ジュペッタとお人形

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ある日ジュペッタはいつものようにゴミ捨て場で壊れたおもちゃやぬいぐるみを探していました。気に入ると洋館に連れ帰るのですが、今回は汚れていないしどこもほつれていないお人形と出会いました。

お人形はえんえんと泣いているようでした。話を聞いてみると、持ち主が引っ越すことになってトラックの荷台に乗っていたけれど、大きくカーブしたところで振り落されてしまったのだそう。

帰るお家はもうないし、引っ越し先もわかりません。唯一の手がかりは持ち主が「りょうよう」のために引っ越したということですが、それがどういう意味なのかもわからないようです。

ジュペッタは話を聞いて持ち主を探してあげることにしました。「りょうよう」がなんだかは知らないけれど、きっといいことに違いない。お人形をペラペラの手で拾い上げて、ジュペッタはてとてと歩き始めました。

人間にとっていいことってなんだろう? お腹いっぱい食べられること? お金がたくさんあること? お友達がいること? ジュペッタは悩みながら見晴らしの良い丘を登っていきました。

てっぺんから景色を眺めていると、大きくカーブしている道路が見えました。お人形はきっとそこで振り落されてしまったのでしょう、真下にはさっきのゴミ捨て場がありました。カーブの先はまだまだ道が続いているようです。

お人形はジュペッタが見ている方角から来たというので、振り返って後ろを見てみると、そっちにはトンネルがありました。きっと抜けた先に持ち主がいるはず。ジュペッタは急いで丘を下って、道路に出てみることにしました。

トンネルの方へ向かう車が来るのを見計らって、ガードレールから思い切ってジャンプ!     ちょうどよくトランクの上に乗っかることが出来ました。お人形は怖かったのか、震えています。

大丈夫、きっと届けてあげるからとジュペッタが抱きしめると、お人形は応えるように頷きました。暗くて長いトンネルの先にはなにがあるのでしょう。

トンネルを抜けるとそこは雪国・・・じゃなかった、温泉のある街でした。 旅館が立ち並び、近くには小川も流れているとても穏やかな場所です。

でも住宅は数えられるほどしかありません。本当にここに持ち主はいるのかな? ジュペッタは一軒一軒見て回ることにしました。

ここでもない。ここも違う。あの子はどこ? お人形の記憶を頼りに持ち主を探しますが、なかなか見つかりません。 次がとうとう最後の一軒です。

そっと窓から中の様子をうかがうと、女の子がぬいぐるみで遊んでいました。その姿を見たお人形は騒ぎ出しました。あの子だ!あの子がぼくの持ち主なんだ!

ジュペッタはお人形を窓辺に置いて軽く窓を叩くと、そっと隠れました。音に気が付いた女の子は失くしたと思っていたお人形を見つけて喜び、部屋の中へ入れてあげました。窓が閉まるのを見届けて、ジュペッタは帰り道をまたてとてと歩きました。

お人形さんはどうなったかな。帰る場所があるお人形さんはいいな。まだこれから遊んでもらえるお人形さんが羨ましいな。とぼんやり考えながら歩いていたものだから、うっかり滑って温泉にぽちゃり。あたたかくって、なんだかいい気持ち。「りょうよう」って、きっとこの事だったんだ。

また会えたらいいな。なんて思いながら、しばらく温泉を楽しんだジュペッタなのでした。 大丈夫、きっとすぐ会えるよ 今度は、同じジュペッタとして。

きょうのおはなしは、これでおしまい

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