新しい地、『星の大陸』

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それでもいいという方がいたら読んで頂けたら幸いです。
「……えー、皆さん集まりましたね、彼以外は。やれやれ、本当にどこにいるのでしょうかね?まあいいでしょう。それでは『星の大陸』についてですが……」
 水の大陸、ワイワイタウンの港に近い広場にそびえる、天井からはこれまた大きな天体望遠鏡が生えているちょっと変わった建物。調査団基地のロビーでは例のクソデカ望遠鏡を扱っているポケモンを抜いたメンバー全員が集まって、とある大陸に関する会議を開いていた。
 この会議の司会を務めているのはこの調査団の団長でもある『デンリュウ』。自称スタイリッシュポケモンの方向音痴であるが彼の実力は本物であり、また、仲間思いな一面もあり、いざというときには頼りになるポケモンである。
「それでは『デデンネ』君、星の大陸についての説明をお願いします」
「はい、ダンチョー!」
 デンリュウの呼びかけに元気よく答えたポケモンはデデンネ。見た目は小さく可愛らしいが、彼女はこの調査団の連絡係であり情報の要でもある、れっきとしたメンバーの一匹だ。
「ええっと、それじゃあ星の大陸についてまず概要だけ説明していくね」
 デンリュウの隣まで歩いてきたデデンネは己の調査団ガジェットを取り出し、この会議のためにあらかじめ整理しておいた、例の星の大陸に関する情報に目を通しながら説明を始める。
「まず、星の大陸はついこの間発見された、ワタシ達の全く知らない新天地……っていうのはみんな知ってるよね。今まで発見されなかったのは、ワタシたちが知ってる大陸からある程度離れると不思議な黒い霧が立ち込めて、それ以上先に進めなかったからみたい」
「ねえねえ!その星の大陸っておいしい食べ物とかいっぱいあったりすると思う!?」
「オマエほんとそればっかりだな!?」
 デデンネの説明がわたあめのようなポケモンのせいで遮られた。彼の名は『ペロッパフ』。この調査団の給仕係を担当しているのだが同時に大食漢でもあり、しょっちゅう用意したご飯をつまみ食いしたり夜に食料を盗み食いしてはメンバーの恨みを買っている。ちなみにこの会議の数日前には基地の食料の在庫をデンリュウと共にすべて食らいつくしてしまい、大規模な食糧難を起こしたばかりである。驚くことに、彼は食料を食いつくした後、誰よりも早く腹を空かせて倒れるのだ。
「……話を続けますね?その星の大陸を発見したペリッパーによると、既にワタシ達と同じくらいの文化を作っているポケモン達がいて、それも結構友好的みたい。救助隊なんかはもう向こうに支部を作ってるみたいですね」
「ペリッパーが見つけたのか……もしオレが飛べたらオレが一番最初に発見できたのかなぁ……」
「今更だろ?」
「ぐはっ」
 発見ポケの種族を聞いて少しうなだれた声を出し、先程ペロッパフに突っ込んだポケモンにとどめを刺されたポケモンが一匹。彼は『アーケン』。調査団では主に空の調査を担当していて面倒見もいいポケモンなのだが、種族上ひこうタイプにも関わらず空を飛べないというコンプレックスを抱えており、『飛べずのアーケン』という通り名はかの燃え盛る伝説のポケモン、『エンテイ』の記憶にも残る程に有名である。当の本ポケがそれについてどう思っているのかは分からないが。
 ま多分不名誉に思っているだろう。己が飛べないことを受け入れている節はあったような気がするのだが、やはりこういう大きな発見があるとないものを願ってしまうのだろうか。
「うん……星の大陸の大まかな概要はこれで全部だね。他に何か質問のあるポケモンはいますか?」
「あっ、オイラちょっと気になることがあるんだけど」
 ここで手を上げたのは『ホルビー』。調査団では主に地中の調査をしているポケモンだ。ちなみにこの前イメージチェンジとして一ポケ称を『オレ』にしてみたところ、突然メンバーの一匹から容赦ない一撃が飛んできたので一ポケ称は一生変えないと心に誓ったらしい。
「なんでその大陸の名前が星の大陸になったんだ?」
「あー、えぇーーーっと……」
「ただいまー。それに関してはボクが説明するよ」
 名前の由来までは知らなかったデデンネがホルビーの質問に対し言葉をつまらせていると、どこかから帰ってきたらしい会議から一匹だけ席を外していたポケモン、『ジラーチ』がそのまま前に浮かんで来て、デデンネの代わりに名前の由来について説明し始めた。
「実はあの大陸が見つかった時から少し様子を見に行ってたんだけど、そこで『宇宙律の丘』やボクが住んでた『星の洞窟』にある特有のエネルギーが観測されたんだよね、少しだけだけど。という訳でその二つのダンジョンを少し参考にして『星の大陸』って名前にしたんだ。名付けたのはボクだよ」
「へぇ……って、どうやってその、エネルギー?があることが分かったんだ?」
「そこはほら、ボク天才だし」
 答えになってねえよ!とキレよく返したポケモンは『ブイゼル』。調査団では主に水中の調査を担当しているポケモンである。ちなみにペロッパフをはじめ色々なポケモンに口を挟んでいたのも彼であった。
「と、いうか。ジラーチあなた星の観測をサボったんですか……?」
 二匹のやり取りをちゃんと見届けた後、ジラーチの説明が終わるまではちゃんと待っていたデンリュウが顔をひきつらせながらジラーチに彼の仕事について尋ねた。ジラーチが調査団で扱っている仕事は天体や星の周期の観測。地味にすっぽかしたらマズい系のものである。
 それに対し、
「心配しなくても大丈夫だよ?もう石化事件は随分前に終わった訳だし」
 と何の解決にもなっていない答えを返した。
「あのですねぇ……」
 呆れた声を出すデンリュウが次の声を出す前に、
「うそうそ、向こうでだけど星の観測はちゃんとしてるし、大体の距離も測ったから後でここで観測した時に見える形に修正できるよ」
 とすぐさまフォローした。何も道具がないのにどうやって海の上の距離を測ったのかは謎だが、まあ彼は(自称)天才なので自分の飛行する速さを一定にしたりしてなんとかしたのだろう。彼の両腕には星に関する記録が書かれている資料が抱えられているので、事実仕事はちゃんとしたようだ。
「それならいいんですけど……まあ、いいでしょう。それでは本題の方に移りますね」
 どこか端切れの悪い返答をしたデンリュウは、しかし今そのことについて深堀りしても特に意味はないだろうと判断したようで、ジラーチの仕事については一旦後回しにして今回の会議の本題について議論することにした。
 その本題とはつまり、

「誰が星の大陸に調査しに行くか、ですね」

 全くの未開の地ということもあり本来であればメンバー総出で調査に行きたいのだが、いかんせんパスポートが高すぎるのだ。幾らか調査団割引のようなものがあるとはいえ、メンバー全員分のパスポートを買うとしたら現状ではセカイイチ一年分が買えるほどのお金が必要になる。あと数ヶ月ほどしたら価格は下がるだろうが、それまで待っていたら調査団の名が腐るといったものだ。
「ああ、少し私が出向いてみてもいいか?」
 パスポートを掴める席が限られているので多くのメンバーが躊躇している中、一匹のポケモンが声を上げた。
「ああ、『クチート』。確かに君は星の大陸に行ったほうがいいかもしれないね」
 デンリュウがその声のした方を向き、そして納得した声を出した。クチートと呼ばれたポケモンは考古学を専門としていて、新しい大陸の歴史については専門家が取り組んだほうがいいだろう、という考えで立候補したのだ。余談ではあるがホルビーが一ポケ称を変えた時にどついたのは彼女である。
「そうですね、それではクチートには星の大陸に出向いてもらいましょう。ですが……」
 デンリュウはそれに何か問題があるかのように声を濁らせた。確かに、クチートの調査対象は歴史についてであり、今最も重要な地図についてはあまり期待できないからだろ


「はい!はーーーーーい!!ワタシ行きたい!!!」


 沈黙を破るように元気の良すぎる声がロビーに響く。その時に調査団のメンバーたちは特に驚くと行った反応は示さなかった。寧ろ、彼女が静かに話を聞いている方が不思議だったのではないだろうか。
「落ち着いて、気持ちは分かるけど」
「落ち着いてなんかいられないよ!だって……」
 隣で静かに聞いていたチコリータになだめられても興奮したままのフォッコは、熱をそのままに己の感情を解き放った。
「ワタシの夢は世界の全てが書かれた地図を作ること!そこにいきなり新しい大陸が見つかったって、何だかワタシ達に挑戦状が送られたみたいじゃない!?そんなのワタシは放っておけないよ!!!」
 その気持ちを、その場にいた誰もが静かに聞いていた。
 やがて、
「……いいんじゃないですか?ワタシも彼らに行ってもらいたいです!」
 デデンネがフォッコに賛成の意を示した。
 それが合図にでもなったかのように、
「ああ、私も君たちが一緒なら頼もしいよ」
「調査するのは楽しめるやつが行ったほうがいいしな!」
「オイラも賛成!」
「向こうで何か美味しいものがあったら真っ先に連絡してくださいね!!?」
「だからそれしか無いのかお前は!?まあ、俺もお前たちが行くのが一番いいと思うぜ」
 クチートが、アーケンが、ホルビーが、ペロッパフが、ブイゼルが。
 なんか別のが混ざっていた気がするが、誰もが彼女達が星の大陸を調査することを認めてくれた。
「みんな……」
 フォッコもメンバーの賛同に感極まっているようだ。目をきらきらと輝かせて隣のチコリータに向き合う。
「やったやった!ワタシ達星の大陸で調さ
「だから落ち着いてよっ、まだ正式には決まってないんだから!」
「とかいってー、そっちもワクワクしてるじゃん!」
 フォッコに言われてはっとチコリータはいつの間にか語気が強まっていることに気がつき、赤らめた顔を頭の葉っぱで隠してしまった。いまだ好奇心に満ち溢れているフォッコを除いた全員がその仕草を見てふふっ、と声を漏らす。
「んんー……、なんだかもう決まったみたいだね?」
 微笑ましい光景を堪能しきったジラーチがデンリュウに会議の決断を振る。
「いいものですねー……んあ?あっ、はい!」
 まーだほっこりした表情を浮かべていたデンリュウがその言葉を聞いていつもの顔に戻、しきれてはないが真剣な空気を作ってチコリータ達の元へと歩き始める。
「それでは……」
 彼らの前に立ち、一拍置いて、デンリュウは目の前に立つ新天地へ輝かしい期待を膨らませている子どもたちに彼らの仕事を告げた。

「『レンナ』、『フィウ』。『クラウディア』の君たちに星の大陸での調査をお願いします」

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