8-4 混戦潜り抜け出揃う強者

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください



 第2グループはジャラランガ使いの少年が大暴れし、第3グループは紫の服でメガネ青年がリングマで勝ち上がった。
 ジャラランガの方が派手な戦いをしていた。リングマは、勝ちにこだわるような、容赦のない戦い方をしていた。個人的にはリングマ使いのメガネの方が厄介な印象があった。
 それから、第4グループ。ラフレシア使いの緑のスカートの女性が使っていた戦法? だと思うものに反応してしまった。

(これは、前にソテツが使っていた戦法か?)

 結論から言うとぱっと見ラフレシアは、特に何もしていないように見えた。
 だが周囲のほかのポケモンの様子が明らかにおかしかった。
 そのポケモンたちは毒にむしばまれたように苦しそうに、でも混乱しているように正気を保てていなく、なによりラフレシアに怯んでいるようにみえた。

(えげつねえな)

 『あまいかおり』とは異なる別の技のように見えるが、でも周囲の相手が近づくことも叶わず状態異常や行動不能になっていく姿は、どうしてもソテツが使っていた『あまいかおり』を思い出す。それより凶悪なのはラフレシアの毒花粉が合わさってなせる業なのかもしれない。
 どのみち、見えない毒に気を付けなければ。

『5組目の選手の方々は、入場控え口まで移動してください』
「じゃ、先に行くぞ」
「せいぜい健闘しなさいよ」

 ユーリィに送り出され、ゲートへと案内され向かう。
 ゴーグルをかけた爺さんと短いひげの男性が手前の方の通路を曲がっていった。
 黒い長めの癖毛を持つ、涙目の藍色のパーカーの少年と奥の通路を目指す最中。少年が、こちらに一礼した。

「あの、ボクはクロガネ=クリューソスといいます。ええと」
「ビドーだ」
「はい。ビドーさんですね。勝負よろしくお願いいたします」
「……こちらこそ、よろしく……クロガネ」

 礼儀正しいクロガネは涙を拭って、自分の出場口へ歩いていく。
 俺は彼のその行動を見て、考え方を見つめなおさなければいけないのかもしれないと思った。
 全員を覚えるのは無理だが、参加者にも個々の名前がある対戦相手だという意識を思い出させたクロガネになんていうか……敬意を表したい。そんな風に考えた。


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 バトルフィールドに立つ。照明がわずかに眩しい。でも、あまり眩しすぎないようにとライトの調節をしたとガーベラが言っていたっけ。
 それぞれの角に立つクロガネを含むトレーナーたちを見やってから、モンスターボールに手を付けようとした。
 すると、ボールから、アイツが珍しく飛び出した。

「……お前」

 たくましい背中を見せたのは、カイリキーだった。四本の腕のこぶしは、握りしめられている。
 俺はアイツとのやりとりを思い出し、カイリキーの意思を尊重した。

「アイツに、ユーリィにいいとこ見せたいよな、カイリキー……いいぞ、お前に頼む!」

 ゴーグル爺さんがとぐろを巻いた大蛇、サダイジャを、短いヒゲの男性が木にものまねしているウソッキーを、そしてクロガネがネギを構えた鳥ポケモン、カモネギを出した。

「いくぞ、カイリキー!」

 試合開始の合図とともに、全員が動き出した。


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 サダイジャとカモネギが、一斉にカイリキーの方に向いた。

「睨めサダイジャ『へびにらみ』!」
「コガネ、いくよ『フェザーダンス』」
「なっ」

 ゴーグル爺さんとクロガネが、サダイジャと(コガネというニックネームの)カモネギに指示を出す。狙いは当然と言わんばかりにカイリキーだった。
 カモネギがばらまいた羽毛がカイリキーを包み込む、サダイジャは羽毛が地面につく前にするりするりと地を這い、カイリキーの視線の先に表れ、アイツを睨みつけた。
 カイリキーは『へびにらみ』と『フェザーダンス』によって、麻痺の状態異常と攻撃に力が入らなくなってしまっていた。
 いきなりの展開に一瞬戸惑ってしまいそうになる。その間にウソッキーは全体に岩石を降らすために力を溜めていた。
 ヒゲのおっさんがウソッキーに『いわなだれ』の指示を出す。

 場面がどんどん転換していく。
 置いていかれそうになる。
 だけど、俺もカイリキーも狼狽えている暇は、ない!

「カイリキー、まずは『ビルドアップ』」

 俺の声にカイリキーは反応する。それから構えを取り始める。
 分散しているとはいえ、ウソッキーの『いわなだれ』が3体に襲い掛かる。カモネギはおっかなびっくり回避し、サダイジャとカイリキーはかわしきれず食らってしまう。
 カイリキーは羽毛と岩礫をはじくように筋肉を震わせ、体に力を取り戻すために、また体の硬さを強めるために『ビルドアップ』を行っていく。

 場面は次の展開を迎える。
 岩石をまともに食らったサダイジャが、砂を吐いた。
 その特性、『すなはき』により吐き出された砂は勢いよく舞い上がり、あたりを砂嵐に包み込む。
 羽と砂が舞い上がり、視界を悪くする。ミラーシェードを付けているから目は保護されているとはいえ、視界が悪い。くそっサダイジャ使いの爺さんのゴーグルはこのためか!
 岩タイプのウソッキーはともかく、カイリキーとカモネギは砂嵐に苦しまされていた。
 ゴーグル爺さんがこの時を待っていたと嬉しそうに指示を出す。

「『ちいさくなる』じゃサダイジャ!」
「えっ」
「くそっ」
「チッ」

 クロガネ、俺、ヒゲのおっさんの順で悪態などをつく。
 この視界の悪さで砂の中に隠れられでもしたら、タチが悪すぎるぞ……!
 その時目を閉じたクロガネが、カモネギが、一斉に目を開く。
 目に砂が入ってか、緊張のしすぎか、クロガネは涙目になりながらも……カモネギを励ました。

「のまれないでコガネ……『リーフブレード』!」

 一閃。
 カモネギがネギで砂を真っ二つにスライスし、中にいる小さくなったサダイジャ斬り上げた……!
 カモネギはその『するどいめ』でしっかりとサダイジャの姿を捉えていた。そうか、その目を持っているカモネギなら、この視界の悪さでも見つけられる。サダイジャの潜伏作戦は通用しない。

「でかした坊ちゃんら! 今だウソッキー『のしかかり』!!」

 ウソッキーが宙を舞うサダイジャの上から思い切りのしかかった。
 砂のクッッションがあったとはいえ、サダイジャの悲鳴が聞こえた。
 思わず動こうとするカイリキーを、俺は呼び止める。

「……カイリキー、今はまだ『ビルドアップ』だ」

 砂嵐越しにカイリキーと目が合う。カイリキーは俺の目を見て、しっかりと『ビルドアップ』を積んでくれる。
 ゴーグル爺さんが額に汗を垂らせ、あがきの一手を出してくる。

「やってくれたな! サダイジャ、カモネギに『へびにらみ』!」

 来た『へびにらみ』……!
 次、サダイジャが現れるとしたら、あそこしかない!

「顔の前だ、カイリキー!!」
「!? しまっ」

 さっきカイリキーが『へびにらみ』くらったとき、サダイジャは顔面のすぐ近くに来ていた。
 カモネギにも同じことをするのならば、姿を現すのは、やはりカモネギの顔の前!
 温存していたこの技で決めさせてもらう!

「ねらい撃て! 『バレットパンチ』!!」

 速射される拳が小さなサダイジャを捉え、吹き飛ばす。流石のサダイジャもダメージが多かったようで、戦闘不能へとなった。
 ……『バレットパンチ』は麻痺により自由が利きにくい体で、カイリキーが唯一早さで対抗できる持ち技だった。温存したかったけど、そう言ってはいられないようだ。
 発射後の隙しびれが回るタイミングをウソッキーとヒゲのおっさんは逃してはくれない。

「『もろはのずつき』だ、ウソッキー!」

 硬い『いしあたま』でカイリキーに突撃してくるウソッキー。
 これは、かわしきれない。そう奥歯を噛み締めたとき。

「コガネ」

 羽が再び、舞い降りる。

「『フェザーダンス』をウソッキーに!」

 砂交じりの羽毛に包まれ、方向を見失ったウソッキーの『もろはのずつき』が失敗に終わる。
 その彼らの行動の意図は掴めなかったが、助かったのもまた事実だった。
 しかし、まだバトルは終わってはいない。

 再度、ウソッキーの『いわなだれ』がカイリキーとカモネギに降り注ぐ。
 カイリキーが怯みつつもガードをしている隣で、カモネギは自らの翼を『はがねのつばさ』で硬化し、岩石を受け流していた。
 岩石をしのぎきったカイリキーが、己を鼓舞するように声を上げる。
 麻痺もあるし、少々無理をしているようにも見える。

「いけるか?」

 俺の問いに、カイリキーは拳を上げて“まだ行ける”と応えた。
 そうか。お前がそういうなら、まだ行くっきゃないよな。

「わかった。勝つぞ」

 カイリキーが何も言わず、腰を深く落とし、構える。
 カモネギも何かしらの技の構えを取っていた。それは、守備よりの力の溜め方だった。
 ウソッキーだけが、カイリキーに向かって『もろはのずつき』を繰り出してくる。
 ギリギリまでウソッキーを引き付け、カイリキーに技名を叫ぶ。

「『クロスチョップ』!!」

 相手の勢いを利用したクロスカウンターならぬ『クロスチョップ』がウソッキーの急所に入った。
 吹き飛ばされたウソッキーが仰向けに倒れて戦闘不能に陥り、残るはカイリキーとカモネギのみになる。
 カイリキーの体勢が崩れかけたところに、カモネギが駆け出し仕掛けてくる。

「今だよコガネ――――『ロケットずつき』!!」
「カイリキー!!」

 カモネギの強烈な頭突きを、とっさにカイリキーは4本の腕で止めにかかる。
 勢いに押されつつも、カイリキーは踏ん張って受け止めてくれた……!

「よくやった! そのまま『がんせきふうじ』で固めろっ!!」

 岩石のエネルギーで、受け止めていたカモネギの身動きを取れなくする。

「ケリをつけるぞカイリキー! 『クロスチョップ』!!!」
「コガネ!!」

 そのまま宙へ放り投げ、落下するカモネギにカイリキーの『クロスチョップ』が決まり決着となった――


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『第5組目、勝者ビドー選手とカイリキー!』

 モニターから流れる審判の声で、私とドルくんはビー君たちの予選突破を知る。
 画面に映るビー君とカイリキーは、腕を正面から組んで、にやりと笑っていた。やった、まずは一勝だね。
 思わず私までガッツポーズをしていると、声をかけられる。

「あの、選手控室はどちらに行けば戻れるしょうか」

 そこにいたのは緑の髪留めで、栗色のロングヘアーの緑のスカートの女性だった……ってあれモニターでちらっと見たときには気づかなかったけど? もしかしてこの人は。

「ええと、もしかしてフランさん?」
「ええまあ、あたくしはフラガンシア・セゾンフィールド、フランという愛称で呼ばれることもありますが……あら、この香りは……アサヒさん?」
「はい、アサヒです。ヨアケ・アサヒです。お久しぶりですフランさん。ジラーチの大会以来ですね。ヒンメルに来られていたとは。しかも大会に参加されていたなんて驚きました」
「あらあら、ずいぶん大きくなられていたのでわかりませんでした。でも香りで思い出せましたね」
「覚えていていただけて? 嬉しいです……! あ、選手控室はこちらですよ」
「ありがとうございます、助かります」

 フランさんを案内している間にすれ違ったモニターは、第6組目のバトルを流していた。
 彼女はドルくんのにおいを嗅ぎながら、「あの時は顔を合わせていなかった子ですね、覚えました」と語りかけていた。
 やがてフランさんは私にも話しかけてくれる。

「バトルといえば私は知り合いと一緒に参加していますが、アサヒさんは大会には参加されていないのですね」
「はい。今回は裏方のお手伝いをしています」
「そうですか。叶うならばあの時のリベンジマッチをしたかったですね」
「私もまたあの香り戦法とはバトルまたしたかったです。ああでも、私の相棒が参加していますよ」
「あら、まさか」
「いや単に同じ目的のために手を組んでいる相棒です。そっちじゃありません」
「そうですか。でも楽しみですね。当たってバトルできますように」

 ふふふ、とフランさんは笑みを浮かべた。ドルくんはそんなフランさんに警戒を示していた。
 もしマッチングで当たったらビー君がんばれ。この人は手ごわいよ……。


 フランさんを送り届けて、モニターを見るとバトルは第7組目になっていた。確かユーリィさんの組だ。

「あれ……? ニンフィア、じゃないや」

 ユーリィさんが使っていたのは、いつも一緒にいるニンフィアではなく……こわもてなポケモン、グランブルだった。
 彼女がグランブルを出しているところを、私は初めて見た気がする。単に普段あまり外に出さないだけなのだろうか。今度紹介してほしいなと思った。


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 緑のスカートのお姉さんが戻ってきたころのこと。

(ユーリィの奴、いつの間にグランブルなんてゲットしていたんだ?)

 後からヨアケに聞くのと同じ疑問を、この時の俺は抱いていた。グランブルゲットしているなんて、初耳だぞ。
 ……と思ったが、よくよく考えると俺は最近のあいつのことをそんなに良く知らないことに、改めて気が付いて少しだけ凹んだ。

 知らないと言えば。
 ソテツにも、ユーリィにも、ハジメにも。俺の知る由もないいろんな顔があるのだろう。
 俺から見える面では、到底見えない別の側面を持っているのだと思う。
 それこそ俺が見た彼らが、すべてではない。そういう意味ではジュウモンジの言っていたことは正論なのかもしれない。
 俺を颯爽と助けて見せたソテツも、あんな疲れた笑みで謝るように。
 密猟者のハジメも、妹の前では一人の兄で。
 俺にはきつめなユーリィも……いろいろあるのかもな。


 グランブルが勝利をし、ユーリィが予選通過者の控室にやってくる。
 バトル直後で若干興奮気味のユーリィは、深呼吸をしてから俺に言った。

「……私たちも勝ったから。あとカイリキーとあんたの戦い、見ていたよ。やるじゃん」
「……お前もな、グランブルと息があっていた」
「必死に一緒に練習したからね」

 珍しく褒められて若干(顔には出さないようにしたが)照れている俺を直視せず、どこか遠くを見ながらユーリィはそう謙遜した。
 ユーリィの視線を追うと、第8組目の選手がポケモンを出しているところだった。

 会場の、様子がざわついていた。

 それは、ブーイングともとれるし、嘲笑ともとれるようなざわめき。
 その中心軸にいたのは、あのビッパに似た頭の兄ちゃんだった。
 そいつの出したポケモンは――――かわいらしいリボンをつけた、丸ネズミポケモン、どこをどう見てもビッパだった。

「ビッパだ……」とジャラランガ使いの少年ヒエンがこぼす。
「あら」と緑のスカートのお姉さんフラガンシアは頬に手を当てる。
「……なんなんだ、あの人は」と黒髪メガネの男キョウヘイは明らかにいらだちを覚えていた。
「ビッパじゃん!」と俺の後に勝ち上がった深紅のポニーテールの女テイルは口元がにやついている。
「……」ハジメは相変わらず一言も喋らない。だが、その視線はビッパを捉えていた。

 俺は、なんとなくさっきの考えを思い出して、

「いや、見かけだけで判断したらまずいんじゃねーか」

 そう呟いていた。すると、その場の全員の視線が俺に集まった気がした。

 試合の開始の合図が鳴る。
 攻撃技が飛び交う中そのビッパはというと、丸くなっていた。
 のろのろと、動いては、丸くなる行動を繰り返すビッパ。
 なんだあれはと興味を駆り立てるには、注目するには、そして油断するには十分だった。
 だが、誰もが途中から違和感に気づいた。

 結果から言うと、そのビッパは、刃の斬撃も、激しい泥の弾も、すべての攻撃を『まるくなる』で防いでいた。防ぎきって何食わぬ顔でそこにいた。

 今回初めて、ハジメの声を聞いた。

「あのビッパ、『のろい』や『どわすれ』でステータスを上げてから、攻撃を『まるくなる』で完全にしのいでいる」
「技を受けるタイミングに、完全に指示と『まるくなる』のタイミングが重なっているからあんなピンピンしているのか?」
「おそらくそうだろう。きっとあれは、防御の一つの究極系……『まるくなる』の技を発動した瞬間にのみ、その効果が大幅に上がる現象、“ジャストガード”を駆使しているのだろう」

 俺の問いかけに、ハジメは普通に受け応える。普通に会話できている驚きもあったが、ビッパと兄ちゃんたちのコンビネーションにも、とにかく驚いていた。その“ジャストガード”を連発しているって……息が合っているってレベルじゃねーぞ。
 ハジメは次に、こう宣言した。

「当然、これだけ『のろい』や、特に『まるくなる』をした後には、あれが来るだろう」

 モニター越しの兄ちゃんは、エントリーネーム「ハルカワ・ヒイロ」は、ここぞとばかりに技の指示を出す。

 ――「『ころがる』」、と――

 まず一撃目の『ころがる』。泥の弾を撃っていた一体目が吹っ飛び、戦闘不能に陥る。
 ビッパの『ころがる』は止まらない。
 二撃目の『ころがる』。斬撃を放っていた二体目がリングの端に叩きつけられ、戦闘不能に陥る。
 ビッパの『ころがる』は止まらない。
 三撃目の最後の『ころがる』。残りの一体が、轢かれて宙を舞った。戦闘不能に、陥った。

 審判がジャッジを下すのに、ワンテンポの間があった。ハルカワ・ヒイロとビッパ以外のその場面を見ていた全員が唖然としていた。
 審判がヒイロとビッパの勝利を宣言した。

 そして、ヒイロはというと、審判から半ばひったくるようにマイクを借りて、スピーチを始めた。

『……この国に訪れて、“ポケモン保護区制度”に悩まされている多くの人に出会いました』
『確かにポケモンをゲットできないのはトレーナーとして、辛いかもしれない。でもその時に彼らが口々にした言葉に、僕は疑問を持っていました』
『“強いポケモンを捕まえられないから強くなれない”、と彼らは言いました』

 彼は、その場の全員に問いかける。

『……“強い”ってなんですか』
『強いポケモンを使うから強いトレーナーなのか? いや違う。それはポケモンが強いだけであって、トレーナーが強いわけではないと僕は思う。現に僕は強くない。一匹の丸ネズミのように非力です』
『そしてだからこそ、旅に出て初めて戦ったあのポッポとかコラッタとか自分よりもずっと小さなポケモン達を相手に必死になって泥だらけになって戦った記憶……。あの時は勝てないと思った、命の危機すら覚えた、僕はそんな思い出をずっと大切にしたいと思っている。世界で一番強いポケモンはあのときに出会った草むらのポケモンだと思うんだ』
『長々とりとめのない話を失礼しました。最後に一つだけ、言わせてください』

 マイクを片手に、人差し指を高らかに上げ。
 ハルカワ・ヒイロは俺ら全てに宣戦布告した。

『お前らなど、ビッパ一匹で十分だ!』




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 静けさから一転、ざわつきを取り戻したのは会場だけではなかった。電光掲示板ではネットでも、大会の注目度が上がっていた。
 デイちゃんに連絡を取ると、「想定外のことばかり起きる、それがイベントじゃん」と消耗した声で潜り込んだポリゴン2の対応に追われていた。プリ姉御は回復班として忙しくしていて、スオウ王子は何か考え込んでいるように座っていた。
 トウさんは特に慌てた様子はなく、いやむしろ強者のバトルにテンション上がっているのだけは隠しきれていなかった。そのことを観客席にいたココさんやカツミ君リッカちゃんに話すと、ココさんは呆れて、カツミ君とリッカちゃんは目を輝かせていた。
 見回り組のガーちゃん(また「ガーちゃんじゃありません、ガーベラ」ですと訂正した彼女)は、「あんまり騒がしいのは苦手です」と滅入っていた。
 ソテツ師匠からは「本来の目的を忘れて浮かれないように」と釘を刺された。

 色々点々としても、不審な気配はデイちゃんの言っていたポリゴン2と、なぜか選手にいるハジメ君のみ。嫌な違和感は募るけれども、その姿を現さないまま、本選が始まろうとしていた。


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 対戦カード発表。(敬称略)

 第一試合
 ビドーVSフラガンシア

 第二試合
 ハジメVSテイル

 第三試合
 ヒエンVSヒイロ

 第四試合
 ユーリィVSキョウヘイ


 本選、開幕!













第八話前編 光の中のバトルロイヤル 終。
第八話後編に続く。


ゲストキャラ
クロガネ君:キャラ親 仙桃朱鷺さん
フランさん:キャラ親 仙桃朱鷺さん
キョウヘイ君:キャラ親 ひこさん
ヒイロさん:キャラ親 あきはばら博士さん
カツミ君:キャラ親 なまさん

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