21.コイキング焼き

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 頭から食べるか。尻尾から食べるか。
 寒い季節になると、いつもコイキング焼きが売り出される。毎年買っていたリクに、「友達と食べな」と2つおまけが渡された。埠頭で待っていたウミに差し出すと、不思議そうにされた。「これは?」「コイキング焼きだよ。知らないのか?」首を横に振った。「お前の分とシャン太の分」ポケットを探り始めた手を押しとどめる。「お前らの分はおまけでもらったんだ。食えよ」一匹ずつ渡した。
 ぱくっと自身の口に咥え、アチャモにも与える。「ちゃもちゃもちゃも!」頭から躍り食いのようにコイキング焼きが消えた。対照的に、リーシャンとウミは渡されたコイキング焼きを見つめたまま、食べようとしない。「……嫌いか?」
 
「いや、これ……どこから食べるのが、正しいのかなって」
「好きに食えよ」

 リクは尻尾から食べたし、アチャモは頭から食べた。正解はない。意を決したリーシャンが尻尾にぱくついた。小さな口で食べ出したパートナーを見て、ウミも食べ始めた。
 腹から。
 
「どっから食ってんだよお前」思わず突っ込んだリクに、ウミがムッとする。「どこからだっていいって言っただろう」焼き魚を食べるように丁寧に食べていく。「頭と尻尾も食えるんだぞ」「分かってる」食べ終わると、手を払った。リーシャンはまだ食べている。羨ましそうな目でアチャモが見ているので、リクはぎゅむ、と頭を抑えた。「お前は食っただろ」「ちゃも~……」

「コイキング焼きが好きなのか?」
「好きって言うか、食いしん坊なんだよシャモは。おやつは一日一回まで! ただし勝ったときは特別な!」

 リクはにやっと笑い、リーシャンとウミを見やった。「勝ったらコイキング焼き追加だ!」「ちゃもー!」むぐ、とリーシャンがコイキング焼きを喉に詰まらせた。結局こうなる訳ね、とウミは呆れつつ、リーシャンに水を飲ませる。「今日こそはハンカチ返してくれよ」「――リ!」
2021年6月12日執筆
コイキング焼き実在します。食べたい。
私信ですが明日の本編の更新は夜になります。仕事さんが休日に急遽ログインしました。悲しいね。

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