HR3:「めでたしめでたし(?)」の巻

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読了時間目安:8分
 静かな“ひかりのもり”に響く、空気を切り裂くような鋭い音……。これは一体……何なのかな?





 “あさひのいりぐち”へと急いでいる途中に耳にした謎の音がする方向に進む僕。段々とその音がする場所が近づいているのか、謎の音はより大きく……よりはっきり聞こえるようになってきた。



 ……ブンッ!……ブンッ!……ブンッ!
 (……?……あそこから音がしているみたい……)


 僕が耳にした謎の音がしている場所は延々と同じような一本道が続くなかで、右側に別の脇道がある場所。


 木製の看板には“きぼうへのみち”と表示されているのだが、どうやらこの脇道の先から謎の音は響いているようだ。


 (とにかく……この先に行ってみよう!)


 僕は得体の知れない音の影響で、不安と緊張に心が支配されそうになっていた。それでもそれを振り払おうと……それらに負けまいと覚悟を決めて、“きぼうへのみち”の奥へ……更に奥へと進むことにした。


 それからどれくらいの時間歩いたのだろうか……。


 “きぼうへのみち”は、今までの道と異なり、木々が辺り一面に天まで届くように生い茂っているせいか……自分のしっぽの炎で照らさないと、先が見えないほど薄暗い道だった。


 (なんだろう……この異様な静けさは……。なんだか今までいた場所とは全く別の世界に来たみたいだ……)


 この道に入る直前から僕はなんとも言えない緊張感を覚えていた。心臓もバクバクしてきてるし、早く先に進もうとしても、思うように歩くことが出来ないでいる。明らかにいつもピカっちや、チコっちと一緒に訪れている“ひかりのもり”の……あの穏やかで開放的な雰囲気とは印象が違っていた。




 (でも、あの謎の音は間違いなくこの先から聞こえてくる。何があるかすごく不安だけど……ここは我慢だ。まだまだ行くぞ……)


 一歩ずつ薄暗い道を進むたび、自分にこうやって言い聞かせる僕。正直不安な気持ちではあったが、それよりも今の僕にとっては。この謎の音の正体の方が気になって気になって仕方がなかった。すると………、


 (……あれ?なんだか向こうが明るくなってるぞ……!)


 “きぼうへのみち”に入って約5分。僕は薄暗い道の先に、明るい光が満ちてる場所があるのに気がついた。



 (何かあるかも知れない……行ってみよう!!)


 僕はそれまでよりもスピードを上げて、その光を目指して走り出した。



 ………そして、僕がたどり着いたその場所は……今まで目にしたことのない景色が広がる場所だった。


 (凄い……“ひかりのもり”にこんなところがあるなんて……)


 その場所は先ほどの“きぼうへのみち”とは異なっていた。


 木々があまり生えていないせいか、かなり広めのスペースとなっており、近くには小川が流れていた。


 更には森の中で一番気持ちのいい青空を眺めることができ、真上から明るい光が差し込むことによって、広いスペース全体が光に包まれてる感じを受けた。


 (凄い……後でピカっちやチコっちも連れてこよう。きっと二人ともビックリするだろうな……)


 幻想的な景色を前にして、思わず目を輝かしてしまうほど、しばし感動する僕。すると……、



 ブンッ!!……ブンッ!!……ブンッ!!……ブンッ!!
 「!!!」


 再び耳に飛び込んできたあの謎の音。


 (……間違いない。この幻想的な景色が広がるこの場所のどこかで鳴り響いてるぞ……)


 僕が確信を得た……その次の瞬間だった。


 「誰だ!オレの練習を邪魔しようとしているヤツは!」
 「ヤバッ!」


 突如僕の後方で誰かの声が響いた。声の調子を聞く限り、僕がこの場所に足を踏み入れたことに対して怒っている感じだった。


 恐る恐る後ろを振り返る僕……すると、


 「てめえ……せっかく気持ちを集中させて素振りををしていたって言うのに……ちくしょう!これじゃ台無しだ!!絶対許さねえ……」


 声の主は、キツネポケモンと呼ばれる種族のテールナーだった。わなわなと体を震わせて……身体中から炎が吹き上がりそうなくらいの怒りを、僕に爆発させようとしていた。


 「覚悟しやがれ!“サイケこうせん”!!!」
 「ひえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!ごめんなさぁぁぁぁい!!」



 身の危険を感じた僕。次の瞬間……森全体に響き渡るような叫び声を上げ、両手両足をバタバタ激しく動かしたと思うと、すかさずこの広いスペースを………何周も目に止まらぬスピードで逃げ回り出した!!



 ドォォォォォォォォォン!!ドォォォォォォォォォン!!


 「ちょこまかちょこまか動くなぁぁぁぁ!!」
 「そんなこと言われたって……僕だって困るよーーー!!」


 テールナーはよほどイラついていたのか、何発も何発も“サイケこうせん”を放っていた。………て言うか……“サイケこうせん”ってそんな何発も何発も連発できるような技じゃないでしょ!


 (やっぱり音の正体を突き止めようなんてするんじゃなかったよーーー!!朝寝坊もしちゃうし、待ち合わせに遅れちゃうし、荷物持ちまでしちゃうし……なんて最悪な日曜日なんだぁぁぁぁ!!)


 なんか宇宙全体に響き渡るような叫びを心の中でする僕。……正直ここまで最悪な展開になるなんて聞いてないし……この先どうなるのかはっきりいって不安だ……。


 ……とか考えていた次の瞬間だった。


 「わ……わぁぁぁぁ!?」 



 悪いときにはとにかく悪いことが重なるのが、ある意味お決まりパターンだ。



 まぁ……一応状況を説明しようとするならば、テールナーから逃げ回る僕が……何のイタズラなのか……なんだか読者の皆さんから「知ってた」とか突っ込まれそうな……よくあるお決まりパターンのような気もする……ナイスタイミングな場所に転がる石ころに、見事につまづき………そのまま何の工夫もなく……そのままフツーにこけてしまったのだ。


 「イタタタタタ……なんだってこんなところに石ころが……」


 痛みをこらえながら起き上がる僕。そこへ、


 「はぁ……はぁ……もう逃がさねぇぞ」
 「しまった……」


 テールナーが息を切らしながらも、ようやく逃げ回る僕を追い詰めてきた。万事休す……か。



 「たっぷり後悔させてやる……このチビトカゲ」
 「待ってよ!!僕の話もちゃんと聞いてよ!!」
 「うるせー!問答無用だ!!」



 僕の言葉に全く耳を傾けようともしないテールナー。はぁー……なんだってこんなことになっちゃうんだよ……泣きたくなってきたよ……。


 「覚悟しろ……“サイケこうせん”ッッ!!」


 テールナーが得意としている“サイケこうせん”を正に発射しようとしたそのときだった。


 「いいから……僕の話を……聞いてよーーー!!」


 ドッカァァァァァァァァァァン!!!


 「ぎゃあああああああああああ!!」
 「あっ…………………」


 気持ちが入りすぎたせいか、思わず“オーバーヒート”と“はじけるほのお”、それから“りゅうのいかり”を同時に誤発動させてしまった僕。




 猛烈な爆発が起きたと思った次の瞬間、“ひかりのもり”全体に、テールナーの悲鳴のような叫び声が響き渡ったのだった……。




 ……………めでたしめでたし。(?)

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