17.背後のポケモンコンテスト
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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください
本日はポケモンコンテストが開かれていた。
彼は会場の外にいて、受け付けを担当していた。会場の外にはモニターがあり、予約が取れなかった人がモニターの前に集まっている。
しかし、モニターは彼の背後にあった。残念ながら彼は、コンテストを観ることができなかった。
「まあ、仕事中だし仕方ないか」
「いよいよ最後のコーディネーターの登場です!」
このコンテストは、三匹のポケモンを順番に出してパフォーマンスを行い、合計点を競い合うルールだ。
舞台に立ったコーディネーターは、一匹目のポケモンを出した。
「出てきて! セリン!」
『イーブイ!』
セリンは二本の腕をクロスしながらボールから出る。腕を開きながら華麗に着地を決めた。背中の模様を会場に見せアピールを行う。次に鋭い目つきで会場を見渡し、『イブブイ!』と威嚇を行った。最後に会場を縦横無尽に飛び回り、次々と美しい技を繰り出していった。
「次はあなたの出番よ、ヒルダ!」
『チコッ!』
ボールから飛び出したヒルダはまんまるとした体を硬くし、とっしんを繰り出した。突進によって氷の塊は激しく粉砕され、会場から拍手が沸き起こった。
『チコチコ!』
その後体をくるくると回転させ、アピールを行った。
「最後はこちら! 出てきたイプリ!」
『フッシー!』
イプリは会場に向かってまずおじぎをした。その後ひかりのかべを作り、その上に乗って派手な技を繰り出していく。舞台は真っ赤に燃え上がり、周囲の温度が除々に上がっていくと同時に、観客のボルテージも上がっていった。
「盛り上がっているなあ」
受け付けをやっていた彼は、モニターこそ見えないが、音はよく聞こえていて、コンテスト会場が最高潮に盛り上がっていることがはっきりと分かった。
コンテストが終了し、結果発表までの時間まで、一部のコーディネーターは会場に出ていた。そしてその中には、さきほど最後に舞台に上がり、会場を一番盛り上げた人もいた。
そのコーディネーターは、インタビューを受けていた。ポケモンを出して、この子達とはどのように出会ったか、など説明している。
インタビューは受け付けの傍でやっており、彼はコーディネーターの顔とポケモン達を見ることができた。
「え?」
彼はコーディネーターの周りにいる、三匹のポケモン達の、予想外の姿を見て驚いた。
「イーブイじゃなかったのか!」
『イーブイ!』って鳴きながら先程パフォーマンスを行っていたのは、イオルブだった。
「イオルブって『イーブイ』って言えるのか。いや確かに、名前に『イ』と『ブ』は入っているけど」
そして『チコチコ!』って鳴いていたのは、チコリータではなく、カチコールだった。
「どうりで突進系の技を多く使っていた訳だ。チコリータにしては不自然だと思っていたよ」
更に『フッシー!』って鳴いていたのは、フシギダネではなく、マフォクシーだった。
「マフォクシーって『フッシー』って言えるのか。『フォ』は言えるだろうが『フ』も言えるのか?」
インタビューを終えたコーディネーターは、再び会場へと入っていた。
「いやあ、変わった鳴き声のポケモンもいるんだなあ」