね。別に入れない訳でも無いでしょう?」
「どうやらその通りだ。…発見情報が無いなら入る必要は無いんだが…行ってみる価値はありそうだな」

そうこうしている内に、洞窟前まで着いた。洞窟の入り口から嫌な空気が漂っている気がして、生唾を飲んでしまう。

「シャル達はまだみたいだな。…?ラルダ、何を?」

ふとラルダに目をやると、通信機を使い誰かに連絡を入れているようだった。

「ツララ先輩に連絡よ。力の洞窟内に入るから到着したらこっちに来て…とね」
「ああ…なるほど。もう少しで来れそうなのか?」
「ん。そうみたいよ。…寝坊かしらね。はぁ…。遅刻癖が無いなら優秀な人なのに」

ラルダは大きくため息をついていた。
それを見て苦笑いを溢しつつ、洞窟の中を屈んで覗いてみる。
壁面にカラフルな宝石が埋められており、この一つ一つがエネルギーが詰まった魔力石 (または、エネルギー石)という物らしい。
…特性が上手く発動しなかったのは、魔力石のせいなのか?良くわからないな。

「…待つか」

洞窟から目線を外し、シャル達との合流を待つことにした。




・白銀の村、アイス。前作【ポケモンストーリー】にて登場した村の一つ。ここで仲間のゾロアークと出会った。
朝は太陽によってキラキラと村全体が輝き、夜は月の光によって淡く輝く。レプテルア大陸における観光の名所となっている

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