バレンタインデー

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眠いねぇ…眠いねぇ…そうそう、近況報告。アパートこがね色にて感想をもらいました。うれしいねぇ…眠いねぇ…テンション上がらんねぇ…バレンタインデーは…。ついでにもいっちょ行っとこうか。人気の小説欄にロトム配給メールがあったよ。うれしいねぇ…眠いねぇ…こんな感じでこれからも読んでくれる人がいたらいいね。はい、近況報告おしまい。眠いねぇ…。
町が白一色で覆われる。
そんな中俺は仕方なく外に出ていた。そうは言っても部屋の中よりまだいくらか外のほうが暖かいのだけど…。何故って?そりゃあ前回も話した通り灯油が無くなった時に水色のあいつが来て部屋の中で吹雪を使ってるからだよ。
ん、前回?何のことだ?
ふと口から漏れた言葉に疑問を持ちつつもガソリンスタンドまでスッカラカンなポリタンクを振り回しながら歩いていた。でもだからといって買い物に出かける気分ではない。そりゃ、買いたいものがあれば出かけるけど好き好んで出かけたりはしない。理由は至極簡単。茶色い甘い悪魔がうごめきだす時期だからだ。だって本当だったらガソリンスタンドにも行きたくは無いのだから。
「チョコレートはいかがですか?」
バレンタインムード真っ只中の商店街の前を通り過ぎようとしたらまたしてもいつぞやの電気鼠の格好をした女の人に声を掛けられてしまう。
「あいにく手持ちが無いものでね」
「大丈夫です、今日のは試作品ですから」
無理にでも渡したいのだろうか。さぁどうぞ、とでも言いたいばかりに押し付けてくる。
そんなに俺に渡したいのだろうかとニヤケ面に淡い期待を持って手にとって見てみると

   ポケモンでも食べられる甘~いチョコ新発売!!

期待した俺が馬鹿だった。そもそも俺とこの電気鼠の格好をした女の人とは繋がりがないのにそんな期待をした俺が馬鹿だった。
だいたいこんな俺に淡い期待を持たせてくれただけで充分だ。そう思わないとすごい脱力感でもう立ってられそうにない。手元のチョコに目線を落としはぁ…とため息を吐き出すと結局すごいやりきれない感が俺の肩に圧し掛かった。
ふと前を見るとやっぱり電気鼠の格好をした女の人はいなくて代わりにいつかの黄色く小さなポケモンが商店街の中のほうに走り去っていくのが見えた。
なんだかなぁ…。そう思いながらガソリンスタンドのほうに歩いていくとばったり水色の体色のあいつに会った。
あいつは凍てつくような水色の瞳を俺に向けて何かを訴えるような感じで睨んでくる。
うっ…と声に出してしまうくらいに鋭い睨みだった。
近くでバレンタインチョコはいかがですかーという声がする。
そうだと思い出し、目の前で睨みを利かせている水色のやつに先ほど貰ったチョコの袋を見せてやる。もちろん、新発売と書かれたほうとは逆の面を見せる。
しかし、女というのはどうしてこんな甘いものを好き好んで食べたがるのだろうか?太るのを気にするくせに…と思うのだが。
目の前のこいつも例外ではないようでいくらか鋭い目つきが和らいだような気がした。
あいつはガソリンスタンドで灯油を入れている間、俺のことをずっと待っていてくれてそのまま一緒に帰路を歩く。
帰るときもご機嫌なのか随時ぴったりと平たい尻尾を俺の足にくっつかせていてすんごく歩きにくい。
でもそれよりも驚愕したのは部屋に入ってからだった。
部屋に入ろうとした瞬間どさっと音を立てて玄関から雪が崩れてきた。
なんだなんだと思いながら中に入るとあたり一面銀世界。テレビもテーブルもストーブも何もかも。ギャー!!
あんぐり開けた口のまま俺は足下にまとわりついてくる水色の身体をしたやつを見る。
…………やつは満足そうだった。しかも、どうだすごいでしょう?とでも言いたげに見上げて来るもんだからたちが悪い。
う~ん、どうしたものか。
取り敢えず、窓の外に端っこの雪を丸めて外に向けて投げてみる。
「痛たたたた」
案の定、後ろから氷の礫が飛んできた。手にとって丸めた分へこんだ雪を俺を睨みながら補充して、ふんと鼻息を出す。
ここは俺の部屋なんだけどな……。そう思いながらストーブの灯油を入れるための空になったタンクを外にだし、溢れないように入れる。
こぽこぽ音をたてて灯油がタンクの中に吸い込まれていく。
しっかし寒いね、やんなっちゃう。
指定のラインに達したので残りの灯油を仕舞いに行く。
その作業から帰って見ると視線でチョコを寄越せとあいつが訴えていた。まったく、本当に女の子って食い意地張ってるよね。
えっ、そんなことはない? そうかなぁ?
まぁとにもかくにも目の前の水色はチョコを求めているわけですよ。えぇ。
そんなわけだから冷えた皿にカラカラと固い音を響かせて盛り付ける。すぐさま水色のやつは冷凍ビームで凍らせてカリンポリンと音をたて美味しそうに頬張っている様子を見てふと思う。
バレンタインって普通、女の子から俺が貰うんじゃね?
………………。
足元を見るともっとくれとの催促が。まだまだ雪が積もりそうだと窓を見た。

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